著者
笹川 和彦 坂 真澄
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

得られた成果を以下にまとめて示す。1.折れ曲がり/テーパ付き形状の配線を想定し,損傷予測を行った。形状の異なる配線の各々でEM損傷のしきい電流密度を予測した。折れ曲がった配線のしきい電流密度の方が直線形状のそれよりも大きいことがわかった。2.上記1の形状の試験片を用いて通電実験を行い,予測結果から得た配線構造・形状によるEM損傷への依存性を確認するとともに,予測法の妥当性を示した。3.配線長が一定の下で折れ曲がり位置やテーパ方向を変化させることにより,配線構造・形状と損傷予測パラメータとの関連性を抽出した。配線内のマクロな電流密度分布が配線の許容電流に影響を及ぼすことがわかった。これより,配線構造・形状に関する長寿命化の設計指針を獲得した。4.Al積層配線に対しTEOSあるいはポリイミドの保護膜材料を組み合わせた配線を想定し,EM損傷予測を行った。同じ保護膜厚さに対してポリイミド保護膜配線の方が長寿命となる結果を得た。5.上記4の試験片を作製し加速通電実験を実施した。予測結果の十分な検証に至らなかったが,意図したとおりの損傷が発生し予測結果の傾向を確認した。6.Al配線に対しTEOS,ポリイミド,SiNを保護膜とした組み合わせ配線を作製し,ナノ押し込み試験を実施した。弾性率はSiN,TEOS,かなり離れてポリイミドの順に小さくなった。またこの順に付着強度が大きいことが示唆された。7.ナノ押し込み試験より得た機械的特性を損傷予測パラメータであるEM特性定数と比較検討した。配線の長寿命化には,弾性率が小さく配線との付着強度が大きい保護膜との組み合わせが有効であることが示唆され,これらの関連性から保護膜の材料・厚さに関する長寿命化の設計指針を獲得した。今後,保護膜機械的特性と予測パラメータ「有効体積弾性率」との関連性も考慮して,より総合的に長寿命化への検討を行う予定である。
著者
小出 達夫 横井 敏郎 町井 輝久 木村 保茂
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1.調査し得た対象校は、北海道で13工業高校中10校、東京地区で9工業高校、東北地区で5校であり、そのほか工業高等専門学校、ポリテクカレッジ、職業訓練校、都立科学技術大学、教育行政諸機関なども訪ねた。さらにアメリ力との比較研究のためオレゴン州の高校および関連諸施設・機関を調査した。2.研究成果については折に触れ論文等にしたが、それらについては別紙を参照してほしい。成果の発表の場は、日本教育学会第57大会のほか、文部省主催の全国フォーラム、北大教育学部創設50周年記念国際シンポ、北海道工薬高校校長会などの場で報告発表しれた。そのほか『調査報告・資料集』を3分冊(No.1〜3)にして刊行し、関連機関に配布した。また研究代表者の小出は、この間文部省産業教育審議会や北海道教委教育計画推進会議の委員を果たし、その点でも研究成果を社会に還元できた。3.工業高校の改革を推進する上での二つの仮説はほぼ論証し得た。仮説は、(1)地域連携の強化、(2)高等教育機関との接続の強化、の二つであるが、いずれも不可避の課題として自覚化されつつあるし、また実現の条件もできつつある。とはいえ日本の場合は遅れており、オレゴンの高校改革ほどには進展していない。4.今後は、本調査研究で得た諸事実を理論化することが課題となるが、その際本研究の理論的シューマである、平等性、差異性、責任性の4改革原理を中心にまとめることになる。
著者
栃原 裕 KIM TAE GYOU
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

実際の冷凍倉庫内の環境を想定して、冷凍倉庫内の荷役作業が人体の体温調節反応やその他の生理反応にどのような影響を及ぼすかについて実験を行った。8名の被験者とし、気温20℃、相対湿度50%環境下において20分間の椅座位安静の後、マイナス25℃環境へ移動し、10分間の椅座位安静後、10分間の作業を行い(作業なし、9kg荷役作業、18kg荷役作業)、再び10分間の椅座位安静で、計30分間の寒冷暴露とし、これを3回繰り返すものであった。その結果、寒冷作業における労動量が増加することによって熱産生量が増加することが明らかになったが、四肢末梢の皮膚温においては条件間の温度差が現れた。直腸温低下は労動量の増加によって抑制されたが、直腸温変動に対するCounting比の相関では労動作業による急激なCounting比の低下が見えた。直腸温37.2℃においてCounting比は条件18kg荷役作業で一番高く、作業なし、9kg荷役作業の順に低くなったが、36.7℃では条件作業なしが一番高く、9kg荷役作業、18kg荷役作業と低くなり、逆順序になることがわかった。これは直腸温と足趾温との相関でも同様であった。血液成分では、寒冷ストレスに対して血漿ノルアドレナルリン濃度が増加した。本実験結果もこれと同様の結果であった。本実験においては、作業による熱産生の増加により寒冷ストレスは軽減されたため、作業量増加に従って血漿ノルアドレナルリン濃度の増加量が低下したと考えられた。しかし、手作業の巧緻性は重量物の荷役などの労動によってむしろ低下した。したがって、同一時間に対する作業でも寒冷環境下の重量物の取り扱いは、作業能率の低下や荷物の落下などの危険性が高まる恐れがあるため、取り扱い時の作業時間の短縮及び安全上の確保をさらに要すると考えられた。
著者
角田 衣理加
出版者
鶴見大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

デキストラナーゼとフルクタナーゼのキメラ酵素の開発は、う蝕予防に貢献できる可能性がある。S. mutans UA159株からデキストラナーゼA(dex A)遺伝子とフルクタナーゼ(fru A, fru B)遺伝子をそれぞれクローニングし、得られた酵素をデキストランおよびフルクタンと反応させ、それぞれの基質が分解したことをSomogyi-Nelson法により確認した。本研究により開発した酵素を用いて、バイオフィルムを分解できる可能性が示唆された。
著者
山口 満 安井 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

戦後初期の中学校における日常生活課程の実践事例として、(1)甲府北中プラン、(2)福井三国中プラン、(3)岩手黒沢尻プランの3つ取り上げ、資料収集、当時の関係者からの聞き取り調査、卒業生を対象にしたアンケート調査などを実施した。(1)については、既に前年度中に調査を行い、それに基づく研究論文を発表しているので今年後は(2)と(3)の研究を中心にして進めた。その研究の成果を平成4年10月に文教大学で行われた日本特別活動学会第一回大会で「戦後初期における教科外活動の教育課程化に関する一考察ー日常生活課程の成立と展開に着目してー」と題して発表するとともに、筑波大学教育学系論集および名古屋学院大学論集に発表した。このような研究活動を通して、およそ次のような知見が得られている。1.日常生活課程の実践は、「個性豊かな民主的実践人」の育成をはかるという戦後の教育の課題に応える学校づくりの過程で生まれてきている。2.小学校の日常生活課程と比較したばあい、中学校の実践では、(ア)教科学習との正別が明瞭である、(イ)生徒会活動との結びつきがつよい、(ウ)個別的なガイダンスとの関係が問題になっている、(エ)職業教育との関連がつよいなどの特色がある。実践的な活動の分野として取り上げやすいものと取り上げにくいものがはっきりとしており、すっきりとする反面、内容のバラエティに欠けるという問題がみられた。3.甲府北中、福井三国中、黒沢尻中のいずれにおいても、地域の中学校におけるカリキュラム改造運動に一定の影響を与えるとともに、今日に至るまで特別活動の指導の分野でその影響が残っている。4.戦後の教科外活動の教育課程化の論理や実践形態を明らかにする上で、日常生活課程に注目することの重要性が改めて確認された。
著者
中尾 正義 CHENG. Z. CHENG Z
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は、主に清代の古文書を中心に研究してきた。満洲語や漢語の古文書により、清代全国に行われた国家規模な雪、雨、穀物の価格などの報告システムが明らかになった。それはこれまでの予想以上に、完全な文書システムによって広大な帝国領域を支配するために不可欠な手段であった。とくにこの研究を通して雨量の測定に関する具体的な文書が発見し、これまで朝鮮で発見された「測雨器」をもって雨を測量したという論説を根底から否定することになった。当時、雨に関する具体的な測量方法は、基本的に測量具を用いず、雨が降ったあと、地方の役人が地面を掘って、そのしみこんだ土を測り、寸、分という単位で記録して、中央政府に報告するという事実が明らかになった。時代が変わってもこのようなシステムが現在にいたるまで受け継がれ、測量器具や観察方法が進歩してきたと思われる現代にとって、清代という一つ前の時代にもこのような制度や見方が存在していたことから、当時の社会や自然に対する人間の営みが見えてきた。現在、これまで見つかった資料を中心に、歴史的な観点から自然環境と人間活動の相互作用に関する論文を鋭意執筆中である。
著者
大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、天体の超高速度衝突時に発生する蒸気雲内における化学反応の速度を実験的に求めることと、その求まった反応速度が地球や惑星の表層環境や生命の進化にどのような影響を与えたかを解明することである。今年度は、衝突蒸気雲内部における硫黄酸化物の酸化還元反応の反応速度を実験的に推定するとともに、求まった反応速度を用い、今から6500万年前のK/T事件において硫黄酸化物がどのような環境変動を引き起こしたのかについて、理論計算を行った。本研究の手法で推定された硫黄酸化物の反応速度は、既存の気相反応の文献値よりも大きく、衝突蒸気雲の最終生成物は低温で安定な三酸化硫黄が支配的であったであろうことを意味する。この場合、K/T事件の際放出された硫黄酸化物が速やかに硫酸エアロゾルを形成したと推測される。この硫酸エアロゾルの大気中での滞留時間が、環境変動を議論するうえで非常に重要である。しかしながら、既存のK/T事件の際の硫酸エアロゾルの大気中の滞留時間の推定結果は全て、衝突直後大気中で共存していたはずのケイ酸塩の再凝縮物を無視していたため、滞留時間を何桁も過大に見積もっていた。そこで本研究では、ケイ酸塩と硫酸エアロゾルとの相互作用を考慮に入れて硫酸エアロゾルの大気中における滞留時間を計算した。その結果、硫酸エアロゾルの滞留時間は数日以内と非常に短いという結果が得られた。これは、硫酸エアロゾルによる日射遮蔽はごく短期間で終了するかわり、強い酸性雨が全球的に降ったということを意味する。本研究では計算した硫酸の降下フラックスに基づき、海洋表層の炭酸イオン濃度を推定した。硫酸の降下が大気海洋間のガス交換の特徴時間よりも圧倒的に速いため炭酸の緩衝系が弱められ、従来の推定よりも数十分の一まで炭酸イオン濃度が減少すると言うことがわかった。
著者
川池 健司 馬場 康之 武田 誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、豪雨によって頻発している内水氾濫を実験室で再現するため、内水氾濫実験装置を作成した。この装置を用いて内水氾濫を発生させ、数値解析モデルの結果と比較した。その結果、内水氾濫の発生の有無および浸水規模を規定する、地上と下水道管渠の雨水のやり取りを扱うモデルとして、従来の段落ち式と越流公式では両者の間の流量を過剰に評価してしまうことが明らかとなった。当面の措置として両公式中の流量係数の改正値を提案したが、今後は新たな定式化も視野に入れた更なる検討が必要と考えられる。
著者
岩田 浩太郎
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

以下の3つの柱を立てて研究調査活動をおこなった。主な内容の概略をまとめる。I 豪農経営間の相互関係に着目した地域社会構造に関する実証研究まず、(1)大規模豪農-中小豪農の経営間の階層的関係に関する研究、を実施した。大規模豪農の金融を受けながら中小豪農が商業金融や地主経営の回転資金や村役人としての活動資金を得て自己の豪農経営を存立させる形で、豪農間にヒエラリッシュな関係構造が存在することを実態的に研究した。つぎに、(2)山形城下町商人の経営構造に関する研究、おこなった。山形城下町巨大商人の経営実態を新史料を発掘して考察し、幕末期に村山郡はもちろん南奥羽をおおう経済活動を展開し大規模豪農とも金融関係を強化していく彼ら巨大商人の蓄積様式について考察を進めた。II 幕末期地域社会の政治的経済的文化的ヘゲモニーの関係構造に関する研究まず、(1)大規模豪農-中小豪農の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究、を実施した。大規模豪農の金融力を基礎とした経済的なヘゲモニーの傘下に、村役人や組合村惣代の各管轄地域における政治的ヘゲモニーが位置付いていることを検証した。中小豪農による政治的活動は普段は独自なものだが、緊急危機時や大規模豪農の経営発展に関わる局面などにおいては大規模豪農のヘゲモニーに編成される傾向にあることを指摘した。また、(2)大規模豪農と地域社会の宗教民俗文化動向との関係に関する研究、をおこない、大規模豪農が契約講や伊勢講の整備に尽力し居村や地域の宗教文化的な諸活動を支援し、自己の地域基盤を強化し農兵組織化などの基盤を培っていった動向を考察した。III 近世近代移行期における地域社会のヘゲモニー構造の変動過程に関する総括的研究まず、(1)幕末〜明治前期における地域社会のヘゲモニーと政治情報に関する研究、を実施した。激動する政治情報の入手ルートを、豪農間の思想文化的ネットワークや本家-分家関係に基づく神職の江戸派遣などの新史料により検討した。また、(2)大規模豪農-中小豪農・村役人の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究、を総括的におこない、小作争議に直面した中小豪農が大規模豪農に連携し地主講が支配領域を越えて組織されるとともに、大規模豪農の強力なヘゲモニーのもとで農兵組織がつくられた過程を考察した。この過程で培われた豪農間の関係性は維新後の養蚕振興を中核とする地域の殖産勧業の推進主体に確実に帰結し、同時に県会議員ネットワークの基礎ともなることを展望した。
著者
目時 弘仁
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

BOSHI研究では1年間を通じて317人の登録を行い、研究開始時より計831名の参加者となった。平成20年3月31日までに出産者した正常血圧妊婦109人を対象で、心拍数とショックインデックスは妊娠経過とともに増加して妊娠33週で最高値となり、以降は減少した。一方、ダブル・プロダクトは妊娠初期から妊娠後期までに単調に増加した。妊娠経過や季節変動が心拍数やダブル・プロダクトに及ぼす影響は、妊娠経過の影響が大きかったが、ショックインデックスは季節変動の影響が大きく、夏期に顕著に上昇した。平成21年3月31日までに出産した正常血圧妊婦258名に対象を広げ、妊娠初期の基礎特性とその後の血圧推移との関連を検討した。妊娠前に肥満であった妊婦は、妊娠時の血圧が正常レベルであっても、正常BMIの妊婦と比較し有意に高値であった。また、妊娠前にBMIが18.5未満であった群では2500g未満の低出生体重児であった割合が高かった。さらに、妊娠初期の血中インスリン濃度やHOMA指数と血圧推移との関連を調べたところ、血中インスリン濃度が高くなるにつれて、妊娠期間中の血圧レベルが高くなるばかりでなく、妊娠中期の収縮期家庭血圧低下は減弱した。大迫研究では、遺伝子多型や親の長寿と高血圧新規発症・高血圧有病との関連を検討した。計53個のSNPsのうち、RGS2、ADD1、CACNA2D2、CATの4つのSNPが高血圧発症と有意に関連し、オッズ比は1.6倍から1.9倍、P値は0.01から0.04であった。両親の長寿は、子の成人時の高血圧と関連し、母親が69歳未満で死亡した場合、子の血圧は127.4±13.2/76.2±9.1mmHg、84歳以上まで生きていた場合には123.4±15.2/74.4±10.3mmHgで、長寿の母親を持っ子の血圧レベルは有意に低かった。父親の場合も同様であった。
著者
二井 一禎
出版者
京都大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

マツ材線虫病の病原体マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophllus)の日本国内での分化程度を調べるため、国内各地から採集した9つのアイソレイト間の特性比較を行った。まず、DNAのITS2(504bp)、及びHSP70A(378bp)領域の塩基配列を比較した。これらの領域は変異の蓄積しやすい領域であり、アイソレイト間比較には有効な領域であると考えられた。しかし、今回調査した9アイソレイト間ではいずれの領域でも塩基配列は完全に一致し、変異は認められなかった。また、これら9アイソレイトの塩基配列をこれまでの研究から明らかになっている海外のアイソレイトの塩基配列と比較すると、アメリカの1アイソレイトとITS2領域はすべて一致し、HSP70A領域でも高い相同性(99%)が得られ、日本国内のアイソレイトとアメリカのアイソレイトの近縁性が認められた。これは、日本国内のマツノザイセンチュウがアメリカからの侵入種であるという従来の仮説を支持するものであった。同時に、国内のアイソレイトがほぼ単一起源に近く、また、大きな分化のまだ起きていないかなり均質なものなのではないか、と考えられた。続いて、このように近縁なアイソレイトの形態や生理的特性に変異が生じていないのかどうかということを調査するために、これらの9アイソレイトに関して、形態を比較したところ、それぞれの値に関してアイソレイト間に有意差があることが明らかになり、形態においてはアイソレイト間に分化が認められた。次に,胚発生における発育ゼロ点に着目して温度に対する適応性をアイソレイト間で比較したところ、発育ゼロ点は7〜10℃となり、アイソレイト間に差があることが明らかになった。最後に、各アイソレイトの病原力に対する温度の影響を調べた結果、枯死実生の乾重、線虫数にはアイソレイト間差はみられなかった。一方、接種から枯死に至る所要日数に関しては、温度の影響、アイソレイト間差、それらの交互作用ともに有意性が認められた(二元配置分散分析)。さらに、100日目の段階における枯死率では、20、25℃の区でアイソレイト間差が認められた(カイ二乗検定)。
著者
鳥居 新平 赤坂 徹 西間 三馨 松井 猛彦 三河 春樹 三河 春樹
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.288-300, 2005-08-01
被引用文献数
5 4

2004年10月までに喘息死亡例として登録された189例についてその年次変化をみるとこれまでの報告にも指摘されているように1998年頃から減少傾向にある.<br>そこで最近の変化をみるために1988年~1997年に死亡した158例と1998年~2004年に死亡した30例に分け集計した.<br>男女比は1997年以前は97:62であったが, 1998年以降は19:11であり, とくに大きな変化はみられなかった.<br>重症度との関係に関しては1997年以前と1998年以降と比較すると不明・未記入例を除くと重症例は44%が50%に, 中等症では30%が28%に, 軽症では26%が22%となり重症例ではやや増加傾向がみられたが, 中等症, 軽症では減少傾向がみられた.<br>死亡場所と死亡年齢の関係では病院における死亡は0~3歳 (71.1%) が最も多く, 次いで7~12歳 (54.2%), 13歳以上 (39.8%) と加齢に伴い減少傾向がみられた. 一方病院外の死亡は加齢とともに増加傾向がみられた.<br>既往歴に関しては入院歴, 意識障害, イソプロテレノール使用歴は1997年以前と1998年以降で減少傾向がみられたが, 挿管歴は増加傾向がみられた.<br>死亡の要因については予期不能がこれまでの集計にもあったように最も多かった.<br>死亡前1年間の薬物療法に関してはキサンチン薬剤が多かったが, 1998年以降は減少傾向がみられ, その他ステロイド薬やβ刺激薬の内服も減少傾向がみられるが, BDIが増加傾向となり1997年以前にはみられなかったβ刺激薬貼布薬の使用があらたにみられるようになった.<br>β刺激薬吸入過度依存例は全体として減少傾向にある.<br>怠薬は全体として減少傾向がみられるが, 年齢別にみると思春期に多くなる傾向がみられる.<br>怠薬と欠損家庭の関連をみると怠薬あり群は怠薬なし群に比べやや欠損家庭が多い傾向がみられるが, 有意な差とは考えられない.