著者
石川 玲 香川 幸次郎 伊藤 和夫 小野 洋一 伊藤 日出男 対馬 均 進藤 伸一 菅原 正信 三浦 孝雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.433-438, 1988-09-10

寒冷や積雪が在宅脳卒中後遺症者の生活に及ぼす影響について検討するために, 青森県内2ヶ町村の在宅脳卒中後遺症者115名を対象に実態調査を行った。更に3年後39名について追跡調査を実施し, 以下の結果を得た。(1)非積雪期の生活で何等かの訴えを有する者は18%であったが, 積雪期では60%以上の者が訴えを有していた。(2)非積雪期の訴えは夏ばてや付添い者の多忙により通院できない等訴えの内容が多岐にわたっていたが, 積雪期では外出の制限や身体症状の増悪に関することに集中していた。(3)非積雪期での主な外出先は医療機関, 福祉・保健センター, 友人宅, 散歩であり, 積雪期では友人宅や散歩に出かける者が減少する反面, 医療機関や福祉・保健センターに出かける者の数は減少していなかった。寒冷や積雪は対象者の生活に多大な影響を及ぼしているが, 冬の外出は自己の行為に対する意味づけの軽重に規定されると考えられた。
著者
日浦 勉 工藤 岳 笠原 康裕 彦坂 幸毅
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1、ミズナラの最大光合成速度は温暖化処理によって変化しなかったが、窒素含量は低下したため窒素利用効率は上昇した。イオン交換樹脂法によって土壌中の無機体窒素量がどのように変化したかは現3定量中である。2、葉中の窒素含量の低下と硬さの指標が上昇したため、植食性昆虫による食害は低下した。3、ミズナラの堅果生産量は枝の温暖化処理によって3〜5倍に上昇した。そのメカニズムは今のところ不明である。4、土壌中のバクテリアの量や組成は2年間の実験では変化が見られなかった。5、林床植物の総植被率は、林冠閉鎖が完了する6月中旬に最大となり、その後低い値で安定する傾向が見られた。林床に到達する光エネルギーとの対応関係が示された。夏緑性植物の地上部生育開始時期は、温暖化により早まる傾向が見られたが、その程度は種により異なっていた。一方で、秋の生育終了時期には明瞭な違いが認められなかった。すなわち、生育初期に温暖化の効果が大きいことが示された。半常緑性植物のオシダの越冬葉は、温暖区ではほとんどが冬の間に枯死していた。これは、温暖区では積雪がほとんどないため凍害による損傷が強かったためと考えられた。さらに、当年シュートの伸長は温暖区で遅くなる傾向が見られた。越冬葉の損失により、新葉生産のための養分や資源転流がなくなったことが影響していると予測される。土壌温暖化による積雪環境の変化は、冬期の越冬環境を変化させ、植物の生育にマイナスの効果をもたらす可能性が示唆された。以上の結果より、温暖化が植物にもたらす影響は、種や生活形により多様であることが示された。温暖化の影響予想には、個々の植物が有する生理特性を考慮する重要性が示された。
著者
池田 大樹
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

【研究目的】睡眠短縮(5時間睡眠)時において、自己覚醒が起床直後の睡眠慣性と日中の眠気に及ぼす影響を検討した。【研究方法】自己覚醒習慣のない労働者15名(平均年齢40.5歳,27-49歳)を対象に実験を実施した。実験は、参加者宅での3目間の生活統制(5時間睡眠)と1日の実験室実験からなっていた。生活統制期間は就床前と起床後に主観的・行動的眠気を測定した。また、実験室実験時は、1時間おきに主観的・行動的・生理的な眠気を測定した。なお、生活統制期間中は、毎朝目覚まし覚醒あるいは自己覚醒した。その後、再びもう一方の覚醒方法で自宅での3日間の生活統制と実験室実験を実施した。【研究結果】睡眠短縮により、起床直後や日中に強い眠気が認められた。一方で、自己覚醒すると、目覚まし覚醒した時と比べて、起床後や日中の覚醒度(ヴィジランスパフォーマンス)が高かった。このことから、自己覚醒は覚醒維持能力を高める可能性が示された。【意義】夜型化が進む現代社会において、人々の睡眠時間は減少している。特に労働者の中には、残業や交代制勤務などにより睡眠時間を十分に確保できない者も少なくない。そのようななか、睡眠不足はQOLの低下だけでなく,労働意欲の減退や就労場面での健康と安全を阻害する問題につながる。これに対して、本研究の結果から、自己覚醒は睡眠時間が短い場合でも睡眠慣性や日中の眠気予防に有効であることが示された。
著者
森本 孝之
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

まず,金融データの価格変化における飛躍の検出を研究し,米国同時多発テロ事件, 米連邦準備制度理事会の公開市場操作,日銀の外国為替平衡操作を取り上げ,市場への情報流入が価格変化にどのような影響を与えるかを分析した.さらに,高頻度収益率に生じる市場のミクロ構造ノイズを共分散行列から除去する効率的な手法の開発を研究し,ランダム行列の最大固有値の漸近的性質に着目し,そのノイズに対する統計的仮説検定を提案した.
著者
小林 偉昭 高橋 修 新田 哲二
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.779-780, 1988-09-12

INTAP(財団法人情報処理相互運用技術協会)の試験検証センターは,通産省の指導のもとに1987年9月に設立され,多くの会社の協力を得て次のような活動を行なっている。(1)情報処理システムのOSI(Open Systems Interconnection)規約準拠性を確認する。(2)情報処理システムの相互接続性を促進する。ここでは,その活動の一つであるコンフォーマンス試験方法の検討状況及びODA/ODIFに対する考察を紹介する。
著者
川添 尭彬 楠本 哲次 土佐 淳一 更谷 啓治 田中 昌博
出版者
大阪歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

前年度までに,咀嚼機能を診査・診断するにあたり,一般的に利用されている被験食品(チ-ズ,カマボコ,タクアン,ボンタンアメおよびスルメ)の機械的特性,すなわちテクスチャ-を定量化し,正常者における咀嚼機能との関連を明らかにした。今年度は,同じ被験食品を用いて,顎機能異常患者における嚥下閾までの咀嚼機能,特に嚥下までに要した咀嚼時間および咀嚼回数について分析を行い,正常者の結果と比較・検討した。その結果,1.顎機能異常患者では,どの被験食品でも正常者と比べて,嚥下までに要した咀嚼時間および咀嚼回数は増加していた。2.また,多変量解析を応用した統計処理の結果。顎機能異患者では,テクスチャ-のうち特にガム性の影響を咀嚼機能に強く与えていた。上記のことが明らかとなった。さらに,嚥下はできないが被験食品として一般的な市販ガム(ロッテ社製グリ-ンガム)について,チュ-イングによるガムのテクスチャ-の経時的変化を測定するとともに,正常者においてガムチュ-イング時におけるテクスチャ-の変化が咀嚼運動に及ぼす影響を分析し,以下の結果を得た。1.チュ-イングによってガムは,硬さだけが変化するものではなく,凝集性や粘着性などさまざまなテクスチャ-が,複雑に絡み合って変化していることが明らかとなり,その変化は,咀嚼運動にも大きく影響を及ぼすものであるため,以後,ガムを用いて咀嚼運動を分析する場合,どの時点でのデ-タであるのかを明確にするべきである。なお,詳細については,研究成果報告書を参照されたい。
著者
堀之内 武 渡辺 知恵美 塩谷 雅人 石渡 正樹 小高 正嗣 西澤 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 地球流体科学における数値データのネットワーク利用を促進し, 同分野での情報爆発問題の解決に資するための共通基盤ソフトウェアGfdnaviを開発している. 平成20年度は以下を実施した.数値データと知見情報の融合的なデータベース化 : 昨年度開発した, データ解析で得られた可視化結果等をもとに科学的な知見を文書化しアーカイブし研究や情報公開に役立てる機能を, 強化した. 数値データおよび解析履歴と密接に結びついたブログ/Wikiによる共同研究という, 新しいスタイルでの共同研究をサポートするための提案と基礎開発を行った.Gfdnaviの相互検索・横断利用 : 昨年度より, Gfdnaviのオーバレイネットワークを構築し, 横断的にデータや知見を検索・利用するための手法を研究している. 本年度は, プロトタイプ実装を行った.次年度実装に向けた基礎研究 : 筑波大で開発された, httpベースのファイルアクセスライブラリにおいて地球流体データを扱う際のボトルネックを検討した. その結果今後の改良により, 特別なサーバソフトなしに, Web上に置かれただけの地球流体データをGfdnaviで扱えるようにできる見通しを得た. また, これまで用いていたSOAPによるWebサービスから, リソース志向のRESTfulなWebサービスに切り替えるための検討を行い開発に着手した(今後に継続).実利用の拡充と応用開発 : 2009年に打ち上げが予定されている環境観測衛星SMILESのデータ公開および科学チーム検証サーバにGfdnaviが採用されることになり, 人工衛星データむけの対応を行った(継続).
著者
中野 昌弘
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、不動点帰納法による検証能力の向上、適用可能規模の向上のため、テストに基づく発見的手法により帰納法の仮定を求め(補題発見)、従来手法では自動検証できなかった問題に対しても、自動的な検証を行えるようにすることを目的とする。SMTソルバとしてCVC3を利用して最弱事前条件計算を実装し、補題発見機能と不動点帰納法による不変性自動検証器を実装した。SMTを用いたことや補題の発見、各種手続きの効率化を図ることで、証明力の向上と数十倍程度の高速化を実現し、より規模の大きな問題であっても、自動で証明できるようになった。
著者
坂梨 薫 勝川 由美 臼井 雅美 鍋田 美咲 大賀 明子 永井 祥子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.482-489, 2010-07

韓国の産後ケア施設の現状と課題を明らかにし,日本の新たなサポートシステムとしての産後ケア施設導入の可能性を考える目的で本研究を行った。梨花大学教授,韓国助産師会会長,ソウル助産師会会長のヒアリング,韓国の産褥ケア施設長および施設利用者へのインタビューから,1.産後ケア施設の業種としての位置づけが医療機関ではなく宿泊業に分類されている,2.産後ケア施設は医療機関ではないため,運営においては一般の人々や企業の参入を可能にしている,3.褥婦や新生児に異常が生じた場合,病院や診療所との連携システムが構築されていない,4.新生児を1ヵ所に収容した施設では,新生児に感染症が発症した場合,感染拡大の危険性が生じる,などが課題であることが明らかになった。しかし,利用者の支援内容に関する満足度は高かった。2008年開設された,わが国初の産後ケアセンターも宿泊業と産業分類されており,今後,わが国において産後ケア施設を導入し,拡充していくためには,産後ケア施設先進国である韓国での課題を自国の問題として検討していくことが必要となる。
著者
気谷 陽子
出版者
専門図書館協議会
雑誌
専門図書館 (ISSN:03850188)
巻号頁・発行日
no.244, pp.20-26, 2010-11

筑波大学図書館情報学図書館は、筑波大学附属図書館に設けられている4 つの専門図書館の一つであり、平成14(2002)年10月に、旧図書館情報大学が筑波大学と統合したことによって現在の形になった。筑波大学附属図書館は開館以来、開かれた図書館、集中管理、全面開架を特徴とし、中央図書館を含めて全館が同じ仕組みで運営されている。当館の蔵書は、主として旧図書館情報大学時代に、(1)基礎的情報資料、(2)図書館情報学関係資料、(3)参考図書資料、(4)教育・研究の展開に直接関わる情報資料、を収集することを選書方針に掲げ、第一次から第三次まで実施された資料整備計画および文部省から配分を受けた大型コレクションによって、図書館情報学分野の専門図書館にふさわしい蔵書を目指して整備された。
著者
宗像 惠
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

ピエ-ル・ガッサンディは、古代原子論の復興者として近代科学の成立に貢献すると同時に、古代懐疑論との対決を通して認識論上、実証主義的立場を切り開したことで知られる。他面、彼は人文主義者として、また正統カトリック教会の僧として、近代思想とヨ-ロッパの思想的伝統との調停を図った。本研究の目的は、西洋近代科学の成立の哲学的背景、並びに哲学的意義を、ガッサンディの思想的営為に即して解明することにあった。この研究目的に到題するために、まず、ガッサンディが同時代の思想家達と行った論争を介して、時代の哲学史的・科学史的状況を浮き上がらせることを試みる同時に、古代原子論や懐疑論等の検討を行い、最後に、彼の主著『哲学集成』の検討を、哲学史的・科学史的文脈において行う、という方針を立てた。また、ガッサンディの思想が後代に与えた影響の検討をも併せて行うことにした。以上の研究課題は、短期間で全体的に達成することの困難な、多大なものであったが、デカルトやフラッド等の論争相手との思想の比較、古代原子論者エピクロスの哲学なでに関して、研究を深めることができた。また、ガッサンディ自身の主著の研究も着実に進行中である。未だ論文として発表するには至っていないものの、これらの研究の成果によって、西洋近代哲学全体の流れを展望することが、一段と容易になったと考える。本研究の成果のいわば副産物として、西洋近代哲学の歴史を概観する単行本の計画が現実化しつつあること、また、ガッテンディと並び、形而上学的志向を以て、西洋近代の初めに体系的に自然主義的立場を押し進めたスピノザの倫理政治思想についての研究が進み、発表段階に至っていることを、最後に御報告しておきたい。