著者
菅井 勝雄 黒田 卓 西端 律子 前迫 孝憲 三宅 正太郎 山内 祐平 黒上 晴夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

初年度(平成11年度)は、総合学習における本研究テーマをめぐって、理論的検討を実施した。すなわち、J.Deweyの「児童中心」教育を中心に、近年の社会的構成主義、文脈主義、研究方法論やアプローチなどを討議した。その結果、総合学習における設計と評価では、「コミュニティにおける協同活動」や、「ポートフォリオ評価」などが理論上重要であることが確認され、論じられた(菅井)。また、試行期間にある総合学習の実践校として、大阪府下の2校をはじめ、研究分担者がそれぞれの地域校で研究を開始することにした。第2年度(平成12年度)は、密接な打ち合わせと連絡のもとに研究を推進したが、大阪府下の中学校と大阪大学との間で連携の試みをスタートさせるとともに、大阪大学(前迫)と富山大学(黒田)との間で、情報ネットワークを利用した交換指導の試みを実施した。このような経緯の結果、最終年度(平成13年度)の3年間にわたる研究成果報告書には、下に示す研究成果を公表することができた。(1)総合学習における児童・生徒の学習意欲と授業設計との関わりについて、調査法を用いて明らかにした(三宅)。(2)総合学習における小・中学校の情報活用能力をめぐるカリキュラム編成法や評価法を探求し、併せて自然環境の中での生徒の体験活動とメディア利用の実践を展開し、ひとつのモデルを提示した(黒田)。(3)総合学習との関連で、学校図書館の捉え直しが論じられ(森田)、メディアリテラシーのアプローチが探求された(山内)。(4)最近の脳研究から総合学習の基礎研究が試みられ、興味ある知見が得られた(村井)。(5)中学校と大学の連携のモデルが示された(西端)。
著者
池上 悟
出版者
立正大学
雑誌
立正大学人文科学研究所年報 (ISSN:03899535)
巻号頁・発行日
no.40, pp.15-45, 2002
著者
馬嶋 正隆 藤田 朋恵 林 泉
出版者
北里大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

マウス皮下組織にsarcima-180あるいはNFSA腫瘍細胞株を接種するとゆっくりとした腫留の形成が認められる。これらの動物にACE阻害薬のリジノプリルあるいはAT1受容体格抗薬のTCV-116を投与すると、血管新生および腫瘍増殖は強く抑制された。腫瘍周囲ストローマを含む試料でAT受容体サブタイプの発現解析を行うと、AT2およびAT1bは全く検出されず、AT1aのみ検出された。免疫組織化学でAT1の組織内発現を調べると、AT1を発現しているのは腫瘍細胞ではなくむしろ腫瘍周囲めストローマであった。致死量の放射線をWTのC57BL/6に照射し、WTあるいはATlaノックアウトマウスめ骨髄細胞を尾静脈より移植し、その後LLCを接種すると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、腫瘍増殖および血管新生の著しい抑制がみられた。AT1aノックアウトマウスには、欠損する遺伝子にLacZ遺伝子を導入しているので、β-galの免疫組織化学をおごなうと、確かにAT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、ストローマ部位で陽性像が認められた。さらに同部位でVEGFの発現を調べると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、減少していることが判明した。骨髄より間質に浸潤するストローマ細胞のAT1aを選択的にノックアウトすることで、がん依存性の血管新生、増殖が抑制され、遺伝子を改変した骨髄細胞移植が固形腫瘍の治療になりうることを示すことが出来た。
著者
中塚 映政 谷口 亘
出版者
関西医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アストロサイトから放出される伝達物質のひとつであるD-セリンは脊髄後角ニューロンにおいてNMDA受容体活性を増強するとともにグリシン受容体も活性化することが判明した。しかし、末梢神経障害モデルではこのD-セリンの活性化が疼痛増強に作用する様に変化することが判明した。さらに神経根性疼痛の障害部位の違いによる疼痛発現の違いには脊髄後角ミクログリアの活性化が関与している可能性があることが判明した。
著者
早川 貴之 菅野 孝史 森下 昌紀 岩瀬 順一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3次元端末特異点の特異点除去および因子収縮に関して以下に述べる研究を行った.(1)指数mが2以上の3次元端末特異点につぶれる既約例外因子の食い違い係数が1/mの因子収縮を繰り返すことにより,指数が1の端末特異点しか持たない代数多様体からの双有理射を具体的に構成した,その結果として指数が2以上の3次元端末特異点の上空にある食い違い係数が1以下の既約因子をすべて決定した.(2)3次元端末特異点について,食い違い係数が1未満(または以下)となるような因子だけすべてを例外因子としてもつような部分的特異点除去が存在するかというM.Reidの問題(経済的特異点解消の存在)に対して,元々の問題にある形では経済的特異点解消は一般には存在しないことを示した.さらに経済的特異点解消が存在するためにどのような特異点を許せばよいのかについて考察し,必要な修正の後に経済的特異点解消が存在することを示した.(3)既約因子を指数2以上の3次元端末特異点につぶす因子収縮のうち,その既約因子の食い違い係数が1となるものについて,4次元または5次元の巡回商特異点の中への埋め込まれ方および因子収縮を得るための重み付きブローアップの重みを具体的に定めることにより,すべて決定した.(4)指数が1の3次元端末特異点につぶれるものについて,とくにcD型およびcE型の端末特異点につぶれるような因子収縮のうち,食い違い係数が1であるようなものに明示的な記述を与えた.
著者
松原 みゆき 梯 正之 河野 敬雄 梯 正之 河野 敬雄
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

終末期看護の主体的意思決定場面において, 患者と看護師の二者関係では問題状況(葛藤やジレンマ)場面では, ゲーム理論の"両性の戦い"で説明可能であった. 患者・家族・看護師の三者関係については, 社会学者Simmel の3人協力ゲームに依拠し分類した. R.J.オーマンが例示した, 共通の確率発生装置を用いて非協力ゲームのよりよい均衡点(相関均衡)を得るモデルを, 看護師が介入する医師-患者間の非協力ゲームに適用し再定式化した.
著者
中田 毅 曹 東輝 謝 啓裕 山内 洋 山内 隆
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.57, no.542, pp.3228-3233, 1991-10-25
被引用文献数
4

This paper deals with a new concept of an optical servo system and an experimental analysis on photostrictive ceramics for use as an optical actuator in the servo system. The optical servo system proposed here may be characterized by the introduction of an opto-hydraulic control valve into the system. The opto-hydraulic control valve can be operated by an optical actuator which is directly dirven by light irradiation. The photostrictive effect in PLZT ceramics, which is produced from the superposition of the photovoltaic effect due to light irradiation and the piezoelectric effect, is evaluated experimentally from the viewpoint of the applicability to a servo actuator. Experimental results show that the PLZT (3/52/48) ceramics produce a strain as large as conventional PZT ceramics, but that they have a very slow dynamic response of about 100 sec. The slow dynamic response is due to the time lag in the photovoltaic effect.
著者
田村 毅 市村 彰英 加藤 吉和 岸田 泰子 久保 恭子 中村 正 田崎 知恵子 倉持 清美 及川 裕子 伊藤 良子
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

子育て家族の追跡調査から、子育て家族システムの特徴、特に里帰り出産、祖父母の役割について明らかにした。また、海外在住の子育ての課題について明らかにした。児童虐待が発生する家族システムの特徴とそれを支援する福祉システムの困難さと課題について明らかにした。ジェンダーの視点から男性が子どもを虐待するメカニズムを解明し、虐待関係にある家族への支援の方策として父親グループ活動のプログラムを開発した。
著者
市川 正敏
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、細胞膜に代表される脂質二分子膜に於ける局所的な変形形状に働く力を、主に細胞サイズの小胞を実験系として用いて解明するのが目的である。脂質膜上に局所構造を作る一つの手段は相分離現象を利用する事である。相分離した膜面は条件によってはマイクロメーターサイズの凸凹を作る。相分離現象は一般に2成分以上の混合系で観察される。この膜面の相分離現象は生命現象に関わるラフトと関係が深いと言われており、基礎的な膜の物理を理解する事で生命現象の理解に貢献できると期待できる。本研究では、膜をレーザートラップによって直接的に力を測定する実験も実施し、直接的に測った力とベシクルの形態や局所構造の観察の両面から、局所構造が生む力を解明した。平成21年度は、前年度に構築した実験系を用いて行った混合脂質脂質ベシクルの伸張実験に続いて、相分離する混合脂質の伸張実験を行い両者を比較した。荷電混合脂質においては荷電密度が上昇すると共に表面張力係数が上昇し、曲げ剛性率はほとんど変化が無かった。一方で、相分離混合脂質系では、伸張時に相分離が誘起、進行させられる事が観察された。相分離が進行中に測定された力学プロファイルは荷電混合脂質でも得られた通常のプロファイルとは大きく異なり、相分離の進行や誘起を力学測定から検知する事が可能である事が明らかになった。これは、蛍光プローブ等を用いた観察的手法だけでなく、力計測からも相分離を測定できることを示すものである。この結果を論文として報告した。また、構築した装置を用いて脂質分子以外のソフトマテリアルの力学測定を行い、特徴的な力学的性質を明らかにした。
著者
武内 謙治
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、少年司法における「未決」段階の身体拘束に関する刑事政策上・国際人権法上の関心が高まるなか、現在それが果たしている機能とあるべき像を探ることを目的とした。本研究に取り組む中で公表した論文・学会報告・図書では、国際人権法上指摘されてきた日本の問題点は近時なお深まりを見せていること、それを解決するためのひとつの法策には国選付添人制度の拡充があることを示した。
著者
小池 清廉
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1154-1158, 2010-03-25

サンガのビクが律に違反しても,狂羯磨により「狂者」(精神障害者)と認定されれば,違反は原則的に不犯(無罪)とされる.波羅夷罪のような最重罪でも,狂癡者,心亂者は不犯である.不犯と認定された「狂ビク」は,ビクの資格を剥奪される.後に「狂ビク」本人から復帰申請があり,不癡毘尼において不癡と裁定されれば,過去の違反行為は免罪され,ビクの資格を復権することができる.現代の刑法やリハビリテーション医学と類似の律の病者処遇システムが何故成立したのか.そのためにはサンガの精神障害者観を知る必要がある.共同体から排除されがちな「狂ビク」処遇の解明は,仏教の倫理思想の解明につながるであろう.初期仏典は何人ものわが子を亡くしたバラモン女性の重症精神病や,愛児と死別した資産家の悲嘆・うつ状態を記載した.世人の苦の典型・愛別離苦であり,これに仏教が対処した例としてである.律では「顛狂心亂多犯衆罪非沙門法言無齊限行來出入不順威儀」のビクを挙げる.『婆沙論』等アビダルマや律は狂の五因縁を挙げるが,それは心因,経済因,身体因,非人因(幻覚,憑依),業因(業病)に相当すると考えられる.あるビクの言動が逸脱して律に違反し,サンガの義務を果たさなければ,他ビクから非難が発せられる.不癡毘尼においては過去の違反が責められるが,数の多数決ではなく,少欲知足のビクの意見を尊重して最終決定がなされる.現代刑法における心神喪失者が無罪であることと,律の狂者不犯には一定の共通性があるが,律では過去の犯行を贖罪している点が異なる.何故に律は狂者不犯を認めたのか.サンガは精神医学及び法律上の知識を蓄積していたからであろう.縁起の理法や慈悲など仏教の基本思想は,狂者不犯の思想的基盤をなしていたといえる.