著者
田村 和巳 林 豊彦 中嶋 新一 小林 博 山田 好秋 石岡 靖 宮川 道夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.95, no.404, pp.61-68, 1995-12-09
被引用文献数
5

顎連動の制御メカニズムを解明するために,我々はヒトに近い構造をもつ自律顎運動ロボットと咬合力センサを開発してきた.このロボットには,DCサーボモータでワイヤを駆動する方式を用いた咬筋と外側翼突筋アクチュエータが装着されている.これらアクチュエータの制御にインピーダンス制御と適応制御を用いることにより,ヒトに近いかみしめを伴う開閉口運動を実現できた.しかしこの制御系は,等張性収縮において完全な位置制御を行っており,この点では実際の筋と異なっていた.これを改善し,より正確に伸張反射系をシミュレートするために,筋種や連動相の違いによりワイヤ長のフィードバック量を調節できるようにした.この制御系の改良と顎二腹筋アクチュエータの追加により,従来より自然な開閉口連動を実現することができた.
著者
矢野 米雄 YANO Yoneo
出版者
徳島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

我々は外国人向け日本語教育のための漢字辞書として電子漢字辞書“漢字林"と電子漢字熟語辞書“KIDS"の試作を行なった.漢字林は,漢字に意味や発音を継承する部分構造に着目した電子漢字辞書である.従来の漢字データベースは,漢字の構造上の特徴に着目するため,漢字の表意文字としての知識表現は困難である.我々は常用漢字1945文字に対して漢字の意味や発音に継承する部分構造を整理した.これらの部分構造を用いて漢字を表現し,種々の条件検索が可能で,継承する属性に着目した知識検索可能な漢字知識ベースを持つ電子漢字辞書“漢字林"を試作した.漢字林ではキーボード入力によらず直接操作でき,誤操作に対するシステムの助言や漢字候補を絞り込む検索操作に対する前状態への復帰の機能を持つ環境を実現した.さらに漢字の知識の少ないユーザが単純な部分構造から複雑な部分構造をたどり目標の漢字を簡単に検索できる環境を実現した.漢字林はSONY製EWS NWS-3865上に構築した.KIDSは外国人の漢字熟語学習を支援する電子漢字熟語辞書である.漢字熟語を学習する外国人は自分がどの漢字熟語を学ぶ必要があるか理解している場合が多く,また漢字熟語を広く浅く学ぶのではなく,必要な漢字熟語を中心に関連する漢字熟語を覚えるといわれる.この学習スタイルに対し,一般的なCAI教材ではなく,学習者に高い自由度を与える形態の電子辞書の枠組みが適すると考える.我々は(1)漢字熟語と構成漢字の関係の知識検索,(2)構成漢字間の関係の知識検索,(3)漢字熟語の属性を利用した関連語検索が可能な電子辞書システムを提案する.さらにKIDSの特長は検索専用の電子辞書だけではなく漢字熟語知識の挿入・削除によるユーザカスタマイズ機能を持ち拡張性の高い知識ベースの枠組みを採用する.KIDSはSONY製EWS NWS-1750上に構築した.さらに我々は漢字林やKIDSを知識ベースとして利用する漢字学習CAIシステム“漢字工房"および漢字熟語学習CAIシステム“熟限無(JUGAME)"を構築した.
著者
Katsuhiko Tsunekawa Yoshimaro Yanagawa Tomoyuki Aoki Tadashi Morimura Osamu Araki Takayuki Ogiwara Yuki Kawai Yasumasa Mitani Alexander Lezhava Masumi Yanagawa Yoshihide Hayashizaki Masami Murakami
出版者
(社)日本内分泌学会
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
pp.1109280629-1109280629, (Released:2011-09-30)
被引用文献数
7 12

β2 and β3 adrenergic receptor (β2AR, β3AR) and uncoupling protein 1 (UCP1) have been considered as candidate genes for obesity. Although each polymorphism of β3AR Trp64Arg, β2AR Arg16Gly and UCP1 -3826A>G is known to be associated with obesity, the interaction among these polymorphisms is not fully understood. We analyzed β3AR Trp64Arg, β2AR Arg16Gly and UCP1 -3826A>G polymorphisms by the Smart Amplification Process 2 in 222 Japanese subjects without the medication of hypertension, dyslipidemia or diabetes, and investigated the association between the physical and metabolic characteristics and the combination of these polymorphisms. In analysis of the genotypes combination, only the carriers of both β2AR Arg/Arg and UCP1 G/G genotypes had significantly higher waist to hip ratio (p=0.014). In analysis of the alleles combination, a significant difference was observed in waist to hip ratio among the groups stratified by the carrying number of the alleles of β3AR Arg, β2AR Arg and UCP1 G (p=0.026), and the waist to hip ratio was significantly higher in the carriers of four and five risk alleles than in the carriers from zero to three risk alleles (p=0.005). The present study demonstrated the interaction among β3AR Trp64Arg, β2AR Arg16Gly and UCP1 -3826A>G for the accumulation of visceral fat.
著者
樋口 康一
出版者
愛媛大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

研究代表者は年来このモンゴル語仏典の文献学的・言語学的資料としての重要性に着目し研究を進めてきた。その過程で、出版文化の実相解明には、仏典の伝承と流布の実態解明が不可欠であると考えるに至った。ある文献が、当初の書写の対象から印刷による出版の対象に昇華する経緯、印噂された後、世に流布する経過、それが識字層にいかに受容され、最終的に文化の諸相にどのような影響を及ぼすようになるのか等、解明すべき問題は少なくないが、それらの大半は仏典の伝承と流布の経過をつぶさに観察することで、その端緒が得られる。昨平成15年度の経費交付により面識を得て交渉を進めている現地の研究者と引き続き連携しつつ、モンゴル及び周辺諸国、及び国内における各研究機関のモンゴル語文献の所在・管理の状況を調査した。可能な機関に関しては所蔵文書類の整理を試みるとともに、その際、電算機を積極的に活用し迅速な処理を心がけた。また、入力作業に当たっては、研究補助を仰ぎ、その成果の一部は、既に公表され、広く批判を仰いでいるが、所在文献の資料的位置づけを確定した上で、出版文化の実相解明に着手した。具体的には、特に大量に所蔵されていることが予想される仏教文献に関して、(1)モンゴル語訳の成立とそれがモンゴル知識層に受容される具体的プロセスはいかなるものか(2)そのプロセスにおいて出版事業がどのような関わりを持ったか(3)その出版によってどのような影響が文化にもたらされたかに焦点を当て、研究を進めた。その成果の一端は、すでに研究集会等で公にしている。また、進んで批判を求めるため、現在、2件の論文を学術誌に投稿中である。
著者
西田 健志 五十嵐 健夫 Takeshi Nishida Takeo Igarashi 東京大学大学院情報理工学系研究科 東京大学大学院情報理工学系研究科:科学技術振興機構さきがけ Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo:JST PRESTO
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.69-75, 2006-10-26
参考文献数
7
被引用文献数
3

本論文では,参加者間で画像を共有し,それら画像の特定部分に会話を結びつけることのできるチャットシステムLock-on-Chatとその運用により得られた様々な知見をまとめる.文書や画像と会話を結びつけるほかのシステムが,ひとつの文書について深く議論するのに適しているのに対して,我々のシステムは複数の画像に分散した会話をしやすくすることに重きを置いてデザインされている.Lock-on-Chatは学術会議において発表中に聴衆が会話するためのシステムとして運用された.Lock-on-Chatが局面に応じてさまざまな使われ方がされる様子,多くの参加者が活発に議論する様子が観察された.
著者
水島 司
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.36-38, 2007
被引用文献数
1
著者
平元 綾子 角谷 和俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.257-268, 2007-02-01
参考文献数
22
被引用文献数
3

本研究では,ユーザのオンライン地図に対する操作から意図を抽出し,Web検索を行う方式を提案する.ユーザが意図をもってズームイン,センタリングなどの地図操作を行う場合,ある程度パターンの決まった操作列を検出することが可能であり,その操作を解析することによりユーザの操作意図を抽出することが可能であると考えられる.本論文では,ユーザの意図検出のための基本的な操作列を定義し,その操作列を用いた検索アプリケーションについて述べる.各検索アプリケーションでは,抽出した意図に基づきクエリを生成し,操作意図に合ったWebページを提示する.また,提案した方法に基づき構築したプロトタイプシステムについて述べる.プロトタイプシステムでは,ユーザの地図操作を解析し,定義した操作列との比較を行い,Webページを検索する機能を実装している.更に,定義した操作列,抽出した意図,及び生成されるクエリに対する評価実験と考察について述べる.
著者
平松 薫 小林 堅治 Ben Benjamin 石田 亨 赤埴 淳一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.3314-3322, 2000-12-15
参考文献数
14
被引用文献数
7

インターネット上における地図を媒体とした情報提供方法は,都市に関連したホームページを提供するサービスにおいて数多く利用されているが,今後予想されるホームページ数の増加や地理的な集中に対処するためには検索機能との統合が必須である.そこで,都市に関する大量のホームページを効率的かつインタラクティブに検索できるようにするため,地図を利用した多角的な検索機能をホームページの検索に組み入れた地図インタフェースを提案する.本地図インタフェースでは,検索機能として近傍検索,カテゴリ検索,およびキーワード検索を取り入れ,検索結果を地図上に重ね合わせて表示することによって,実世界に即した情報利用を可能にする.また,動作中にクライアント側へ転送したデータをキャッシュとして利用することで,クライアント側の地図インタフェースとサーバ上の情報検索システムとの間で検索処理の分散を図り,地図インタフェースからのインタラクティブな検索を実現する.実際にデジタルシティ京都において地図インタフェースの公開運用を行い,公開用データを利用した性能評価とアクセスログに基づいたユーザの利用状況の分析を行ったところ,検索要求に対する即応性とキャッシュデータを活用するシステム構成の有効性を確認することができた.Online map systems have been used extensively to provide living cityinformation on the Internet.However, because of the spatial limitations of geographically-basedvisual representation, such systems can not deal with the anticipatedexplosive growth in the number of Web pages; such growth results inareas on the map with an over-concentration of links. In this paper, we propose a map-based user interface which integratessearch functions that evaluate Web page contents and the geographicalinformation located therein. This interface enables neighborhood search, category search, andkeyword search. The search results, which are hyperlinks to the searched Web pages are superimposed as icons on a map image. In addition, the interface utilizes enables users to searchinformation interactively by caching the transmitted data so as todistribute search processing between client and server. We also present performance evaluations and user access analysesof this map-based user interface on Digital City Kyoto which providesregional information to the public on the Internet.The results show the effectiveness of using a system configured toutilize cached data and respond quickly to search requests.
著者
尾身 朝子 時実 象一 山崎 匠
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.133-143, 2005
被引用文献数
5 3

電子ジャーナルのオープンアクセスの動きは米国の国立衛生研究所(NIH)の助成研究成果論文公開の方針で新しい段階を迎えた。NIHは2004年9月に助成研究の成果については,論文刊行後6か月以内にNIHの電子ジャーナルサービスPubMed Centralにその最終原稿の電子版を提供し,無料公開するように求める提案を行い,同時に公開意見募集を行った。その結果を受け,2005年2月に最終方針を発表したが,そこでは出版社の意向を汲(く)んで論文刊行後12か月以内に変更された。この方針は2005年5月2日から実施される。この方針が生まれるに至った経緯や影響を与えた各種運動,またこの提案・方針に関して関係団体や学会・出版社の意見などを解説した。さらにわが国の学会出版への影響についても論じた。
著者
鹿毛 雅治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、教師の授業中における評価的な思考 (「教育的瞬間」 の把握・判断) を取り上げ、それを支える心理的メカニズムについて主に動機づけ研究の立場から検討を行った。質問紙調査、談話分析、協同的アクションリサーチを実施した結果、授業中におけるひとり一人の子どもの具体的な学習、授業者である教師の意図や考えを重視してそれを同僚が共有するような「当事者主体型授業研究」が、教師の意欲を高めると同時に「教育的瞬間」の把握、判断の基盤となる教師の態度を培う可能性が示唆された。
著者
佐野 可寸志 ウイスニー ウイセットジンダワット
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

事業所の立地においては、立地場所固有の属性だけでなく、空間効果の影響も大きいが、これまで十分な研究の蓄積されていない。本研究ではまず、独自の調査データに、因子分析と強分散構造分析を適用し、事業所の移転要因を抽出した。次に、Mixed Logit Modelを用いて空間効果を考慮した事業所の立地選択モデルを構築し、空間効果の影響を定量的に把握した。東京都市圏物資流動調査データを用いてモデルのパラメータを推定した結果、通常の立地選択モデルで用いられる地価や交通のアクセスビリティーの要因に加えて、確定項における企業立地相関や、誤差項におけるゾーン間の空間相関が、立地選択に影響を与えていることが分かり、空間効果を考慮することの重要性を示すことができた。
著者
林 良博 小川 健司 九郎丸 正道
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

まず、ハタネズミ精子がマウスとハムスターの卵子以外の異種動物の卵子透明帯を通過できるか否かを検討した結果、ラット、マストミス、スナネズミの卵子透明帯は通過できないことが明らかとなった。一方、同種であるハタネズミの卵子透明帯への通過率は、マウスやハムスターに比べ、明らかに低率であった。しかもそれらの卵子はハタネズミ精子が侵入しているにもかかわらず受精していなかった。以上の事実から、この実験系では精子が受精能を獲得していないことが明白となった。次なる実験としてハタネズミの体外受精(IVF;in vitro fertilization)を試みた。精子の前培養時間を30分〜2時間、精子の濃度を前培養時1×10^7cell/ml、媒精時1×10^6cell/mlの設定条件でIVFに成功した。また培養液に1mMのハイポタウリンを加えることによって受精率は高率となり、ハイポタウリンは精子の前培養よりも媒精時に効果があることが示された。それらのIVF卵は培養してもほとんど胚盤胞期まで発生しなかったが、偽妊娠状態になった雌の卵管に移植したところ、正常な産子が作出できた。以上の一連の実験によってハタネズミの最適なIVF条件が確立でき、またこの方法によって作出したIVF卵は正常であることが判明した。さらに、ハタネズミ精子が先体酵素を利用して異種卵子透明帯を通過しているのか否かを確認するため、精子の先体酵素を不活性化して、受精を阻害する酵素(proteinase/hyaluronidase inhibitor)を培地に加えたところ、ハタネズミ同士の体外受精はほぼ完全にブロックされたが、ハタネズミ精子のマウス卵子透明帯通過はブロックされなかった。またカルシウムイオノフォアで先体反応を誘起し、先体内の酵素を放出させたハタネズミ精子であっても、マウス卵子透明帯を高率に通過することができた。したがってハタネズミ精子は、先体酵素を利用しないでマウス透明帯を通過していることが推測された。
著者
塩谷 光彦 三宅 亮介 田代 省平 宇部 仁士 竹澤 悠典
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は、自己集合情報を内包した有機分子を合理設計し、金属イオンの特性を駆使した10 nmサイズの多成分系超分子の構築法を確立し、これらを「エネルギー変換」・「運動変換・伝播」・「物質変換・輸送」といった複合機能を有する超分子錯体システムに発展させることを目指した。その結果、複数の異なる基質分子(反応性有機分子、金属錯体等)の精密配列や変換反応を可能とする超分子反応場を構築し、分子配列の動的過程を世界で初めて観察することに成功した。また、金属イオンの自在配列、光エネルギーを用いた回転運動伝播制御、光駆動型多電子反応のための新しい超分子構造・機能モチーフの創出を達成した。