著者
永井 成美 森谷 敏夫 坂根 直樹 森谷 敏夫 坂根 直樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

20歳代女性の3~4割に、低体重または標準体重でありながら体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ(正常体重)肥満」やその予備群である「隠れ(正常体重)肥満傾向」が認められるとの報告がある。若い女性特有の「太りたくない」という強い思いから、食事のカロリーのみを気にして食事の質が良くない場合に、筋肉量、骨量の低下と体脂肪量の増加によって「隠れ肥満」が形成されると考え、食行動パターンやダイエット歴、体組成、代謝・自律神経活動等の生理学的特性や遺伝的特性(肥満関連遺伝子多型)などからその成因を検討した。さらに、カロリーだけでなく食事の「質」を重視した3回の介入試験を「隠れ肥満」若年女性を被験者として実施し、その有効性についても評価した。研究の成果は、10件の論文、17件の学会発表、2冊の著書により公表するとともに、NHK健康番組やその関連雑誌等によって広く紹介された。
著者
森山 克子 伊礼 夏未 Moriyama Katsuko Irei Natumi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.153-161, 2010-08

1.郷土の行事食を含む給食献立年間計画作成と郷土料理の提供数・種類数との関連を明らかにするため給食献立年間計画表や家庭用配布献立表の回収を行った。対象は県内全市町村を網羅した92調理場で、資料提供があった調理場の内、年間計画表を回収できた調理場は、22調理場(36.1%)であった。約4割が作成していると推察できたが、その内容は一定ではなく調理場間に内容面で差がみられた。また、家庭配布用献立表を回収できたのは61調理場(回収率66.3%)であった。郷土料理の提供数や種類数は,調理場形態(共同調理場・単独調理場)では提供数、種類数共に有意差はなかった。また供食数(29~6677食)でも有意差がなかったことから,県内のどの調理場においても,給食管理の点から郷土料理を活用した食育を推進していくことが可能であるということが示唆された。1. To clear the relation between the School Lunch Service Annual Planing and the serve count and menu variety count of Okinawa Prefecture's School Service, we have collected the School Lunch Service Annual Plan and the Student's Lunch Menu. The collection was objected towards the entire Okinawa Prefecture's 92 cooking facilities, where the School Lunch Service Annual. plan collaction was 22 faciliteis (36.1%) out of all submitted facilities. A surmise of 40% of the facilities create a School L Lunch Service Annual Plan, which content were not standard and a difference between facilities exist. The Student's Lunch Menu collection was of 61 facilities (collection rate of 66.3%). The serve count nor menu variety count of Native Food had significant difference between facility form (joint cooking facilities and individual cooking facilities). No significant difference was seen in the prepared meal count (29~6677 meals) either, which indicates that all cooking facilities within Okinawa Prefecture has a possibility to provide dietary education through Native Food from terms of the School Lunch management.
著者
風間 卓仁
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の最大の目的は、火山での重力観測を通して、火山内部におけるマグマ質量の移動プロセスを把握することである。また、マグマ移動起源の重力変化を検出するため、陸水起源の重力擾乱を適切に補正することも、本研究の大きな目的の1つである。本研究の最終年度に当たる平成24年度には、約2カ月に1度の頻度で桜島を訪問し、設置済みの相対重力計・気象観測装置・水分計のデータ回収およびメンテナンス作業を行った。この3年間、桜島では絶対重力計や相対重力計の連続データを大量に取得することができた。しかしながら、陸水擾乱によるノイズが大きかったために、現時点では火山起源の重力変化を十分には検出できていない。そこで本研究では、新たに八重山諸島とアラスカにて重力等の観測を実施し、陸水擾乱に関連して以下のような結果を得た。まず、八重山諸島では石垣島や西表島などで土壌採取を実施し、採取した土壌に対して透水試験を適用した。その結果、透水係数は空間的に均質ではなく、約4桁の範囲で変化していることが分かった。今回得られた土壌空間不均質を陸水シミュレーションに適用すれば、陸水擾乱を高精度に再現できるものと期待される。また、アラスカでは絶対重力計FG5による重力測定を実施した。その結果、絶対重力値は予想していた値よりも約10マイクロガル程度大きい'ことが分かった。これは2011~2012年冬季の異常降雪の影響と考えられ、今後積雪分布のデータなどを利用して重力変化を再現する予定である。今後は、陸水分布シミュレーションのプログラムを改編し、陸水擾乱の再現精度向上を目指す。そして、八重山諸島・アラスカ・南極地域(前年度に重力観測を実施)で取得した重力データに陸水擾乱補正を適用し、陸水分布シミュレーションの再現精度を評価する。その上で、桜島の重力観測データに対して高精度な陸水擾乱補正を適用し、火山起源の重力変化の抽出を目指す。
著者
富岡 尚敬 安東 淳一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高温・高圧・高酸素分圧が惑星物質に与える鉱物学的影響を調べるため,石質隕石の高温酸化実験と衝撃回収実験を行った.この結果,1)鉄に富むカンラン石の酸化による超構造への相転移と赤外スペクトル変化との関連性,2)1万気圧程度の弱い衝撃の加熱においては,含水鉱物の脱水反応は顕著ではないこと,を明らかにした.また,石質隕石の主要鉱物である斜長石の静的圧縮実験を行い,3)斜長石の圧力誘起非晶質化は温度及び時間依存性を持つことを,明らかにした
著者
東郷 敬一郎 JIANG Y.P. JIANG Y. P.
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は,以下の2項目について研究を進めた.1.ナノ粒子分散複合材料の増分形損傷力学モデルの開発申請者らが開発している粒子分散複合材料の損傷理論を基に,粒子近傍のひずみ勾配効果による変形特性の粒子寸法効果と損傷過程の粒子寸法効果を考慮した力学モデルを開発した.また,新たなモデルとして,粒子-マトリックス界面層を考慮した微視力学モデルを開発し,界面層による粒子寸法効果を明らかにした.これらの開発したモデルを有限要素法に組込み,ナノ粒子分散複合材料中の切欠き・き裂など構造部材の解析を可能とした.2.ナノ粒子分散複合材料の作成粒子寸法の異なるシリカ粒子とエポキシからなる数種類の粒子分散複合材料を遠心遊星混練機,超音波分散器あるいは射出成形機を用いて作製した.強化材の樹脂マトリックス内への分散度について走査型電子顕微鏡について観察した結果、一様に分散している部分と凝集している部分が観察された。作製した複合材料について,強度特性を調べた結果、粒子体積率の影響は認められたが、粒子寸法の影響は顕著ではなかった。ナノ粒子分散複合材料の特性発現機構を明らかにするためには、さらに細かなナノオーダーの粒子を分散させた複合材料を作製し、検討することが必要である。
著者
米田 耕造 窪田 泰夫 荒木 伸一 中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アトピー性皮膚炎は、掻痒の強い湿疹病変を主とする難治性皮膚疾患であり、フィラグリンタンパク質の遺伝子異常による。ロリクリンはフィラグリンと同様、表皮角層細胞の辺縁帯の主成分である。ロリクリン遺伝子の変異による疾患(亜型ボーウィンケル症候群)の臨床症状は、掌蹠角化症を合併した魚鱗癬であり、フィラグリン遺伝子機能喪失変異により生じる尋常性魚鱗癬の臨床症状に酷似している。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎の動物モデルを作製し、その病態に関与するロリクリンの果たす役割を解析し、創薬に役立てることである。その目的に向けてわれわれはロリクリンノックアウトマウスを作製した。
著者
塩見 将志 笠井 新一郎 岩本 さき 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.49-54, 2001-03-31

今回,私たちは,2歳児相談において,言語発達を正確に評価し,言語発達障害を有する子どもや「気になる子」を早期発見・早期療育するための語彙チェックリストの作成を目的に保育所に通う2歳前後の幼児を対象とした表出語彙に関する事前調査を実施した.なお,本稿では,その中でも特に動詞に焦点を当てて検討を加えた.調査で用いたチェックリストの項目は,大久保(1984)が作成した2歳児の語彙リストと三省堂「こどもことば絵じてん」を参考に作成した.本稿で取り扱う動詞は452の全語彙中,123語であった.本調査における動詞の特徴として,2歳0ヶ月時で通過する語は123語中,12%であり,2歳6ヶ月時で通過する語は60%となった.このことからも,動詞は2歳0ヶ月から2歳6ヶ月の間に飛躍的に獲得される可能性が示唆された.
著者
南 裕樹
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,離散値信号を含む2次元システム(2Dシステム)における動的量子化器の最適設計論を構築することである.これを達成するために,つぎの二つのテーマに取り組んだ.1.分散型動的量子化器の解析と最適設計:申請者がこれまでに行ってきた研究(1次元システムのための最適動的量子化器の設計)の発展として,分散構造を有する動的量子化器の最適設計に取り組んだ(理論研究と応用研究).まず,理論研究の成果は,複数個の量子化器が組み込まれる離散値制御系において,最適な分散型動的量子化器を解析的に導出したことである.ここでの最適性は,離散値制御系の入出力特性が,通常の連続値制御系の入出力特性に最も近くなるという意味でのものである.一方,応用研究では,不安定なメカトロニクス系を対象とし,分散型最適動的量子化器を用いた離散値制御の有効陛を検討した.この実験検証により,最適量子化器の実用性が示された.2.n次元システムに対する最適動的量子化器:これまでの動的量子化の設計問題は,機械システムのような時間的なダイナミクスをもつく1次元システムを対象にしていた.ここでは,これまでの理論を一般化するために,空間的なダイナミクスをもつn次元システム(たとえば,分布定数系)を対象として,研究を行った.まず,離散値信号を含むn次元システムに対して,最適な動的量子化器を解析的に導出した.つぎに,その最適動的量子化器をハーフトーン画像処理に応用した.本研究では,動的量子化器を用いて多値画像の画質をできる限り維持する2値画像が生成できることを確認した.
著者
藤本 利一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

過去数十年の間に,知的財産権は,世界経済において大きな役割を果たすようになった。今日においては,世界の名だたるトップメーカーの有する企業価値の多くが,それらの無形財産にあるといわれる。あるデータによれば,世界の主要企業に関して,その資産価値における知的財産権の占める割合は,1992年においては,6対4であったが,その10年後には,4対6の割合に変化したとされる。間違いなく,今日,ますます増大する世界的な企業間競争において,知的財産権は最も重要な資産である。このような状況のなかで、知的財産権およびそのライセンスに関して、重要な問題として認識されだしたものがある。すなわち、倒産処理手続における知的財産権の処遇である。たとえば、アメリカ法においても、各種知的財産権の処遇を規律するものとして、連邦レヴェルの法規制とともに、当該知的財産権を有する企業が、倒産した場合には、連邦倒産法の規律によることとなり、両者の相克が問題とされていた。すなわち、知的財産法においては、企業家および発明者の支配可能性を高めるため、知的財産権の譲渡可能性を制限しているのに対し、倒産法では、債権者にとって利用可能な資産価値を最大にするために、譲渡可能性を柔軟にしているという対立図式が明らかとなった。過去数十年にわたり、これらの対立をどのように処理するかが、企業再建という困難な局面で問われてきた。翻って、わが国の対応を見るならば、倒産法制はここ数年で大きく変革されたが、知的財産権への対応が必ずしも十分であるとはいいにくいようにも思われる。とくに,企業が倒産した際に,その知的財産権の価値をどのように評価し,またどのように売却等の処理をするかについては,まだ決め手がないということが明らかとなった。
著者
鎌田 哲夫
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.168-175, 1970-03

この報告は,ロケットによる雑音電波観測の科学的な目的と,この目的を実行するのに用いた装置と,実際に観測を実施してえられた結果のpreliminaryな事柄に関するものである.実験に用いられたのはK-9M-26号観測ロケットで,他の相乗り機器の電気系統からの電波交渉をさけるため,VLF雑音電波の測定に対する受動的な機器のみを搭載した雑音電波観測専用のものである.さらに飛しょう体が電離層プラズマを乱すことによりつくり出される雑音が実際存在するか否かを検出するために親子方式を採用し親と子とで同一周波数値域の観測を実施した.実験は昭和44年8月24日17時03分JSTに鹿児島県内之浦の東大宇宙空間観測所で実施された.ロケットは正常に飛しょうし,発射後約5分で最高高度341kmに達した.搭載機器もすべて正常に動作し,ホイスラー空電およびその他の電離層プラズマ内での雑音電波観測に成功した.この結果のpreliminaryなものを本文で報告する.
著者
柴山 啓子 野渡 正彦 田久保 憲行 松浦 信夫
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

妊娠中の母体の低栄養によって、新生児の子宮内発育不全と出生後の遷延性低血糖症が惹起されることが示唆された。
著者
上原子 晶久
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1.塩害と凍害が複合作用する環境下を再現するため,ASTM-C-672法を参考に以下の凍結融解試験を行った.連続繊維シートを接着した上面に3%塩化ナトリウム水溶液を湛水し,凍結サイクル(-15〜-20℃で約17時間)と融解サイクル(+20℃で約7時間)で構成される1回の凍結融解サイクルが約24時間で完了する環境下に80日間暴露した.その後,連続繊維シートとコンクリートとの付着試験と塩化物イオンの浸透量の測定を行った.2.連続繊維シートの種類を炭素繊維,アラミド繊維,ならびにコンクリートの空気量を実験水準として試験体を作製した.試験体は,高さ100mm,縦200mm,横400mmのコンクリートブロックの一面に連続繊維シートを接着したものである.連続繊維シートの接着工程は一般的に採用されているものとし,シートとコンクリートとの接着にはエポキシ樹脂を使用した.3.付着試験の結果,凍結融解による損傷や塩分浸透を受けた場合の連続繊維シートとコンクリートとの付着特性を代表する界面破壊エネルギーは,健全時よりも3割ほど低下する結果が得られた.これについては以下が原因である.すなわち,凍結融解試験においてシート上面に湛水している塩水の影響により母材が過冷却され,それが主因として凍結融解作による母材の劣化をさらに促進しているものと推定される.以上は,試験時において母材内部の温度を計測し,それに基づく温度応力解析の結果からも確認することができた.4.母材への塩化物イオン浸透量を分析した結果,シートの種類によらず塩化物イオンの浸透は認められなかった.以上より連続繊維シートの物質遮蔽性能が優れていることを確認した.
著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.634-640, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
6

【目的】脳卒中の栄養状態と認知・運動機能,ADLとの関連を明らかにする.【方法】対象は慢性期脳卒中381例(平均68±11歳)で,下肢運動年齢(MA),Barthel index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS),Functional Independence Measure(FIM),長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS),標準失語症検査(SLTA),行動性無視検査(BIT)の評価と同時期にbody mass index(BMI),血清アルブミン(Alb),体重変化率を指標に栄養状態を評価した.【結果】栄養状態は全体の69%が低栄養であった.高度な低栄養ほどMA,BI,FIM,HDS,SLTA,BITは低下していた.順位相関係数の検討ではMA,BI,HDS,SLTAはBMIやAlbと有意な正の相関を認めた.【結論】低栄養が認知・運動機能やADL低下に関与する可能性が示された.