著者
吉新 通康 和座 一弘 鶴田 貴志夫 吉新 通康 五十嵐 正紘
出版者
自治医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

米国では、簡便で正確に精神疾患をスクリーニングするNew Prime-MDなる質問票の有効性が報告されている。そこで、日本でもこのNew Prime-MDの利用可能性、妥当性が保証されれば、これを利用して、鬱病の一般プライマリ・ケア外来での受診率、プライマリケアでの場での初期症状をも明らかにに出来ると考えた。また、米国については今までPrime-MDが実施されたデーターを使用した。まず、New prime-MDの日本語訳を作成した。次に都会型診療所1ヶ所、僻地診療所、自治医科大学の地域家庭診療センターの外来患者で一定期間の各診療所の外来患者の中で1)20歳以上、2)痴呆がない、3)緊急患者でない、4)本研究に対して同意の得た患者に対して(各診療所の100人計300人の患者) Prime-MDの記入と診察を終えた患者に対して患者満足度質問票に回答してもらい、質問票の回答を分析して、Prime-MDの日本での利用可能性や各主要精神疾患の受診率や、各主要精神疾患、特にうつ病の初期症状を米国のデーターと分類比較した。また妥当性を検証するために、プライマリ・ケア医師がPrime-MDによって診断し、次にDSM-IVに精通した精神、心理領域の専門家が、上記診療を終了直後にStructured Clinical Interviewに沿って、診断し、上記の2つの診断名の一致率(κ値)を求めた。以上の研究から、以下の新たな知見を得た。1) Prime-MDの利用可能性と妥当性は、日本においても高い。2)主要な精神疾患の受診率は、プライマリ・ケアの現場でかなり高い率である。3)うつ症状の初期症状として、多彩な身体症状を呈する。4)うつの身体症状として、日本では、特異的(腹部症状、肩こり等)なものが存在する。
著者
黒田 治之 千葉 和彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.91-99, 2006-01-15
被引用文献数
3

無剪定状態で管理した樹齢11〜13年生のわい性および半わい性台木を利用したリンゴ'スターキング・デリシャス'樹を用いて, 根の成長に及ぼす栽植密度の影響について検討した.330樹/ha区の根系は太い側根と下垂根で構成されていたが, 3178樹/ha区では主に側根であった.根系幅は栽植密度の増加に伴って減少したが, 隣接樹の根系における交差深度は増加した.3178樹/ha区では隣接樹の根系間で根組織の癒着現象が観察された.根系幅/樹冠幅比は栽植密度の増加に伴って減少し, 根系幅の方が樹冠幅より密度効果を受けやすいことが示された.根重の垂直分布比率は栽植密度による影響が認められなかったが, 1樹当たり根重は各層とも栽植密度の増加に伴って減少し, その減少は0〜30cm層の大根で著しかった.1樹当たり根重(R)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って減少した.Rとρの関係は, 次の逆数式によって表された.1/R=A_<Rρ>+B_R (1)ただし, A_RとB_Rは樹齢や台木によって変化する係数.幹断面積(θ)と1樹当たり根重(R)の関係は各台木樹とも, h>1である次の相対成長式で表された.R=Hθ^h (3)ただし, Hは台木によって変化する係数.1 ha当たり根重は1樹当たり根重と異なり, 各層とも栽植密度の増加に伴って増加し, その増加は小・細根で顕著であった.1 ha当たり根重(R^^-)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って増加した.R^^-とρの関係は, 式(3)のR=Hθ^h, 式(4)の1/θ=Aρ+Bおよび式(5)のR^^-=Rρから導かれる式(6)によく当てはまった.R^^-を最大にする栽植密度(ρR^^-_<pk>)は式(7)で与えられる.R^^-=Hρ/(Aρ+B)^h (6)ρR^^-_<pk>=B/A(h-1) (7)ただし, AとBは樹齢や台木によって変化する係数.以上の結果から, 1 ha当たり根重は栽植密度の増加に伴って増加するが, ρR^^-_<pk>において減少に転じることが示された.
著者
元 晶ウク
出版者
静岡産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日韓プロサッカー観戦者の観戦動機が同時に測定できる尺度項目を開発することと、それを用いて両国サッカー観戦者の観戦動機比較を行ない、その相違と類似点を明らかにすることを目的とした。調査の結果、開発された尺度は、日本と韓国のサッカー観戦者の動機を同時に測定できる妥当性と信頼性の高い測定項目であることが明らかになった。また、両国観戦者の観戦動機平均値の差を多変量分散分析によって検証した結果、Kリーグ観戦者はドラマ、家族、選手動機の平均得点、Jリーグ観戦者は達成、娯楽、技術動機の平均得点が有意に高いことが明らかとなった。Kリーグ観戦者はスポーツ自体より、レジャーやレクリエーションの手段としてサッカー観戦を行うことに対し、Jリーグ観戦者はスポーツ自体の魅力を求めて観戦を行う特徴が確認された。また、両国のサッカー観戦者の主な観戦動機は達成、娯楽、ドラマ、逃避であることが明らかになった。さらに、選手個人の魅力に関する動機はサッカーのような団体種目においてはそれほど重要な動機として作用しないことも確認された。
著者
柳原 良江
出版者
東京大学グローバルCOEプログラム「死生学の展開と組織化」
雑誌
死生学研究 (ISSN:18826024)
巻号頁・発行日
no.13, pp.152-182, 2010-03

This paper attempts to clarify how Japanese mass media described gestational surrogacy by focusing on the narratives of surrogate mothers in the articles of popular magazines. The subjects of this analysis are the articles published from June 1981 - around the time when the first articles began appearing - to May 2008. In these articles, gestational mothers were mostly described by people who benefited from their gestation. These people included clients, agents, and a doctor involved in gestational surrogacy in Japan. Through their narratives, gestational mothers in the media are recognized in mainly three aspects.<改行> First, the following perceptions exist about gestational mothers: (l) Gestational mothers are transcendent and are beyond ordinary people. (2) Their existence is holy. (3) They represent the epitome of self sacrifice. These three concepts come from the myth of motherhood that is associated with the sexist portrayal of a woman's role in the society. Second, there are two aspects to the portrayal of the gestational mothers'bodies: (1) metaphors are used for wombs as objects, though a womb is a part of a living body, and (2) while few articles did mention gestational mothers'physical experiences, these experiences were not that focused upon. It is under these perceptions that their bodies are considered as items that should be traded in the market. Third, gestational mothers'personal characters are not mentioned at all.<改行> Popular sentiment (seron), created by the media, is often referred to as the more legitimate opinion in Japan when people consider gestational surrogacy; however, this research indicates the seron is actually organized as mentioned above. Hence, one should be careful when referring to these opinions while considering surrogacy more objectively.
著者
佐藤 潤一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2009年度の研究は、昨年度の研究において構成した離散不動点定理の経済モデルへの応用と、進化ゲーム理論と古典ゲーム理論との関係に関するものであった。2企業が同質な財を市場に供給している状況下で、お互いの企業が自社の利潤の最大化を目的とし、それぞれ独立に供給量を決定するというCournotモデルにおいての均衡の存在について考察した。このモデルでは、2企業の供給量および、それに準じて決定される価格が整数値、つまり離散的であるのが現実的なモデルである。しかし、現在までに離散的なモデルでの均衡の存在については報告されてない。そこで、2企業の供給量で決定される価格の挙動と離散的な均衡の存在についてとの関係を明らかにした。具体的には、2企業の供給量が整数値である状況下でも、それに準じて決定される価格の挙動に適当な仮定を置くことにより均衡が常に存在することを示した。ここで、価格に置いた仮定は、古典的なCournotモデルの状況を含んでいることに注意すれば、昨年度に構成した離散不動点定理は、経済学等の社会的背景に応用した際にも意味をもつものであるといえる。また、進化ゲーム理論の柱であるレプリケータダイナミクスの定常点と、古典ゲーム理論との関係について研究を行った。特に着目したのは、レプリケータダイナミクスを用いることにより、行列で表現される古典ゲームを進化ゲーム理論の範疇で取り扱うことが可能になる点である。さらに、古典ゲームの重要な解概念であるNash均衡が、レプリケータダイナミクスの安定な定常点に対応することも報告されている。しかし、定常点には安定な定常点の他に、不安定な定常点も考えられる。そこで、不安定な定常点に対応する古典ゲーム理論の戦略表現を明らかにした。具体的には、プレイヤーの立場が対等な対称2人ゲームにおいて「定常点の不安定多様体の次元の分だけ、各プレイヤーが譲歩している」という知見を与えた。
著者
稲垣 真澄 加我 牧子 矢田部 清美 後藤 隆章
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、通常学級に通う発達性読み書き障害児の学習全般に不可欠な読み書き支援法に関して、認知神経科学的特性を踏まえた上で構築することが目的である。新たに、ひらがな音読検査課題と漢字読み書き課題を開発し、健常小学生の発達変化のデータ集積を行い、発達性読み書き障害診断アルゴリズムを確定した。診断された発達性読み書き障害児の音韻操作能力ならびに語彙能力の把握を行った上で、読み書きの認知神経心理学的モデルにワーキングメモリの要素を加味した支援法を開発し、漢字読み書きの障害例に一定の効果を見いだした。
著者
岩貝 和幸
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

ナノクリスタル合成〜新たな構造性活性点の創製として水/界面活性剤/有機溶媒溶液を用いた単分散ゼオライトナノクリスタル合成法をMOR型に適用し合成条件を検討した。MOR型ナノクリスタル合成ではナノサイズ化の目標であるシリカライトナノクリスタルと同様の粒子径60nmを達成することができた。構造性活性点触媒反応システムへの展開〜ZSM-5ナノクリスタルでは結晶サイズがナノスケールであるため結晶外表面酸点量が多いよって、外表面酸点を不活性化した場合、大半の酸点が不活性化され反応活性が著しく低下する可能性がある。本年度は酸点量と結晶サイズが異なるZSM-5を合成し、外表面酸点を不活性化してアセトンからのオレフィン合成を行い、酸点量と結晶サイズの影響を明らかにすることができた。外表面酸点を不活性化したZSM-5ナノクリスタルではアセトン転化率がほぼ100%を維持し、芳香族の選択率を減少させ、オレフィン選択率を向上させることに成功した。構造体触媒反応システムへの応用〜粒子径が50nmのZSM-5ゼオライトナノクリスタルを積層した触媒膜を用いてZSM-5ゼオライトナノクリスタルの外表面酸点を不活性化における影響について検討した(MTO反応)。外表面酸点を不活性化することによりZSM-5ナノクリスタルを積層した触媒膜は転化率68%、オレフィン選択率43%を長時間にわたって達成した。積層膜の改良で触媒層機能を強化することにより高選択性をいかしたまま転化率の向上を達成することができた。
著者
Kim Junghyun Chung Han-Kook Jung Taewon CHO Wan-Seob CHOI Changsun CHAE Chanhee
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.57-62, 2002-01-25
被引用文献数
6 70

1999年1月から2001年12月までの間に発生した離乳後全身性消耗症候群について, 疫学, 組織病変および混合感染の有無についてレトロスペクティブに調べた.離乳後全身性消耗症候群の診断は臨床所見(体重遅延), 特徴的な組織病変(肉芽腫性炎と封入体形成)と病変中のサーコウイルス-2(PCV-2)の存在によってなされた.これらの所見に基づいて1, 243例中の133例(8.1%)が離乳後全身性消耗症候群と診断された.年齢は25日齢から120日齢の間に分布していたが, 大多数は60日齢から80日齢(78例, 58.6%)に集中していた.発生は年間を通してみられたが, 5月(38例, 28.6%), 4月(18例, 13.5%), 6月(13例, 9.8%)の順に多かった.特徴的, 普遍的病変は, リンパ節, 肝臓および脾臓における多発性の類上皮細胞と多核巨細胞からなる肉芽腫性病変であった.また大多数の例(113例, 85, 0%)で混合感染がみられた.PCV-2とヘモフィルス・パラスイス(43例, 32.3%)ついで豚生殖器・呼吸器症候群(39例, 29.3%)との混合感染が多かった.病変部には他のウイルスや細菌に比べPCV-2の存在が圧倒的に多かったことから, 離乳後全身性消耗症候群の病因としてPCV-2が強く示唆された.
著者
山本 憲二 芦田 久
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ニワトリ卵黄より抽出した糖ペプチドまたは糖ペプチドに糸状菌エンドグリコシダーゼ(エンド-M)を作用して遊離した糖鎖を縮合反応または還元アミノ化反応によりアルギン酸やキトサンに多価に重合した糖鎖結合ポリマーを合成し、糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸残基にインフルエンザウイルスを結合させて捕捉する新しい概念の感染阻害剤として応用した。阻害剤について動物細胞を用いたインフルエンザウイルス感染阻害能を調べた結果、高い感染阻害活性を示すことを確認した。
著者
平野 隆 鈴木 正志 前田 一彦
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

耳管閉塞およびインフルエンザ菌による慢性中耳炎症マウスモデルを用いて、中耳慢性炎症病態における IL-17 産生 T 細胞の動態につき検討した。BALB/cマウスを用いて、中耳炎モデル作成後3日目、14日目、2ヶ月目に中耳貯留液、中耳粘膜および側頭骨を採取し、中耳貯留液中の IL-17 濃度の測定、中耳粘膜下のリンパ球のフローサイトメトリーによる解析および IL-17mRNA の発現につき解析を行った。中耳粘膜において、Th17 細胞および IL-17 産生γδT 細胞の増加を急性期から慢性期に認め、中耳貯留液中の IL-17 濃度においても2週間目から2ヶ月の慢性期に至るまで、明らかに対照群と差を認めた。中耳粘膜の単核球細胞の IL-17mRNA の表出も、対象群と比して明らかな強発現を認めた。 中耳粘膜における Th17 細胞や IL-17 産生γδT 細胞が中耳局所の慢性炎症に関与している事が推測された。
著者
益田 昭彦 佐藤 吉信 夏目 武 小野寺 勝重 中村 國臣 西 干機
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.480, pp.23-28, 2005-12-09
被引用文献数
3

2005年IEC/TC56(ディペンダビリティ)全体会議が韓国済州(チェジュ)市で9月25日から30日まで開催された。14カ国46名の各国代表が集まり、日本からも6名参加した。会議は取り立てて波乱もなく行なわれ、4作業グループで総計13の規格が審議され、次の段階に進むことになった。特に、日本は発行されたIEC 61160 Ed.2デザインレビューの規格に含まれない部分のデザインレビューに関する新規作業の提案書を提出することを約束した。全般として、WG1(ディペンダビリティ用語)とWG4(ディペンダビリティのシステム側面)が運営上苦戦している様子である。
著者
黒田 和道 芝田 敏克
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

インフルエンザウイルスのM1に蛍光タンパク質を付加したもの(GFP-M1)と全反射照明蛍光顕微鏡を用い、ウイルス粒子形成過程の生細胞での観察を試みた。GFP-M1発現細胞にウイルスを感染させたところ、約8時間後からGFP-M1の顆粒状構造が細胞表面に観察され始め、その後、顆粒は集積傾向を示した。もう一つのウイルスタンパク質であるHAでも同様な傾向が確認された。これは、GFP-M1顆粒形成がウイルス粒子形成に対応することを示す。
著者
今野 祐多
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度のH_2水素安定同位体組成定量システムに引き続き,同じく還元性気体であり,極限環境において大きなエネルギー源および炭素源となるCH_4の水素安定同位体組成定量システムを構築した.それを応用し,岐阜県瑞浪超深地層実験施設における地下水中のCH_4の定量を行った.炭素同位体組成の情報だけではCH_4の起源を判別することは出来なかったが,水素同位体組成の情報を併せることで,単純な有機物由来のCH_4では無く,CO_2還元由来ではないかと結論した.一方で,H_2の水素同位体組成は-700‰前後であり,地下水と温度平衡になっている可能性が考えられる.微生物によるH_2の生成消費反応はH_2-H_2O平衡を促進させるため,水素に関わる微生物活動の可能性を示唆しているのではないかと考える.また,窒素固定反応に付随してH_2が副次生成されることが知られており,海洋において窒素固定速度とH_2濃度に相関があることが報告されている(Moore et al., 2009など).ところが海洋表層は大気からの混入と現場で生成されるH_2の区別が難しく,H_2濃度のみから窒素固定速度を求めることはやや定量性に欠けると考える.そこでH_2の水素同位体組成を定量することで窒素固定速度の定量を目指した.ところが実際の海水試料中に溶存するH_2濃度はsub-nM~数nM程度であり,現システムで精度良く水素同位体組成を定量するのは難しく,窒素固定速度と整合性の取れたデータを取得することは出来なかった.しかし,得られた水素同位体組成は一般的な大気と生物由来と考えられるH_2との間の値を取っており,将来的に少量で精度良く水素同位体測定が可能になれば,海洋窒素固定速度定量に対して有用なツールとなる可能性があると考える.
著者
宇野 賀津子 八木 克巳 武曾 恵理 福井 道明 室 繁郎
出版者
財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

新型インフルエンザ等易感染性疾患や重症化しやすい疾患、またその病態とIFN システムにつ いて検討する計画をたてた。しかしながら、新型インフルエンザは2010 年以降大きな流行が なく、当初計画した研究を遂行できなかった。そこで感染重症化リスクの高い、糖尿病、MPO-ANCA 腎炎、慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)患者と健常人のIFN 産生能を比較、これら疾患患者では健 常人に比べて有意に低下している事、MPO-ANCA 腎炎患者ではプラズマサイトイド樹状細胞数の 著しい低下や血中IFN の存在を明らかにした。COPD 患者では、憎悪回数とIFN 産生能との関連 性は認められなかったが、糖尿病患者では、歯周病罹患群でIFN 産生能が特に低下していて、 IFN システムは易感染性と関連している指標として有用である可能性が示唆された。
著者
吉岡 潤
出版者
北海道大学スラブ研究センター
雑誌
スラヴ研究 (ISSN:05626579)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-37, 2005

This article examines political dynamics in Poland immediately after World War II, paying particular attention to the multiparty system in that period and the communists' policies toward non-communist parties. Postwar Poland started in July 1944 with the establishment of the Polish Committee of National Liberation (the Lublin Committee) in which the communists exercised hegemonic power. The Lublin Committee and its successor, the Provisional Government, were nominal coalition governments that consisted of four parties: the communist Polish Workers' Party (PPR), the Polish Socialist Party (PPS), the Peasant Party (SL), and the Democratic Party (SD). Postwar Poland was initially characterized by coalition government and political pluralism, which both the domestic and foreign environment made necessary. As for the latter, the Soviet Union had in particular elaborated a "national front" strategy in order to help weak communists in Eastern Europe to participate in postwar administrations, a strategy which was intended to relax the Western Allies' vigilance against the establishment of puppet communist governments. In Poland, the communists, who seized power in spite of their lack of mass support and who, at the same time, had to follow the Soviet "national front" strategy, created for themselves their "allied" parties and adopted their prewar party names. In this "multiparty" system, which this article calls "the Lublin system," the communists allowed only those who accepted the hegemony of the PPR and had no intention to struggle for hegemonic power to be an allied partner. They carefully nipped in the bud any intention by their "allies" to be independent. It was often the case that they used the "plug," the party member dispatched to allied parties as an executive in order to control these parties. These tactics helped the communists to make the SL and the SD their satellite parties, though the excessive use of the "plug" tactic, which took the teeth out of the multiparty system, aroused criticism even in the PPR leadership. The formation of the Provisional Government of National Unity in June 1945, which was to be set up according to the Yalta agreement, together with the return of Mikołajczyk, the former prime minister of the Polish government in exile and an outstanding leader of the Polish peasant movement, caused a change in the Lublin system and the political situation as a whole in Poland. The communists made an effort to draw Mikołajczyk and his followers into their Lublin system, but he refused to be involved in a political framework initiated by the communists and founded a new party in substantial opposition, the Polish Peasant Party (PSL), relying on wide support from the masses. Confronted with the challenge of the PSL, the communists tried to modify the Lublin system into a bipolar structure which would compel the PSL to play the role of the only legal opposition. In this way, they intended to limit the energy required in dealing with scattered targets in struggles for power. At the same time they continued efforts to induce the PSL into the platform of the Lublin system. They offered the PSL an electoral bloc which assured the PSL the same number of seats in the parliament as the PPR and the PPS would occupy, but again Mikołajczyk and his party refused to accept the proposal and decided to enter the general election on its own. In such a situation, the communists played for time by carrying out a referendum. The result of it, however, disappointed the communists, revealing a largely hostile attitude which forced them to falsify the official results in favor of the communists. This falsified referendum cast a shadow on the stability of the Lublin system, activating the socialists (PPS) who intended to mediate between the PPR and the PSL and, by doing so, find their way out of dependency on the communists. Facing such a crisis of the Lublin system, the communists reaffirmed the bipolar structure of the political scene and aimed both to shake the PSL and to bring the PPS back to their side by the time of the forthcoming general election. They succeeded at the latter task, but failed at the former. After recognizing the difficulty in reaching an agreement with Mikołajczyk, the communists decided to destroy the PSL by resorting to underhand means, including far more intensified violence. In the end, the general election was won by force. The collapse of the PSL marked the beginning of the last stage of a political pluralism which had somehow functioned within the limitations of the communist hegemony. It was indeed a significant step toward the establishment of a substantial single-party system in Poland, but this process did not proceed smoothly according to any blueprint. The political unification in postwar Poland was not a linear process of realization of the initial, clear and unchanging purpose of the communists, but rather the result of a series of reactions to circumstances the communists came up against. The political dynamics contributed by various elements, including non-communists, should not be overlooked. It would be more appropriate to say that the series of events which took place in the first period of postwar Poland reveal the problems and obstacles faced in establishing their desired system of hegemonic communist rule.
著者
菅野 幸宏
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.147-157, 2003-03

集団によるふり遊び・ごっこ遊びの社会的発達面における意義を検討するため,家庭において観察した4歳児3名の遊びを分析した。観察された遊びは一見して再現的模倣的であったが,実は創造的即興的な性格も十分盛り込まれたものであった。これまで,遊びの創造的即興的側面は見逃されてきており,したがってその発達的意義の検討も乏しい。そのため,創造的即興的遊びの社会的発達に関わる意義としては,会話における即興技能の促進が考えられるものの,その詳細は今後を待たなければならない。
著者
大庭 茂樹
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.T87-T90, 1991-04-05
被引用文献数
1

平衡に達するまでに比較的長時間を要する反応を簡便に測定するために, 各滴定ごとの経過を記録し, それらの結果を用いて滴定曲線を描くものとして自動滴定装置を試作した.この装置を用いてリン酸ジルコニウムのイオン交換反応を測定した結果, 得られた第一, 第二当量は各々0.328,0.662meq/gであり, 理論値とよく一致し, 少量の試料で満足できる結果が得られることが分かった.この装置は, 滴下量, 終了条件, 測定時間を自由に設定でき, 更に測定中に, 次の滴下量が前のpHの変化率で, 又, 測定時間が終了条件に応じて自動的に設定されるなどの機能を有するので, 沈殿, 酸化還元滴定など様様な反応に応用が期待できる.