著者
小林 達明 吉川 賢 小橋 澄治 増田 拓朗
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.165-175, 1993-05-01
被引用文献数
7

湿性草地・砂丘の裾・砂丘上の土壌水分条件の異なる立地に植栽されたハンリュウ個体に, SPACモデルを適用し, 水分動態を解析した。シミュレーションの結果は実測値とよく適合した。夜明け前の水ポテンシャルには, 立地による違いはなかった。個体全体の通水抵抗は, 土壌水分条件の違いを反映し, 砂丘上で著しく大きく, 草地で小さかった。しかし砂丘上では, 根系分布が深く, 葉量/細根量率が小さく, 抵抗をより小さく補償していた。砂丘上では葉面コンダクタンスが小さく, 蒸散フラックス密度の大きさは草地上, 砂丘の裾, 砂丘上の順であった。日中の水ポテンシャルは砂丘上でやや低かったが, 砂丘上の細胞の浸透ポテンシャルは草地上より低いため, 圧ポテンシャルは同様と推測された。このように, ハンリュウは個体・器官・組織・細胞のそれぞれのレベルで反応して, 圧ポテンシャルを安定的に保つよう, 水分動態を制御していると考えられた。
著者
佐藤 洋
出版者
昭和女子大学
雑誌
學苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.774, pp.34-44, 2005-04-01

It is obvious that a novel is one medium and a movie based on the novel is another, but images on the screen from the filmed version can help those brought up in a TV-saturated world connect with the world of the novel. They can help such viewers imagine the world of the novel when it would otherwise be difficult for them to do so. On the other hand it often happens that the images are quite different from the original, and it sometimes occurs that only part of the story can be transferred to the movie version. Such differences, which are usually criticized as misinterpretations, can be clues to other valid interpretation of the novel. The different interpretations in the films can give readers a bridge to other possibilities of interpretation. The gap between the film and the novel enables viewers and readers to discover inevitably not only what the novel means to convey but what the movie is designed to do. This research deals with how the movie Breakfast at Tiffany's provides an incentive to read the original novel closely. Though the film is considerably different from the book, this different interpretation is incorporated in a questionnaire designed to aid comprehension. This paper will look at what questions are effective in increasing understanding of the novel.
著者
浦 憲親 蒲田 幸江 鈴木 祥之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.67, no.559, pp.23-30, 2002
被引用文献数
7 1

Although the mud wall has been used in many buildings from old time, the material property is still unclear. The quality of "KABETSUCHI", which is the main material of the mud wall, depends on the place of production because it is nature material. The purpose of the experiment is to estimate exactly the quality about mixing, workability, shape of test piece, compactness, and strength test of the KABETSUCHI.
著者
日高 吉隆
出版者
創価大学
雑誌
創価大学別科紀要 (ISSN:09164561)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.50-62, 2006

深〓大学日本語科における「会話」の授業の課題について考察した。1年次の「日語精読」における「会話」では、談話を考慮に入れた指導が必要であることを、2年次の「日語精読」における「会話」では、場面・状況・対人関係に応じた表現を習得させ、談話の構成を理解させるために、教室活動に工夫が必要となることを指摘した。また、「日語会話」の授業では、学生が必要とする会話のニーズ分析を行ない、それに基づいたタスクを考えて授業を行なうべきであることを指摘した。
著者
西條 美紀
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, 2001-09-29

SignalingやDiscourse markerと呼ばれる談話の構造を「示す」非内容的要素(談話に内容を付加しない要素)が談話理解を助けるのかどうかについては,1970年代から主に英語の談話を中心に研究されてきた。本発表では,まずこれらの先行研究の結果が,談話理解を助ける効果が「ある」とするものと「ない」とするものに分かれているのは,談話の理解は発信者と受信者の間で相互作用的に作られるものであることを先行研究は看過してきたからであると指摘した。さらに,このような相互作用的な理解過程を視野に入れて談話を考える場合には,今までSignalingやDiscourse markerと呼ばれていたものは,今何を伝えているかについて明示的に言及することによって,発信者と受信者間の伝達を調整するメタ言語と呼ばれるべきであることを主張した。また,メタ言語が実際に談話理解に役立っているのかという点について,日本語母語話者20名を対象とした聴解実験の結果を報告した。実験は,談話中の命題内容は全く同一であるがメタ言語があるテキストを聞いた群(メタあり群)とメタ言語のないテキストを聞いた群(メタなし群)との間で,命題の再生に差があるかを見るものだった。結果は,メタあり群の方が有意に多くの命題を再生しており,再生文の変容も少ないというものだった。本発表では,この実験の結果をメタ言語には談話の構成要素相互の関係についての心理的枠組みを発信者と受信者が共有するように働きかける役割があるのだと解釈した。つまり,メタ言語を聞いた聞き手は,これから語られることについて,今まで聞いたこととの関係をもとに,埋められるべき空白を用意する。そこにメタ言語に続いて語られる命題内容が入っていくことによって談話の内容と構成要素相互の関係についての,一貫し,発信者と類似した表象が作られるという解釈である。このような解釈を踏まえて,メタ言語には,「関係性の問い」としての性質があると述べたが,この点についての検証はまだ今後の課題として残されている。
著者
林 成起 佐藤 嘉伸 田村 進一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRU, パターン認識・理解
巻号頁・発行日
vol.95, no.446, pp.71-78, 1995-12-22
被引用文献数
1

米手話の代名詞体系には一定の手話空間が代名詞として設定された後には、この空間が手話文のなかで文法的に使われ、その代名詞に相当する手話単語は明示的には表現されない。また、方向動詞には、その動詞のサインの中に、すなわち、動詞の位置や動き情報の中に動詞の主体と客体に対する情報が含まれていて、その動詞を含む文では主語や目的語が明示的には出て未ず、手話空間から参照される。そこで、手話を計算機の上で処理し、認識しようとすると、手話文では省略語が多いため、単に手話の構成素 - 手の形、手の位置、手の動き、掌の方向 - の解析だけではその文の正確な認識が困難である。従って、手話文を認識、解析する際には、代名詞として扱われる手話空間と動詞の位置や動き情報を互いに処理する必要がある。そこで、本研究ではASLを対象として手話空間の情報と方向動詞の位置や動き情報を考慮して、手話文解析を行なった。
著者
Yang Chen Ning 服部 哲弥 向後 久美子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.214-220, 1982-03-05

今世紀の前半に物理学的世界像に関する人類の認識に三つの大きな革命的進歩がありました. それは特殊相対性理論, 一般相対性理論, および量子力学です. 最初の二つはEinsteinが提唱したものであり, また彼は量子力学にも大きく貢献しています. しかし今日はこれらのことについてお話するのではありません. (皆さんよくご存知でしょうから.)私がお話したいのは, 理論物理学とは何であるかの理解に対してEinsteinのなした貢献についててす. それは今日の物理学の発展に大きな影響を及ぼしました. 私の話の構成は次の通りです. 1. 「対称性が相互作用を規定する」という原理 2. 場の理論の統一の必要性 3. 物理学の幾何学化 4. 「理論物理学の方法」に対するコメント
著者
内藤 歓修
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A63-A78, 2010-03-15

自伝的小説Sons and Lovers で自らの青春時代の苦悩を描ききったD. H. ロレンスは、以後、直面している生活上の問題をテーマにして、作品を書くようになる。Sons and Lovers 後に取りかかったThe Rainbow は当時の作者の生活で解決が不可欠な重要問題である、「愛」というテーマを真正面から取り上げている。 心の底から愛し合える女性と出会うことができたら、その女性は恩師の妻であったという困難を乗り越え、結婚する。許されざる行動を正当化しようと、愛の勝利と賛歌を歌い上げるために書いた小説が本作品である。 これは親子3代に亘る、愛の姿を描いている。いずれの代も未知の世界に憧れ、それを手に入れようと努力している。最初の代の愛と結婚は、未だ自我が充分に目覚めきっていない、古き良き時代の牧歌的環境の中で描かれ、男女間で深刻な自我の闘争は生じていない。しかし、2代目の愛は壮絶な自我の闘争を引き起こす。互いに自我を主張し合い、譲ることが少ない。妻が子供を身籠もり、女性の根源的な力を誇示することによって、夫を服従させて行く。この2つの愛と結婚は一般にありがちな姿であり、さして珍しいものとは言えない。 しかし、3代目の愛の闘争になると様相は一変する。主人公Ursula は理想の男女の愛を恋人Skrebensky に求める。強烈な自我を持つ彼女は、従来の因習的な結婚を否定し、自立した自我の均衡の上に築かれた愛を求めて、彼と激しい闘争を繰り返す。どんな逆境にあっても妥協しない。最後には、心身共に傷付いた上に、求める愛を得られなかったが、再生した彼女が明日への希望を虹に見て、新たに前進して行くことが示される。 本稿では、3代の夫婦における理想の愛の探求の形を分析し、現実と理想の愛の落差に対する彼らの対応の姿を明らかにしたい。
著者
出原 立子 郭 清蓮
出版者
金沢工業大学
雑誌
KIT progress : 工学教育研究 (ISSN:13421662)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.147-156, 2006-03-01

金沢工業大学情報フロンティア学部メディア情報学科2年生を対象にした専門基礎科目「コンピュータグラフィックス演習」において行った、CGの表現技法と技術理論の習得を目指した教育実践について報告する。本科目では、工学系大学におけるCG導入教育として、技術理論を踏まえた実践的表現技法の習得をいかにして行うかを教育目標とし、テキストベースの講義と3DCGソフトを用いた演習からなる授業を行った。本稿では、その教育実践とその学習評価について、CGの表現技法と技術理論の学習評価の相関調査の結果、ならびに学生アンケートについて報告する。また、今回用いた課題作品を効率的に評価するための方法についても報告する。
著者
石原 勝也 北川 均 佐々木 栄英
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.739-745, 1988-06-15

犬糸状虫性血色素尿症(caval syndrome)例の外頸静脈から, フレキシブル・アリゲーター鉗子を用いて, 右心房と三尖弁口部の犬糸状虫を摘出後, さらに肺動脈内の犬糸状虫を摘出した. 23例の外来患畜では, 右心房及び三尖弁口部の犬糸状虫はすべて摘出され, このうち16例(69.6%)では肺動脈から1〜36隻が摘出された. 実験例9例では, 右心房から2〜34隻の犬糸状虫が, また, 6例の肺動脈からは3〜21隻の犬糸状虫が摘出された. 残留糸状虫数は0〜11隻で, 平均摘出率は83.2%であった. 24時間後, 実験例の右心系循環動熊は, 摘出後回復した5例では, 摘出前に比べ右心拍出量, 心指数及び一回拍出量が増加傾向を示したが, 予後不良では4例中3例で減少した. 肺動脈圧と右心室圧は, 摘出前はほぼ正常値から著しい高値まで様々であったが, 摘出後は予後の良否にかかわりなく増減不定に変化し, 関与因子が複雑であることが示唆された.
著者
木村 喬久 吉水 守
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.1173-1183, 1981
被引用文献数
1 8

The application of a coagglutination test using staphylococci specifically sensitized with antibody against the bacterium causing bacterial kidney disease to the diagnosis of this disease in salmonids was studied. This method proved to be a simple, rapid and reliable diagnostic test suitable for use in the laboratory or field, and requires no special apparatus. It was found to be highly specific and more sensitive than the immunodiffusion test. In a study of 758 fish from 24 farms suspected in outbreaks of bacterial kidney disease the rate of detection of the disease with the coagglutination test was as high or highter than the rates obtained by Gram staining or clinical examination.<br> The procedure of this method is summarized as follows:<br> 1) Kidney sample from diseased fish is homogenized with four to nine volumes of PBS, and heated in a boiling water bath for 30min.<br> 2) The supernatant is collected after centrifugation at 4000 rpm for 20min. This may be omitted if a centrifuge is unavailable.<br> 3) One drop of the supernatant and one drop of anti-BKD antibody sensitized staphylococci suspension are mixed on a glass slide and incubated at room temperature. The slide is examined after 30, 60 and 120min.<br> 4) If positive coagglutination is observed, the infected fish should be examined microscopically to confirm the diagnostic results.
著者
寺川 宏之 宮寺 庸造 大澤 優 夜久 竹夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.76, pp.9-15, 1998-05-23

この報告では, ソフトウェア開発・教育支援環境について解説する.本環境は次のようなシステムから構成される:(1)視覚的プログラミングシステムとそれを使ったプログラムデータベース, (2)マルチメディアアクセスシステム, (3)電子教科書とコースウェアに対する大規模データベース.(4)インターネット上の分散データベース.本環境は現在, インターネット上のいくつかの大学のサイトに設置されている.また, 本環境を構成するコースウェアの例についても述べる.
著者
中田 久保 穂坂 賢 坂井 劭
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醗酵工学会誌 : hakkokogaku kaishi (ISSN:03856151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.509-515, 1985-11-25
被引用文献数
6

Taxonomic studies were done using the methods proposed by Takeda (J. Ferment. Technol., 61,11,1983) and our methods (J. Brew. Soc. Japan, 79,647,1984). Of the 150 strains of awamori yeasts tested in 1980〜1981,143 showed the following properties; resistance against yeastcidin : -, froth forming ability in sake mash : +w〜+, agglutination reaction against antiserum no. 5 : -, growth in potassium-free medium : -, requirement for both pantothenate and thiamine in medium without citric acid and potassium・citrate using ammonium sulfate as nitrogen source : +, growth in medium without citric acid and potassium・citrate from vitamin-free medium : -, growth in vitamin-free medium : -, growth in medium with thiamine in otherwise vitamin-free medium : +, assimilation of melezitose at 33℃ : -, assimilation of a-methyl-D-glucoside at 25℃ : - and production of more than 15.9% alcohol in awamori mash : +.The awamori yeasts isolated in 1980-1981 were clearly distinguishable from awamori yeasts isolated in 1964 by Takeda et al. (J. Ferment. Technol., 61,11,1983), shochu and sake yeasts, and other Saccharomyces cerevisiae.