著者
福森 義宏
出版者
金沢大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

能登半島九十九湾の水深25m付近に生息する無脊椎動物Oligobrachia mashikoiは口も消化管も無く、共生する細菌が化学合成する有機物を利用してエネルギーを獲得する有鬚動物である。宿主のヘモグロビンは細胞外に存在し、分子量が約45万と巨大であり、酸素だけでなく共生細菌に硫化水素を運搬するという特徴ある機能を有している。本研究では巨大ヘモグロビン複合体の結晶化と立体構造の解明により超分子複合体形成の生物学的意義を解明することを目的に、本タンパク質の結晶化とX線結晶構造解析を試みた。その結果、(1)Oligobrachia mashikoi巨大ヘモグロビンの結晶を得るために様々な条件でハンギングドロップ法を用いて結晶化に取り組み、前年度より大きな結晶を得ることに成功した。(2)京都大学理学部三木邦夫教授との共同研究により、同結晶をガラスキャピラリに封入し、室温でのX線回折実験を行った。その結果、最大で4Å前後の回折像が観測された。しかしながら、室温での測定でもありX線による損傷のため、フルデータを収集するには至らなかった。一方、鹿児島湾に生息する有髭動物Lamellibrachia satsumaはOligobrachia mashikoiと異なり、分子量45万と400万の2種類のヘモグロビンを持つ。本研究では、両ヘモグロビンの結晶化を試みたが、分子量45万ヘモグロビンの結晶は得られなかった。一方、分子量400万のヘモグロビンに関しては良好な結晶が得られた。しかしながら、この結晶は温度感受性が高く、また、分子量400万としては、その大きさが微小な為に未だにX線回折像は得られていない。
著者
和田 祐介 日下部 茂
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1-8, 2011-09-06

モデル開発においては VDM-SL や VDM++ といった形式的仕様記述言語を用いることで実行可能な仕様としてテストすることが可能となる.ここでのテストは,実装段階で行うテストと同じようにモデルへの信頼性を高めることが目的である.数学的な証明を用いない軽量な方法でテストを行う場合,テストに使用する入力データを増やし,大量のテストを行うことによって信頼性の向上につながることが期待できる.仕様に対する大量のテストを支援するために我々は MapReduce プログラミングモデルを採用した Hadoop と QuickCheck を用いたフレームワークを導入する.このフレームワークを用いたテストを行い,実行可能な仕様のカバレッジやテストの実行時間を観察する.
著者
石川航平 小倉加奈代 杉山公造
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.32, pp.91-96, 2007-03-22
被引用文献数
1

学際的な領域を学ぶためには多くの書籍を読むことのいわゆる「多読」が必要とされている。多読とは「多くの本をかなりの早さをもって読むこと」である。また多読を単独の学習者が継続することは容易ではない。多読を集団で行うことによって、多読を単独で負担を軽減することができる。多読を集団で行う上でのコミュニケーションを通じて、多読者のコミュニティを活性化させ、多読を支援することによる学習の方法を提供することを研究の目的とする。コミュニティ・サイトにおいては、書籍を効果的に認知する機能を複数設け、膨大なデータベースを体系的に把握することを支援する。To study interdisciplinary fields, we have to read a large number and many kinds of books. Because we can't know all kind of books we have read, it is difficult for a learner to manage vast numbers of books at once. The purpose of this research is to propose a method of studying interdisciplinary fields using communities of extensive reading in which all members can communicate with the other members to support extensive reading. In this research, it is found that: 1. Support for extensive readers' continuous usage is accomplished. According to the result of the questionnaire, the system promotes communication and encourages the user to continue using the system. In addition, it is suggested that the book map function raises the interest towards the other users in the community.
著者
大熊 真由美 杉田 克生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.181-192, 2000-02-29

千葉県内の養護教諭76名を対象に,てんかん児の学校生活における現状と対処法についてのアンケート調査を実施した。てんかん発作の発生場所,てんかんのイメージ,てんかん治療薬の副作用,保護者との連携,級友への報告,学校生活での配慮,発作の前兆・誘因,医師との連携についての現状を調査し,現在学校現場ではてんかんについてどのように扱われているのか把握し,てんかん児がよりよく学校生活を送れる為に養護教諭としてどのように配慮していけばよいのか検討した。1) てんかん発作を見た経験については約9割が「ある」と回答し,具体的な場所は「授業中」が約8割と多かったが,その他の回答も多く,てんかん発作は時と場所を選ばず起こり得ることが分かった。2) てんかんという病名のイメージは「不安」約3割,「特になし」約3割であり,社会的に残っているてんかんという病名に対する偏見は今回の調査ではほとんどみられなかった。3) てんかん治療薬の副作用については学校現場では「眠気」が約7割であった。またその他の副作用も少数ではあるがみられ,治療薬により様々な副作用が出現することが分かった。4) 保護者からてんかんであることの報告を受けた経験については「ある」と約9割が回答し,その後の配慮としては「発作時への処置をあらかじめ知ることで心構えができる」と約9割が回答した。逆に報告されずに困った経験としては約4割が「ある」とし,その具体的内容として「学校行事や授業中に発作が起こり大騒ぎになった」と約8割が回答した。てんかんらしいと思われる子供で保護者からの報告がないという経験については「ある」と約7割が回答した。またその理由として「変な目で見られ差別または特別扱いされるのではと過剰防衛的になっていると思われる」が約6割であった。5) 級友への報告については「話す」約4割,「話さない」約5割,「話す・話さない両方」約1割となった。これについてはてんかんの状態,年齢等によって回答は変わると思われた。6) てんかん児の学習傾向については特別な傾向はみられなかった。また,学校行事や運動への参加については「配慮しながら普通にしてよい」が約8割であった。さらに,宿泊行事については約5割が「全員参加させる」とし,その際の注意点として「薬の服用を確認してけいれん発作時の頓服薬を持参させる」が約7割であり,今回の調査ではてんかん児に対し,学校行事への過剰な制限はしていないと思われた。7) てんかん発作の前兆については約8割が何らかの変調を感じていた。また子供の異常に気づいた際の対処として約6割が何らかの対処を行っており,具体的対処法は「担任に連絡して保健室で体ませる」が約6割であった。てんかん児の普段の健康管理については約3割が何らかの指導を行っており,その具体的内容としては誘因と考えられる行動についてできるだけ排除させようとしていることがうかがえた。8) てんかん児の対応についての医師との連携については「とっている」約3割,「とっていない」約4割、「とっていないがとりたい」約3割であった。具体的にどのようなことで連携を図りたいとしているかについては「生活全般」,「発作時の対応」が約7割で多く,養護教諭が積極的にてんかんに対しての知識を深めていこうとする姿勢がうかがえた。
著者
床井 浩平
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年のグラフィックスハードウェアの特徴である高度な並列演算機能とプログラム可能性を形状処理に効果的に応用するための,対象の粒子によるモデル化手法の開発を行った.また,グラフィックスハードウェアの中心的な構成要素であるラスタライザを形状処理における干渉問題に応用する手法の開発を行った.
著者
佃 洸摂 中村 聡史 山本 岳洋 田中 克己
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3471-3482, 2011-12-15

映像の編集や検索を行う際に,ある人物がより視聴者の注目を集めている映像を検索したいということはよくある.また,現在視聴している映像の関連映像として,登場人物の活躍パターンが似ている映像を推薦してほしいということもよくある.しかし,映像に登場する人物がどの程度視聴者の注目を集めているかは,映像のテキストデータや画像解析だけでは判断できないことが多く,視聴者の反応に基づいて注目されている人物を推定する必要がある.そこで本稿では視聴者の反応として映像の再生時刻に沿って付与されたコメントを用いて,映像に登場する人物が視聴者の注目を集めているシーンの推定と各シーンにおける各登場人物の活躍の度合いの推定を行う手法の提案をする.ただし,本稿ではニコニコ動画に投稿された映像の中で,コメントが一定数以上付与された映像に登場する,視聴者に名前が広く知れわたっている人物を対象とする.When a user edits or searches a video clip, he/she often hopes to extract a scene or search video clips in which a character is active. Moreover, he/she also often hopes to be recommended a video clip that has a similar activity pattern of characters as a relevant video clip that he/she is watching. However, it is difficult in many cases to judge the active characters from only text data or image analysis. We estimate the degree of attention based on viewers' reaction. In this paper we use comments posted to a video clip as the viewers' reaction. We propose a method to estimate the spotlighted scenes of each character in a video clip and the degree of it. We especially target video clips that is uploaded to Nico Nico Douga and a character whose name is known widely.
著者
Shinohara Ryota Thumkeo Dean Kamijo Hiroshi Kaneko Naoko Sawamoto Kazunobu Watanabe Keisuke Takebayashi Hirohide Kiyonari Hiroshi Ishizaki Toshimasa Furuyashiki Tomoyuki Narumiya Shuh
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Nature neuroscience (ISSN:15461726)
巻号頁・発行日
2012-01-15
被引用文献数
96

神経細胞の配置メカニズムを解明-抑制性神経前駆細胞に特有の移動の機構が明らかに. 京都大学プレスリリース. 2012-1-16.
著者
廣瀬 敬 藤野 清志
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、マントル最下部に相当する超高圧実験を行うことにより、ペロフスカイト/ポストペロフスカイト相の安定領域、熱弾性的性質、元素分配などを明らかにすることを目的としている。今年度はより高い温度を発生することを目的とした技術開発を精力的に行い、150万気圧において4500ケルビンに至る高温の発生に成功した。これまでメガバール領域(100万気圧以上)で4000ケルビン以上の実験結果が報告されたことはなく、135万気圧3000-4000ケルビンにあるとされるコア・マントル境界域の超高圧高温の発生に世界ではじめて成功したことになる。このような世界をリードする実験技術により、今年度は放射光施設スプリングエイトにおいてX線を用いたMgSiO3組成におけるペロフスカイトとポストペロフスカイトの相転移境界を4500ケルビンまでの超高温下で決定することを試みた。その予察的な結果は、マントルの底における相転移温度は3400ケルビンと、従来の推定よりもはるかに温度が低いことを示している。マントル最下部における地震波の二重不連続面の存在により、マントルの底はペロフスカイト相が主要鉱物であると考えられる。すなわちその温度はポストペロフスカイトからペロフスカイトへの相転移温度よりも高いことが示唆されており、今回の結果はコア・マントル境界の温度を制約する重要なデータになりうる。今後、より詳細な検討が期待される。
著者
波照間 永吉 久万田 晋 波平 八郎 柳 悦州
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成23年度~25年度の研究期間内において、鎌倉芳太郎ノート全82冊の撮影とデジタルデータ化を完了した。また、紅型型紙資料の赤外線撮影を完了した。これらの成果に基づいて鎌倉芳太郎資料の公開用ホームページ編集作業を進めた。その内訳は、刊行済みノートのオリジナル写真4371点、鎌倉芳太郎撮影写真1113点、紅型型紙1414点である。これらに基づいて検索機能付き公開用ホームページを作成、公開した。またこれらの成果の一部を『鎌倉芳太郎資料「文書資料」目録』として刊行した。
著者
Hiroyuki Tsutsumi Yoshifumi Kinoshita Takashi Sato Takashi Ishizu
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1008-1015, 2011-08-01 (Released:2011-08-01)
参考文献数
28
被引用文献数
12 13 5

Crystals of the complexes of (+)-catechin (CA) of non-galloylated catechin and (−)-catechin-3-O-gallate (Cg) of galloylated catechin with caffeine were prepared, and their stereochemical structures and intermolecular interactions were determined by X-ray crystallographic analysis. CA formed a 1 : 1 complex with caffeine by intermolecular hydrogen bonds, whereas Cg formed a 1 : 2 complex with caffeine, which was formed by face-to-face and offset π–π interactions and intermolecular hydrogen bonds. A solution of two kinds of non-galloylated catechin, CA and (−)-epicatechin (EC), and caffeine (molar ratio 1 : 1 : 2) in water afforded a 1 : 1 : 2 complex, the crystal structure of which had two layers, one layer in which CA and caffeine formed alternate lines and an other layer in which EC and caffeine formed alternate lines. The 1 : 1 : 2 complex was formed by offset π–π and CH–π interactions and intermolecular hydrogen bonds.
著者
馬場 良二 和田 礼子 木部 暢子 甲斐 朋子 木部 暢子 島本 智美 甲斐 朋子 吉里 さち子 田川 恭識 嵐 洋子 平田 真理子 木下 泰臣 (きのした) 船本 日佳里 田中 翔太郎
出版者
熊本県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

外国人留学生が日本で勉学や研究にいそしむには、日常的な生活を円滑に行うことが大切です。そのためには、クラスメートや研究室の日本人、そして、アルバイト先の同僚や上司と日本語で円滑にコミュニケーションをとる必要があります。地方中核都市、ここでは熊本市内に住む外国人留学生を対象に、生活の基盤となる熊本市内方言を学習するためのテキストとそのテキストの会話や練習の音声を作成しました。
著者
野上 貞雄 松本 淳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

犬における主要な寄生虫症である犬糸状虫症の免疫学的診断法のターゲットとなっている循環抗原の詳細な解析を行い、診断法の改良と疫学調査を行った。
著者
Takahiro KOMATSU Hidetomo IWANO Masashi EBISAWA Ai WATABE Yoshifumi ENDO Kazuko HIRAYAMA Hiroyuki TANIYAMA Tsuyoshi KADOSAWA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1201050749, (Released:2012-01-10)
被引用文献数
2 4

Cytological diagnosis is not generally conclusive enough to identify histopathological malignancy in canine mammary tumors (CMTs). To establish cytological examination using fine needle biopsy (FNB) samples, gene expressions of hormonal receptors, human epidermal growth factor receptor 2 (HER2), and transcription regulators (Special AT-rich binding protein 1: SATB1 and Snail) were investigated in both tissue and FNB samples of CMTs. In tissue samples of malignant CMTs, especially invasive ones, low expressions of hormonal receptors and high expressions of SATB1 and Snail were detected. On discriminant analysis of tissue samples, 73.2% of CMTs were correctly classified according to histopathological examinations. In FNB samples of malignant CMTs, low expressions of hormonal receptors were detected. On discriminant analysis of FNB samples, 74.2% of CMTs were correctly classified according to histopathological examination. In conclusion, FNB gene expressions had a utility for diagnosis of CMTs malignancy in some degree. By researching more sensitive genes for malignant CMTs, the gene examination of FNB samples from CMTs will become a useful diagnostic tool that can be performed easily without anesthesia and could predict tumor malignancy and invasion prior to surgical removal.
著者
中園 明信
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

まず本研究ではシロアマダイとキアマダイの天然標本について、雌雄の別、体長、年齢、成長を比較した。その結果、これらの2種のアマダイ科においても雄が大型であること、雌と雄の中間の体長の雄個体で精巣卵が高頻度で出現することが判明した。これらのことから雌から雄への性転換が示唆されたが、周年にわたり比較的多数の生殖腺を調べたにも関わらず、機能的な卵巣から精巣へと転換中の組織像を示すものや、もと卵巣であったことを示す二次精巣は認められなかった。すなわち、これらの2種のアマダイ科魚類が性転換している可能性は低いと考えられる。次に雌雄による体長差であるが、耳石による年齢査定と成長についての検討を行った。アマダイ科魚類の耳石は年齢形質が読みとりにくく、正確にはさらに検討が必要であるが、現在までのところ雄の方が明らかに成長が早いことが明らかになった。すなわち、この両種で雄の方が大型であるという結果が得られたのは、雌雄の成長差によるものと思われる。さらに、精巣卵の出現であるが、日本栽培漁業協会若狭湾宮津事業場で種苗生産されたアカアマダイ稚魚の生殖腺を追跡調査した結果、アカアマダイは幼時にはすべて卵巣様生殖腺持つことが明らかになった(奥村・中園、未発表)。その後、一部の個体で卵巣組織にかわって精巣組織が発達し、残りの個体ではそのまま卵巣組織が成熟するものと考えられる。すなわち、アカアマダイでは雌雄同体性は見られるが、それは幼時のみである。比較的小型の雄で精巣卵が高頻度で認められるのは、恐らく幼時の卵巣の卵母細胞が発達しつつある精巣内に取り残されたものではないだろうか。事実、精巣卵は退化的傾向が強く分裂像や成熟している像は認められなかった。本研究の重要な成果は、アカアマダイの産卵行動を観察できたことである。アカアマダイは夜明け前に雌雄がペアになり産卵した。さらに、従来分離浮性卵とされていた本種の卵は、産卵直後には粘液に包まれていることが判明した。申請者らは研究発表の欄に記載したように、多くの魚の産卵行動を調べているが、アカアマダイのように粘液に包まれた浮性卵は極めて稀である。この粘液は2、30分の内に消失したが、この粘液が受精にどの様に関与するか詳細に検討することにより、受精率向上につながるものと思われる。