著者
森 雅紀 森田 達也
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

死亡直前期の患者が「今日亡くなる・今日は大丈夫である」ことの予測は重要である。本研究の目的は、1日以内の死亡を予測するモデルを開発・検証することである。国内23施設の緩和ケア病棟に入院したがん患者1896名の登録を行い、Palliative Performance Scale(PPS)≦20となった1396名の死亡直前期兆候を毎日取得した。再帰分割分析により予測モデルを開発し、交差検証を行った。1日以内の死亡率の最終モデルは、【尿量低下・下顎呼吸あり】(69%)、【尿量低下あり・下顎呼吸なし】(32%)、【尿量低下なし・意識低下あり】(15%)、【尿量低下・意識低下なし】(6%)だった。
著者
田中 充
出版者
九州大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2021-09-10

ヒトは食品を咀嚼・嚥下する際に、口腔内に放出される呈味・香気成分を味覚・嗅覚(化学感覚)情報として検知するとともに、歯ごたえや舌触りといった食感を触覚(物理感覚)情報として検知しており、これらの感覚から食品の風味を認知して美味しさを評価している。しかし、現在の機器計測ではすべての風味成分と食感を一元化して捉えることはできず、風味が美味しさを決める機構は多くが不明である。本研究では、食品の風味・食感を完全にデジタル記録するための次世代技術を開発することで、呈味・香気成分の空間的な分布、ならびに食感を網羅的に可視化した「完全な風味設計図」の構築を目指す。
著者
西森 早紀子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

T2K実験でニュートリノ振動を精密に測定することで、物質優性宇宙の謎を解明する鍵となるレプトンにおけるCP対称性の破れの検証を行う。現在2σ以上の信頼度でCP対称性の破れを示唆しているが、今後統計数を確保することで統計誤差が改善される。本研究では、ニュートリノビーム生成過程のニュートリノフラックス不定性の最も大きな要因であるハドロン生成の精密測定を、スイスにあるCERN NA61実験により行い、ニュートリノ振動が最大となるエネルギー領域でのニュートリノフラックス不定性を改善させる。これによりニュートリノ振動解析の系統誤差を削減し、レプトンにおけるCP対称性の破れの発見に繋げる。
著者
國頭 恭
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

鯨類、鰭脚類、海鳥類、海亀類におけるヒ素の体内分布を調べた。鯨類、鰭脚類、海鳥類ではヒ素濃度は肝臓と腎臓で高く、筋肉で低かったのに対し、海亀類、特にタイマイでは筋肉中のヒ素濃度がきわめて高く、低次生物に匹敵するレベルであった。また、これらの種の肝臓中ヒ素の化学形態分析を行なったところ、他の海棲低次動物と同様に、アルセノベタインが主要なヒ素化合物であることが明らかとなった。興味深いことに、ヒ素の蓄積レベルの高い種ほど、アルセノベタインの占める割合が高いことが分かった。ヒトおよび実験動物ではアルセノベタインの排泄は速く、体内に蓄積しないことが報告されているため、海棲高等動物は特異的なアルセノベタイン蓄積機構を有することが予想された。これらの海棲高等動物とは対照的に、イシイルカの肝臓では、ジメチルアルシン酸が主要なヒ素化合物であった。このため、種によりヒ素の代謝あるいは餌生物中のヒ素化合物組成が異なることが予想された。本研究では、毒性の高い無機ヒ素は、大部分の種で検出されなかった。このため、海棲高等動物ではヒ素の蓄積レベルは高いが、その毒性影響は小さいものと予想される。しかしながら、最近の研究により遺伝毒性を示すことが明らかとなったジメチルアルシン酸は、大部分の種で検出された。また海鳥類の羽毛および鰭脚類の毛でヒ素が検出された。毛には、毒性がきわめて強い3価の無機ヒ素と3価の有機ヒ素が蓄積することが知られており、低い濃度ながらこれら毒性の強いヒ素化合物が海棲高等動物の体内に存在することが示唆された。また、無機ヒ素は、非常に低濃度で内分泌撹乱作用を示すことが報告されており、海棲高等動物に対する影響あるいはそれらが進化の過程で獲得した適応能力に興味が持たれる。
著者
親泊 美帆
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小胞体は細胞内タンパク質や脂質合成の場であり、小胞体機能異常(小胞体ストレス)で肥満や糖尿病などの生活習慣病を発症することをこれまでに報告してきた。本研究は、生活習慣病発症におけるATF6を介した小胞体ストレス応答の役割を明らかにすることを目的とした。そこで、ATF6αノックアウトマウスとATF6βノックアウトマウスを用いて、食事因子による代謝制御におけるATF6の生理的な役割の解明と食事因子による生活習慣病発症におけるATF6の病理的な意義の解明を行った。その結果、ATF6β欠損は小胞体でのタンパク質恒常性に影響がないにも関わらず、食事による肥満に抵抗性を示すことを新たに見出した。
著者
三宅 雅人
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では肥満・糖尿病における種々の代謝調節組織の細胞で生じる小胞体ストレスの病態増悪化機構について転写制御に着目して解明を目指す。特に小胞体ストレス応答性転写因子ATF6 βに着目して、組織特異的欠損マウスの解析により作用組織を同定し次世代シーケンサーを用いた解析によりその制御機構を明らかにする。また、低分子化合物スクリーニングを行い、ATF6βの特異的阻害剤を開発して肥満・糖尿病への応用を目指す。
著者
小林 郁 谷口 裕信 浦野 綾子
出版者
皇學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

代々伊勢神宮外宮の権祢宜を務めてきた橋村氏は、西国を中心に約31万軒の檀家を擁する神宮御師でもあった。本研究では、新出資料である「伊勢御師橋村家関係資料」約10,000点と、中世後期より存続する同家の墓石群を網羅的に調査・整理し、それを素材として、信仰の地“伊勢”に関する総合的研究を行うことを目的とする。本研究では、①「伊勢御師橋村家関係資料」の目録作成、②文献資料・墓石群の調査報告書の作成、③企画展示の開催、④皇學館大学デジタルアーカイブ(現在構築中)での資料電子公開、を目標とし、伊勢神宮研究にとどまらない多分野にわたる学問領域の基礎的資料情報としてアプローチできることを目指す。
著者
坂部 貢 立道 昌幸 遠藤 整 清島 大資
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

ネオニコチノイド系農薬(NN)と同様にフルピラジフロンおよびスルホキサフロルの作用機序は、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体にアゴニスト作用をもつ事によって、神経を異常興奮させる事で害虫を駆除しており、種選択性でヒトには安全であるとされている。申請者らはNNをマウスに投与した実験を行い、中脳に蓄積しやすい事、造精機能やテストステロン合成酵素のmRNA発現量が低下する事などをすでに発表している。NNと同様の毒性があると考えられるフルピラジフロンおよびスルホキサフロルをマウスに投与し、精巣や神経に与える影響を検討し、標的害虫以外の生物にとって安全かどうかの検討する。
著者
安森 偉郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

半導体デバイスの製作実習は、半導体製造装置やドラフトチャンバ等の設備が完備された環境でないと学生実験実習は困難となる。そこで、これらの半導体製造装置等をほとんど備えていなくても、通常の実験室のような環境において製作実習を実施する方法について研究してきた。その結果,半導体製造装置やフッ酸などを使わないシリコン太陽電池の製作方法を考案した。本研究では製作条件と太陽電池の性能との関係について調べ,最適な製作条件を見出す予定である。また、製作方法を改良し更に簡単にシリコン太陽電池が製作できる方法を確立する。
著者
川西 正祐 榎屋 友幸 大西 志保 平本 恵一
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

腫瘍形成時やがん組織周辺の炎症部位では、炎症関連DNA損傷が誘発され、がんの発生や悪性化を引き起こす。炎症シグナルとして働き、最近がん治療の標的分子として注目を集めているHMGB1 (High-Mobility Group Box1) が、遺伝子変異や細胞死誘導の繰り返しに重要な役割を果たしていることから、本研究では、HMGB1特異的阻害剤で抗炎症薬のグリチルリチンによる炎症関連DNA損傷抑制機構を解明する。また、本研究では炎症性微小環境中での抗炎症薬による炎症関連DNA損傷制御の分子機構を解明することにより、がんの発生のみならず悪性化も制御する新しい戦略的がん化学予防法を開発する。
著者
林 昌子 (2023) 林 昌子 (2022)
出版者
東京都立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

研究の目的は、福祉国家成立に貢献したR・H・トーニーの思想と活動を掘り起こすことで、現代イギリスにおける福祉政策や、地域福祉サービスの実践に与えている影響を明らかにすることにある。トーニーの社会思想の土台をなすキリスト教社会主義が、イギリスにおける社会主義の歴史、および宗教改革以来のキリスト教思想史の中で、どのような影響のもとに形成されたのかを解明する。研究成果を報告する機会としては、人体科学会、日本社会思想史学会、イギリスのウィリアム・テンプル財団等において、学術大会における研究報告および論文投稿によって行う。
著者
光永 眞人
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

血管新生は線維症や動脈硬化症、悪性腫瘍の増悪など多彩な病態に関与する。研究代表者らは、がん細胞膜表面発現抗原に対する抗体と光感受性物質を結合させた化合物と近赤外光によって、がん細胞のみを機械的細胞死へ誘導する方法を開発し、光免疫療法と名付け報告してきた。また、血管内皮細胞に発現するタンパクを標的とした光免疫療法によって新生血管の傷害から抗腫瘍効果を誘導する方法を開発してきた。病的新生血管の近赤外光による制御は、がんだけでなく非腫瘍性疾患においても実現可能と考えられ、本研究課題では、病的血管新生が病態に関与する疾患モデルを対象として、病的血管の可視化と制御を可能とする治療法の開発を目指す。
著者
香曽我部 琢
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、離職が少なく、長期的に就業を継続する保育者が多い園に着目し、その園の保育実践の質も把握した上で、保育者たちがどのような関係性を築いてきたのか、そのかかわりの経験や出来事を包括的に捉え、そしてそこで生起する感情を明らかにする。とくに、仕事に対する活力や情熱などのポジティブな感情であるワーク・エンゲージメントに焦点を当て、その形成プロセスを巨視的・縦断的な視点で明らかにする。そして、その知見をもとにリーダーシップと同僚性を育む研修プログラムを開発することを目指す。
著者
岩崎 美智子 富田 喜代子 松本 なるみ 亀崎 美沙子
出版者
東京家政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、方法としてのライフヒストリーを検討した後、戦後の保育所における保育内容や「ララ物資」などの救援物資、保育者養成の実態を文献・資料等によって明らかにした。さらに、全国17 都道府県において元保育者への詳細なインタビュー調査を実施して、職業選択の要因、「生きがい」の構成要素、人生の転機や挫折・困難の経験について分析をおこなった。また保育者が考える専門性や保育者にとっての「戦争」の意味を考察した。
著者
宮原 恵弥子
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

大量のDNAアルキル化剤投与後に生じる肝類洞閉塞症候群(SOS)は、時に致死的で発症の予測が難しくまた発症には個体差がある。これまで何が類洞内皮細胞を傷害するのか明らかになっておらず、完全な発症予防にも至っていない。当研究ではDNAアルキル化剤の代謝因子に着目し、in vitro及びin vivoでゲノム編集やsiRNAによる遺伝子のノックアウト、ノックダウンを行い、代謝酵素の活性の程度とSOS発症との関連を検討する。さらに還元型グルタチオンの合成材料となることでSOS発症の予防が期待できるN-acetyl cysteineを用い、抗腫瘍効果を落とすことなくSOS発症を予防できるか検討する。
著者
関 耕平 除本 理史 井上 博夫 藤原 遥
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

被災地域では、地震・津波・原発事故など被災要因や時間経過によって復興に向けたニーズが多様化・複雑化し、従来型の画一的な行政対応では十分に応えられない状況にある。本研究の目的は、「参加型予算」に基づいた機動的で柔軟な復興行財政制度の具体像と、地域自治組織に予算編成・決定権限の一部を委ねる自治体内分権のありかたを明らかにすることで、多様化・複雑化する被災者の復興ニーズに応える復興政策を実現する。
著者
稲永 清敏 小野 堅太郎 人見 涼露
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二日酔いでの喉の渇きは、「エタノール利尿による」という通説がある。このことに疑問を持ち、ラットを用いて実験を行った。ヒトで泥酔するほどのエタノールの投与で喉の渇き行動は誘発されたが、利尿ではなく、むしろ抗利尿が観察された。私たちは、二日酔いでの喉の渇きは、エタノールの分解産物であるアセトアルデヒドが口渇中枢(喉の渇きをコントロールする脳部位)に直接作用するか、あるいは、アセトアルデヒドが降圧作用を起こし、レニン‐アンギオテンシン系を活性化することによる間接的な口渇中枢ニューロンの活性化によって起こることを明らかにした。
著者
太子堂 正称 井上 義朗 間宮 陽介 桑田 学 原谷 直樹 野原 慎司 高橋 泰城 板井 広明 江頭 進 小沢 佳史 佐藤 方宣 笠井 高人 高橋 聡 村井 明彦
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、現代の経済理論が前提としている人間像について、その思想的系譜を解明することを目指して行われた。スコットランド啓蒙における「経済学の成立」から現代の行動経済学・神経経済学へと至るまでの野党な経済学者、理論の分析を通じて、効用や利潤の最大化を図る利己的人間観が登場してきた過程だけではなく、それぞれの経済思想家の主張の背後には、利他性や社会性を含む多様な人間像が含まれていたことが明らかとなった。
著者
鈴木 高史 Alexander Egyir-Yawson
出版者
神戸常盤大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

アフリカトリパノソーマ症を媒介するツェツェバエの新たなコントロール法の構築を行うことを目的として、以下の解析を行った。ツェツェバエのコロニーを確立し麻酔システムの検討を行った。さらにGlossina palpalis defensin(GpDef)分子の抗アフリカトリパノソーマ原虫活性プロファイルを明らかにした。当初予定していた、貯精嚢へのインジェクションは困難であったため、アフリカトリパノソーマ原虫の動き、エキソソーム関連分子解析、ツェツェバエゲノム上のポリドナウイルス類似配列解析を行い、遺伝子組換えシステム構築の可能性検討を行った。