著者
梅津 光弘
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本年度は3か年におよぶ研究の最終年として、これまでの研究成果をふまえた日米の比較およびまとめをおこなった。4月には日本経営学会関東部会,8月にはアメリカ経営倫理学会、9月には日本経営学会大会、慶應義塾商学会例会、10月にはアメリカ企業倫理担当者会議においてそれぞれ研究発表を行った。日本における不祥事にはいくつかのパターンが見られるが、その誘因としては組織内における営利を最優先する組織文化やそのなかで慣例とされている多くの業務遂行方式があげられる。そうした慣行が放置されると現場の従業員は倫理や法令遵守よりも営利を優先して当然とする錯覚に陥り、無自覚なまま不正行為を行い続けることになる。また不正行為がはびこる職場ではコミュニケーションの悪さが目立ち、管理者に対する隠ぺい工作などが行われ、現場と管理者との認識や価値観の乖離を招く傾向がある。欧米においてもこのような傾向は見られるものの、法令や倫理を経営トップが重視する方針が明示されると、従業員はそれに従う傾向があるのに対し、日本の企業においてはより現場にちかい監督者やその部署の風土、同僚の影響などが大きな要因となる。こうした、日本的な組織の特徴を考えると、法令遵守や契約を重視する企業倫理プログラムよりも、価値共有を浸透させる組織内制度の構築が重要であることが分かる。本研究の成果として、日本の組織における組織内不正行為の防止およびその再発防止策としてはリーダーシップの重要性や細かいルールの策定もさることながら、より現場に密着した組織文化の構築や、分かりやすい原則を徹底することが重要かつ効果的な施策であると結論付けることができる。ここ数年、日本の企業においても企業倫理プログラムを導入するところが増加しており、以前に比べると改善が見られるものの、法令遵守を強調する倫理プログラムが多く、また一部の企業では表面的な制度の導入にとどまり、組織内における価値観の共有、浸透・徹底が不十分である。また現場に対する教育・訓練野実施も不十分である。今後は日本の企業をはじめとする各種の組織において、より自発的な浸透への努力がなされるべきであり、そうした能動的な倫理や法令遵守にかんする理解と取り組みなしでは、真の意味での再発防止にはつながっていかない。今後いっそうこの分野における研究と日本的な組織風土にあった制度化のイノベーションが求められている。
著者
土井 正
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究における「不利益情報」とは、自らにとって必ずしもプラスにならないネガティブな事象、事件や事故の経緯・状況等についての情報のことで、会社(組織)やステークホルダーに対し、近い将来損失を与えかねない事実についての情報すべてを含む、きわめて広範な概念である。本研究では、組織内外の「情報と伝達」(必要な情報が組織や関係者に適切に伝えられること)に焦点を当て、「不利益情報」の開示、共有、および管理の現状と組織体制等について、1.企業(組織)外のステークホルダーとのコミュニケーションの重要性、2.企業(組織)内部における適切な情報と伝達(のための組織体制および風土、意識)、という2つの視点から組織マネジメントの実態を調査し、現状における諸問題を実証的に検討することとした。さらに、管理可能な「見える」測定指標づくりを指向した。本年度の研究は、次のとおり実施した。1.研究協力企業の絞り込みと予備調査・20社程度の訪問調査対象企業とテーマ(課題)の絞り込みを行う具体的には、以下の企業のCSR/広報担当者との面談調査を行った・東京電力、三菱重工業、日本オラクル、日本商工会議所、鹿島建設、富士テレコム、日本ハム、、NECネッツエスアイ、出光石油、アサツーディ・ケイ、新日本監査法人2.調査ならびに分析のためのフレームワークの決定・企業人(10名)をメンバーとした研究会を組織し、定期的、継続的な会合を持った3.次年度以降の課題を明確化を図った・現状の視察、各企業の資料収集などのため、各社のCSR担当者だけでなく社員各層への聞き取り調査に取り組む。・日本版SOX法導入後の内部統制の実施状況について整理する。以上
著者
木南 英紀 横沢 英良 鈴木 紘一 田中 啓二 中西 重忠 水野 義邦
出版者
順天堂大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

特定領域研究「蛋白質分解-新しいモディファイアー蛋白質による制御-」(平成12年度〜平成16年度)が終了したので、その成果をとりまとめ、研究成果報告書を文部科学省に提出した。本研究のテーマとした細胞内の主要な蛋白分解システムであるユビキチン・プロテアソームシステム研究とオートファゴソーム・リソソームシステム研究は、研究期間の5年間に大きな進展が見られた。ユビキチン・プロテアソームシステム研究では、このシステムが広く生物・生命現象に関わることが定説となった時点で、一昨年ユビキチンの基質蛋白質への結合反応の発見についてノーベル化学賞が贈られた。本特定領域研究で得られた成果は、その後のこの領域の生物医学的研究の発展に、極めて大きな貢献をした。また、日本発信の研究であるオートファジー研究では、本特定領域研究チームの研究成果は世界最先端を行っており、平成17年度においても世界に注目される成果が出されている。研究成果報告書の提出に加えて、この特定領域研究で得られた研究成果を社会の方々に広く知っていただき、より理解を深めていただくという趣旨で公開講座を平成17年12月24日に順天堂大学有山記念講堂で行った。「いきいきとした細胞、そして健康を保ために」というタイトルで、副題を「タンパク質分解の重要性」とし、5人の演者から世界トップレベルの研究内容をわかりやすく、面白く話していただいた。最後に5人の演者が登壇し、パネルディスカッションを行ったが、150人ぐらいの出席者の中から、次々と質問が出され、討論時間の30分はあっという間に終わった。細胞の中で蛋白質がつくられた後なぜ壊されなければならないか、蛋白質の分解が健康維持や病気の原因・進行にどう関与しているのかという疑問に対する科学的な説明は、かなり理解していただいたように思えた。蛋白質分解の研究領域が益々発展することを祈念する。
著者
伊藤 壽美代
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.42-46, 1954
被引用文献数
1

(1)ヒトスヂシマカとヤマダシマカの終齢幼虫を, 五対毛(α, ε)の分岐数によつて鑑別する従来の知見を, 推計学的に再検討した.(2)材料は1952年秋に京都市西南丘陵地帯の竹林内で採集した両種雌成虫を個体別に飼育産卵せしめ, これより孵化した幼虫を, 夫々親別に分けて飼育し, 得られた終齢幼虫脱皮殻につき, 上記両毛の分岐数を計測した.(3)供試数は, ヒトスヂシマカ3群, 計156個体, ヤマダシマカ5群, 計194個体である.(4)両種各群における平均値の均一性を検定した結果, ヤマダシマカのa毛のみが高度に有意となり, 他は有意ではなかつた.この原因は不明である.(5)両種全測定個体について, 両毛分岐数の分布型を調べた結果いずれも概ね正規型分布をすると認定した.(6)両毛分岐数の母平均の信頼限界は, ヒトスヂシマカのa毛2.93〜3.09, 同ε毛2.46〜2.64, ヤマダシマカのa毛6.77〜7.09, 同ε毛7.98〜9.22である.(信頼度95%)(7)種々の危険率における両毛分岐数の棄却限界を比較した結果, これらの分岐数による両種終齢幼虫の鑑別は危険率2%以上においてのみ可能であり, またa毛が5岐する個体はヤマダシマカに属し, ε毛が5岐する個体はいずれに属するとも云えないことが結論された.終りに本研究のテーマを与えられ, 終始懇切な御指導を賜つた恩師中田五一先生, 並びに推計学的処理について, 絶大な御教示を仰いだ大阪市立大学理工学部の大沢済先生に, 深く感謝の意を表する.
著者
金藤 敬一 高嶋 授
出版者
九州工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

導電性高分子ポリピロール(PPy)は、電解重合成膜時の支持電解質調整により、全く相反する二つの伸縮特性、即ち陰極膨張性及び陽極膨張性を示すフィルムを作成可能なことが明らかとなった。これは、ドーピングに寄与するイオンの極性が反転したためとして説明付けられる。これらの相反的な変形を示すフィルムを各レイヤーとして二層構造に配置することにより、両層ともに伸縮活性なバイモルフ型アクチュエータが作成可能であることを見いだした。これは、PPy自立フィルムの両面における正負両イオンがシンクロ的に脱注入することが駆動源と見なされることから、従来型の単層・単イオン駆動型バイモルフアクチュエータと識別する意味で"バイアイオニックアクチュエータ(BIA)"と称される構造体である。従来、バイモルフアクチュエータは伸縮不活性な支持層と伸縮活性な伸縮層との間での自然長変化による共有接合界面での大きな変形ストレスが駆動因子である。ここに提案するBIAは、(1)両層とも伸縮活性であり、同一ポリマーをホストとした断続的な電解重合法により二層構造を形成させるために(2)シームレスな界面を形成するといった特徴を有しており、剥離性問題が無い強靭な接合界面はまた、駆動寿命を飛躍的に増大させる可能性を有している。従って、BIAは、バイモルフ型ソフトアクチュエーターとしてより理想的な駆動機構を有する構造体であり、導電性高分子の有するフィルム変形の機能性を十分に生かした構造体として、今後高い応用性が期待される。
著者
岩井 一宏
出版者
大阪市立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

von Hippel-Lindau(VHL)病の原因遺伝子として同定されたVHLは80%以上の腎細胞癌においても欠損しているがん抑制性遺伝子である。その産物であるpVHLはelongin B、elongin C(VBC複合体)との結合を介してCul2と結合し、pVHLリガーゼ複合体を形成しており、pVHLはその基質認識サブユニットとして機能する。また、Cul2のユビキチン様蛋白質NEDD8による修飾がpVHLリガーゼの活性制御に必須である。pVHLリガーゼの活性中心であるRINGフィンガー蛋白質:Rbxlは、Cul2のNEDD8化、基質のユビキチン化活性を制御しているが、その機能メカニズムには不明な点が多い。そこで本年度はRbx1の変異体を作成することにより、Rbx1のCul2のNEDD8化、基質のユビキチン化制御メカニズムについて検討を加えた。その結果、基質のユビキチン化のみを選択的に抑制する、あるいはCul2のNEDD8化を選択的に抑制する変異体を見いだしたことから、RbxlはNEDD8とユビキチンのE2両者と結合してそれらモディファイヤーによる修飾を触媒すること、それらE2とRbxlの異なった部位で結合していることが明らかとなった。本研究のもう1つのテーマである鉄代謝の制御因子IRP2の鉄依存性ユビキチン化に関してはIRP2のヘム依存性分解メカニズムに関して解析を進め、IRP2特異的なIDD (iron-dependent degradation)ドメインに存在するheme-regulatory motif (HRM)がヘム結合部位であり、その周囲のアミノ酸残基を酸化することによりHOIL-1ユビキチンリガーゼで識別されユビキチン化されることを明らかにした。(投稿中)
著者
永山 國昭 森 泰生 岡村 康司 宇理須 恒雄 青野 重利 高橋 卓也 渡辺 芳人
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

[複素顕微鏡]炭素膜を用いる位相板には物質透過に伴う電子線損失がある。この問題を解決し像の感度を上げるため無損失位相板の開発を試みた。Aharnov-Bohm効果を用いると、ベクトルポテンシャルが電子線の位相を変えるため電子線損失がない。ループ型微小磁石と棒型微小磁石の2つの位相板につきテストし、棒磁石型の場合無損失位相板が成功した。[チャネル蛋白質]形質膜における、一酸化窒素(NO)センサーカチオンチャネルとして働くTRPC5による、NO感知の分子機構を明らかにした。TRPC5のチャネル腔を形成するpore領域近傍のシステイン残基を、NOはニトロシル化し、その結果生じるコンフォメーション変化により、空間的に近接する内部ゲートが開くことが示された。[電位センサー蛋白質]イノシトールリン脂質のうちPIP2によって活性が変化することが知られているKチャネルを電位センサー分子(VSP)とともにアフリカツメガエル卵母細胞へ強制発現させ計測し、酵素活性が膜電位依存的に制御されることを見出した。更に電位センサードメインをもちボア領域を欠く別の膜タンパクがチャネル活性をもつことを示した。ヒト電位依存性NaチャネルNav1.6分子の機能の多様性を明らかにするためアンキリンGとNav1.6を共発現させ不活性化に及ぼす影響を検討した。[蛋白質機能素子作製]シリコン基板に微細貫通孔を形成する技術を開発し、ここに脂質二重膜/イオンチャンネル(グラミシジン)を再構成して単一イオンチャンネル電流を計測することに成功した。微細孔構造を工夫することで、シリコン基板として世界最小の雑音電流(貫通孔径50μmで〜1pA rms、テフロン基板と同程度)を得ることが出来た。
著者
前島 正義 中西 洋一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

二年間での本研究プロジェクトは,液胞膜のイオン輸送システムに焦点を充て,カチオン/H+交換輸送体,亜鉛輸送体,プロトンポンプを具体的な研究対象とし,次の成果を得た。(1)液胞膜カチオン(Ca^<2+>)/H^+交換輸送体(CAX1a):イネには5種のアイソフォームが存在し,一次構造,金属イオン選択性,発現細胞において明確な特徴をもつことを明らかにした。その中でもCAX1aは液胞膜に局在し,どの器官においても発現が観察されるが,とくにカルシウムが集積し高濃度になる細胞での遺伝子発現が顕著であった。したがって,液胞へのCa^<2+>の備蓄という役割に加えて,過剰Ca^<2+>を液胞に排除する機能をもつと推定した。また,システインスキャニング法によりCAX1aの膜内分子構造を明らかにし,部位特異的変異導入法によりイオン選択性に関わるアミノ酸を同定し,分子モデルを提案し,世界的に認められるに至った。(2)液胞膜亜鉛輸送体(MTP1):植物液胞膜の亜鉛能動輸送体としてMTP1分子を同定した。MTP1遺伝子欠失株は,高濃度(0.2mM)の亜鉛に対して感受性となり,根の伸長阻害,葉肉細胞の壊死など著しい障害を受けることを明らかにし,亜鉛を液胞へプールする役割と共に高濃度亜鉛障害を回避する役割を担っていると判断した。MTP1は液胞膜でのH^+勾配を利用するZn^<2+>/H^+交換輸送体であることを生化学的手法で明らかにし,さらに輸送機能に関わるアミノ酸残基も特定した。(3)液胞膜プロトンポンプ(H^+-PPase):液胞膜H^+-ピロホスファターゼは液胞の酸性pHを維持し,液胞膜プロトン勾配を形成する酵素である。その遺伝子欠失株が,生育不良を生ずることを明らかにし,正常な植物の成長に不可欠であることを明らかにした。その分子構造,膜内配向性を解明して分子モデルを提案し,世界的に受け入れられるに至った。
著者
武士俣 優 中村 文彦 岡村 敏之
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
鉄道技術連合シンポジウム(J-Rail)講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, no.13, pp.377-380, 2006-12-13

首都圏郊外では、郊外鉄道は都心までのアクセス手段として充実したサービスを提供しており、高い交通機関分担率を示しているが、日中の地域内交通としては必ずしも高くない。本研究では、日中の地域内交通としての鉄道利用の顕在化を妨げている要因を明らかにすることを目的として、東急田園都市線沿線の郊外地域を対象にアンケート調査を実施した。調査結果より、アクセス交通の問題を含む「総移動時間の長さ」、「鉄道の移動性の低さ」が地域内交通としての鉄道利用の顕在化を妨げている大きな要因であることが明らかになった。
著者
赤木 和夫 朴 光哲
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

導電性高分子のポリアセチレンにらせん構造を付与したヘリカルポリアセチレンを合成し、さらにその種々のキラル化合物を合成することにより、不斉液晶場でのアセチレン重合を展開した。(1)キラルネマティック液晶からなる不斉反応場でアセチレンを重合することにより、らせん構造をもつヘリカルポリアセチレンを合成した。ポリアセチレン鎖およびそれらの束であるフィブリルのらせんの向きは、左旋性と右旋性のキラルドーパントを使い分けることで自在に制御できることを見出した。(2)次に、軸性キラル化合物以外のドーパントして、不斉中心を持つフェニルシクロヘキシル化合物を合成した。軸性キラルバイナフトール誘導体よりも半分以下の旋光度をもつこの分子系からなる不斉液晶場においても、ヘリカルポリアセチレンが合成できることを示した。同時に、ヘリカルポリアセチレンのねじれの度合いは、キラルドーパントの旋光性によって制御できることを明らかにした。(3)軸性キラルバイナフトール誘導体や含不斉中心化合物をチタン錯体の配位子として用いることで、キラルドーパントのみならず、触媒能をも有する新規キラルチタン錯体を合成した。これを用いた不斉反応場においても、ヘリカルポリアセチレンが合成できることを見出した。(4)基板に対して垂直に配向するホメオトロピックなネマティック液晶に、軸性キラルバイナフトール誘導体をキラルドーパントとして加えることで、垂直に配向したキラルネマティック液晶を調製した。これを反応場とするアセチレン重合により、フィブリルがフィルムの膜面に対して垂直に配向した、垂直配向へリカルポリアセチレンを合成することができた。
著者
宮脇 敦史 濱 裕 佐々木 和樹 下薗 哲 新野 祐介 阪上 朝子 河野 弘幸 深野 天 安藤 亮子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

個体、器官、組織内の個々の細胞について、その働きに関する時空間パターンを調べる技術を開発してきた。本研究では、細胞周期プローブFucciの開発とその発生、癌研究への応用、レチノイン酸プローブGEPRAの開発とその発生研究への応用、生体固定組織の透明化技術Scaleの開発とその中枢変性疾患研究への応用などを行ってきた。技術間のcrossoverを図ることに努めた。たとえばFucci+Scaleで、マウス胎仔における細胞の増殖と分化の協調パターンを包括的に可視化した。また、Fucci+GEPRAで、魚胚の体節形成における細胞周期とレチノイン酸濃度勾配との関係について理解することが出来た。
著者
上村 大輔 有本 博一 吉田 久美 北 将樹 大野 修
出版者
慶應義塾大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

自然界での生物現象から真摯に学び、特異な生態系でくり広げられる生物現象を「生態系ダイナミズム」という視点で着目し、現象に関与する切れ味の良い有用天然有機分子の探索を試みた。また、新規化合物の単離・構造決定のみで満足することなく、化合物の展開利用までを視野に入れた姿勢で化学合成と生物学的意義の解明を目指した研究に取り組み、複数の重要化合物の発見及びその機能解明を達成した。本研究により、サンゴ幼生誘引物質や哺乳類毒の解明等これまで未解明であった現象に関与する物質を解明するとともに、関連科学分野への波及性を発揮する新規天然有機化合物の発見を導くことができ、生物分子科学の新領域を創成した。
著者
Yoon Boo Ok Koyanagi Shin Asano Takao HARA Mariko HIGUCHI Akon
出版者
The Mass Spectrometry Society of Japan
雑誌
質量分析 = Mass spectroscopy (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.168-173, 2003-02-01
被引用文献数
1 2

We undertook a fundamental investigation of the removal of endocrine disruptors from aqueous solution by a sorption method using activated carbons, and compared the removal ability of endocrine disruptors by activated carbons to that by polydimethylsiloxane (PDMS) membranes. The activated carbons exhibited high removal ability of 1,2-dibromo-3-chloropropane (DBCP), 100 fold increased adsorption over that with PDMS membranes from aqueous solution of DBCP. The removal ratio of the endocrine disruptors, <i>e.g., </i>1,2-dibromo-3-chloropropane, dibenzo-<i>p</i>-dioxin, and hexachlorocyclohexane, increased linearly in an aqueous solution with increasing the logarithm of <i>P</i><sub>ow</sub> of the endocrine disruptors. Almost complete removal of the endocrine disruptors (<i>i.e.,</i>>85%) was observed above log <i>P</i><sub>ow</sub>=3.5 in 25 mL of an aqueous solution using 0.05 g activated carbon. One aim of the present study is to use preferential sorption of chemical contaminants onto activated carbons for removal of the chemical contaminants from aqueous solutions including drinking water, beverages, milk, and human milk. When the removal of endocrine disruptors contained in milk or human milk is targeted, water soluble vitamins in the milk, such as vitamin B<sub>2</sub>, vitamin B<sub>12</sub>, and niacin are expected to be co-currently adsorbed on the activated carbons. Therefore, the present sorption method using activated carbon was applied to the removal of endocrine disruptors, such as di-<i>n</i>-octylphthalate, from the mineral water and 89% of di-<i>n</i>-octylphthalate was removed.
著者
赤木 和夫 後藤 博正 朴 光哲
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

キラルネマチック液晶を溶媒とする不斉反応場でのヘリカルポリアセチレンの合成を展開するとともに、らせん状モルホロジーの制御を目指した。(1)軸不斉キラルビナフティル誘導体をキラルドーパントしてネマティック液晶に添加して、キラルネマティック液晶を調製した。これに所定量のチグラー・ナッタ触媒を加えた後、5テスラーの磁場を印加して、キラルネマティック液晶が一方向に配向したモノドメイン構造を構築した。配向した不斉反応場でアセチレンの重合を行い、磁場方向に平行にかつ巨視的に配向したヘリカルポリアセチレン薄膜を合成することに成功した。従来の通説では、キラルネマティック液晶に磁場を印加すると、らせん構造が消失しネマティック液晶になるといわれていたが、本研究により、少なくとも5テスラーの磁場強度を印加する限りでは、液晶のらせん構造は壊れることなくキラルネマティック相が維持されたまま配向することがわかった。(2)ヘリカルポリアセチレンのねじれ方向をより一層厳密に制御すべく、ネマティック液晶に加えるキラルドーパントを分子設計し、種々の軸不斉ビナフチル誘導体を合成した。その中で、ビナフチル環の2、2'位をメチレン鎖で連結した架橋型バイナフチル誘導体は、非架橋型と同じ旋光性(R体ないしS体)であっても、ネマティック液晶に加えた段階で逆のらせん構造を形成し、結果的にヘリカルポリアセチレンのねじれも逆転することを見出した。すなわち、ビフェニル環同士の相対的ねじれ方向は同じであっても、ねじれの度合いが架橋型と非架橋型で異なるため、母液晶のネマティック分子のねじれ方向をも変えうる作用が働いていると理解された。すなわち、ヘリカルポリアセチレンのねじれ方向を制御するには、同じキラル化合物でR体とS体という二種類の旋光性を使い分けるアプローチの他に、同じR体ないしS体のビナフチル誘導体でも架橋型と非架橋型に分子修飾することで制御可能であることが明らかとなった。
著者
土肥 修司 田辺 久美子 柳舘 冨美 杉山 陽子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

Na^+-K^+ATPaseは細胞内外のNa^+とK^+の濃度を調節・制御しており、麻酔薬によるシグナル伝達機構にどう影響するかを、麻酔作用の重要なターゲットである脊髄後根神経節ニューロン(感覚ニューロン)および脊髄後角ニューロンにおいて検討した。Na^+-K^+ATPaseもイオントランスポーターであるCation-Chloride Cotransporters(CCC)も、エンドセリンも麻酔薬の脊髄の疼痛シグナル制御機構にさまざまな影響を与え、正常と損傷を受けた動物とによって異なること、グリア細胞もその作用の一端を担っていることを示唆する結果を得た。
著者
高梨 弘毅 大谷 義近 大野 裕三 小野 輝男 田中 雅明 前川 禎通
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本特定領域では、スピン流の生成と消滅、そしてそれらを通して生じる物理的信号の変換制御に関わる学理を確立し、新規なデバイス応用への可能性を探索することを目的としている。総括班は、本領域全体のコーディネータ的役割を果たし、同時に内部評価を行う。本年度は、本特定領域の最終成果報告会として国際ワークショップ「5th International Workshop on Spin Currents」を2011年7月25日(月)~28日(木)の日程で仙台国際センターにおいて開催した。最近のスピン流研究において注目される議題として、(1)スピンホール効果やスピンゼーベック効果に代表される純粋スピン流現象、(2)スピン注入磁化反転や自励発振、電流誘起磁壁駆動などのスピントランスファー現象、(3)非磁性体、特に半導体へのスピン注入、(4)磁化の電気的あるいは光学的制御、(5)スピン流の創出と制御のための材料探索・プロセス・評価の5項目について、それぞれの分野において世界最先端の成果を上げている研究者を組織委員会で選出し、口頭発表をお願いした。それ以外にも、特定領域研究で得られた成果が、ポスター講演において数多く報告され、4日間にわたって活発な議論が展開された。また、各計画研究代表者および公募研究代表者から、領域設定期間中の成果に関するデータを収集した。そのデータを元にして、原著論文、解説、著書、国際会議発表、国内会議発表、報道(新聞、TV等)、受賞、特許、その他(若手育成など)、の9項目について成果のとりまとめを行った。