著者
和田 忠彦
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.33, pp.38-55, 1984-03-15

Con questo breve saggio, - che puo essere considerato introduttivo agli studi sull' Ermetismo italiano dal punto di Vista dell' immagine culturale della Francia che hanno gli intellettuali italiani negli anni trenta, - si cerca di sintetizzare l' europeismo degli intellettuali non-fascisti net Ventennio fascista come sfondo ideologico alla "Societa delle lettere", cioe agli ermetici. A partire dalla rivista gobettiana "Il Baretti", fra gli intellettuali inquieti per l'affermazione del fascismo, sopratutto quelli torinesi, si sentiva la profonda esigenza di europeizzare l' Italia post-risorgimentale e postgiolittiana per modernizzarla e di conseguenza farle evitare il pericolo imminente del fascismo. Quest'europeismo illuministico gobettiano si trasforma a mano in un cosmoplitismo esotico, sotto il clima totalitario sempre piu opprimente degli anni '30: fenomeno tipicamente osservabile nelle riviste fiorentine, da "Solaria" a "Campo di Marte", in cui i giovani poeti e letterati, aprofittando di una smagliatura nella politica culturale del regime fascista, costituirono una "Societa delle lettere" per ritrovare la loro raison d etre o la fiducia nel loro scrivere. Sopratutto nel "Campo di Marte", in cui laggenerazione piu giovane, compresi gli ermetici e i futuri neorealisti, cercava una forma ideale della cultura e della societa, trovando nella poesia, cie nella letteratura, la vita stessa, cioe l' unica dialettica etica per impegnarsi come uomini e come intellettuali: l' europeismo illuministico, pur attraverso l' intensissima attivita di presentare scrittori europei sulla rivista, non si poteva mai tradurre in un messaggio collettivo di tutti gli intellettuali di una generazione, ma rimase sempre un discorso estremamente personale, o meglio, un lamento costruttivo. L'ultimo biennio degli anni '30 e quindi il periodo della maturazione dell'individualismo della creazione letteraria basata sull' esistenzialismo. liberata la letteratura dall' ideologia politica: la fase forse piu saliente dell'ermetismo. D' altra parte sono proprio questi due anni quelli in cui il concetto della letteratura autarchica ed idealistica, simbolizzato dalla "Reppublica delle lettere", e la visione dell' Europa cosmopolita che lo reggeva da dieci anni, cominciavano a avere sintomi di atonia e di esaurimento. Infatti dopo la proclamazione di guerra l'Inghilterra e la Francia(10.6.1940)la tendenza dell' europeismo andava rapidamente declinando e il nuovo nazionalismo, come la resistenza e il neorealissmo, si sarebbe sviluppato nella lotta lotta anti-fascista come il Gobetti ansiosamente sognava, rompendo il clima culturalmente soffocante. In questo clima culturale dell europeismo gli ermetici abbandonarono l' idea della letteratura come espressione della realta e scelsero la fuga net mondo interiore dell' individuo come l' unica possibile forma della protesta etica contro il fascismo, ritenendo necessario creare nella Francia, vista attraverso i libri, la loro base ideologica. A ben guardare la realta francese dove, dopo il breve periodo di "ricostruzione", si rientrava nel periodo di "ansia" e si spegneva il mitico periodo del fronte unitario degli intellettuali, la Francia degli ermetici risulterebbe un' utopia nata e ingrandita nell utopistica "Societa delle lettere".
著者
井上 正一 黒田 保 吉野 公
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

海洋コンクリート構造物の耐疲労設計法を確立するために,コンクリート強度,主鉄筋量,せん断スパン/有効高比,せん断補強鉄筋量,等を要因に選んだ疲労試験を実施し,先ず,気中と水中における疲労破壊性状の相違と類似点を検討した。その結果,気中と水中での疲労破壊様式は異なり,気中では主鉄筋の疲労破断によって曲げ破壊するはりてあっても水中ではせん断破壊やコンクリート圧潰型の曲げ破壊になりやすいこと,せん断疲労破壊においてはスターラップの疲労破断を伴わないせん断破壊になりやすいこと,などを明らかにした。疲労寿命の予測手法に関しては,鉄筋やコンクリート材料の疲労性状(S-N線式)から部材の疲労寿命を予測する手法を検討した。その結果,水中でのせん断疲労寿命に関しては,せん断補強鉄筋量を多くしても疲労寿命は増加しないこと,コンクリート圧潰型の曲げ疲労寿命に関しては,土木学会「コンクリート標準示方書」の考え方は,疲労寿命予測の精度が悪く,より高精度の新たな予測式を開発する必要のあること,などを明らかにした。また,圧縮域のコンクリートやスターラップにひずみゲージを貼付し,水中における疲労破壊機構を検討した。その結果,スタラップの応力は極めて小さい値でせん断破壊し,スターラップか受け持つ分担せん断力は極めて小さい値で破壊していることを明らかにした。また,水中においてコンクリート圧潰型の破壊をしたはりにおける中立軸高さの変化は,繰返し載荷回数の増加に伴って減少する傾向にあることを明らかにした。損傷を受けたコンクリート構造物の疲労性状や損傷した構造物への新素材の適用による補強・延命効果を検討した研究によれば,コンクリート表面へのエポキシ樹脂塗膜,炭素繊維シートや炭素繊維補強板を適用することによって疲労寿命の延命効果があることを明らかにした。
著者
里田 直樹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

前臨床ミニブタモデルでこれまで免疫寛容(免疫抑制剤なしで拒絶が起きない状態)のマーカーと考えられていた制御性T細胞の特異的遺伝子;FOXP3発現が、逆説的に拒絶の早期に末梢血中で高くなることを見出した。本研究では、さらにミニブタのモデルを用いて拒絶時のFOXP3の発現のメカニズムを明確にし、FOXP3が低侵襲性の信頼できる肺移植の早期拒絶のバイオマーカーとなりうるかどうかを検討した。今後とも、本研究で早期拒絶のバイオマーカーが確立されれば全例に多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法が可能となる。さらに、この方法で肺移植の拒絶の早期における拒絶のバイオマーカーが確立されれば、すべての肺移植の患者に強力な免疫抑制剤を投与するという現行のやり方を改め、ベースラインの免疫抑制剤の量を減らしたうえで、FOXP3を拒絶マーカーとして患者のモニタリングを行い、拒絶が起きた場合には速やかに免疫抑制剤を増やすという、個々の患者に合わせたテーラーメイド的免疫抑制療法が可能となり、過剰免疫抑制による患者の感染症死を激減することができると期待される。本研究は多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法の一歩となる方向に位置づけたと言える。
著者
水越 敏行 木原 俊行 黒上 晴夫 生田 孝至 竹内 理 久保田 賢一 黒田 卓 田中 博之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

4年間で主として以下のような研究に取り組んできた。1.国際協力ボランティアとの交流を通した高校の総合的学習の研究2.中学校および高校における情報教育の開発研究3.総合的学習と情報教育を中心とした学校の診断的研究4.環境番組の連続視聴が視聴者に及ぼす影響についての研究5.異文化間理解教育における外国制作による日本用地理番組の効果に関する実証研究6.学校放送番組とWebを連携させた交流学習システムの開発と評価7.動画クリップ活用に関する実証的研究8.大学における遠隔双方向学習の事例分析と評価9.諸外国におけるICT教育の事例の動向把握10.メディアに対する子どもの態度に関する実証的研究(学校教育におけるインターネット利用の有無、諸外国間の比較に注目して)11.携帯電話などの新しいメディアについての調査研究12.高等教育における外国語教育でのマルチメディア活用そして、4年間にわたる研究成果を報告書としてまとめた。1.総合的学習と情報教育の接点(水越敏行)2.中学校の情報教育(水越敏行)3.高等学校の情報科(黒田卓)4.諸外国の情報教育(木原俊行)5.子どもはメディアをどう見ているか-比較文化的考察-(生田孝至)6.日常文化の中でのメディア教育(岡田朋之)7.テレビとインターネットをつないだ共同学習(黒上晴夫)8.遠隔学習の新しい可能性(久保田賢一)9.外国語教育におけるメディア利用(竹内理)
著者
荒巻 英司 アラマキ エイジ ARAMAKI Eiji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.281-288, 2008-03

本稿では、アマルティア・センの潜在能力アプローチが抱える問題点を指摘する。現代の厚生経済学の基礎が抱える問題点を鋭く批判し、人々の多様性に着目した新たな福祉理論の一つにセンの潜在能力アプローチがある。本稿はこの潜在能力アプローチを詳細に検討することで、その独自性と共に、問題点を浮き彫りにすることを目的としている。最初に、センがどのようにして潜在能力を定式化しているのかを詳細に考察する。次に、そこで与件として与えられている財に対する権原が、人の福祉を決定する上で本質的な役割を果たしていることを指摘する。さらに、この財に対する権原は、他者の選択から影響を受ける点でゲーム的性質を持っていることも説明する。本稿での分析の結果、センの潜在能力アプローチは個人間の戦略的相互依存性を考慮の埒外においている点で、財の所有権構造の捉え方に重大な欠陥を抱えていることが示される。
著者
陳 豊史
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

「ドナー不足」に対する打開策として、心臓死ドナー(donation after cardiac death, DCD)肺を用いた肺移植がある。DCDでは心停止後の温虚血による臓器傷害が甚大であるが、吸入による薬物投与などの手法を開発することで、傷害肺の有効利用が可能になる。これに基づき、申請者は、以下一連の研究を行った。(1) rat肺ex vivo潅流モデルを用いて、さらに優れた肺保護作用を有する薬剤の検索(2)新しいDDSを用いた薬剤の吸入効率改善についての検討(3) 大動物ex vivo肺潅流モデルの確立。
著者
天野 仁一朗 里田 隆博
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々はラットの前交連尾側端レベルの線条体中央部に、微小電気刺激および徹小化学(受容体)刺激によって開口筋と舌突出筋には同側優位の顕著なEMG活動を誘発するが、閉口筋,舌後退筋または顔面筋には何の活動も誘発しない線条体顎領域striatal jaw regionを発見した(Neurosci. Lett.,253:79-82,1998;Brain Res.893:282-286,2001)。平成14年度は本研究課題の最終段階として、解剖学者と共同して線条体顎領域SJRニューロンの線維連絡について形態学的解析を行った。1本の電極で微小電気刺激と微量トレーサ注入が同時に行なえる微小シータガラス管電極(θ管電極;先端直径25〜65μm)で誘発EMG活動を指標にSJRを同定し、SJRにコレラトキシンサブユニット(CTb)を電気泳動的に注入した。CTbの注入部は、前交連の最尾側のレベルにおいて、線条体のほぼ中央部に限局していた。逆行性標識神経細胞体は、主として、(1)大脳皮質の運動野、体性感覚野、島皮質、(2)視床の内側中心核(NCM)と束傍核、(3)扁桃体外側基底核、(4)黒質緻密部に分布していた。大脳皮質からSJRへの投射線維は主としてV層とVI層から起り、その起始領域には二つの中心が認められた。すなわち、感覚運動野顔領域と島皮質領域である。これらの皮質領域は、連続刺激によってそれぞれ異なるタイプの連続顎運動が誘発される領域である。なお、順行性終末標識を淡蒼球外節、脚内核、黒質網様部に認めた。以上の生理学実験は研究代表者・天野一朗が担当し、解剖学実験は研究分担者・里田隆博(広島大学歯学部)が担当した。なお、研究結果はNeurosci. Lett.,322:9-12,2003に報告した。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ラット孤束核への入力系を調べるため,孤束核を目標にWGA-HRPを注入した.小脳に対する損傷を最小限にするため,後頭骨の一部を除去して,小脳の一部を吸引除去の後,第四脳室尾側部を確認して,孤束核にトレーサーを電気泳動的に注入した.注入が孤束核中央部に限局した例では孤束内の線維が標識され,またそれは反対側にまでおよんでいた.注入部位の尾側部の孤束核内に標識細胞が見られると同時に,孤束内に軸索を伸ばしている舌下神経核ニューロンと迷走神経背側核ニューロンが観察された.また孤束核より,腹外側方へ伸びる軸索が観察され,孤束核ニューロンと延髄網様体ニューロンとの関連が示唆された.孤束核を中心として大量に注入された例では,同側舌下神経核,迷走神経背側核に標識細胞が見られたと同時に,顔面神経核の最尾側部のレベルにおいて正中部を通過して,反対側へ向かう軸索が観察され,両側性に三叉神経上域から三叉神経運動核内において標識神経終末が観察された.さらに吻側方においては同側の三叉神経中脳路核に多数の標識細胞が,内側・外側結合腕傍核に多数の標識神経終末が見いだされた.これらの神経細胞および標識終末は,孤束核への限局注入例と比較して,孤束核の腹側の網様体よりの入力と考えられる.一方,疑核尾側方網様体にトレーサーが注入された例でも,同側の三叉神経中脳路核に標識細胞が見いだされた.次にこの三叉神経中脳路核ニューロンの延髄および頚髄内の下行性投射を調べるため,咬筋または側頭筋にTrue BlueやFluororubyを注入して,頚髄にFluorogoldを注入し,三叉神経中脳路核内に二重標識されるニューロンの存在を調べた.その結果,中脳路核には二重標識された細胞はみあたらず,中脳路核ニューロンの軸索は頚髄には投射せず,延髄内にとどまっていることが分かった.
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ニホンザルを用い,咽頭を支配する運動神経細胞および神経終末について調べた.実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経を剖出し,その末梢枝(舌枝,咽頭枝)にHRPを注入した.また茎突咽頭筋を剖出しHRPを注入した.48時間生存の後,潅流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.茎突咽頭筋の支配神経は舌枝より分岐しており,大変細くその枝にHRPを注入するのは困難であった.咽頭枝と頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,又,これらの末梢枝は交感神経上頚神経節とも連絡があった.舌枝注入例では,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.標識細胞は下唾液核に出現した.神経節は舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝注入例では,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出力した.神経節は少数の標識細胞が下咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.又,茎突咽頭筋の支配神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ出現し,細胞緻密部には出現しなかった.以上の結果より舌枝は主として求心性の要素よりなり,咽頭枝は主として遠心性の要素よりなるが,少数の求心性要素も含んでいるということが分かった.又,茎突咽頭筋の支配運動神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ存在することが分かった.
著者
松島 龍太郎 里田 隆博 高橋 理 田代 隆
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

カルシトニン遺伝子関連ペプタイド(CGRP)とP物質はともに感覚神経の中でも特に侵害刺激(痛覚刺激)の伝達物質として働くことが考えられている。脳幹部の三叉神経脊髄路核内における両物質の分布と共存関係について検索した。この結果、CGRP陽性線維は三叉神経感覚核群の全亜核に分布しており、三叉神経主感覚核ではその背側亜核に背外側部と腹側亜核の内側縁に、三叉神経脊髄路核の吻側亜核ではその背内側部と内側部に、同中間亜核では腹内側縁と外側縁に、そして同尾側亜核では第I層、第IIo層そして第V層に分布した。これらCGRP陽性線維は大部分がP物質を共有していた。一方、三叉神経節ではCGRP陽性細胞の大部分は小型ないし中型の円形ニュ-ロンであり、P物質を含有するニュ-ロンは他の細胞に比較して小型であった。三叉神経根を切断した実験例では、同側の三叉神経感覚核群においてCGPR陽性線維のほとんどが消失した。以上の結果より、三叉神経系のCGPR陽性線維の大部分は三叉神経節由来の一次求心線維であり、P物質をも含有することが明らかとなった。すなわち、小型神経節細胞に由来する痛覚伝達線維である。一方、実験動物の一側の歯髄に炎症を起こさせた場合、同側の三叉神経脊髄路核の尾側亜核にオピオイド(ダイノルフィン)含有ニュ-ロンが増加した。これらの細胞はCGRP陽性の神経終末と接触している事実が観察された。したがって、口腔領域に発した痛覚情報は、三叉神経節の小型細胞を経由して三叉神経脊髄路核尾側亜核に投射され、上位脳あるいは局所に投射するニュ-ロンに直接に伝達されることが明らかとなった。
著者
内田 隆 村上 千景 里田 隆博 高橋 理 深江 允
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

ブタ歯胚のエナメル蛋白に関して、分子生物学的、生化学的、光顕および電顕免疫組織化学的に検索し、以下の結果を得た。1. 小柱鞘蛋白のクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した、それをシースリンと名付けた。シースリンは380または395のアミノ酸残基よりなり、そのN端側に26アミノ酸残基よりなるシグナルペプチドを持っている。シースリンはラットのアメロブラスチンと塩基配列で77パーセント、アミノ酸配列で66%の相同性を持っていた。シースリンのC端部付近にはリン酸化された糖鎖がついていると考えられるが、その部位は推定できなかった。2. シースリンは分泌後速やかに分解され、そのN端側約100〜150アミノ酸残基を含むフラグメントは13-17kDaの小柱鞘蛋白となって、小柱鞘に局在する。C端側95アミノ酸残基は29kDaカルシウム結合蛋白となり、このC端部約20アミノ酸が切断されると27kDaカルシウム結合蛋白となる。両者はリン酸化された糖蛋白であり、幼若エナメル質表層のみに局在する。シースリンの分子中央部は特定の構造に局在せず、速やかに分解される。3. エナメリンのクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した。エナメリンは1104のアミノ酸残基よりなり、エナメル芽細胞より分泌されたエナメリンは、分子量約150kDaでエナメル質最表層に位置し、ヒドロキシアパタイトに親和性を持たないと考えられる.エナメリンの分解産物のうち、N端側631アミノ酸残基よりなるプラグメントがヒドロキシアパタイトに親和性を持つ分子量89kDaエナメリンとなる。この89kDaエナメリンがさらに分解して、136番目から238番目のアミノ酸残基よりなる部分が32kDaエナメリンとなる。4. エナメル質形成において、アメロゲニンはエナメル質の形態を作り、エナメリンは石灰化開始とアパタイト結晶の成長に関係し、シースリンは小柱鞘の形成に関与していると考えられた。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ニホンザルの舌咽神経内の交感神経およびその求心性線維と遠心性線維の検索を行った。実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経の末梢枝を剖出し,その末梢枝にHRPを注入し48時間生存の後,灌流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,また交感神経上頚神経節とも連絡があった.この頚動脈洞枝にHRPを注入すると,同側の孤束核に標識終末が見られ,顔面神経核の背内側方の網様体の中にも標識細胞が見られた.また末梢の神経節においては,舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経下神経節,交感神経上頚神経節に標識細胞が見られた.舌枝に注入した例においては,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.又,標識細胞に関しては下唾液核に出現した.末梢の神経節に関しては舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝に注入した例においては,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出現した.末梢の神経節に関しては少数の標識細胞が舌咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.以上の結果より舌咽神経の頚動脈洞枝と舌枝は主に求心性の要素よりなり,咽頭枝に関しては主として遠心性の要素よりなるということが分かった.また今回の実験では舌咽神経のどの枝にも交感神経の要素が多少なりとも入っていることが分かった。
著者
川口 由彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本年度は研究実施計画に書いたように、昨年度がら収集してきた資料を更に充実させるべく、群馬県立文書館に3回、京都府立総合資料館に2回、調査に赴いた。小作争議表、小作調停受理・結果報告書、自作農創設維持計画書、地主所蔵文書などを中心に、群馬と京都という二つの地械での地域での地主小作関係の現代的内容を考察するためである。今年度の科研費は、この調査にほとんど費やしたといっていい。ここからわかったのは、京都の場合、1927年頃から小作争議解決の方式とでもいうものが登場することで、小作調停条項であらかじめ検見対象地を決めておき、地主小作立会のもと、農会の技術者が厳密に収穫量を測定し、収穫量を前提に機械的に減免額を決定するという手続の設定にまでいたっているということである。地主小作立会のもとの検見というのは、それ自体としては、江戸時代からのムラ仕事としてなされる「ムラ決め」の延長線上といえなくもないが、これを調停条項として、法的強制力を持たせたところにこの時代の特徴がある。どりわけ、争議の際の「当事者間の合意」を制度的に排除してしまった点で、地主小作人間の対立が極限にいたり、ぎりぎりのところで小作関係を継続するためこのようなシステムが生まれたと思われるのである。農林省発行の「小作年報」所載の調停条項例で見ても、京都と新潟くらいでしか見られない特異なシステムである。これにくらべると、群馬では、そもそも京都のように小作料減額免除システムをあらかじめ決めておくという解決方法が少なく、一回きりの減額や土地返還を決めるものが圧倒的に多い。例外は、全国的に「無産村」として名をはせた新田郡強戸村と、隣村の山田郡毛里田村である。この2村では争議が激甚に戦われたが、これを反映して調停条項も、当該争議以降の減額免除規定を定めるものが多い。ただ、その内容を見ると、地主小作両者からなる「委員会」をつくってここで合意するとなっているものがよく見られ、京都のように合意の契機を排除するところまでいっていない。強戸村の場合、村政も小作側が握ってしまうという特異な事態があったにせよ、従来の「ムラ決め」的要素を引ぎずっているといっていい。この相違が、農地改革期にも現れ、京都の場合は、農地改革は自明のことで、次のステップが考えられていくのに、群馬では、農地改革自体に大きな力が注がれる。農地法下の農民のあり方もこれに規定されたものとなるのである。
著者
尾関 周二
出版者
The Philosophical Association of Japan
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
no.48, pp.54-68, 1997

J. D. Bolter considers the transformation of "writing space" in the Computer age, and finds the essence of the electronic book which the print book does not have to the character of "Hypertext", which also corresponds to the direction of "Network culture" of the society. On the other hand, Bolter considers the image of man (and the mind) in the informationalized society to be "Turing's Man (i.e. information processor/semiosis)." From such viewpoints he criticizes the Cartesian view on man at the West modern ages. However, I doubt that "Turing's Man" is only a reflection of the tendency of systematization and "Versachlichung" which becomes strong more and more in society from modern ages to present age. Therefore, I think that we should understand the meaning of the informationalized society for man not only from the perspective of "writing space" like Bolter, but also the perspective of new "Oral culture" on which W. J. Ong insists. And, I related Ong's thought of the revival of the community with electronic media to Marx's community thought. In addition, I attempted to mediate them by the thought of communicative subject of Habermas and referred the "Mode of information" of M. Poster critically. Finally, I pointed out the importance of the introduction of the viewpoint of the environmental problem into the community problem because of "virtual reality"
著者
佐伯 昌彦 井村 誠孝 安室 喜弘 眞鍋 佳嗣 千原 國宏
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1593-1598, 2006-10-01 (Released:2008-03-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

Colors in nature can be classified into two categories: colors which originate in pigments (coloring matter) and structural colors, which are caused by optical path differences at the level of microscopic structures. Structural colors change according to viewing angles and lighting conditions. This paper proposes a generic method for rendering structural colors in real time. The proposed method's use of optical path differences as common parameters enables unified treatment of various types of microscopic structures and representation by textures that store optical path differences, which can speed up rendering. The proposed method can be applied to object of arbitrary shapes and enables rendering from random viewing angles and lighting conditions in real time.