著者
Tetsuji KAWAKAMI Sanae SHIBATA Nobuo MURAYAMA Masahiko NAGATA Koji NISHIFUJI Toshiroh IWASAKI Tsuneo FUKATA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.1615-1619, 2010 (Released:2010-12-29)
参考文献数
41
被引用文献数
21 83

To understand species distribution, trends of antimicrobial susceptibility and prevalence of methicillin resistance in canine staphylococci in Japan, 190 coagulase-positive staphylococci (CoPS) were isolated from dogs with pyoderma in 2 Japanese veterinary referral hospitals. Using a multiplex polymerase chain reaction (M-PCR) method, two CoPS species were identified: 170 Staphylococcus pseudintermedius (89.5%) and 20 S. schleiferi subsp. coagulans isolates (10.5%). In these isolates, susceptibility to 7 antimicrobial agents was determined. Overall, the levels of susceptibility to cefalexin (CEX), amoxicillin/clavulanic acid (CVA/AMPC), minocycline (MINO), ofloxacin (OFLX), norfloxacin (NFLX), lincomycin (LCM) and clindamycin (CLDM) in S. pseudintermedius isolates were 38.2, 52.4, 34.7, 31.2, 34.1, 1.2 and 11.2%, respectively. In S. schleiferi subsp. coagulans isolates, 55% demonstrated susceptibility to CEX, 80% to CVA/AMPC, 70% to MINO, 45% to OFLX or NFLX and 30% to CLDM. None of S. schleiferi subsp. coagulans isolates was susceptible to LCM. To determine the prevalence of methicillin-resistant strains, we used a PCR method, which enabled detection of the fragment of mecA gene in 66.5% (113 of 170) in S. pseudintermedius and 30.0% (6 of 20) in S. schleiferi subsp. coagulans isolates. The frequencies of susceptibility to CEX, CVA/AMPC, OFLX, NFLX and CLDM were significantly lower in methicillin-resistant CoPS than in methicillin-susceptible CoPS isolates. These data suggest a high level of methicillin resistance in staphylococci isolated from dogs with pyoderma in Japan.
著者
滝沢 昌彦
出版者
一橋大学
雑誌
一橋法学 (ISSN:13470388)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.83-106, 2002-03-20

論文タイプ||論説
著者
戸村 幸一
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.13-32, 2007-12

現代日本語の,ここ数十年にわたる史的変移を探る,これが本稿の目的である。世代間のコトバの違いに対し,旧世代は新世代のコトバを「乱れ」と片づけてしまいがちだ。だが,乱れとは,消えてゆく,あるいは消えてゆかざるをえないコトバと,生まれてくる,あるいは生まれてこざるをえないコトバとのせめぎ合いである。乱れ,と言うよりは,それは,史的必然性をもった変移である。発音,語彙,語義,語法,表記などあらゆる範躊での変移の様子を探ってみる。
著者
戸田 弘二 高村 裕美
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.25-36, 2003-09-30

本研究では,表情以外の複数のノンバーバル行動が特定の感情状態にあるときにどのように相互に組織化されて表出されるのか,また表出者のパーソナリティ特性によってそれらのノンバーバル行動の組織化がどのように異なるのかについて検討した.実験は,28名の女子学生(平均年齢19.5歳,標準偏差1.14)を対象に二人一組で行い,悲しみ条件,喜び条件それぞれでの相互作用場面からサンプリングした2分間を観察対象とした.12種類のノンバーバル行動を指標として,その頻度をもとに相互の関連を検討した.その結果,"注意回避""意思表示""有意味動作""無意味動作""顔面以外への身体接触"の5因子を抽出した.実験前後における感情変化量をこの5つの因子得点から予測したところ,悲しみ感情は無意味動作と注意回避の増加および有意味動作と意思表示の減少から予測され,喜び感情はその逆の行動から予測されることが明らかとなった.また,パーソナリティ特性によって各感情喚起場面でのノンバーバル行動が異なることが明らかになった.本研究で抽出された5つのノンバーバル行動因子はEkman & Friesen(1969)の5分類によく対応しており,悲しみ場面では自身の感情制御に注意が向けられた結果,アダプター行動が増加したものと考察された.また,パーソナリティ特性によって各感情喚起場面での情報処理が異なり,そのことが異なるノンバーバル行動の出現に関与している可能性が示唆された.
著者
上村 務
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p238-247, 1989-03-15
著者
福間 美紀 塩飽 邦憲
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.69-76, 2012-07-31 (Released:2012-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

高齢者の死亡に関する研究は生活習慣病が関与していることが多く報告されている。しかし,加齢に伴う身体機能や生活機能の虚弱が,生活習慣から独立して死亡に影響するか否かは十分に明らかになっていない。このため,高齢者の死亡への生活習慣と虚弱の関連を明らかにすることを目的に,島根県雲南市の生活機能の低下した新規の要支援認定高齢者 (軽度障がい高齢者) 66人と,生活自立している高齢者 (元気高齢者) 72人の2群について3年間の前向き調査を実施した。軽度障がい高齢者の死亡率は元気高齢者と比べ多い傾向であったが,有意差は認められなかった。すでに虚弱の進行した軽度障がい高齢者の死亡には,性 (男性が女性よりも有意に増加) のみが関連し,生活習慣や虚弱は関連していなかった。元気高齢者の死亡には,生活習慣の喫煙と虚弱要因の歩行障害が有意に関連していた。このように高齢者の死亡には,生活習慣と虚弱が独立して関連していることが明らかになった。
著者
新井 哲夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.49-55, 1979-03-30
被引用文献数
3

Hatching in Gampsoleis buergeri was synchronized neither in continuous darkness nor in continuous light at any temperature. However, it occurred synchronously at around sunrise under natural light conditions at about 24℃, and also at around lights-on in an artificial photoperiod of 12-hr light : 12-hr dark at temperatures between 15 and 25℃. The hatching in thermoperiods (12-hr warm phase : 12-hr cool phase) was concentrated at 8-10 hr after the temperature down in continuous darkness but spread over the entire cool phase in continuous light. Hatching was also synchronized by a single light-dark shift, a temperature down or a high temperature pulse in otherwise constant conditions. when eggs were transferred from cyclical to constant external conditions, the daily rhythm of hatching disappeared almost at once. It seems, therefore, that any circadian oscillator is not explicitly involved in the determination of hatching time. The direct response to a single stimulus of light or temperature was different between G.buergeri and Metrioptera hime, but in other respects their responses were similar, which suggest that they share the same basic system of time measurement.
著者
北脇 信彦 金田 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ
巻号頁・発行日
vol.97, no.350, pp.9-16, 1997-10-29

わが国においては人口の高齢化が急速に進んでいる。高齢化が進むのに伴って身体に障害を持つ人の数も増えている。本論文では、最新の音声・音響技術を適用してNTTが開発した福祉サービスシステムと利用者の反応について述べる。開発した福祉サービスシステムは、聴覚害者用ステレオヘッドホンシステム、視覚障害者用朗読サービスシステム、福祉パソコンなどである。用いられた音声・音響技術は、人間の音声やコンサート音楽を収音し再生する音響技術、収音された信号の品質を損なわずに効率よく伝送する符号化技術、コンピュータや機械が人間の音声を理解する認識技術、逆に人間の言葉をしゃべる合成技術である。
著者
堀之内 克彦 塩沢 俊之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.331-336, 1993-09-25
被引用文献数
23

開放型チェレンコフレーザにおいて,電磁波と電子ビームの運ぶ電力の総和が保存されるというエネルギー保存則を用いて,電磁波の電力増大の様子を数値的に明らかにし,電磁波の増大に伴うビームのドリフト速度の減少およびその影響,ならびに導波路を構成する誘電体の誘電率を変化させることによる増大特性の改善について調べている.まず,電磁波が増大するにつれてビームのドリフト速度が減少し,電子ビームと電磁波の同期がずれてくるため,初期に設定された周波数における空間的増大率が次第に減少し,電磁波の電力増大が妨げられることを示している.次に,電子ビームと電磁波の同期を維持するために,ビームのドリフト速度の減少に合わせて導波路を構成する誘電体の誘電率を電磁波の進行方向に徐々に増加させることにより,ビームのドリフト速度の減少による空間的増大率の減少を抑えることができ,電磁波の増大特性を改善できることを明らかにしている.
著者
松浦 弘幸 久保田 怜 根本 哲也
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.83-87, 2012-05-30

ポラリトンが近似的にはシュレディンガー方程式に従う.我々は状態ベクトルを用いて量子ネットワーク系を組み立て,複雑な系の特性を解析する有力な手段の一つとして摂動法を提案した.さらに,ポラリトンの量子力学的方程式を基礎として,古典的ニューラルネット理論を量子神経回路に書き換えを行った.元来,量子力学の基礎となる"重ね合わせの原理は,古典的ニューロネット理論と類似点も多く,両者の間に対応関係が成立する.しかし,量子神経回路理論の入出力は複素数であるが,他方,古典論の入出力は実数であり,このために神経細胞間での量子干渉効果は存在しない.ポラリトンを用いた量子ベイズ形式の表現を与えた後,第1層,第2層の状態ベクトルと伝播確率振幅の規則を定義した.この一連の規定により,多段的な量子神経回路や多様な形態の回路網への適応が可能となった.
著者
日本幼稚園協會
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒教育
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.43-80, 1921-02
著者
須賀 賢一郎 内山 健志 坂本 輝雄 吉田 秀児 村松 恭太郎 渡邊 章 澁井 武夫 田中 潤一 中野 洋子 高野 伸夫
出版者
Japanese Cleft Palate Association
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.320-325, 2009-10-30
被引用文献数
1

顎間骨が位置異常を示す両側唇顎口蓋裂術後患者に対して,唇側からの顎間骨の骨切りと顎裂部の骨移植を同時に行う顎間骨整位術の有用性を本学会雑誌の21巻2号に報告した。しかし,この到達法は,顎間骨部への血行の考慮と骨切り操作の点において検討の余地があることが判明した。そこで,1996年4月から2009年3月までの13年間に,同様の症状を呈した17名の両側唇顎(口蓋)裂術後患者に対し,口蓋側から顎間骨への到達と骨切りを行なったところ,以下の結論を得た。<br>1.全症例とも本到達法と骨切りは安全かつ容易に行えた。<br>2.切歯歯根尖より充分距離をおいた顎間骨の骨切りが可能であった。<br>3.顎間骨移動時の骨干渉部の削合も頭部の後屈で容易に行えた。<br>4.以上のことから,顎間骨整位術を施行する場合,顎間骨部への到達と骨切りは口蓋側から行うべきであることを推奨する。
著者
鎌野 倫加
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.1051-1056, 2012 (Released:2012-08-28)

東日本大震災は、2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した大津波及びその後に続いている余震により、引き起こされた大規模災害である。災害医療では、災害時に限られた医療資源 (医療従事者、薬品など) の中で、いかに多くの傷病者の命を救うかが求められる。そのため、傷病者の緊急度や重症度を考慮し、治療や搬送の優先順位に従い、搬送や治療を行うが、災害医療や看護の活動をしている医療従事者の殆どは救急医療や看護を日常業務から行っている。災害サイクルの経過により医療ニーズも変化し、災害医療に関わる医療従事者だけではなく、多職種による支援が被災地には必要である。災害支援には、多視角からの多職種によるアプローチが重要であり、東日本大震災の経験から災害時の栄養管理を考えると、災害サイクルに応じた栄養指導、栄養管理をすることが慢性疾患の悪化を防ぎ、合併症の予防につながると考えた。その中で、地域医療や在宅NSTの存在の大切さを感じた。今回は栄養管理に焦点を当て、平成23年4月30日~5月15日まで、宮城県気仙沼市で災害支援活動を行った時のことを交えながら災害時に栄養管理が必要とされることを述べたい。
著者
白木 亮 華井 竜徳 森脇 久隆
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1331-1335, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
11

肝硬変では蛋白・エネルギー低栄養 (protein-energy malnutrition: PEM) が高頻度に出現し、予後やquality of life (QOL) に影響を及ぼす。この低栄養状態に、分岐鎖アミノ酸 (branched chain amino acids: BCAA) 製剤や就寝前軽食 (Late evening snack: LES) などの栄養療法によって、肝機能・予後・QOLの改善が得られることが報告され、様々なガイドラインで栄養療法が推奨されている。また近年、食の欧米化に伴い日本人の肥満は増加傾向にあり、肝硬変患者においても肥満患者の割合が増えている。肥満合併肝硬変患者では肝発癌リスクが高く、肥満やインスリン抵抗性に対しての治療介入も必要である。
著者
友近 晋 梅本 一
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.14, no.185, pp.471-558, 1939-11

有限な幅を持つ非壓縮性完全流體の二次元的噴流の中に置かれた平面翼の受ける力を理論的に研究することは,理論的に興味あるばかりでなく,實際問題の立場からも極めて重要である.何故かなれば,この問題はGottingen型風洞の中に矢高の小さい薄い翼型を斷面に持つ翼模型を置く樣な實際の場合と緊密な關聯があるからである.この問題は,既に十年以上も前に,佐々木達治郎博士により適當な等角寫像を應用して嚴密に解かれたが,諸種の量に對する嚴密な式が極めて複雜であるために,同博士は唯迎角が10°である場合のみの數値計算を遂行されたに過ぎなかつた.その後,佐々木博士はその理論的結果を我國に於ける幾つかのGottingen型風洞に於いて同一の翼模型に就いてなされた實驗結果と比較されたが,爾來迎角が10°以外の他の値を採る場合に就いての嚴密な數値計算は遂行されてゐない樣である.然しながら,迎角の種々の値に對する嚴密な數値計算を遂行して,噴流の自由表面が平面翼の揚力に及ぼす干渉が迎角と共に如何に變るかを吟味することは興味あることと思はれる.斯樣な吟味をすることが本論文の目的の第一のものである.一方に於いて,噴流の中に置かれた翼の受ける揚力の問題はKαRMαN, GLαUERT及びPISTOLESIによつて夫々近似的に取扱はれ,揚力に對する近似式が互に異なれる形で與へられてゐるが,もつと合理的な近似式は嚴密な式からも導出することが出來る筈である.この樣に揚力の嚴密な式からその近似式を導出することが本論文の第二の目的である.本論文の主な目的は上述の二つであるが,便宜上,問題を嚴密に解くために必要な等角寫像に關する議論から敢へて出發し,嚴密な種々の計算を遂行して先づ揚力その他の量に對する嚴密な一般式を求めた.そして,特に平面翼の中點が上流無限遠に於ける噴流の中心線上にある樣な實際的に重要な場合を考へ,迎角が5°,10°,15°である場合に對する非常に面倒な嚴密な數値計算を遂行して,平面翼の揚力が噴流の自由表面のために如何なる影響を受けるか,又その影響が迎角と共に如何に變るかを吟味した.平面翼の幅を2α,無限遠に於ける噴流の幅をD,噴流の中で平面翼の受ける揚力をL,又同じ翼が無限に擴がつてゐる流れの中に置かれた場合に受ける揚力をL_0とすると,L/L_0なる比の値は2α/Dなる比の値が増すに從つて減少することが知れる.又,2α/Dの或る一定値に對するL/L_0の値は迎角βの値が増すに從つて,極めて僅かではあるが,増加することが知れる.然し,その樣な増加の割合は極めて小さいので,βが5°,10°,15°の樣な實用的範圍の値を採る時には,此等の場合に對してL/L_0を縱軸に採り2α/Dを横軸に採つて描いた曲線は,特に2α/Dが0.15より小さい時には,殆んど互に重なつてゐると看做すことが出來る.次に,揚力及びその他の量に對する嚴密な式から出發し,相當面倒且つ困難な近似計算を遂行することによつて,平面翼の中點が上流無限遠に於ける噴流の中心線上にある場合に就いて,揚力の近似式を2α/Dの羃級數の形で求めた.斯樣な近似計算は著者の一人友近が1934年英國Cαmbridgeに滯在中他の研究の餘暇に遂行したものであるが,最近計算を再吟味しすべての結果の正しいことを確めた次第である.L/L_0に對する吾々の近似式によつて計算したL/L_0の近似値と,同じ量に對する嚴密な値とを比較して,吾々の近似式の適用範圍を吟味した.迎角βの値の如何に關係なく,2α/Dが大體0.2より小さい場合には,吾々の近似式は正確な値に充分近い樣な良い値を與へることを知つた.本論文に於いて求めた種々の量に對する嚴密な式は極めて複雜であるから,嚴密な數値計算を遂行することは非常に困難である.吾々は,迎角βが5°,10°及び15°なる三つの場合に就いて,副變數qの幾つかの値に對し嚴密な數値計算を遂行したが,同樣の計算を他の場合に繰返へすことは殆んど實現不可能に近い位である.この意味に於いて,實用的な場合にL/L_0に對して相當良い近似値を與へるところの吾々の近似式は實際的立場から見て重要であると思ふ尚ほ,吾々の近似式は平面翼の場合に對する揚力その他の種々の量の嚴密な式から導出したものであるが,矢高の小さい薄い翼に對しては適用しても差支へないであらう.又,二次元的噴流の中に置かれた平面翼を取扱つて得られた吾々の近似式は,Gottingen型風洞の中に矢高の小さい薄い翼型の斷面を持つた翼模型を置く場合に對しても,大した誤なしに,適用することが許されるであらう.實際,吾々の理論的結果を,約十年前我國に於ける幾つかのGottingen型風洞に於いて遂行された同一の翼模型に對する實驗結果と比較した結果によると,豫想の通り,吾々の近似式はGottingen型風洞の中に翼模型を置く樣な實際の場合にもかなり良く適用されるのである.
著者
荒牧 英治 増川 佐知子 森田 瑞樹
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 = Journal of natural language processing (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.419-435, 2012-12-14
被引用文献数
1

近年,ウェブの情報を用いて,感染症などの疾病状態を監視するシステムに注目が集まっている.本研究では,ソーシャルメディアを用いたインフルエンザ・サーベイランスに注目する. これまでの多くのシステムは,単純な単語の頻度情報をもとに患者の状態を調査するというものであった.しかし,この方法では,実際に疾患にかかっていない場合の発言を収集してしまう恐れがある.また,そもそも,医療者でない個人の自発的な発言の集計が,必ずしもインフルエンザの流行と一致するとは限らない.本研究では,前者の問題に対応するため, 発言者が実際にインフルエンザにかかっているもののみを抽出し集計を行う.後者の問題に対して,発言と流行の時間的なずれを吸収するための感染症モデルを提案する.実験においては,Twitter の発言を材料にしたインフルエンザ流行の推定値は,感染症情報センターの患者数と相関係数 0.910 という高い相関を示し,その有効性を示した.本研究により,ソーシャルメディア上の情報をそのまま用いるのではなく,文章分類や疾患モデルと組み合わせて用いることで,さらに精度を向上できることが示された.
著者
鈴木 友宜 荒井 邦佳 岩崎 善毅 片柳 創 高橋 慶一 山口 達郎 松本 寛 宮本 英典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.1503-1508, 2004-08-01
被引用文献数
5

症例は45歳の男性で,1986年,発熱,皮疹,リンパ節腫脹にて発症し,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:以下,SLE)と診断された.2003年1月17日より発熱・嘔吐・腹痛を認め,1月24日の腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔,汎発性腹膜炎と診断し,同日,緊急開腹手術を施行し,壊死した直腸S状部に穿孔を認めた.組織標本より,壊死型虚血性腸炎と診断した.術後,エンドトキシン吸着療法・持続的血液濾過を導入し,集学的治療にて軽決した.自験例のように,SLEに消化管穿孔を伴った症例は,本邦で過去28年間に23例報告されている.なかでも23例中9例が死亡し,そのうち5例が下部消化管穿孔であった.SLEの経過中みられる消化器症状として穿孔はまれではあるが,発症すると致死率は高く,SLE患者が腹部症状を訴えてきた際には,その存在と危険性を十分に理解する必要があると考える.