著者
斎藤 真己 平 英彰
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.187-191, 2006-06-01
被引用文献数
1 2

スギ採種園における園外からの花粉汚染対策として,閉鎖したガラス室内にミニチュア採種園を造成し,その得失と有効性を検討した。ガラス室内のスギの開花時期は,雄花が2月4日から3月27日であり,雌花は2月5日から3月22日であった。これに対して,野外のスギ花粉飛散は2月21日から4月6日であったことから開花時期はガラス室内の方が野外より3週間程度早かった。室内の80%以上の個体が開花した時期は,雄花が2月17日から3月13日までで,雌花が2月15日から3月3日までであり,その期間はほぼ完全に重複していた。この採種園から得られた種子の発芽率は21.4%であり,従来型の採種園から得られた自然交配種子のそれと同程度であった。以上のことから,ガラス室内ミニチュア採種園を利用することで園外からの花粉汚染を防ぎ,さらに雌雄の開花期が揃うことから確実な交配が行われると期待される。今後のスギ造林は多品種を少量面積で植栽する方向に向かうと予想されることから,このことを実現する上においても,本手法は有効な手段になると考えられた。
著者
小松原 康敏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.157-165, 1975-04-01

計算機に入力されたデスクリプターに軽微なミススペル文字が含まれている場合,そのデスクリブターを,あらかじめ登録されたデスクリプター群から構成されているシソーラスファイルと突き合わせることによって,正しい綴字に自動的に修正するプログラムを作成し,小規模なテストを行なって,その基本機能が正常に働らいていることを確認した。この種のプログラムは既にINIS(国際原子力情報システム)などで実用化されているが,今回作成したプログラムによるとINISの自動修正よりも修正範囲が拡がっている。このプログラムを実際の大量の入力データ処理に利用するには,コアサイズ,ファイル型式などいくつかの問題が残されている。しかし修正法の原理は,デスクリプターの自動修正にとどまらず,辞書ファイルが作成可能な各種の文宇データの処理にも応用できるものである。
著者
山本 明 安部 航 泉 康介 板崎 輝 大宮 英紀 折戸 玲子 熊沢 輝之 坂井 賢一 志風 義明 篠田 遼子 鈴木 純一 高杉 佳幸 竹内 一真 谷崎 圭裕 田中 賢一 谷口 敬 西村 純 野崎 光昭 灰野 禎一 長谷川 雅也 福家 英之 堀越 篤 槙田 康博 松川 陽介 松田 晋弥 松本 賢治 山上 隆正 大和 一洋 吉田 哲也 吉村 浩司 Mitchell John W. Hams Thomas Kim Ki-Chun Lee Moohyung Moiseev Alexander A. Myers Zachary D. Ormes Jonathan F. Sasaki Makoto Seo Eun-Suk Streitmatter Robert E. Thakur Neeharika
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-96, 2008-02

本研究は,南極周回超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測(BESS-Polar 実験)を通して,『宇宙起源反粒子,反物質の精密探査』を目的としている.地球磁極領域に降り注ぐ低エネルギー宇宙線に注目し,反陽子スペクトルを精密に測定して,衝突(二次)起源反陽子流束の理解を深めるとともに,『原始ブラックホール(PBH)の蒸発』,『超対称性粒子・ニュートラリーノの対消滅』等,初期宇宙における素粒子現象の痕跡となる『宇宙(一次)起源反粒子』を精密探査する.反ヘリウムの直接探査を通して,宇宙における物質・反物質の存在の非対称性を検証する.同時に陽子,ヘリウム流束を精密に観測し,これまでのカナダでの観測(BESS実験,1993-2002)の結果と合わせて,太陽活動変調とその電荷依存性について系統的に観測し,宇宙線の伝播,相互作用に関する基礎データを提供する.本研究では,これまでのBESS 実験で培われた超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測の経験をもとに,低エネルギー領域での観測感度を高め,南極周回長時間飛翔を可能とする超伝導スペクトロメータを新たに開発した.2004年12月13日,南極(米国,マクマード基地)での観測気球打ち上げ,高度37km での9日間に及ぶ南極周回飛翔に成功し,9億イベントの宇宙線観測データを収集した.運動エネルギー0.1〜1.3GeV の範囲に於いて,これまでの約4倍の統計量でエネルギースペクトルを決定した.結果は,衝突(二次)起源モデルとよく整合し,一次起源反陽子の兆候は観測されていない.太陽活動が極小期にむけた過渡期にあたる2004年の観測として予想に沿った結果を得た.反ヘリウム探索は,これまでのヘリウム観測の総統計量を2倍以上に高め,反ヘリウム/ヘリウム比の上限値を2.7×10^<-7>にまで押し下げた.本報告では,BESS-Polar(2004年)の成果を纏め,次期太陽活動極小期(2007年)における第二回南極周回気球実験計画を述べる.
著者
高松 信樹 松本 源喜 中谷 周 鳥居 鉄也
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.103-112, 1988-07

南極南ビクトリアランド・ドライバレー地域・ラビリンス(77°33′S, 160°50′E)の池水中の塩起因を明らかにするため, LiとB含量を測定した。また, これらと比較するため, ドライバレー地域のバンダ湖, ドンファン池, フリクセル湖およびボニー湖ならびにベストフォールドヒルズのディープ湖とエース湖についても同様の測定を行った。ラビリンスの淡水および塩水中のLiおよびBの濃度および濃縮係数などより, 池水の化学成分は海水や熱水起源ではなく, おもに風送塩に起因するものであることが明らかになった。これらのことはラビリンスの塩水池が風送塩を含む氷河氷や雪の融水が凍結濃縮を繰り返すことによって形成されたとする考えを支持している。塩化物イオン含量の増加とともにB/Cl比が減少することから, Bは凍結過程で氷に移行し, 蒸発によって徐々に揮発していくと考えられる。
著者
山下 英生 上甲 達也 中前栄八郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.570-580, 1991-05-15
被引用文献数
5

数値解析シミュレーションの対象はより複雑化 多次元化し 解析結果の可視化の必要性はますます増大している.3次元交流定常場における磁束密度と渦電流のように 相互に作用する物理量は時間の経過とともに複雑な振舞いをする.このような二つの物理量の相互作用の理解のためには 両者の時空間における現象を 同時に観察することが望ましい本論文では 交流定常場における1サイクル間の瞬時密度分布の観察に グラフィックスワークステーションを利用した可視化法について提案する.すなわち 密度分布の瞬時値の高速算出法を用いて 相互に作用する物理畳を観察する三つのステレオ表示法を提案し 相互作用の観察を容易にする操作性に優れた会話処理機能について提案している.本可視化法の特徴は以下のとおりである.(1)相互に作用する複数の物理量に関して 時間的変化を観察するためのアニメーション表示 異なる時刻の相違を観察する並列同時表示 および指定された2時刻における密度分布の微妙な差を観察する切り替え表示法が準備されており 観察者は必要に応じて適宜速やかに辺択できるので 相互作用の詳細な観察が可能である.(2)時間的に変化する3次元空間の相互作用を 観察者のその時々の意志のおもむくままに 自在に かつ即応的に 望む方向および距離から 望む断面の分布状況を観察できる操作機能を持っている.
著者
中村 聡史 水口 充 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.6, pp.71-78, 2005-01-21
被引用文献数
1

本稿では,日々の生活での利用に適したウェブ閲覧手法として,漸次的ウェブ閲覧システムを提案する.漸次的ウェブ閲覧は,ユーザや環境のコンテキストを考慮して,ウェブコンテンツを徐々に提示することにより,能動的かつ受動的なコンテンツ閲覧を可能とするものである.また,本稿では漸次的ウェブ閲覧環境におけるコンテンツの閲覧性向上をはかるため,コンテンツ変換システムを導入する.ウェブコンテンツに含まれる広告やメニューなどの,目的とするコンテンツとは直接関係の無い領域を排除することで閲覧における無駄を低減し,行間や文字サイズを変更することでコンテンツ自体を演出する.In this paper, we propose the gradual web browsing system which is suitable for everyday usage. The gradual web browsing system renders web contents incrementally according to context of user and environment. It enables casual web browsing. In addition, we implement the content conversion mechanism which removes unnecessary parts such as frames, banner advertisements and navigation links and changes the line space and font size in order to increase readability and enjoyment.
著者
後藤 芳彦 合地 信生
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.37-50, 1991-04-15
被引用文献数
2

Quaternary subaqueous volcanic rocks are widely distributed in the Shiretoko Peninsula, Northeast Hokkaido, Japan. They are composed of andesitic to basaltic hyaloclastites, which are associated with comagmatic dykes and epiclastic volcanic breccias. The geology, petrography and major element compositions of these volcanic rocks from the Cape Shiretoko area were examined to reconstruct the submarine volcanoes in the area. The volcanic rocks in the area are composed of hyaloclastites and epiclastic volcanic breccias. Hyaloclastites are divided into two types. One is composed of pillows with concentric fractures and angular fragments in a cogenetic matrix, and the other is composed of angular fragments in a cogenetic matrix. Epiclastic volcanic breccias are composed of subrounded to rounded volcanic fragments in a fine matrix. These volcaniclastic rocks are overlapped one another, and form two dome structures which are intruded by radial swarms of comagmatic dykes. One of the radial dyke swarm has a volcanic neck in the center. These facts are suggestive of two submarine volcanic cones with radial dyke swarms. The authors revealed two submarine polygenetic volcanoes which have been formed by island arc volcanism with a wide range of composition (SiO_2 = 48 - 65 wt%) during the early to middle Pleistocene.
著者
青木 健一 登谷 美穂子
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.1-14, 1994-05-20

基研のIBM machine jpnyitp上のプレプリントデータベース「spires」は皆さんよくご存じだと思いますが、新たにワークステーションからもgopherを通じてプレプリントデータベースをはじめとする「spires」データベースにアクセスし、検索、結果出力が可能になっています。また、今月から、原子核三者若手と協力して、素粒子・原子核・高エネルギー若手名簿をデータベースに加えました。これまでのjpnyitp上でのspiresとは少し使い勝手も異なりますので、データベースの内容紹介も兼ねて、簡単なマニュアルをまとめました。各データベース毎に具体例をあげながら、効率の良い利用のための実践的テクニックも示し、このマニュアルだけでSPIRES/gopherを十分使いこねせる様に意図しました。
著者
芝口 誠仁 稲場 太郎 川口 信隆 田原 慎也 塩澤 秀和 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.7, pp.55-60, 2008-01-24

近年では情報化社会の発展に伴い,情報を電子ファイルで扱うことが増えた.しかし電子ファイルは設定ミスや誤操作,管理ミスなどのヒューマンエラーで誤って情報を漏らしてしまう危険性がある.そこで本稿では各ホストのシステムコールを監視することによってエンタープライズネットワーク内で重要な電子ファイルを保持しているホストを把握し,伝搬経路を視覚化する手法を提案する.具体的には,CreateFileやsendなどのWindowsAPIをフックすることにより実現した.本システムを利用することにより,実際に情報が漏洩したとき,電子ファイルを漏洩をした疑いのある犯人の絞り込みや,電子ファイルの移動に関わっていなかったホストの無実証明などができる.すなわちデジタルフォレンジック行使の際の支援ツールとしての活躍が期待できる.In recent years, information technology has been developed and we have come to use electoric files very often. Along with this development, information leakage due to human errors has been increasing. In this paper, we propose a visualization system that identifies where confidential files are in an enterprise network. Our system shows not only hosts that have confidential files, but also transmission routes of the files in the network. The proposed system monitors system calls executed on each internal host by hooking WindowsAPIs, such as CreateFile and send to detect the transmission of files to the network and removable disks. We can use the system as a digital forensic tool, which indentifies the criminal that leaked important information, or to prove the innocence of hosts that didn't concern confidential files.
著者
引野 亨輔
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.39-56, 2005-03-01

寺院由緒書の内容には、例えば夢のお告げで本尊を掘り出したといった類の怪しげなものが多く、それゆえまともな歴史資料として扱われる傾向は希薄であった。寺院由緒書が虚偽の歴史叙述であることは勿論事実であろう。しかし、それがある時代に信憑性を持って受容されていたこともまた事実である。偽書・偽証がなぜ疑いなく受け入れられるのか。本稿では、瀬戸内海の小島に伝わる法然伝説を事例として検討してみた。
著者
吉野 峰生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.118, pp.67-74, 1999-06-17
被引用文献数
3

顔画像の個人識別の現状と将来の展望について法科学的観点から述べた。顔画像の識別は,一般に,顔の構成要素の形態学的分類基準に基づく比較,顔の人類学的計測並びに顔画像相互のスーパーインポーズ法の3手法によって行われている。顔画像相互のスーパーインポーズ法を実施するためには,犯行現場の犯人の顔画像と被疑者の顔画像を同じ撮影角度にする必要があり,被疑者の顔貌の3次元形状データを用いたビデオスーパーインポーズ法が開発されている。将来的には,顔画像上の解剖学的標記点間の距離や角度に基づいたマッチングにより,犯人の2次元顔画像から被疑者の3次元顔画像データベースに対して検索,照合が行えるようになるであろう。
著者
村川 三郎 飯尾 昭彦 西田 勝 西名 大作
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.363, pp.9-19, 1986-05-30
被引用文献数
10

We considered the structure of the evaluation of river environment by the people's opinions and sense based on the questionnaires executed in 9 municipalities on the basins of the Nagara, the Chikugo and the Shimanto, and mainly analysed the conservation of river environment and the accessibility to river. Now, the Part 1 on this study analysed the evaluation of living environment in the same regions. The contents of this paper are as follows. 1) We showed the properties of river environment in the 9 regions of the upper reaches, the middle reaches and the lower reaches. 2) We analysed the people's behaviours of recreation in and around the rivers. 3) As to the conservation of river environment and the accessibility to river, we analysed the people's evaluation concerning the nature of river, landscape, artificiality and playing area with water. 4) Using the factor analysis, we selected 3 and 2 common factors from the results of the people's evaluation on the conservation and the accessibility. And we evaluated the regions with the average factor scores in each factor. 5) Using 3 items for comprehensive evaluation of river enviornment, we showed the results of the people's opinions in each region. And we analysed the relation between the comprehensive, conservative evaluation and the people's properties, using the Quantity Theory Cluster III. 6) We clarified the river images by the Semantic Differential Technique using the 30 pairs of adjectives. Using the factor analysis, we selected 4 common factors from these results, and evaluated the regions with the average factor scores in each factor. 7) As to the above mentioned contents on each evaluation, we showed the correlation matrix, and showed the relation between the scores of evaluation and the selected indexes of river environment.