著者
橘 勝康 原 研治 野崎 征宣 槌本 六良
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ふ化直後のマダイとトラフグにカロテノイド(マダイ:β-カロテンあるいはアスタキサンチン,トラフグ:β-カロテン)で栄養強化した初期餌料を投餌し無投薬で生産を試みた。マダイでは、ふ化後20日の飼育で,β-カロテン及びアスタキサンチン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。トラフグでは,ふ化後28日の飼育でβ-カロテン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。両魚種ともに全長からみた成長にはカロテノイド強化による有意な差は認められなかった。飼育最終日の仔魚より脾臓を採取し,リンパ球の幼若化反応を検討したところ,両魚種ともにPWM20μg/mlあるいはCon A 100μg/mlの刺激で,カロテノイド強化区が対照区に比較して有意に高い幼若化の反応性を示した。これらの強化初期餌料でマダイやトラフグの種苗を飼育することにより,種々の感染症に対して抵抗力の高い健康な種苗の無投薬での生産の可能性が考えられた。引き続いてβ-カロテン強化モイストペレツトでブリ一年魚の飼育を2-3ヶ月間無投薬で行い飼育開始と飼育終了時の血液値と免疫防御能の比較を行った。飼育終了時における血液値では,両区とも飼育開始と飼育終了時では顕著な違いを認めず,実験期間を通じて健康であったと考えられた。実験終了時の免疫防御能をリンパ球の幼若化能を比較すると,β-カロテン区がマイトーゲン添加培養の全てで対照区より高い幼若化を示し免疫防御能が高いと考えられた。以上より,β-カロテン,アスタキサンチン共に免疫賦活作用を持ち,これらを餌料に添加することで無投薬飼育が可能となることが分かった。
著者
杉浦 幸子 三澤 一実 米徳 信一 山口 真美
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「超初期学習者」である乳幼児の心理的発達に、「美術館」環境、「アート作品」、それらに関わる「人」が寄与すると仮定し、それらが発する情報を乳幼児が取得する教育プログラムをデザイン・実施し、彼らの反応を映像記録し、保護者、主催者から聞き取りを行った。その結果、主に次の3点が観察できた。乳幼児は、1.色や線、形といった造形要素、照明、床、家具といった建築的要素、周囲の人的刺激に反応する、2.反応に個人差がある、3.過去の経験や記憶と受けた刺激を関連づけている可能性があるそこから、「美術館」は乳幼児の心理的発達に寄与する可能性があるとし、成果を印刷物にまとめ、国内の美術館、自治体に配布・共有した。
著者
田中 直樹 長屋 匡信 中村 浩蔵
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

トランス脂肪酸は日常生活で我々が頻繁に食する脂肪酸である。米国ではトランス脂肪酸摂取が禁止されているが、我が国ではトランス脂肪酸の健康被害に関する科学的根拠が乏しいとの理由で、その摂取に注意が払われていない。我々はトランス脂肪酸が肝癌を促進させる可能性を見出したが、そのメカニズムは不明である。本研究では、食事中トランス脂肪酸が肝臓に与える影響を多角的に解析し、その毒性を機能性食品で軽減する方法も探索する。トランス脂肪酸毒性に関する明確な科学的根拠とその予防戦略を提示できれば、国民の食生活の改善や健康寿命延伸、新規産業創出につなげられる可能性があると考えている。
著者
木村 悠
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

ナトリウム利尿ペプチドは不全心筋より分泌される抗心不全ホルモンとして知られているが、脂肪組織への作用は明らかではない。当施設の先行研究では、循環不全による組織低温環境やインスリン抵抗性をきたす重症心不全、さらには肥満・糖尿病などの病態に対して、このホルモンがこれまで知られていなかった治療効果(熱産生効果・インスリン抵抗性改善)をもたらす可能性がある。本研究は基礎研究と臨床研究の両面からアプローチし、心臓-脂肪連関という新たな病態概念の確立を目的とする。本研究成果は心不全治療の概念を変え、肥満治療という観点や心不全治療へのResponderを見出すことで新たな治療戦略を提示できるものと考える。
著者
新林 力哉 (2023) 新林 力哉 (2022)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

古代社会では祈雨など政治的・社会的に意味のある祭祀を為政者が行うことが重要である。本研究は、日本古代における天皇がどのような構造で地方の神々を祭っていたかを検討し、古代天皇が持つ祭祀執行者としての性格を明らかにするものである。特に地方神祭祀の究明を重視するのは、各地域の共同体を支配下に置く天皇がその神をどのように祭るかが国家としての特性を表すという考えからである。また地方神祭祀を研究するため国司や地方豪族の祭祀のあり方をも対象とし、天皇祭祀との関係を検討することで、古代国家の地方神祭祀の構造を明らかにする。そして奈良時代から平安時代後期にわたる変化を追い、古代国家の中世への変化を明らかにする。
著者
小坂 光男 大渡 伸 松本 孝朗 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

【緒言】暑熱順化の形成過程における個体レベルの反応は急性の神経性・亜慢性の内分泌性調節変化に引き続いて器質性変化の誘発がある。この器質性変化と言えども細胞レベルにおいては温度刺激後の比較的早期に誘起される可能性は否めない。温熱生理学的手法に加えて、昨今、がん温熱療法のハイパ-サ-ミア分野で脚光を浴びている温熱感受性・熱耐性に関連の深い熱ショック蛋白(Heat shock proteins:HSPs)の誘導の有無を検索し、暑熱負荷時の生体反応、特に暑熱順化機序を個体および細胞レベルで解析・究明することを研究の目的としている。【方法】ナキウナギ、ラット、家ウサギに熱ショック(直腸温:42℃,15分)や寒冷ショック(直腸温:20℃,30ー120分,平成2年度はさらに筋肉・脳温を42℃,15分間加温負荷)を加え、各種体温調節反応を記録、動物は20時間後 10%SDSーPAGEによって、肝・腎・脾・副腎・脳・筋肉の各組織のcytosol fractionに新しい蛋白質(HSPs)の誘導の有無を検索、一部、HSP 70抗体によるWestern Blotting法によって詳細な分析を加えた。【結果】1熱ショック負荷方法(直腸温42℃に到達時間20ー30分が至適)で多少結果に差異が生じるが、2家ウサギで肝の cytosol fraction に 68KD の HSP の誘導、3ラットでは殆んど全組織で HSPs 70KD の誘導、4ナキウナギでは5例中1例において肝ーcytosol frction で 70KD 誘導、他の組織では HSPs の誘導困難、5寒冷ショックによる Cold shock protein(CSP)の検出に関してはラットの肝の cytosol fraction で 32KD の蛋白質が寒冷ショックによって消失する1例を観察している。6すべての動物の筋肉および脳のcytosol fraction で HSP の誘導はやや困難であるが、熱ショック負荷方の改善筋および脳(被殼)温度を42℃,15分間、直腸温43℃によって陽性の結果を得ており、今後更に検討を行う。【まとめ】熱耐性に関連の深い熱ショック蛋白(HSPs)が暑熱負荷20時間以後には細胞内に誘導される本研究結果は暑熱順化機序解明に光明を与える快挙である。
著者
野上 建紀 エラディオ・テレロス
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アジア・太平洋海域の有田焼交易ネットワークについて、考古学的な研究によって明らかにした。近世の有田焼がいわゆる「鎖国」政策下にオランダ船や唐船によって長崎からアジアやヨーロッパへ輸出されていたことは知られている。その一方、長崎で交易が許されなかった船も有田焼を運んでいたことはあまり知られていない。太平洋を越えて、アジアとアメリカを結んでいたガレオン貿易を担ったスペイン船もその一つであった。今回の研究により有田焼が中米・カリブ海周辺にも広く流通し、ペルーやコロンビアなど南米にまで輸出されていたことが明らかになった。特に芙蓉手皿とよばれる皿類やチョコレートカップが広く流通していたこともわかった。
著者
吉田 早悠里
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、エチオピア南西部カファ地方の民族学的研究の第一人者であるF.J.ビーバーが残した資料群を学術研究に利用するための基盤を整えることを目的とし、F.J.ビーバーの人物詳細の解明と、資料群の整理、デジタル化、目録作成を実施し、複数の場所に分散しているF.J.ビーバー資料群の全貌解明に取り組んだ。特に、資料の内容と詳細が明らかになっていなかったヒーツィンク区博物館所蔵資料と、K.ビーバー個人蔵資料の資料整理を行い、それらを学術研究に活用するための素地を整えた。これにより、F.J.ビーバーの資料群を後世に継承し、広く世の中に資するものとして活用していくための基盤を形成した。
著者
新井 宗仁
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究で明らかになったことは、主に次の3つである。1.[α-ラクトアルブミン(α-LA)のモルテン・グロビュール(MG)状態の構造および安定性の解析]ヒトα-LAのMG状態及び巻き戻り中間体の構造と安定性を測定した結果、ヒトα-LAのMG状態は他のα-LAのMG状態よりも安定であり、かつ、より多くのα-ヘリックスを含むことが明らかになった。 2.[α-LAの変異体のフォールディング反応の解析]α-LAの様々な変異体を作成するために、ヤギα-LAの遺伝子をpSCREEN-1b(+)に組み込み、蛋白質の発現を行った。変異体を使った研究から、α-LAのフォールディング反応の遷移状態では、T29,I95,W118周辺の構造はまだ十分には形成されていないことが明らかになった。このことは、MG状態で形成される疎水性コアやCヘリックス周辺は遷移状態において構造化されていないことを示している。 3.[ストップトフローX線溶液散乱法によるα-LAの巻き戻り反応の測定]従来のストップトフローX線溶液散乱法では一次元PSPC型X線検出器を用いて測定を行っていたが、新たに開発された二次元CCD型X線検出器を用いることにより、400倍以上の感度向上に成功した。また、データの補正方法を確立した。本研究で完成した時分割X線溶液散乱法は、蛋白質のフォールディング研究のみならず、様々な研究に適用可能な優れた方法である。この方法を用いてα-LAの巻き戻り反応の測定を行った結果、α-LAは巻き戻り反応開始後数10ミリ秒以内に、平衡条件下で観測されるMG状態と同じ分子サイズと分子形状を持つ巻き戻り中間体を形成することが明らかになった。本研究の結果およびストップトフロー円二色性法による結果から、α-LAの巻き戻り中間体は平衡条件下で観測されるMG状態と同一であることが示された。
著者
窪田 悠一 原田 勝孝 伊藤 岳
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究は、歴史事象の現代社会における影響を考察の対象とし、超長期的因果関係の分析 に基づく新たな実証的社会科学研究を提唱することを目的とする。特にここでは、戊辰戦 争における戦闘や暴力の遺産が現代日本政治経済に与える影響について実証データを収集 しながら考察する。この目的のために本研究では、a) 戊辰戦争における戦闘・暴力の発生 メカニズムの解明、b) そうした政治暴力と現代市民の政治意識・行動、また経済活動の関 係性の分析を行う。
著者
大林 太朗
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、関東大震災(1923年)からの復興に向けた日本のスポーツ界の対応を明らかにすることであった。文献資料(文書、雑誌、新聞等)の収集・分析を通して、震災直後に大日本体育協会(現在の日本スポーツ協会・日本オリンピック委員会)が帝都復興院・東京市当局に対して提出した「願書」の内容や、各大学の運動部学生による復興支援活動・チャリティマッチの記録、さらには上野公園における被災者(主に避難民)を対象とした「慰安運動会」の内容と文化的特徴が明らかとなった。
著者
寺田 寅彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はヨーロッパで出版された英語教科書のイラストや写真の役割を検討したものである。外国語習得にイラストが有益であるのは、なによりも見て美しく、また文化的背景を学習者に提示するからである。今日出版されている英語教科書のほとんどがカラーイラストの入ったものである所以である。しかしながら、書かれていることと一致しないイラストや、情報過多ともいえるイラストが入っていることがある。それらは歴史的・政治的背景により、テキストの内容ではなく、ナチス・ドイツのスローガンのような政治的メッセージの内容を示しているのである。単なる語学学習が政治的道具に使われることを、本研究は明らかにしている。
著者
滝沢 誠 菊地 吉修 渡井 英誉 佐藤 祐樹 笹原 芳郎 笹原 千賀子 田村 隆太郎 戸田 英佑
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、伊豆半島における前期古墳の調査をつうじて、半島基部に形成された古墳時代前期の政治拠点と東日本太平洋岸域における広域的なネットワークとのかかわりについて検討した。あらたに確認された瓢箪山古墳(前方後円墳)の発掘調査では、同古墳の立地や墳丘構造が伊豆半島の基部を横断する交通路を強く意識したものであることを明らかにした。また、同古墳が築かれたとみられる古墳時代前期後半には、周辺域において集落規模の拡大や外部地域との交流が活発化する状況を把握することができた。これらの成果をふまえ、古墳時代前期後半には、伊豆半島基部の交通上の役割が高まり、その拠点的性格が顕在化したものと結論づけた。
著者
豊平 由美子 坂巻 路可 李 暁佳 吉永 有香里
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

交感神経系モデルとしての培養ウシ副腎髄質細胞を用いて、ストレス軽減効果の有る予防薬や気分障害の治療薬として適用できる可能性があるポリフェノールを選定した。アピゲニン、オーラプテン、イカリソサイドAはニコチン性アセチルコリン(ACh)受容体刺激よるカテコールアミン(CA)分泌と細胞内へのCa、Naイオン流入を濃度依存性に抑制した。アピゲニンとルテオリンはチロシン水酸化酵素(TH)活性を濃度依存的に抑制した。イカリソサイドAはACh刺激によるCA生合成やTH活性を濃度依存的に抑制した。アピゲニンとイカリソサイドAはイオンチャネルの機能を阻害してCA神経系の機能を抑制することが示唆された。
著者
小野寺 淳 杉本 史子 西谷地 晴美 宇野 日出生 宇野 日出男
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

比叡山西麓に位置する京都府左京区八瀬は八瀬童子会という組織をもつ。八瀬童子は天皇から特権を与えられ,明治・大正・昭和の三天皇の大喪にかかわった。皇室と比叡山との関係の中で八瀬童子の人々は独特な空間認識と歴史意識を育んだ。本研究は絵図,古文書,聞き取りから八瀬童子の空間認識と歴史意識を明らかにした。八瀬童子の空間認識は18世紀初頭に起こった比叡山延暦寺との境界争いで顕在化する。裁許の結果,比叡山と八瀬の境界が「老中連署山門結界絵図」に描かれた。地形図,空中写真などにより絵図に描かれた境界線や事物の位置を推定,現地で確認調査を行った。また絵図のデジタル画像を作成,5点の絵図の違いを明確にした。この結果,八瀬と比叡山の境界は現在の琵琶湖国定公園の西端,すなわち元禄国絵図における山城国と近江国の国境と一致した。この争論が発生した原因は八瀬や大原の集落で行われていた柴の採取にある。八瀬の人々は比叡山の聖域を越えて柴の採取を行い,京の市中で柴を売り歩いた。この日常的な経済行為が比叡山との境界争いを生んだ。しかしこの争論は天皇から特権を与えられた八瀬童子に有利な裁決が下された。これに感謝して始まったとされる「赦免地踊り」は実は11世紀中期まで遡ることができる。すなわち中世的な祭礼組織にみられる歴史意識は18世紀初頭に変質したと考えられる。
著者
薄井 和夫 DAWSON John
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、英国最大手の家電小売企業ディクソンズ社(現在DSGI社)が、(1) わが国カメラの英国への輸入とわが国チノン社との提携によって成長の端緒をつかみ、(2) 競合企業カリーズの買収を機に総合家電小売として成長を遂げる一方で、アメリカ市場参入の失敗による深刻な危機を経験し、(3) これを克服して現在の地位を確立するまでの発展の軌跡を解明し、「漸次的イノベーション」[=画期的な革新とは異なる部分改良型の革新]を同時並行的に継続することの重要性を明らかにした。同時に、わが国独自の系列家電チェーンの端緒を築いた戦前の展開を解明し、独立系企業の近年の展開によって欧米の家電小売業と直接比較研究を行ないうる条件が成熟してきたことを示した。
著者
高村 仁知
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

魚の嗜好性と機能性を高める調理法の開発を目的として、魚臭成分の原因となる脂質酸化生成物の生成を抑える抗酸化成分を含む香味野菜を加えて調理を行い、海産魚に含まれるにおい成分及び機能性成分の調理過程における変化を解析した。その結果、香味野菜を加えて調理することにより、脂質劣化に由来する揮発性成分が減少した。また、薬味なしの試料では調理後、抗酸化活性は減少していたが、薬味を加えることにより抗酸化活性が増加していた。以上の結果から、魚に香味野菜を加えて調理することにより嗜好性及び機能性において優れた効果を発揮することが示唆された。
著者
丁野 純男 戸上 紘平 板垣 史郎
出版者
北海道科学大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2023-06-30

アニサキスは、クジラを終宿主とし、鮭・秋刀魚・鱈などの魚を中間宿主とする寄生虫である。昨今、魚の生食に起因するアニサキス感染が話題となっているが、アニサキスを駆虫する治療薬等は開発されていない。本研究は、この状況を打破すべく、研究代表者らが得手とするドラッグデリバリーシステム (DDS) の斬新な学理を基に着想された、JSPS挑戦的研究(萌芽)(19K22778)で芽生えた潜在性を更に引き出す研究であり、アニサキス駆虫研究にブレイクスルーをもたらす可能性を秘めた開拓期の研究である。
著者
江畑 冬生
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題ではユーラシア大陸の東西に広がるチュルク諸語のうち北東語群に分類される諸言語を研究対象として,形態音韻プロセスや文法形式の生産性・義務性にも着目しながら,共時的な文法構造の記述と相互分岐と相互接触による歴史的変遷の解明を試みた.その中でも主としてサハ語・トゥバ語・ハカス語という3つの未解明言語に焦点をあて,現地調査とコーパス調査の両方を活用しながら,形態音韻規則・文法形式の義務性・形態法上の特徴・ボイス接辞の用法・証拠性関連接辞の用法・膠着性の度合い・格接辞の用法などに関する記述的・対照言語学的研究において新たな成果を得た.
著者
坂口 けさみ 中島 邦夫
出版者
三重県立看護短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

プロラクチンは、単に乳腺発育や乳汁分泌維持作用を示すのみでなく母性行動の誘起、維持にも重要な役割を有するホルモンであることが明らかになってきた。今年度私達は、乳仔接触刺激による非妊雌及び雄ラットの母性行動・父性行動を観察すると共に、脳内のプロラクチン受容体mRNAの発現について検討した。また同時に血中プロラクチン濃度の変化についても検討を加えた。雌及び雄ラットの母性行動については各ラットを収容したケージ内に生後3〜16日目の仔ラットを2匹入れ、crouching, licking, nest building, retrieval and groupingの5項目について毎日2時間、2週間仔に対する行動を観察記録した。脳内のプロラクチン受容体mRNAの発現についてはlong form及びshort formの2つの分子種を同時に特異的に検出できるように構築したRNAをプローブとするRNase Protection Assay法により行った。また血中プロラクチン濃度はEIA法により分析した。その結果、仔ラットに対する母性行動・父性行動の発現には性差なく仔ラットへの接触日数と共に、愛着行動の増加していくことが観察された。そこで乳仔に対する母性行動、父性行動が誘導された雌及び雄ラットの脳内プロラクチン受容体mRNAの発現をみると、プロラクチン受容体mRNAのlong formの発現が有意に増加していた。また母性行動、父性行動を示したラットでは明らかに血中プロラクチン濃度が上昇していた。以上、乳仔に対する母性行動・父性行動は性差を問わず、基本的に備わっている能力であり、プロラクチンは脳内プロラクチン受容体遺伝子の発現を誘導し、その結果仔への母性行動あるいは父性行動を促進することが示唆された。