著者
吉田 城 増田 真 田口 紀子 廣田 昌義
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

基盤研究(A)(2)「フランス文学における心と体の病理-中世から現代まで」は当初4年間の計画でスタートした。数度にわたる準備会合によって各分担者の主要研究テーマを決定した。吉田は19世紀〜20世紀フランスの文学と病理(ゴンクール兄弟、プルースト、など)、廣田はパスカル・モンテーニュにおける病気、田口は近代小説にあらわれた夢のディスクールの分析、増田は18世紀思想における狂気と病理、稲垣はユーゴーと狂気の問題、多賀は薬物と文学の関わり、嶋崎は中世フランス文学における病の問題、小倉は女性と病の文化史、松村はバルザックと19世紀医学の問題を中心に据えた。定期的な研究会合を通じてそれぞれの研究発表をめぐって活発な議論が交わされた。これらの討議の内容をフィードバックする形で各自が論文を執筆した。文学も病理も人間の探求という点で一致するが、時代と文化の文脈を抜きにしてはその関係も論じることができない。したがって、報告書としてまとめることのできた各論文は、かなり実証的な射程に収まるものになった。詳細は別冊の報告書を参照のこと。
著者
岡田 直之 佐野 渉二 寺田 努 塚本 昌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.28, pp.25-32, 2009-03-06

近年,携帯電話の高性能化が進み,その用途が広がっている.これに伴い携帯電話に写真編集やウェブブラウジングなどのアプリケーションが搭載され,携帯電話上でもポインティング操作が必要不可欠となりつつある.しかし,携帯電話には表面にボタン型入力装置が設置されており,片手で操作する場合には手で把持しながら範囲指定やドラッグなどのポインティング操作を行うことは困難である.そこで本研究では,デバイスの背面にポインティング装置を設置して利用する背面ポインティングに着目する.本研究では,携帯電話の背面にタッチパッドを装着し,前面でキー操作を行いつつ背面タッチパッドによるポインティングを行う環境を想定する.背面タッチパッドの利用により効率的な入力が実現できるが,予備実験により背面でポインティングを行う場合には操作しにくい方向があり,ポインティングが安定しないという問題があることがわかった.そこで提案方式では,ユーザが行う操作に対して方向別にカーソル移動量を調整する操作量フィルタと操作方向を 8 方向に強制的に変換するフィルタを提案し,操作性の改善を実現する.評価実験により,提案方式を用いることで背面タッチパッドの操作性が改善されることがわかった.Recently, portable devices such as mobile phone are used in various purposes because of explosive popularization of mobile phones with high efficiency. Accordingly, various applications such as photo editor and web browser have become to be used on mobile phones. Although these applications need pointing operations for effective use, it is difficult to do pointing operation on mobile phones because users operate the device with their one hand while holding the device by the hand. Therefore, the goal of our study is to construct a pointing operation specialized to a back touch pad. In our using assumption, users input characters with front keys on a mobile phones and operate a pointer with the back touch pad. We achieve the efficient input with the proposed method. However, as the result of pilot study, the proposed using style has a difficult direction of pointing. To resolve this problem, we propose a filter which adjusts distance of cursor according to a direction and that forcibly converts direction of operation into eight directions.
著者
伊藤 太二 伊庭 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、AP-1結合配列を持つ標的遺伝子の発現誘導に刺激特異性が見られる現象を支える分子機構を解明すべく、SWI/SNF複合体にsubstoichiometricalに結合する因子の同定と生化学活性の解析を行った。特に、BRG1に結合する因子群の中に見いだされたp54^<nrb>及びPSFに焦点を当て、これとSWI/SNF複合体構成成分との結合に関する生化学的解析とその結合が果たす役割について精査し、以下の成果を得た。1.p54^<nrb>はSWI/SNF複合体構成成分のうち、BRG1、Brm、BAF60aと直接結合する。一方、Ini1との直接結合は見られない。2.p54^<nrb>及びPSFはBRG1型及び、Brm型SWI/SNF(もしくはこれらに類似した)複合体に結合する。3.p54^<nrb>及びPSFは初期転写、splicing、'A to I'にeditingされたRNAの核内保持等に機能する多機能性タンパク質である。したがって、これと結合するBrmがalternative splicing過程に関与しているか精査した。元々BRG1の発現を欠くヒト非小細胞肺癌由来H1299細胞株において、Brmのノックダウンを行い、SWI/SNF複合体の機能を失わせたところ、Brmのノックダウン後二ヶ月以内に、細胞の老化を伴うgrowth arrestが観察された。4.3で観察されたgrowth arrestはテロメアの短小化を伴うものであり、Brmをノックダウンすると、AP-1の標的遺伝子であるtelomerase reverse transcriptase(TERT)遺伝子の初期転写量が減少し、かつその転写産物が受けるaltenative splicingのパターンが変化し、不活性なTERTタンパク質をコードすると考えられるmRNAの割合が増加することが判明した。5.H1299細胞内では、Brm、p54^<nrb>はTERT遺伝子のプロモーター領域及びalternative splicingのacceptorを含む領域に特異的に局在している。本研究から、p54^<nrb>を含むSWI/SNF(もしくはこれに類似した)複合体は、恐らくはAP-1をはじめとする転写制御因子群によってTERT遺伝子のプロモーターに動員され、転写開始を誘導した後、その複合体分子が引き続いてalternative splicing過程にもcisに作用し、活性のあるTERTタンパク質の効率良い発現に多段階で機能すると考えられた。そして、AP-1の標的遺伝子群の中でも、特定の遺伝子群に対してのみ、p54^<nrb>を含むSWI/SNF複合体が多段階で機能し、効率良い遺伝子発現制御を行っている可能性が示唆され、AP-1の持つ多機能性を説明するための端緒が見いだされた。
著者
倉橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.23-27, 1992
被引用文献数
2

大英自然史博物館所蔵のマレーシア産のショウジョウクロバエ属Dexopollenia Townsendの標本を調べる機会を得た。その中にサバ州(北ボルネオ)キナバル山で採集された1新種を発見したので, ここにDexopollenia wyatti sp. nov.サバショウジョウクロバエ(新称)と命名し記載した。また, ハワイのビショップ博物館の標本中にも本種の1雌を見つけたのでパラタイプに含めた。本種は体全体が橙黄色で胸背にカールした金髪を装い, 前胸側板剛毛をもたないのが特徴である。作成した東洋区産9種への検索表に示した外部形態のほか, 雄の外部生殖器の特徴により近縁のD. testacea Townsend, 1917アッサムショウジョウクロバエ(新称)から区別される。アッサムショウジョウクロバエの外部生殖器の形態についてはこれまで知られていなかったので, 本新種との比較のため今回はじめて図示された。
著者
白水 博 野村 靖夫
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-51, 1997-02

バンドウイルカ(Tursiops truncatus)の2例に接合菌症(Zygomycosis)が発生した。2例とも主症状は, 元気消失, 食欲低下, 湿性雑音を伴う努力呼吸であった。臨床病理学的検査では, 好中球の増加とγ-グロブリン値の上昇がみられた。症例1には, 喉頭を狭窄する鶏卵大腫瘤と気管気管支リンパ節の腫大, 症例2には, 肺と気管に散在する黄白色病巣と気管気管支リンパ節の腫大が認められた。これらの病変部には, 隔壁が乏しく, 直角に分岐する傾向を示し, 太さが一定でない真菌が無数に存在することから, 接合菌症(zygomycosis)と診断された。
著者
安楽 泰孝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度までに静電相互作用力を形成駆動力とする100-300nmのNano-PICsomeを容易に作り分けることに成功した。しかしながらこれらの粒子は生理条件下での安定性が低いため、申請目的にあるような生体内でデリバリーキャリアとして応用する際に問題が生じる。そこで当該年度では、まず水溶性の縮合剤である1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)を用いてPIC膜中にアミド結合を形成することで、生理条件下でも安定にサイズと構造を維持可能な架橋Nano-PICsomeを調製することに成功した。さらにこの架橋Nano-PICsomeは、従来のNano-PICsomeとは異なり「耐凍結乾燥」「耐遠心濃縮安定性」を有していることをも明らかとした。また、加える架橋剤の量でPIC膜の透過性をコントロールできることも示し、選択透過性を有するNano-PICsomeという新しいベシクルキャリアの提案を行った。さらにサイズの異なる架橋Nano-PICsome(100-200nm)を調製し、担がんマウスの尾静脈より循環血液中に導入することによって、その血中滞留性および臓器分布を評価した。その結果、100-150nmの架橋Nano-PICsomeは、がん組織における血管壁が物質透過性の亢進を示すという性質(EPR効果)に基づいて、がん局所への高い集積性を示すことを明らかとした。一方、サイズを大きくした150-200nmのNano-PICsomeは、約20時間という著しく長い血中半減期を達成出来ることが明らかとなった。この値は、これまで報告されている他の中空粒子型キャリアと比較して、同等かもしくはそれ以上であり、今後、生体内長期循環型デリバリーキャリアとして応用展開される可能性が示唆された。このように本研究は、サイズと構造が厳密に制御された中空粒子を設計する独創的な指針の提案や得られた成果の薬物送達システムとしての高い有用性から考えて、バイオマテリアルの分野において極めて秀逸であると考えられる。
著者
長谷 博子 松下 調子 明田 喜仁 大八木 薫博 熊谷 崇行 野浪 亨
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.16-20, 2004-01-25
被引用文献数
11

二酸化チタン光触媒を利用して,義歯に付着した歯石やヤニの除去が可能であるかメチレンブルー,ヘマトポルフィリンおよびたばこのヤニを染色モデルとして検討した.二酸化チタンと微量の酸で二酸化チタン洗浄剤を調製した(以下二酸化チタン洗浄剤という.).この二酸化チタン洗浄剤により,lOppmのメチレンブルーを2分間で5ppm以下に脱色することができた.また二酸化チタン洗浄剤によりヘマトポルフィリンで染色した試験紙をL^*値は60程度から90近くに増加させた.a^*値は20近くから0以下に減少させ,ヘマトポルフィリンの赤褐色を完全に脱色することができた.更に,たばこのヤニは二酸化ヂタン洗浄剤による洗浄後のΔL^*値は14.43と高い値を示し,Δa^*,Δb^*値も-8.35と-8.15とそれぞれ脱色することができた.よって本研究により,安全かつ簡単に義歯を痛めることなく洗浄できることが期待できる.
著者
瀬戸口 剛 小林 英嗣 堤 拓哉 佐藤 滋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

積雪寒冷都市では、冬季における除雪エネルギーを低減し、快適な都市空間の創造は大きな課題である。本研究では北海道内都市を対象に、都心部の公共空間での堆雪量と除雪エネルギーを低減させる都市デザイン手法、およびプロセスを開発した。都心部でも高層ではなく中層を主体とした街区空間をデザインが望ましい。さらに、堆雪量と除雪エネルギーの低減には、風雪シミュレーションを並行させた都市デザインプロセスが重要である。
著者
山崎 明男 益田 貞彦 大瀬 良雄 田原 稔 中原 和樹 薬丸 一洋
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.871-875, 1998-12-01
被引用文献数
1

症例は62歳、男性。1996年11月に胸部異常陰影を指摘され、当科に入院した。既往歴には高血圧で降圧薬服用があった。胸部X線、CT上、左上葉に45x25mmの辺縁不整な腫瘤影を認めた。全身検索のために行った腹部CTでは、左副腎に内部不均一一影があった。血中、尿中ホルモン値、腹部MRI、1231-MIBGシンチを行い、術前に褐色細胞腫と診断できた。術中、術後の血行動態を考慮し、褐色細胞腫の手術を先行させ、2期的に肺癌の手術を施行する事とした。1997年1月27日、左副腎・腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は、副腎外発生であったが、副腎への浸潤はなかった。この手術の1ヵ月後の1997年2月27日、左上葉切除術、肺門縦隔リンパ節郭清(R2b)を施行した。病理は低分化腺癌、術後病理病期は、pT3NOMO stageIIBであった。上葉切除の術中、術後の血行動態は安定しており、安全に管理する事ができた。褐色細胞腫を合併した肺切除では、褐色細胞腫の手術を先行させる事により安全に手術ができると考えられた。
著者
安田 正次 沖津 進
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.43-47, 2001-03-31
被引用文献数
5

群馬・新潟県境に位置する平ヶ岳湿原が乾燥化していることが近年報告されている.その原因を探るため,現地に近い十日町・水上・片品の3地点の積雪深の経年変動を比較検討した.その結果,1970年代後半から片品の積雪深が減少していることが明らかになった.冬季の季節風の向きから,平ヶ岳は片品の風上にあり,積雪状況が片品と連動していると考えられるので,平ヶ岳も片品と同様に積雪深が減少していると推測された.一方,片品の積雪深の減少と同じ時期から水上の積雪深の増加が認められた.積雪深の減少の原因は,降雪をもたらす雪雲が水上方面に偏在したために,片品方面で降雪が少なくなったためと解釈された.この降雪量の減少が原因となり,平ヶ岳の湿原の乾燥化が起こっていると考えられた.
著者
算用子 麻未
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

長く採った挿し穂の基部と先端の両端を挿しつけアーチ状にしたアーチ型挿し木の実用方法として、小崩壊が起こり、裸地化した林道法面への緑化を考える。アーチ型挿し木での緑化の特徴は、アーチ部分へ土砂が堆積、固定されると、その土砂に植物が侵入してくることも期待できることにある。今回はアーチ型挿し木の可能な崩壊地の形態や、有効な挿し穂の配置方法の検証を目的とする。試験は東京大学附属演習林である千葉演習林と秩父演習林で行った。挿し穂の長さは80cm、両端の挿しつけ深さは各20cmとし、挿し穂を階段状に配置した。一部の挿し穂には挿し穂の抜け防止針金を実施した。樹種は千葉演習林でウツギを、秩父演習林ではフサフジウツギとバッコヤナギを使用した。また、秩父演習林では挿し付け直後にシカによる食害が発生したため、柵を設置した。千葉演習林では試験区を3ケ所設置したが、全体の生存率は35.2%と非常に低い。これは主に水分条件の悪さが影響したためと考えられる。挿し穂の抜け防止針金は非常に有効であったが、挿し穂が枯死してしまうと挿し穂が折れることが多く、それでは意味を成さないので、やはり挿し穂の生存率を上げることが重要であると言える。秩父演習林は、秋までの生存率がフサフジウツギで81.7%と非常に高かった。フサフジウツギは、シュートの成長もよく、ウツギと比べて葉も大きいため、視覚的な緑化効果は非常に高い。しかし、今回の試験地は冬季に積雪があり、その重量に耐えきれず多くの挿し穂が流亡し、3月には生存率が38.3%まで落ち込んだ。結果として、アーチ型挿し木だけで崩壊の進行や積雪による挿し穂の流亡を防ぐことは困難であり、実用するためには、斜面長の短い斜面に限るか、間伐材を利用した方法との併用など対策が必要であると言える。また、今回は試験期間が短かったため、アーチ部分への土砂の体積は観察されなかった。
著者
谷口 栄一 QURESHI Ali Gul
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

動的な手法における集配送車両は,スケジューリング期間の最初に平均旅行時間に基づいた事前最適ルートにより運行を開始する.しかしながら,ルートは集配送車両が顧客に到達するたびに,更新された旅行時間に基づいて変更される.すべての顧客は,ルート変更した配送中の車両により初めて配送されるか,すでに配送されているかどちらかであり,初期の顧客集合から除去される.ルート変更時点において集配送車両の現在位置が,車両にとって新たなルートの始点として扱われる.本年度は,上述の動的な枠組みを備えたセミソフトタイムウィンドウを有する配車配送計画問題(D-VRPSSTW)に対する厳密解法のコード化を試みた.これまで行われてきたD-VRPTWに対する解法アプローチの多くは,挿入法や局所探索のような近似解法に基づいているものであったため,本研究で取り組んだ厳密解法を構築するにあたり,数理計画手法の調査を行い,最終的にMATLAB上で実行可能なコードを得た.得られたコードに対し,シミュレーションされたデータセットに加え,東京南部を対象地域の道路ネットワークを再現した実践的かつ大規模なデータセットを用いて検討を行った.得られた結果について,2009年5月にトルコにおいて開催された第4回貨物輸送・ロジスティクスに関する国際ワークショップおよび2009年6月にメキシコにおいて開催された第6回シティロジスティクスに関する国際会議において紹介し,国内外の学術的および実務的な物流従事者と議論した.
著者
ROY C. SIDLE (2007) SIDLE Roy C (2006) BRARDINONI F. BRARDINONI Francesco
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究における調査計画は、南アルプスの山地流域(長野県と山梨県)で地すべり堆積物の動態を調べることを目的として立てられた。具体的な研究対象流域は、釜無川・尾白川・大武川・小武川と野呂川である。現在までに、以下の研究段階が実行された。1)6つの年代(1954・1968・1975・1983・1997・2005)の空中写真のセットの判読。2)デジタル空中写真画像を利用した地すべり発生と堆積物層の各点のGIS解析によるマッピング。3)航空写真を元にした見積りの補正因子の存在を調べるための、地すべりの大きさ(長さ、幅、深さ)と堆積物の勾配の現地測定。研究サイトへのフィールド調査は、富士川町と甲府市の砂防事務所の協力で行われた。野外作業には、釜無川・尾白川・大武川・小武川における地すべりイベントの試料を測定することを含んでいる。現在は積雪があるのため、さらなる野外作業は5月中・下旬に野呂川で計画している。予備的な結果では、地すべり活動が高く岩質に依存しているということが明らかとなった。地すべりの起こる頻度は、火砕物層で最も高く、花崗岩層で最も低く、石灰岩と砂岩でその間を示した。さらに、1970年代に行われた広範な森林伐採は、20年間にわたって土砂生産の割合を加速させてきたと考えられる。
著者
近藤 哲也 PHARTYAL Singh Shyam PHARTYAL SINGH SHYAM
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

・野外での実験秋における種子の成熟期には,C.giganteumの種子は未発達の胚を有しており,胚は,翌年の高温期の夏を経た秋に生長を開始した。播種してから二回目の冬の終わりから春の初めにかけて発根し,雪が解けた春に出芽した。すなわち,種子が散布されてから出芽までには18-19ヶ月の長い期間を要した。・室内での実験野外での実験では,種子散布後,「(秋→冬→春)→夏→秋→冬→春」の2回目の春に子葉が出芽した。しかし,室内の実験では,野外の夏→秋→冬→春を模した25/15℃(120d)→15/5℃(90d)→0℃(90d)→15/5℃の温度推移を与えることで,胚が生長し,発根して出芽した。すなわち,C.giganteumの種子は秋に結実するにもかかわらず,その後の(秋→冬→春)の温度は,胚成長,発根,出芽に不要であることが示された。夏→秋の温度を与えられて完全に胚が伸長した種子は,その後,90日間の冬の温度を経験させることによって幅広い温度で,高い発根率と出芽率を示した。GA3は,胚の生長に対して効果はなく,したがって,その後の発根と出芽にも効果はなかった。・種子の貯蔵採取直後の種子は,96%の高い発芽率を有していた。-20℃と0℃で密封乾燥貯蔵した種子は,貯蔵後450日を経ても80%以上が生存していたが,15℃,20℃,そして室温で貯蔵した種子は450日の貯蔵後には,生存率が20%にまで低下した。