著者
安藤 寿康 福士 珠美 佐倉 統
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.324-330, 2009-06-01
被引用文献数
1

学術研究の表現はともすれば無機質である。それがどれだけ血の通った人間を対象としていても,そこに求められるのは客観的な科学的現象の記述であり,個人を超えた普遍性を持つものでなければならない。かくして学者の書く論文の文章も,話す講義も,抽象化され非個性化されたことばで埋め尽くされる。科学的厳密さの前に,人間の心のなまめかしいうごきは封印されるのである。仮にその科学がどれだけ心のなまめかしさを扱っていようとも。だがこのことは研究者が人を対象とした実験を行う現場でも無機質に振る舞ってよいことを正当化しない。研究者も被験者もそれぞれが生きた人間であり,実験室はそのような生きた人間同士が出会う場である。研究倫理とは,そうした研究場面という特殊な人間関係や契約関係が作り出す葛藤に生まれる問題である。倫理判断は原則として法に基づくものではなく,基本的に人倫に関する当事者たちの良識に基づくものであり,研究領域ごと,あるいは研究施設ごとに,様々な慣習的手続きが作られている。
著者
鈴木 勲 川島 芳昭 石川 賢
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2007-07-01

「理科」は形式的には全学共通教育関係科目・教養教育科目の選択科目としての自然科学系科目の一つであるが、小学校一種あるいは二種を取得するため必修科目でもある。したがって、教育学部学校教育教員養成課程の学生には必修科目であり、多くの教育学部学生が「理科」に履修登録をすることになる。学習指導要領小学校理科の目標には「科学的な見方や考え方を養う」とあるが、後期の文系向け「理科」の受講者約100名のほとんどは「科学的な見方や考え方」とは距離をおいてきた学生である。平成17年度から、率先して後期「理科」にe-ラーニングを試みたのは、授業者の力不足から後期「理科」受講生に「科学的な見方や考え方を養う」ことが機能しなかった現実との溝を多少とも埋めることを期待したからである。
著者
光原 弘幸 森山 利幸 山田 佳幹 金西 計英 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.191-200, 2010
被引用文献数
4

本研究では,ノートテイキング支援として,AR(Augmented Reality)技術を用いてノートとデジタル教材を融合するPaper-Top Interface(PTI)を設計・開発する.PTIは,ノートの各ページに貼付したビジュアルマーカをビデオ映像から検出・認識し,対応するデジタル教材をプロジェクタでノートに投影する.これにより,学習者は授業中に教材内容を書き写さなくてよくなり,学習内容をアノテーションとしてノートに書き留めることが促進される.比較実験から,PTIがノートテイキングの負担を軽減し,学習者に受け入れられることが示唆された.
著者
堀内 聡
出版者
久留米大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

以下の目的を達成するために研究3を実施した:ストレスマネジメント行動を行うことに対するセルフエフィカシー、意思決定バランス、および変容プロセスがストレスマネジメント行動の変容ステージ移行を予測するか否かを縦断的な調査により検証する。全米からproactiveにリクルートした、ストレスに関連した症状(頭痛など)を経験したことのある者1085名を対象とした。このサンプルは主に女性、白人で構成されている。このうち約半数はエキスパート・システムとワークブックを利用した介入を受けている。介入の期間は6ヶ月であり、フォローアップは1年間である。介入前、その6ヶ月、12ヶ月、および18ヶ月後に、変容ステージ、変容プロセス、意思決定バランス、および自己効力感の尺度に回答している。ベースライン時のそれぞれの変容ステージごとに、ベースラインからその6ヶ月までの変容ステージの変化にもとづいて、対象者をステージが進んだ者(前進群)、変わらない者(残留群)、および後戻りした者(後退群)に分類した。前熟考期と維持期については、それぞれ後退群と前進群がないため、2群に分類した。この上で、3または2群の間で、ベースライン時点における変容プロセス、意思決定バランス、および自己効力感の得点を比較した。以上のような分析の結果、以下の点が示された:(1)前熟考期では、体験的・認知的プロセス、恩恵、および自己効力感が重要である。:(2)熟考期と準備期では、TTMの要因ではなく、ストレスが重要である。:(3)実行期および維持期では、行動的プロセス、体験的・認知的プロセス、および自己効力感が重要である。
著者
李 善愛
出版者
宮崎公立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、日韓両国のアマ(海士・海女)の地域別、年齢別、漁業活動について比較考察することで、東アジア沿岸地域の持続可能な資源管理や漁場利用のための民俗知モデル構築を試みた。
著者
In-sok Hwang Juneyoung Lee Dong Gun Lee
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1602-1608, 2011-10-01 (Released:2011-10-01)
参考文献数
36
被引用文献数
8 13

Cruciferous vegetables contain glucobrassicin which, during metabolism, yields indole-3-carbinol (I3C). The aim of this study was to find whether indole-3-carbinol caused apoptosis and its mechanism in Candida albicans. We found that treatment of Candida albicans with indole-3-carbinol significantly increased the reactive oxygen species and hydroxyl radical accumulation. The hydroxyl radical is one of the most active components of oxygen, and it is the end product of an oxidative damage cellular death pathway. We investigated the general phenotypes of apoptosis and then investigated whether there were other distinct markers of apoptosis. Furthermore, the effects of thiourea as a hydroxyl radical scavenger and protective effect of trehalose, which is the result of the fungal immune system, was also assured. This study indicates that indole-3-carbinol has apoptosis effects, including a production of hydroxyl radicals, cytochrome c release and activation of metacaspase. Both hydroxyl radicals and metacaspases triggered apoptosis in Candida albicans.
著者
大勝 靖一 藤原 貴文
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.87-93, 2007
被引用文献数
3 9

ヒンダードアミン光安定剤ニトロキシド(HALS NO)とフェノール系酸化防止剤の拮抗作用を検討した。両者の反応生成物を詳細に検討したところ,HALS NOからはそれが還元されたHALSヒドロキシルアミン(HALS NOH)およびHALSアミン(HALS NH)が生成し,一方,フェノール,たとえば2,6-ジ-<i>t</i>-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)からは主にそのキノンメチドおよびスチルベンキノンなどが生成することが分かった。これらの生成物は初めての発見である。この結果に基づいて,新しいHALS NOとフェノールの拮抗作用が提案される。HALS NOは2分子間の電子移動反応によってHALSニトロソニウムとなる。このニトロソニウムは強い酸化力を持ち,フェノール,たとえばBHTをキノンメチド,そして最終的にスチルベンキノンに酸化し,無益に消費する。一方,HALS NOはHALSアミンおよびHALSヒドロキシルアミンへ還元される。<br>
著者
内山 郁夫
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.266-269, 2002 (Released:2002-11-23)

MBGD is a database system for making use of rapidly accumulating microbial genome sequences through comparative analysis. The basic function of MBGD is to create an orthologous gene classification table, which comprises sets of "equivalent" genes among multiple genomes. In MBGD, classification tables can be created on demand with specified set of organisms and parameters. This feature becomes important to understand diversity of genomes using almost a hundred genome sequences now available.
著者
高取 聡 起橋 雅浩 北川 陽子 福井 直樹 岡本 葉
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

多岐にわたる加工食品を高脂質食品、低脂質食品、準農産物、ノンアルコール飲料及びアルコール飲料に分類して、これらに適用できる迅速かつ簡便な残留農薬一斉分析法を構築した。当該分析法を活用して市場に流通する加工食品中の残留農薬を分析した結果、食品衛生法の基準を超過する農薬を含む加工食品を検知し、販売者に自主回収を促した。また、消費者からの要請に基づいて風味異常を呈した食品から原因と推察される農薬を検出し、当該分析法の実用性を証明した。
著者
阿部 曜子
出版者
四国大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、グレアム・グリーンが、メディアに強い関心を持ち、メディアを戦略的に使ってきたことに注目し、その表象の在り方を考察するものである。グリーン研究の中では、周縁的な資料とされさほど論じられては来なかったが、グリーンは膨大な量の投書を新聞や雑誌に送り続け、また数多くの映画批評を書いてきた。時代的言説空間を視野に入れつつ、それらを分析・検証することにより、グリーンが大衆文化装置としてのメディアの力学を熟知し、それらを巧みに取り入れ自らの領域としていたことなどを明らかにする。
著者
有吉 誠一郎 田井 野徹 寺嶋 亘 大谷 知行
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、超伝導トンネル接合素子(STJ)の新しい作製法を用いて究極感度の検出デバイス実現へ向けた技術的基礎を築くことにあった。具体的には、従来の多結晶成膜法(スパッタ法)に代わり、単結晶成膜法(分子線エピタキシー法)を導入し、原子層レベルで平坦なトンネルバリア界面を形成することで超低雑音特性をもつAl系STJ素子の作製技術を検討した。まず、Al単層膜の成膜時にはAl203(oool)とsi(111)の2種の基板を用いた。反射高速電子線回折(RHEED)や原子間力顕微鏡等を用いて薄膜の結晶性と平坦性を多角的に評価した結果、平坦性と結晶性の両立の観点から成膜時の基板温度は約100℃が適していることが分かった。次に、MgOをトンネル障壁とする3層膜をSTJ素子に加工し0.3Kに冷却して電流電圧特性を評価した結果、STJ素子の臨界電流密度は15.5~ll7A/cm2、素子品質の指標の一つであるR、g/R、は4.0~60.2であり、良好な特性を有する3層エピタキシャルSTJ素子を実現した。
著者
渡邊 彩 島谷 まき子
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学生活心理研究所紀要 (ISSN:18800548)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-47, 2005-03-31
被引用文献数
1

This fundamental study investigated if picture appreciation could be established as a form of psychotherapy by focusing on changes of feeling as an index of the mental effect of picture appreciation, in addition to the language description method, which is a form of picture appreciation therapy. Participants were 30 males and 30 females. We examined whether the mental effect differed depending on the type of picture, its impression and participants'taste. Seven factors were extracted by factor analysis of measures of current feelings. Results indicated that when the impression created by a picture was positive, the mental effect of picture appreciation changed positively regardless of the type of picture.
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-46, 2010-07-31
被引用文献数
1

本論文では,抽象絵画における直線表現要素の違いと印象評価の関係を検証し,併せて,病院空間に展示された場合の印象評価について比較検証することを目的とする。方法は,直線表現の異なる抽象絵画を用いた画像を鑑賞し,得られた印象評価の評定値について分析を行った。これにより,傾きのある直線・長方形を強調したマレーヴィチ絵画は,"イライラする""激しい""動的な"という印象評価が大きくなった。境界を強調しないロスコ絵画は,"穏やかな""退屈な""静的な""リラックスした"という印象評価が大きくなった。垂直線・水平線を強調したモンドリアン絵画は,"軽い"という印象評価が大きくとなった。また,病院空間という特有の空間に絵画が展示されると,直線表現要素の違いによって固有の印象評価に差が生じた。この研究結果から,抽象絵画における直線表現要素の違い(垂直線・水平線・斜線)が印象評価に影響することが示唆された。
著者
大森 美津子 小野 幸子
出版者
香川医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

1.ビハーラ安芸に所属する僧侶1名、ビハーラ花の里病院に勤務している僧侶1名とこの病院でビハーラ活動を行っている「広島県北部会と三次活動の会」の会長に面接を行い、ビハーラ活動の実態について調査した。調査の内容は、ビハーラ活動のきっかけ、組織と運営、目的、対象の選定、活動の場・内容・頻度、活動の評価、今度の課題についてであった。2.179名の一般の人々を対象とした宗教的なニーズとケアに関する意識調査をした結果、(1)保健医療施設に入院または入所時に、宗教的な活動の場が必要と考えた者は3割弱であり、考えなかった者は3割弱であり、残りの約半数近くはわからないであり、(2)必要に応じて関わることのできる宗教家がいて欲しいと考える者は約3割、考えない者は約2割であり、わからない者は約半数であった。(3)宗教家に求めるケアの内容は「心のケア」「心の安らぎ」「死の受容」「専門的な教えや会話」などであった。(4)予後不良の病気に罹患した時に宗教家の関わりを希望する者は約1.5割であった。(5)信仰する宗教がある者の内、予後不良の病気に罹患した時に、宗教的活動を続けることを望む者は約6割であった。詳細については報告書で報告する。