著者
坂部 沙織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

H5N1インフルエンザウイルスのサイトカイン誘導能の解析背景H5N1ウィルスによるヒトへの感染・死亡例は、依然増加している。その死因は、高サイトカイン血症であると考えられている。また、高サイトカイン血症には、肺胞マクロファージが大きな役割を担っていると考えられている。方法ヒト末梢血由来マクロファージに、様々なH5N1ウイルスおよび、コントロールとして、季節性インフルエンザウイルスを感染させ、ウイルスの増殖性と48種類のサイトカイン・ケモカイン放出量を調べた。さらに、高サイトカイン誘導能を示すH5N1ウイルス株と、低サイトカイン誘導能を示すH5N1ウイルス株で、遺伝子組み替えウイルスを作出し、サイトカイン高誘導に関わるウィルス遺伝子を同定した。結果H5N1ウイルスの中には、高いサイトカイン誘導能を示す株と、季節性ウイルスとあまり変わらないサイトカイン誘導能を示す株があることがわかった。また、増殖性に関しても、季節性ウイルスとH5N1ウイルスとで大きな差は認められなかった。さらに、組み替えウイルスを用いた実験から、H5N1ウイルスの、ヒトマクロファージにおける高サイトカイン誘導には、PA遺伝子が関与していることが明らかになった。H5N1ウイルスがヒトに対して高い病原性を示す原因は、未だ明らかになっておらず、PA遺伝子が何らかの役割を果たしていることが示唆された。今後、メカニズムを解明していきたい。
著者
横田 俊平 森 雅亮 相原 雄幸
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

乳幼児に発生するインフルエンザ脳症は症状の経過が急速で予後は不良であるが、病態メカニズムは不明な点が多い。しかし最近の報告から脳内の炎症性サイトカインの異常増多が原因と推察されている。今回ラットの髄液中にリポポリサッカライド(LPS)を投与し、中枢神経内に高サイトカイン状態を誘導し、それが中枢神経および全身に及ぼす影響を検討した。LPS髄注により髄液中のTNFαをはじめとする炎症性サイトカインは上昇し、LPS大量投与群のみ血清中の炎症性サイトカインも上昇した。脳組織内にサイトカインmRNAが認められ、免疫染色にてNFkB陽性細胞が認められることよりサイトカイン産生細胞はmicrogliaと推察された。組織学的検討では神経細胞、glia細胞のapoptosisが証明され、またLPS髄注により血液中のFITC-DEXTRANの脳組織内への漏出が認められ脳血管関門の破綻が組織学的に証明された。さらに脳組織内でcytochrome cの細胞質内への流出が認められ細胞障害がTNFαによるapoptosisであることが示唆された。以上のことよりLPSによるmicrogliaの活性化により中枢神経内の高サイトカイン状態が誘導され、過剰な炎症性サイトカインは神経細胞のapoptosisにより中枢神経機能不全をきたし、同時にastrocyteの障害により脳血管関門は破綻し、全身性に高サイトカイン血症をきたすことが実験的に証明された。
著者
Kumar Das Nirmal Theodorus 宮台 典尚 篠澤 政宏 谷口 哲樹 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.230, pp.133-138, 2003-07-23
被引用文献数
2

本稿では空間・偏波領域における電波伝搬特性の測定や新しい伝送方式の実環境での動作を評価するため試作したMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)実験装置を紹介する.この装置は送信入力4ブランチ,受信出力8ブランチの4×8のMIMOであり,例えば4ブランチを4素子のアレーアンテナとして使うことも,直交偏波を取り入れた2素子・2偏波のブランチとして使うこともできる.そして,電波暗室においてAlamoutiの時空間符号化伝送や固有モード伝送などMIMOの基本伝送実験を行い,この装置の基本動作を確認した.
著者
中島 君恵 田中 景子 関崎 悦子
出版者
桐生短期大学
雑誌
桐生短期大学紀要 (ISSN:13424076)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.141-144, 2006-12-06

食生活の欧米化が進み日本型食生活が減少しているといわれる現代,特に若年層は食物の摂取において魚介類の摂取が少なく,肉類,乳類等に偏る傾向が強いことが報告されている.今回食物栄養コースの1年生を対象に魚料理摂取状況調査を行った.結果,夕食においては肉料理が占める割合が多く,朝食および昼食を総合しても肉料理に比べ魚料理を食べる機会が少ないことが示唆された.さらに学内実習の「肉料理」と「魚料理」の供食率の比較からも「肉料理」が高い値を示した.しかし,肉料理中心の食生活を送りながらも「魚料理を食べる回数が少ない」と認識している学生が約7割を占めていた.
著者
Morimoto Ryohei Ossaka Joyo Fukuda Tomoko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.359-375, 1957-09-25

昭和24年12月26日午前8時18分と26分に於いて起きた地震にともなつて,栃木県上都賀郡今市町[現在今市市]を中心とする大約20km四方の地域に地変を生じたが,そのうちでも火山噴出物起源の洪積層分布地域に生じた地崩れと地辷りが,ことに著しかつた.[地震研究所彙報28号(昭和25年),379-386頁,同29号(昭和26年),349-358頁].この第3報では,その存在が地変を生じた素因の一つとなつた洪積世の火山噴出物の各堆積層-上より(O)表土層・(A)黄色浮石層(鹿沼土層)・(B)赤褐色浮石石(今市土層)・(C)上部ローム層・(D)白粘土層・(E)下部ローム層-の主体をなす火山琉璃の風化生成物である粘土の鉱物組成,化学成分などについて研究を行つた.各試料の微細な部分についてX線分析・示差熱分析・熱減量測定・化学分析を,また原土について粒度分析・比重・含水量・吸水率の測定などの結果を報告した[第I-VIII表].これによると上層の表土層・鹿沼土層・今市土層はまだ再結晶の進まないアロフェンによつて,上部ローム層・白粘土層・下部ローム層などの下部層は再結晶度の低い加水ハロイサイトによつて代表されているが,そのうちでも白粘土層は,とくに多量の加水ハロイサイトを含んでいると考えられる.なおこれらの火山噴出物起源堆積層は,原岩の構造をよく残しているが,火山玻璃の部分は化学的にはきわめて変化が進んでいる.すなわちSiO2はいちぢるしく減少し,これに引きかえてAl2O3の富む結果となり,また1,2の層ではCaOが,いくつかの層ではMgOがわづかにその一部を残して,大部分が失もれ,Na2O,K2Oはほとんど完全に溶脱していた.この結果,鉄の過剰な今市土層を除く他の各層のAl2O3+Fe2O3とSiO2との比はいずれも1:2となつている.とくに加水ハロイサイトを多量に含む白粘土層は,その含水率,吸水能ともに最大の値を示し,地変に際しその地辷り面となつた.
著者
佐藤 紀美子 北川 知佳 佐藤 豪 神津 玲 千住 秀明
雑誌
長崎大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.97-100, 1991-03-30

本研究の目的は,家事動作の作業強度を定量的に把握し,退院指導に役立てることである.対象は健常主婦9名で,方法は心拍数を連続測定し,家事動作の方法と開始・終了時間を記録させた.作業強度は,安静座位時心拍数を100とし,その増加で示した.その結果,心拍数増加が被験者間で相違の大きい作業(掃除・洗濯等)と小さい作業(食事後片づけ・買物・食事準備等)に分けられた.心拍数が高い時間帯は,掃除や洗濯を含む複数の作業の同時進行が多かった.以上より家事動作の運動量を軽減する為に,掃除・洗濯を他作業から分離することや,心拍数増加が被験者間で相違のある作業は,増加の低い作業方法を選択する等の指導の必要性が示唆された.
著者
島田 博祐 高橋 亮 渡辺 勧持 谷口 幸一
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.375-387, 2002-11-30

本研究の目的は、加齢および居住環境要因(入所施設とグループホーム)の適応行動に対する影響を障害程度別に検討することである。対象者は40歳以上の中高齢知的障害者188名であり、適応行動尺度(ABS)および高齢化に関する調査票を材料に用いた。結果として、(1)障害程度にかかわらず「自立機能」に50歳以降における適応得点の低下と不適応者の増加が認められ、中軽度群では「身体的機能」「経済的活動」および「責任感」に、重度群では「掃除洗濯」「仕事」および「心理的障害」の領域に同様の低下が認められた、(2)居住環境要因に関しては「経済的活動」「移動」「一般的自立機能」「台所仕事」の領域で、障害程度に関係なく入所生活者の適応能力がグループホーム生活者より低く、中軽度群での「数と時間」「言語」および「計画性」、重度群での「自己志向性」と「社会性」でも同様の差が認められた。
著者
平岩 學洋
出版者
フレーベル會
雑誌
婦人と子ども
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.28-29, 1903-03
著者
上山 真生 水頭 一壽 山崎 信行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.558, pp.203-208, 2008-03-20

本論文では,ロボット制御に必要なリアルタイム性をOSが保証するための時間管理機構を提案する.まず,周期タスクのデッドラインがデッドラインをミスしないことを保証するために,周期タスク生成時にアドミッションコントロールを行う.従来のリアルタイムOSでは,実行タイミングの予測性が高い静的優先度アルゴリズムが採用されてきたが,理論的に任意のタスクセットについてデッドラインを保証可能な資源利用率が低く,アドミッションコントロールとは相性が悪かった.しかしながら,本リアルタイムOSでは,モータ制御のように実行タイミングジッタを許容しないタスクの実行を,タイマ割込みサービスルーチンに任せる.ジッタを許容しないタスクを周期タスクのスケジューリングから分離したことにより,周期タスクのスケジューリングの際にジッタを考慮しなくてすむため,実行タイミングの予測性は低いが,理論的に保証可能な資源利用率の高い動的優先度アルゴリズムを採用することが可能となる.この時間管理機構により,リアルタイム性を保証しつつ,計算資源を有効に使うことが可能となる.