著者
松井 充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.96, no.167, pp.35-48, 1996-07-22
被引用文献数
26

新しい秘密鍵暗号アルゴリズムMISTY1および、MISTY2を提案する。MISTY1およびMISTY2は128ビットの暗号化鍵をもつ64ビットプロック暗号であり、安全性の点では差分解読法と線形解読法に対する証明可能安全性を実現している点が大きな特長である。またソフトウエア・ハードウエアを問わず高速な暗号化処理が実現できるよう設計されており、例えば8段のMISTY1はソフトウエアではPentium 100MHzで20Mbps, PA7200 120MHzでは40Mbpsの暗号化速度を達成している。本稿ではこれら暗号アルゴリズムの設計原理および詳細仕様、ならびにサンプルプログラムを記載する。
著者
木村 優 後藤 千晴 谷 桃子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.529-534, 1989-10-05
被引用文献数
6 9

水中のモリブデン(VI)イオンについて活性炭の粒子表面での吸着特性を調べ,微量モリブデンの分離濃縮及び定量法について報告する.Mo(VI)を含む溶液200mlに活性炭50mgを添加して30分間かき混ぜてから〓過する.〓液中のモリブデン濃度をAAS装置を用いて測定した.モリブデン(VI)pPH3.3〜4.0において90%以上の吸着率を示した.この実験条件で吸着等温曲線を描き,Langmuirプロットをした.得られた最大吸着量は59mg g^<-1>であった.最大吸着量は,溶液にEDTAを加えると約8分の1に減じた.そのほか,シュウ酸ナトリウム,硫酸ナトリウム,塩化カリウム,塩化マグネシウム,塩化カルシウム,硝酸亜鉛などの共存する溶液中のMo(VI)イオンの活性炭への吸着率を求めた.これらいずれの塩類も共存量が増すに伴って吸着率は低下した.特に硝酸亜鉛の共存によってMo(VI)の吸着率は著しく低下したが,8-キノリノールの添加によって吸着率は90%以上に回復した.いったんMo(VI)を吸着させてから活性炭を取り出し,0.1M NaOHを加えるとMoは容易に脱離した.従って,水中のMo(VI)の分離濃縮を簡単に行うことができる.200mlの試料溶液中のMo(VI)を活性炭50mgに吸着し,分離及び脱離操作を経て最終的に1mlに濃縮した場合における試料中のMoのAASによる検出限界濃度は0.0011ng ml^<-1>の超微量である.本法を用いて,水道水,河川水及び海水中のモリブデンの分離濃縮及び定量を行った.その結果,水道水,河川水及び海水についてそれぞれ20回の操作(n=20)の平均値は,0.37(R.S.D.=14%),0.23(17%)及び7.9(8%)ng ml^<-1>であった.
著者
宇根谷 孝子 佐々木 嘉則 梅田 千砂子
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は平成14年度から平成16年度までの3年間のプロジェクトである。最終年度の成果概要は以下の通りである。1 目標…渡日前の日本語、日本での生活、キャンパス・ライフ全般におけるレディネスを高めるための、包括的な入学予備教育システムを提供する。即ち、包括的日本語予備教育システムとは、文字リテラシーの他、デジタル音声、映像技術を活用した会話モデルの提示、日本に関する文化情報、受け入れ大学および周辺コミュニティーにおける生活場面のシミュレーションなどからなるものである。2 研究の経過と到達点1)WebCTのコンテンツモデュール機能を使い、ビデオオンディマンド(VOD)教材を開発し、立命館アジア太平洋大学のWebCTコースに「04F Video Survival Japanese(forxDSL)」(htt://webct1.apu.ac.jp:8900/SCRIPT/4AA04001003/scripts/serve_home)としてアップロードした。また、本学に平成17年度4月に入学した英語基準の学生(ただし、高速回線にアクセス可能な者)を対象として同年2月にオンラインで公開した。2)約2ヶ月間インターネットを通して学習履歴データを収集した結果、1)高速回線利用者という制限にもかかわらず、韓国、中国、モンゴル、ガーナ、インドネシアなど世界中の国から26名(約10%)の学生がアクセスし、空港、APハウスなどのビデオや参考資料を教材として、日本での生活、キャンパス・ライフ全般へのレディネスを高めていることが確認できた。3 今後の計画1)日本語予備教育教材を16年度以降も引き続き遠隔地の学習者に公開し、そのフィードバックをもとに、日本語学習支援環境と内容をさらに充実させていく。2)上記の非同期的コミュニケーション手法に加えて、インターネットベースのテレビ会議やテレビ電話などの同期的コミュニケーション手法を追加し、さらに体系的な日本語学習支援環境を構築する。
著者
佐藤 しづ子 笹野 高嗣 阪本 真弥 庄司 憲明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年、従来はみられなかった若年者における味覚異常が社会問題となっている。その原因としては、ダイエット、コンビニエンス食、食生活の欧米化とそれに伴う和食の不摂取、昼夜逆転など若年者をとりまく最近の社会現象(life styleの変化)との関連が指摘されはじめている。さらに、現代社会におけるストレスは、自律神経を失調させ、味覚に重要な役割をはたす唾液分泌の低下をきたし口腔乾燥症を招き、ストレスによる若年者の味覚異常の惹起が指摘されている。しかしながら、これまで味覚異常は、高齢者についての実態調査はみられるものの、若年者における実態は全く不明であった。そこで、若年者をとりまく社会現象との関連を明らかとすることを目的として、若年者の味覚異常の実態(発症率・病因など)について疫学調査研究を行った。調査研究に同意を得た本学歯学部新入生153人に、濾紙ディスク法を用いた味覚検査、唾液分泌量測定および味覚異常の原因に関する問診を行った。その結果、1)全体の24.8%に味覚異常がみられた。殆どは、軽度味覚異常で、高度味覚異常者はいなかった。味覚異常者の9割以上には、味覚異常感はなかった。2)味覚異常者全員の唾液分泌量は正常だった。3)味覚異常者には、全身疾患および服薬はなかった。4)味覚異常者には、ストレス、睡眠時間、インターネット使用、香水使用との関連はみられなかった。5)味覚異常者には、朝食欠食者が多かった。6)味覚異常者では、豆類、魚貝類、海草類の食品摂取頻度が少なかった。7)味覚異常者には、貧血様症状と体重減少者が多くみられた。以上より、若年者における味覚異常は食生活との関連が深いことが判明し、若年者の全身健康のために味覚検査と食事教育が必要であると思われた。
著者
平岡 真合乃 恩田 裕一 加藤 弘亮 水垣 滋 五味 高志 南光 一樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.145-150, 2010 (Released:2010-08-10)
参考文献数
29
被引用文献数
14 19

ヒノキ人工林における地表の被覆物が浸透能に及ぼす影響を明らかにするために, 急峻な斜面の14地点で振動ノズル式散水装置による浸透能試験を行って最大最終浸透能を測定し, 下層植生をはじめとする地表の被覆物との間で回帰分析を行った。得られた最大最終浸透能は5∼322 mm h−1 であり, 最大最終浸透能と下層植生量, 植被率との間に有意な正の線形関係が認められた。植被率が50% を下回ると最大最終浸透能は45 mm h−1以下と低くなり, 自然降雨下においてホートン型地表流の発生する可能性の高いことが示された。また, 植被率をブラウン-ブランケの被度指標で読み替えた場合でも, 被度3以下で最大最終浸透能が急激に低下することが示された。本研究の結果から, 急峻なヒノキ林斜面では下層植生で被覆された地表面で高い浸透能を維持できること, また下層植生の被度区分を浸透能の指標とできる可能性が示唆された。したがって, ホートン型地表流を抑制する観点から浸透能の目標値を設定し, 下層植生の被度調査によってヒノキ林の荒廃度を評価できる可能性があり, 下層植生を指標とした水土保全機能の評価に基づいた, 施業計画の策定につながることが期待できる。
著者
昆野 安彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.167-170, 1998-08-25
被引用文献数
2 3

The insecticide susceptibility of the Fall Webworm, Hyphantria cunea and its parasitoid fly, Exorista japonica, was studied. Larvae of H. cunea were hardly susceptible to organophosphorus insecticides, such as fenitrothion (LD_<50>=>100μg/larva) and isoxathion (LD_<50>=54μg/larva). However, adults of H. cunea were quite susceptible to fenitrothion (LD_50<50>=1.4μg/male and 2.2μg/female). Adults of E.japonica emerging from pupa of H.cunea were very susceptible to fenitrothion (LD_<50>=0.082μg/adult). The results suggest that a judicious choice of insecticide is necessary to control H.cunea, if E.japonica is used as a biological control agent, too.
著者
Bao-qiu Li Xin Dong Shi-hong Fang Gui-qin Yang Ji-you Gao Jian-xin Zhang Fang-min Gu Hua Zhao
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.279-286, 2010-06-01 (Released:2010-06-01)
参考文献数
23

Aim: Non-cell corynebacterium parvum product (NCPP) is a new preparation of corynebacterium parvum (CP), an immunomodulator that displays anticancer activities. It is prepared by nanotechnology and is intended to minimize the side effects of CP. The aim of the present study was to evaluate the immunogenicity and systemic toxicity of NCPP compared with CP in animals. Methods: 30 monkeys were randomly divided into 5 groups and given CP (3 mg/monkey), three doses of NCPP (9, 3, 1 mg/monkey) and 0.9% normal saline (NS, 4 ml/monkey) individually by intramuscular injection twice a week for 13 weeks. The immunogenicity and systemic toxicity of NCPP and CP were compared. Results: NCCP and CP caused histopathological changes in the liver, spleen and kidney, but pathologic changes in NCCP-treated groups were slighter than that in the CP group. Only 9 mg/monkey of NCPP caused the similar damage as the CP in intensity. Deposition of immune complexes in the glomerular basement membrane was observed only in the CP group. ELISA detection showed that the anti-CP antibody was at a high level, while the anti-NCPP antibody was at low level and disappeared during the recovery period. Conclusion: Our study has led to the view that NCPP is safer than CP.
著者
赤間 知子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

生体分子において重要な光化学反応の電子的メカニズム解明のためには、大規模系の電子状態ダイナミクスを記述できる理論的手法の開発が必要である。報告者はこれまで、分割統治法を用いた大規模系のための高速化法の開発と、実時間発展形式の時間依存Hartree-Fockおよび時間依存密度汎関数理論(RT-TDHF/TDDFT)による電子ダイナミクスの記述に関する研究を行ってきた。今年度は、大規模電子状態ダイナミクスシミュレーションの実現に向けて、電子ダイナミクスに関する下記のような研究を行った。以前の報告者の研究において、ホルムアルデヒド二量体のRT-TDHF/TDDFT計算に対して短時間フーリエ変換解析を適用することにより、光誘起された分極が分子間で伝播する様子を追跡できることがわかっている。今年度はさらに研究を進め、分子間で起こる伝播の周期は分子間相互作用により生じた2つの擬縮退励起状態のエネルギー差に対応しており、励起状態と関連付けた電子ダイナミクスの解析が可能であることを明らかにした。さらに、伝播周期の距離依存性を検証することにより、分子間相互作用の主要な成分を解析した。(J.Chem.Phys.132,054104)また、これまでのRT-TDHF/TDDFT計算では主に数値グリッド基底や平面波基底が用いられており、取り扱われるエネルギー領域は価電子励起のみに限られていた。報告者は、ガウス型基底を用いたRT-TDHF/TDDFT計算のフーリエ変換解析によって、価電子励起だけでなく内殻励起に対しても周波数領域のTDHF/TDDFTの結果を再現できることを確認した。(J.Chem.Phys.132,054104)さらに、周波数領域のTDDFTで価電子励起・内殻励起ともに高精度に記述するために開発されたCV-B3LYP汎関数をRT-TDDFT計算に適用し、RT-TDDFT計算においても内殻励起を高精度に記述することに成功した(Chem.Lett.39,407)
著者
末木 新
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.277-284, 2010-03-10

The purpose of this study was to review CMC (Computer-Mediated Communication) theories in order to unify the ambivalent functions of suicide message boards, namely the suicide-preventive function (e.g., self-help group) and suicide-inducing function (e.g., Internet suicide pact). The study also aimed to clarify the research task that was not treated in the existing theories. In this study, as a major CMC theory, Cues Filtered Out, Hyper Personal Communication, and the Social Identity model of Deindividuation Effect were introduced and considered in terms of their relation to suicidal communication via the Internet. In addition, ease of reusing postings and emoticons were considered as a feature of CMC that cannot be treated by the above theories. By using the above process to construct a web-based communication system with suicide-preventive functions, it was shown that future research is necessary to study the interaction between the user's personality and the technical features of CMC.
著者
宮村 司
雑誌
理学療法 = Journal of physical therapy (ISSN:09100059)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.305-313, 2005-01-15
被引用文献数
1
著者
岡本 健
巻号頁・発行日
2010-10-23

【シンポジウム】札幌CGM都市宣言(β) : 札幌をCGMから考える(http://sapporocgm.info/). 平成22年10月23日. 大通り公園六丁目野外ステージ. 札幌.
著者
福田 基一 和泉 晴夫
出版者
山口大学
雑誌
山口大学工学部研究報告 (ISSN:03727661)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-76, 1965-11

To examine the effects of length of an exhaust pipe and engine speed in a small four-stroke cycle engine, the authors have measured the output of the engine and analysed some pressure diagrams for the exhaust pipe. Some conclusions obtained in such experiments are summarized as follow : 1) The maximum output occurs on account of the innertia effect of the exhaust system. 2) The maching conditions are expressed approximately by the following equation Q=cθ/12kNl where c : mean sonic velocity in exhaust system θ : period of exhaust port opening k : maching factor N : engine speed, r.p.m.l : length of exhaust pipe+correction value of open end. The maximum output occurs in case of Q≒1.
著者
窪薗 晴夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、これまで体系的な研究に乏しかった複合語の音韻構造を対照言語学・一般言語学的な観点から考察し、日本語と英語の複合語音韻構造の中の普遍性と言語個別性を明らかにすることを目的としている。この研究から次の4点が明らかになった。1.日本語のアクセント現象の記述・説明のためには、従来から言われてきたモーラという単位に加え、音節という単位が不可欠であり、この単位を用いて分析することにより、日本語と英語のアクセント現象に見られる抽象的なレベルでの共通性を捉えることができる。2.複合語を構成する二つの要素のうち、どちらのアクセント(強勢)が複合語のアクセント(主強勢)として生き延びるかを対照言語学的観点から考察すると、多くの言語において複合語の修飾語(modifier)が主要部(head)を統率するという共通した特徴が観察される。ただし日本語の東京方言はこの例外となる。3.音声素性という概念を用いると、「蝶々」という反復複合語が「てふてふ」から「ちょうちょ」へと母音部分の発音を変えたという歴史的事実を、「痛い」が「いてえ」となるような共時的母音融合の現象と同一の音声過程として記述できる。4.複合語アクセント規則をはじめとするアクセント規則と、母音挿入や子音削除のような分節音変化との関係を多言語について考察した結果、分節音変化が生じる前の音節構造(つまり一昔前の表層構造)を入力としてアクセント規則が適用されるケースが観察された。
著者
永田 正義 福本 直之 菊池 祐介
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では磁化同軸プラズマガンを用いた磁気ヘリシティ入射法により、プラズマ中に駆動される高速イオン流の特性について各種流速計測法(マッハプローブやイオンドップラー分光法等)を用いて調べながら、電子流体だけでなく、イオンの流れが強く関与する高ベータ磁気流体プラズマの自律的磁場構造形成について解明を行い、2磁気流体緩和物理について理解を深めた
著者
平岡 公一 山井 理恵 斉藤 弥生 大坂 純 志水 田鶴子 菊池 いづみ 秋元 美世 新保 幸男 岡部 耕典
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本における多元的福祉ガバナンスのもとでの福祉サービスの質の確保策の現状と課題、および将来展望について、国際比較的な視点をふまえ総合的に検討した。地方自治体における実施状況、あるいは民間組織の先進的な取り組みの事例の分析に基づいて検討した結果、サービス実施アプローチに適合的な適切な質の確保策を選択すること、さまざまな質の確保策の間の機能分担関係を明確化することなどの課題が明らかになった。
著者
和田 倶典 FULGIONE Wal SAAVEDRA Osc GALEOTTI Pie 斎藤 勝彦 山下 敬彦 高橋 信介 中川 益生 山本 勲 井上 直也 岬 暁夫 WALTER Fulgi OSCAR Saaved PIERO Galeot
出版者
岡山大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は[LVD(Large Volume Detector)]実験と,[LMD(Large area Massive particlesDetector)]実験から成る。これらの実験の目的は大統一理論から予想される新しい粒子や物理学,また宇宙からのみ飛来することが期待される新粒子,天体物理学などである。これらの実現には人工加速器は無力であり,そのため非加速器物理が押し進められている。[1]LVD実験:特に,ニュートリノ反応や,新粒子の出現頻度はきわめて稀なため,大規模で極端に低いバックグウランド状態の実験所が必要となり,それらの条件を満たす実験所がイタリア,グランサッソ-に建設されイタリア国を中心にロシア,米国,日本,中国,ブラジル等の参加でLVD計画が始まり,日本は我々のグループが参加して,平成2年,3年,4年とLVD建設に協力してきた。LVDの第一期計画のタワー1が完成し,世界最大容積の液体シンチレータデータが取れるようになり,平成4年6月から測定に入った。これにより、LVD実験の目的である(a)星の重力崩壊からのニュートリノバーストの研究,(b)太陽ニュートリノの研究,(c)陽子崩壊の研究,(d)隠れたニュートリノ天体源の研究,(e)ニュートリノ振動の研究,などの成果が期待される。さらに,LVDとしてはタワー2,3の建設が始まっているところである。LVD実験は休みなく運転を続けており,現地グランサッソ-地下実験所にて装置の運転及び実験目的の解析を行うことが本研究の目的である。それらの目的を達成するため,平成6年以降,日本から現地(イタリア,グランサッソ-地下実験所)におもむき,装置の運転及び共同作業やデータ解析などを行ってきた。それらの成果は平成7年ローマで開催された第24回宇宙線国際会議で10編の報告を行った(10.研究発表の項目参照)。また,LVD装置の運転(シフト)業務は各国で分担しているが日本グループとしては年間,最低4週間(2シフト)従事することになっているので,この業務を最優先し,平成7年度は3シフト行った。また,日本グループ独自の解析を行うためのデータ転送,調整などの調査を行い,見とうしをつけた。[2]LMD実験:本実験の研究目的は(f)超低速・超重粒子の探索,(g)超高エネルギーミューオン物理学の研究である。LMD実験も平成6年9月に40平方メートルの改良型TLシートスタック[TLS]をイタリア,モンブラン地下実験所に設置したので,(f)超低速・超重粒子探索の可能性の検討が十分成しえるよう,(ア)現地モンブラン地下実験所及びトリノ大学にてTLSの回収と解析を行うことと,(イ)TLシートが超低速粒子に感度を持つか実験を行うことが本年度の計画であった。TLSはTLシートとX線フィルムを多数枚重ねたものからなるが,今回は改良型TLSで真空パックをした。(ア)は平成8年2月に回収を行い,40平方メートルX8枚のX線フィルムをすべて現象し,解析を行った結果,3例の超低速・超重粒子候補イヴェントを見い出した。ただちに,対応するTLシートの15箇所をTL読み取りシステムで読み取り,ビデオカセットに収録し,日本でも解析できるようすべてのテープをコピーした。現在,そのビデオテープから解析中である。(イ)の実験は低速アルゴン・イオンビームで行った結果光速度の一万分の一程度でもTLシートが感度を持つことが判明し,超低速・超重粒子がTLシートに入射した時の発光量も計算することが可能になった。計算から予想される粒子による発光がバックグラウンドによる発光よりも多くなれば検出がむつかしくなる。TL発光がそれほど多量ではないことが判ったので,モンブラン・トンネル内のバックグラウンドが大きく影響することになる。モンブラン・トンネルに比較してバックグラウンドが少ないと予想される(50%から10%)グランサッソ-地下実験所にTLSを設置すべく,準備を平成7年8月に始めた。バックグラウンド計測用TLシートをグランサッソ-・トンネル内のLVDタンク上に三箇所設置した。平成8年2月にTLシートの一部分を回収し,読み取りを行った。これらもテープをすべてコピーしたので,半年間でのグランサッソ-トンネル内のバックグラウンド量が計測でき,モンブラン・トンネルと比較できる。一年後のバックグラウンド計測と併せて、新しいTLSの設置場所を検討する予定である。
著者
小川 数也 松崎 加奈恵
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-46, 1987-07

三宅島周辺浅海域に生息するムギワラエビの摂餌生態を実験室内にて観察した。本種には3タイプの摂餌方法がみられる。第1のタイプは鉗脚で歩脚のGroomingやCleaningを行った後,第3顎脚を使って鉗脚指節・掌節剛毛に捕捉された懸濁物質塊を掻き取り,これを摂蝕する方法である。この行動は休みなく,ほぼ規則的に行われる。現場で固定した標本の胃内容物は,デトライタスと砂粒であったことから,この摂餌方法が基本的なものと思われる。第2のタイプは粉末餌料等を投与した直後にみられるもので,第3顎脚を伸ばし,盛んにすき取り運動を行い懸濁餌料を直接捕捉する方法である。また,餌料を投与すると歩脚を順番にゆるやかに伸ばし,タイプIの摂餌も同時に始まる。第3のタイプは狭い容器内でみられた特殊な場合で,海綿類など他の試料と一緒に入れた際,これを鉗脚・第3顎脚で直接捕捉しむさぼり喰うものである。本種はツノサンゴ類やヤギ類に懸着共生するのに都合の良い極めて長い歩脚を有しているが,これを十脚甲殻類に広くみられるGroomngやCleaningの他に,摂餌の機能に利用している。なお,これまでの観察記録から,本種の寿命はほぼ一年,抱卵は年1回と推定される。