著者
上田 哲也
出版者
国際忍者学会
雑誌
忍者研究 (ISSN:24338990)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.3, pp.14-24, 2020 (Released:2021-09-01)
参考文献数
15

本稿は熊本藩の忍びについて、細川家の史料を元に基礎的な研究を行う事を目的としている。熊本藩の忍びは「御忍之衆」と呼ばれており、寛永五年(1628)頃から活動していた事が諸史料から明らかになった。忍びの頭領を務めていたのは吉田助右衛門で、「御忍之衆」の複数の名簿で筆頭に名前が記されている。 忍具の発注に関する文書は吉田助右衛門によって記されたものだが、忍者関係の史料として非常に価値があるものだと考えられる。この文書には当時実際に使われていた忍具の名称が記されており、いくつかの忍具は『万川集海』や『忍秘伝』のものと名称が一致している事が分かった。またこの文書からは、これらの忍具を鍛冶屋が製作していた事も判明している。 「御忍之衆」は「島原の乱」に参加しており、原城への偵察活動や攻撃を実施している。特筆す べきは「御忍之衆」の一員が、天草四郎の最期に関わっていた事である。
著者
石川 顕一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.818-819, 2016-12-05 (Released:2017-10-31)
参考文献数
5
被引用文献数
2

現代物理のキーワード電子の超高速運動を観測する・操作する
著者
Małgorzata Grabara Janusz Szopa
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.361-365, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
39
被引用文献数
6 23

[Purpose] The aim of this study was to access the flexibility of the spine in women practicing yoga as a part of the “University for Health” project. [Subjects and Methods] The study included 56 women ranging in age between 50–79 and attending 90 minutes hatha yoga sessions once a week. The measurements were performed twice-at the beginning of the project and after its completion, i.e., after 20 weeks of classes. The range of spine mobility in three planes was measured using a Rippstein plurimeter. The range of motion in the sagittal and frontal planes was measured in a standing position with the feet hip-width apart. The torsional range of motion of the subjects was measured with the trunk bent at a right angle and the legs apart. The flexibility ranges of the spine and hamstrings were also measured by the toe-touch test in a standing position. [Results] This study showed that the applied yoga exercises increased spinal mobility and flexibility of the hamstring muscles regardless of age. [Conclusion] Yoga exercises should be recommended to the elderly to make their muscles more flexible and to increase the range of motion in the joints, which is particularly important for improving their life quality.
著者
根元 裕樹 泉 岳樹 中山 大地 松山 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.315-337, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
38
被引用文献数
1

1582(天正10)年,岡山県の備中高松で備中高松城水攻めが行われた.近年の研究では,備中高松城の西側の自然堤防を利用した上で基底幅21 m,上幅10 m,高さ7 mの水攻め堤が3 kmにわたって築かれたとされているが,わずか12日間でこの巨大な堤防が本当に築けたのか,その信憑性が疑われている.そこで本研究では,流出解析と氾濫解析を組み合わせた水攻めモデルを開発し,水攻め堤の有無と高さによる複数のシナリオで備中高松城水攻めを再現して,水攻めの条件について考察した.その結果,水攻めには上述したような巨大な堤防は必要なく,足守川からの水の流入,備中高松城西側の自然堤防,それに接続する南側の蛙ヶ鼻周辺の水攻め堤があれば十分であることが示された.また,この結果と史料を考慮すると,蛙ヶ鼻周辺の水攻め堤は,その高さが約3.0 mであったと考えるのが合理的であるという結論に至った.
著者
佐橋 悠 北野 優香里 神津 善広 日笠 喜朗
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.140-143, 2019-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
13

症例は雑種猫,7歳,避妊雌で呼吸が苦しそうであることを主訴に来院した。飼い主が帰宅した際,呼吸が苦しそうであり,流涎を呈しているのを発見した。飼い主は外出前に防水スプレーを屋内で噴霧したとのことであった。胸部X線検査では肺野の不透過性亢進および気管支肺胞パターンが認められた。稟告,症状および画像所見から防水スプレーガス吸引による急性肺傷害と診断し,入院治療を開始した。酸素室内にて静脈点滴を行い,エンフロキサシン 5 mg/kg,SID,アンピシリン20 mg/kg BID,マロピタント 1 mg/kg, SIDおよびプレドニゾロン 1 mg/kg SIDを投与した。第4病日には流涎も止まり,食欲も回復した。第17病日には画像所見も改善した。本症例は,防水スプレーガスの直接吸引だけではなく,防水スプレーガス含有の熱分解産物が関与し,悪化した可能性がある。防水スプレー使用の際は,スプレーガスの直接吸入だけではなく, 取り扱う環境にも注意を引き払うべきである。
著者
大内 祥平 荻山 秀治 筒井 秀作 那須 文香 瀬戸 華世 堀木 優志 佐野村 珠奈 今中 和穗 村山 洋子 飯石 浩康
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.330-335, 2019-04-10 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10

44歳男性.大腸内視鏡の前処置薬ニフレックⓇの内服直後にアナフィラキシーショックを発症,エピネフリン投与を行い症状は改善した.ニフレックⓇとニフレックⓇに含まれるマクロゴール4000を用いたプリックテストを行い,陽性反応を得たためマクロゴール4000によるアナフィラキシーショックと診断した.マクロゴールを含有する経口腸管洗浄剤によるアナフィラキシーショックは非常にまれであるが,認識しておく必要がある.
著者
栗山 正光
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.92-99, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
32
被引用文献数
3

オープンアクセス(OA)の進展とともに,論文処理費用をだまし取るハゲタカ出版社の出現が問題となっている。本稿はハゲタカ出版社のブラックリストを作成しているジェフリー・ビールの活動を中心に,この問題をめぐる状況と議論を整理して紹介する。ビールのリストは高く評価される一方,名前をあげられた出版社から10億ドルの損害賠償を請求されたり,根拠不十分と批判されたりしている。さらに,彼のOA運動に敵対的な姿勢が明らかになり,いささか信頼を失った。一方,ジョン・ボハノンはでたらめな論文を投稿し,まともにピアレビューを行っていないOA誌が多数存在することを暴いた。また,DOAJはビールとは反対に優良OA出版社のホワイトリスト作成を目指している。
著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-92, 2010-02-15 (Released:2010-03-31)
参考文献数
1

食品にガンマ線や電子線などの放射線を照射すると,脂質が分解して炭化水素など種の放射線分解生成物が生成する.放射線照射によりトリグリセリドのアシル基-酸素結合が開裂すると,元の脂肪酸と同じ炭素原子数の2-アルキルシクロブタノン(2-ACB)が生成する(図1).この物質の存在が知られる以前には,放射線照射によって食品中に生成する分解生成物として,非照射食品中にも含まれる成分か,他の調理加工などによっても生成が誘発される既知の物質しか検出されなかった.ところが,2-ACBは加熱,マイクロ波照射,紫外線照射,超高圧処理,超音波処理などによって生成することはなく,放射線照射によってのみ生成する化合物である.すなわち,この物質は,現在知られている唯一の放射線特異分解生成物(Unique Radiolytic Product)である.前駆体となるトリグリセリドの脂肪酸組成に対応して異なるシクロブタノンが生成し,パルミチン酸から2-Dodecylcyclobutanone,パルミトレイン酸から2-Dodec-5′-enylcyclobutanone,ステアリン酸から2-Tetradecylcyclobutanone,オレイン酸から2-Tetradec-5′-enylcyclobutanone,リノール酸から2-Tetradecadienylcyclobutanoneが生成する.2-ACBは放射線照射により特異的に生成し,かつその生成量は線量に依存して増加するので,照射食品の検知に利用できる.2-ACB分析は,鶏肉,畜肉,液体卵,カマンベールチーズ,サケを対象とした検知技術として,ヨーロッパ標準法及びコーデックス標準法となっており,国際的に認知された照射食品検知技術である.照射食品の安全性を判断するには,放射線特異分解生成物である2-ACBの毒性を評価する必要がある.ドイツの研究者がコメットアッセイにより2-ACBには細胞のDNA損傷を誘発することを見出して,その安全性が問題となった.しかしエームス試験や復帰突然変異原性試験では,このような2-ACBの毒性は観察されなかった.また,非常に高濃度の2-ACBをラットに投与しても,それ自身が発ガン物質として働くことはなかった.しかし,ラットに発がん物質であるアゾキシメタンとともに2-ACBを投与したところ,3ケ月後の観察ではアゾキシメタンと水を投与したコントロールと比べて異常はなかったが,6ケ月後に2-ACB投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ,2-ACBには発がん促進作用活性のあることが確認された.この投与実験で使われた1日当たりの2-ACBの用量は3.2mg/kg体重であり,ヒトが照射食品から摂取する2-ACBの最大量と想定される1日あたりの値の5-10μg/kg体重のよりもはるかに多く,約500倍であり,本実験結果が実際の食生活における照射食品の危険性に直接結びつくものではないと考えられている.また,米国で行われた100トン以上の照射鶏肉を用いたマウスや犬を対象とした大規模な長期動物飼育試験では,59kGyという高線量照射したにもかかわらず毒性は認められなかった.なお,この時に使用された照射鶏肉には2-ACBの存在が確認されている.これらの結果を総合的に考慮して,WHOや米国FDAなどの機関は,照射食品中のアルキルシクロブタノンの毒性が実際に問題になることはないと判断している.
著者
Tatsuya Kasuyama Masaaki Sakamoto Rie Nakazawa
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.195-199, 2009 (Released:2009-07-18)
参考文献数
16
被引用文献数
17 22

[Purpose] The purpose of this study was to clarify the intrinsic factors influencing the deep squatting posture and to investigate the utility of ankle joint dorsiflexion measurement using this posture. [Subjects] The study subjects were 71 healthy male individuals. [Methods] The subjects were asked to squatted with their heels down and then were divided into 2 groups: possible squatting and impossible squatting. The anthropometric characteristics of the subjects were assessed, and the flexibility and movement range of the lower extremities were tested. To identify the intrinsic factors influencing the deep squatting posture, a dediscriminant analysis was performed by a stepwise procedure. The sensitivity, specificity, and cutoff values for the factors were evaluated by receiver operating characteristic curve analysis. [Results] Of the 71 participants, 55 were assigned to the possible squatting group and the remaining to the impossible squatting group. Analysis revealed that body weight and ankle dorsiflexion flexibility were significantly associated with ability to assume the deep squatting posture. In particular, ankle dorsiflexion flexibility was strongly associated with the ability to assume this posture. [Conclusion] The impossible squatting group showed reduced ankle dorsiflexion. Thus, the deep squatting posture is useful for easy and objective method for measuring ankle joint dorsiflexion flexibility.
著者
別府 玲子 村橋 けい子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.142-146, 1999-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13

心因性難聴に健忘を伴った2症例を経験した。 健忘は精神医学的には意識の障害を呈する解離性障害の一症状である。 症例1は年齢16歳, 症例2は15歳と, 思春期の女性であり, 難聴, 健忘以外にも多彩な症状を示した。 症例1は精神科において全生活史健忘との合併と診断された。 症例2は, 幼少時より両側高度感音難聴のため経過観察をしており, 既存の難聴が高度で, 他覚的聴力検査で閾値が確認できないので, 精神医学的状況から心因性難聴と推定した。 心因性難聴の場合は, 十分な心理的ケアが必要であり, 特に他の重篤な精神症状を合併している場合は精神科のカウンセリングを要すると考えられた。
著者
平井 章一 Jian XING 甲斐 慎一朗 堀口 良太 宇野 伸宏
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_36-A_45, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
11

本研究は,都市間高速道路における休憩行動の実態が体系的には明らかではない背景の下,休憩行動のモデル化の前段として,ETC2.0 プローブデータの走行履歴情報を利用したトリップ毎の休憩行動データベース構築手法を検討し,休憩行動抽出に際しての走行履歴情報の特性把握,休憩行動の定量的な把握と,基礎分析を通じてモデル化に向けた知見の整理を行った。 休憩行動データベース構築にあたっては,非渋滞時では高い精度で休憩行動を抽出できた。また,「通過」と「休憩」の判定が難しい渋滞時に対しても,簡易な判定方法を示した。また,基礎分析を通して,車種構成の偏りや日跨ぎのトリップの不生成などの,現状での ETC2.0 プローブデータ利用の留意点や,休憩時間分布や休憩回数等の基礎集計結果,1 トリップ中の複数回休憩の関係性などの知見を得た
著者
Kentaro Kazama
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.117-126, 2019 (Released:2019-07-29)
参考文献数
36

Breeding seabirds, often nest at high densities and supply large amounts of marine-derived nutrients, such as nitrogen, in their feces into the ecosystems surrounding their breeding colonies. It has been well demonstrated that the nitrogen supplied by seabirds (seabird-N) into terrestrial ecosystems has a strong bottom-up effect on both producers and consumers. The seabird-N can reach into the surrounding marine ecosystems near the colony through multiple pathways including the surface run-off of rainwater or leaching by ground water. However, in marine ecosystems the bottom-up effects of seabird-N have been rarely documented. A few studies using stable isotope analyses have reported that seabird-N enhances the productivity of both phytoplankton and macro algae. There have been more limited studies documenting similar positive effects of seabird-N on marine consumers. Very little is known about spatio-temporal variations in the effects of the seabird-N on marine ecosystems. To understand the ecosystem functions of seabirds in marine nutrient cycling and the bottom-up effects of seabird-N in marine ecosystems, further research is necessary.