著者
王 福林
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度には建物周辺における緑の日射遮蔽や蒸散は,どの程度の省エネルギーが達成できるか,空調システムの屋外機の効率向上にどの程度貢献するのかなどを明らかにすることを目的とする。そこで本年度には,植物の生育が制御しやすいサツマイモの葉を使う水気耕栽培屋上緑化を使用し,緑化による気温低減効果で空調熱源の効率改善にも寄与するようなシステムを構成し,そのシステムの気温低減効果・省エネルギー効果を実測・解析・モデル化した。それらを用いて,北方から南方までの代表都市4箇所において,本システムの省エネルギー効果がどの程度あるかをシミュレーションを用いて確認した。結果,1)水気耕栽培屋上緑化の日積算蒸散量:平均は6.3kg/m2であり,期間最大値は8.3kg/m2であった。既往研究と比較すると,期間最大の日積算蒸散量は潅水のない屋上緑化(セダム)の13.8倍,潅水のある屋上緑化(セダム)の1.8倍にあたり,単木にも匹敵する値であるということがわかった。2)冷却温度差:日射量が十分にある10:00〜16:00の冷却温度差の測定結果は,降雨日を除いた期間の平均冷却温度差は1.3℃であった。これに対し,散水実験日の平均冷却温度差は3.0℃と,約2.3倍になっている。3)冷房熱源の効率向上効果:オフィス用熱負荷標準問題に準じ,簡略化した建物モデルを作成し,札幌・東京・大阪・那覇の四地域にある建物の熱負荷をシミュレートし,提案したシステムが各地域でどの程度省エネ効果を得られるかを検討した。8月1日〜9月30日の期間において緑が成長し,冷却効果を利用できるとし,省エネ効果を試算した。結果,2ヶ月間の積算エネルギー消費量は,効率向上率の小さい空調機のグループが約1%,中のグループが約6%,大のグループが約8%,エネルギー削減できることがわかった。
著者
Hyungjin KIM Min-Chul SUN Hyun Woo KIM Sang Wan KIM Garam KIM Byung-Gook PARK
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Electronics (ISSN:09168516)
巻号頁・発行日
vol.E95-C, no.5, pp.820-825, 2012-05-01

Although the Tunnel Field-Effect Transistor (TFET) is a promising device for ultra-low power CMOS technology due to the ability to reduce power supply voltage and very small off-current, there have been few reports on the control of VT for TFETs. Unfortunately, the TFET needs a different technique to adjust VT than the MOSFET by channel doping because most of TFETs are fabricated on SOI substrates. In this paper, we propose a technique to control VT of the TFET by putting an additional VT-control doping region (VDR) between source and channel. We examine how much VT is changed by doping concentration of VDR. The change of doping concentration modulates VT because it changes the semiconductor work function difference, ψs,channel-ψs,source, at off-state. Also, the effect of the size of VDR is investigated. The region can be confined to the silicon surface because most of tunneling occurs at the surface. At the same time, we study the optimum width of this region while considering the mobility degradation by doping. Finally, the effect of the SOI thickness on the VDR adjusted VT of TFET is also investigated.
著者
森 美穂子 堤 明純 高木 勝 重本 亨 三橋 睦子 石井 敦子 名切 信 五嶋 佳子 石竹 達也
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.113-118, 2005-05-20
参考文献数
13

交代勤務経験の有無と退職後の生活の質,特に睡眠の質との関連性を明らかにするために,ある製造会社の退職者777名を対象に質問紙調査を行った.質問内容は,既往歴,現在の健康状態,食習慣,アルコール,喫煙,運動,睡眠,在職中の勤務状況(職種,交代勤務経験,交代勤務経験年数,副業),現在の就業状況,社会参加,学歴,性別,年齢,退職後の年数であった.「現在の健康状態(オッズ比4,318,95%信頼区間2.475-7.534)」「交代勤務経験(2.190,1.211-3.953)」「現在の就業状況(1,913,1.155-3.167)」「食習慣(1.653,1.055-2.591)」が多変量解析によって退職後の睡眠障害と有意に関連した.退職後の睡眠障害を防ぐには正しいライフスタイル,良好な健康状態を保つことが,特に交代勤務経験者において大切である.
著者
冨岡 昭
出版者
上武大学経営情報学部
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
no.28, pp.81-101, 2005-12

人間は誰でも健康で長生きがしたいと考えるが60才を越えるころから身体の衰えを感じ、年をとったと嘆く人が多い。人間は老いて死ぬ。特に生活習慣病が進み、脳梗塞、心筋梗塞などの血管障害で死ぬ可能性が高くなる。老化は避けられない。身体が老いるのが避けられないとすれば精神的に若く生きるしかない。資本主義社会に生きていて、金に振り回されて疲れて精神的に不安定になる人が増えている。うつ病や自律神経失調症に悩む人達は生き方を変えるしかない。どう生きたらいいか私の考えを考察したい。
著者
中村 弘
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.383-392, 1980-09-01

免疫応答は脊椎動物のもつ高度に体系化された恒常性維持のための生理機能であり, その多様な応答性は, 動物種族の系統発生と密接に関連している. 現在, こうした免疫応答の仕組みは, 個体の遺伝的性質によって厳しく制御されたリンパ系細胞群の主要な機能として理解されている. 莫大な種類におよぶ抗原のそれぞれに対する免疫反応の特異性は, リンパ系細胞上に存在する細胞自身の遺伝子産物であるリセプター抗体の活性基との反応によって生ずるものであり, この活性構造であるV-部位は, イデオタイプと呼ばれている一群の抗原決定基をもっている. こうした分野における最近の研究を理解する基礎として, 免疫応答の特異性決定のための, また自己制御のための因子である免疫グロブリン分子の主な性状についてまとめた.(1980年5月2日 受付)
著者
佐藤 茂 森田 重人
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

カーネーションでは,雌ずいで生成するエチレンが花の老化の「スターターエチレン」として働いている.本研究では,雌ずいのエチレン生成誘導因子がアブシシン酸(ABA)であることを,切り花の寿命の異なる3品種のカーネーションを用いてABA含量の変動,及びABA生合成と作用の鍵遺伝子の発現を調べて実証した.また,開花と老化を制御する薬剤の作用の解析を行い,ピリジンジカルボン酸が,スプレーカーネーションの老化を抑制すると共に蕾の開花を速めること,および本来開花せずに寿命を終わる蕾の開花を誘導することを発見し,この薬剤を「夢の薬剤」として提案した.
著者
大野 かおる レービガー ハンネス 野口 良史 石井 聡
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

オリゴフェニレンビニレンをアンテナとしてZnフタロシアニンをコアとするπ共役デンドリマーとC_60の分子接合系で光捕集電荷分離機構が発現することをTDDFTダイナミクス・シミュレーションにより明らかにした。また、1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーの構造と電子状態の関係も調べ、カーボンナノチューブ内に直線分子が自発的に内包されることを示し、化学反応のシミュレーションや光吸収スペクトル計算も行った。
著者
水野 善文 藤井 守男 萩田 博 太田 信宏 坂田 貞二 臼田 雅之 石田 英明 宮本 久義 高橋 孝信 橋本 泰元 高橋 明 松村 耕光 横地 優子 山根 聡 萬宮 健策 長崎 広子 井坂 理穂
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

インドの多言語状況は、時代を通して地域的な多様性だけではなく社会的にも幾つかの層をなしていた。言語の差異を超えて愛好・伝承され続けてきた文学・文芸を対象に、古代から現代まで、多くの言語の各々を扱うことのできる総勢30名以上のインド研究者が共同して研究を進めた。その結果、民衆が自らの日常語による創作から発した抒情詩や説話、職業的吟遊詩人が担った叙事詩、それらをサンスクリット語で昇華させた宮廷詩人、さらには詩の美的表現法が現代の映画作りにも至っている、といったインドの人々の精神史の流れを解明できた。
著者
岩崎 稔 橋本 和廣 上村 良 池田 幸広 小林 久人 花房 徹兒 田中 紘一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.470-479, 2006

【目的】新生児未熟児の胆汁うっ滞症に対し,胆道閉鎖症に対する除外診断の重要性と治療戦略の妥当性を研究すること.【対象と方法】胆汁うっ滞を認めた新生児未熟児2例(超低出生体重児:胆道閉鎖症,極低出生体重児:胆汁うっ滞症)の臨床経過を後方視的に調査分析し,確定診断のための諸検査の妥当性および治療指針に対する正当性を分析した.1990年より京都大学で始まった生体肝移植の移植患児の内,肝移植時の体重が5kg以下の患児は20名(男児:5名,女児:15名)であった.原疾患は,胆道閉鎖症9例,劇症肝炎5例,代謝性肝疾患4例,肝硬変2例であった.それらの患児に対する肝移植の治療成績と治療の妥当性を検討し,今回の症例に対する治療の適合性を検討した.【結果】超低出生体重児の胆道閉鎖症の患児は,生後187日目に葛西手術を受けるも術後36日目に多臓器不全にて死亡.一方,胆汁うっ滞症の極低出生体重児の患児は内服薬を併用し,精査・加療中である.京都大学医学部附属病院で行われた生体肝移植手術時の体重が5kg以下の患児(20例)の治療成績は,10名が生存で10名が死亡であった.肝移植時の体重3.7kg以下の5例は全例死亡であり,3.8kg以上の症例での生存率は66.7%であった.【結論】新生児未熟児の胆汁うっ滞症では,腹部超音波検査,肝胆道シンチグラフィーを施行し,胆道閉鎖症を早期に除外することが重要である.葛西手術時期を逸した症例や,胆汁酸の代謝障害による高度の肝機能障害を呈した疾患では,確定診断のための詳細な検査を行いつつも,確定診断には至らず肝硬変が高度に進行するようであれば,肝移植術も考慮した治療手段を考えることが患児の救命にとって重要である.
著者
八島 栄次 古荘 義雄 飯田 拡基 古荘 義雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008-06-04

本研究では、未開拓の研究領域である二重ラセン構造を有する分子・超分子・高分子を創製するための一般性の高い方法論の開発、構造と物性との相関の解明、ラセン構造に由来する情報機能(複製、情報の保存)の発現、不斉触媒や光学分割材料等への応用を目指し検討を行った。その結果、人工二重ラセンを介したDNA同様の完璧な鎖長及び配列の認識と複製、不斉の伝搬(不斉増幅)、二重ラセン構造の顕微鏡による直接観察等に初めて成功した。さらに、バネのように可逆的に伸縮する分子スプリングを世界に先駆けて創製するとともに、ラセン構造に由来する実用的な光学分割材料や不斉触媒の開発、メモリーデバイスへの応用にも成功した。
著者
木村 元 山村 雅幸 小林 重信
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.761-768, 1996-09-01
被引用文献数
60

Many conventional works in reinforcement learning are limited to Markov decision processes (MDPs). However, real world decision tasks are essentially non-Markovian. In this paper, we consider reinforcement learning in partially observable MDPs(POMDPs) that is a class of non-Markovian decision problems. In POMDPs assumption, the environment is MDP, but an agent has restricted access to state information. Instead, the agent receives observation containing some information about states of the MDP. Also we focus on a learnig algorithm for memory-less stochastic policies that map the immediate observation of the agent into actions: The memory-less approaches are suited for on-line and real-time adaptive systems that have limited memory and computational resources. Then, the following mathematical results are got. First, it can improve its policy to maximize immediate reward by stochastic gradient ascent without estimating any state or immediate reward. Second, it can improve the policy to maximize discounted reward in an initial state by stochastic gradient ascent without estimating any state, immediate reward or discounted reward. The above advantages are remarkably effective in POMDPs, because it is not required to estimate any states, immediate reward or discounted reward explicitly. Making use of these results, we present an incremental policy improvement algorithm to maximize the average reward in POMDPs. We ensure the rational behavior of the proposed algorithm in a simple experiment.
著者
小坂 岑雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会誌 (ISSN:00214728)
巻号頁・発行日
vol.82, no.724, pp.p231-236, 1979-03
著者
三田地 紘史 山本 高久 吉岡 律夫 杉本 哲也
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 = Transactions of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-133, 2008-06-01
被引用文献数
1 7

In this paper, the burn-up characteristics of a 200 MW<sub>e</sub> molten-salt reactor are studied. This reactor has a three-region core in order to reduce the peak in fast neutron flux distribution. The reactor is operated for 30 years with the load factor of 0.75. The fuel is fed to the reactor every 33 days. The chemical processing of the fuel salt is performed every 7.5 years. Based on calculations using the nuclear analysis code SRAC2006 and the burn-up analysis code ORIGEN2, the following results have been obtained. (1) The graphite moderators can be used throughout the reactor lifetime without replacement. (2) The reactor is self-sustainable having an average fuel conversion ratio of 1.01. (3) The initial inventory of <sup>233</sup>U is 1.13 t, net feed in 30 years is 0.34 t; thus, the necessary amount of <sup>233</sup>U is 1.48 t. (4) Pu isotopes are produced at 1.5 kg and minor actinides at 27 kg per 1 GWe output in 30 years, which are absolutely small compared with those produced by BWR.<br>

1 0 0 0 PK

著者
伊坂幸太郎著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2012