著者
渡邊 雄二
出版者
九州産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近代において日本がどのように朝鮮時代絵画について関心を持ち、理解をしたかというテーマに沿い、植民地朝鮮の公的な施設や民間において行われた絵画の収集展示活動を通して検証した。これには韓国の近代的な視点での美術という新しい価値観が生まれる経緯の考察を伴うのであるが、それは植民地朝鮮での博物館施設における収集展示活動により確定されたといえよう。そして、民間においても、当初、日本人を中心に収集活動が盛んになり、次第に朝鮮人も加わった美術市場が開かれた。ただし、韓国の伝統的絵画の理解という点では、関わった研究者は関野貞などわずかの人物であり、朝鮮時代の書画活動を深く理解するには到らなかったと考える。
著者
恵谷 玲央
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

頭部X線CT 検査の回数に依存して白血病や脳腫瘍の発症リスクが増加することが報告されているが、頭部への低線量の放射線繰り返し部分照射が発がんリスクを増加させることを示した実験データは少ない。本研究では、動物用X線CT検査装置を使用して、マウスの頭部あるいは全身に臨床レベルの放射線を繰り返し照射して、白血病の起因となることが知られている造血幹細胞中の染色体異常(遺伝子異常)の有無とその蓄積の程度の経時変化について多角的に検討する。さらに、これまでに報告されている研究結果と対比することで低線量の放射線の部分照射と白血病リスクとの関係について解析を行う。
著者
田井村 明博 管原 正志
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では暑熱寒冷暴露時の体温調節反応パターンから「環境温度変化に対する調節能力」を解析・評価することが目的であった.局所寒冷負荷実験の皮膚温の反応パターンから分類することで、より詳細な個人差の分析が可能であること、さらに温度感覚との関連性から、温度変化に対して温度感覚の変化が遅い場合、冷感覚の感受性に関して劣るということが推察された。また、運動鍛錬者の方が耐寒性に優れ、運動様式別に耐寒性を検討した結果、耐寒性に大きな差は見られなかったが、浸漬部を使う種目の鍛錬者は皮膚温が下がっても温度感覚はあまり下がらないことから、冷刺激による侵害刺激にも慣れていることが推測された。
著者
岡田 二郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

干潟に生息するカニのなかには、繁殖期になるとオスがハサミを繰り返し振り上げる「ウェービング」とよばれる行動を盛んに行う種がいる。日本の河口干潟でしばしば見られるチゴガニは、そのウェービングのリズムが近隣個体同士で良く同期(シンクロ)する。本研究では、行動観察および生理実験からチゴガニのオス個体間における視覚信号を介した相互作用について調べ、ここから導き出されるウェービングのシンクロ現象のメカニズムを明らかにする。
著者
大村 敦志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

民事法規範の生成を手段ごとに分析した。判例・立法に生成に関しては、消費者法に関する研究をとりまとめて公表した。世論による生成に関しては、台湾の家族法に関する研究を行った。また、契約実務による生成に関しては、日本の複数の約款を素材に研究を行った。これらについては講義を行い、発表のための原稿を整えた。最後にこれらをふまえて、法規範生成論として自然法論を見直す枠組を模索し、とりわけサールの理論に触発されつつ、中間的な論文を公表するに至った。
著者
岸川 洋紀
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,環境リスクに関する一般市民のリスク認知やリスク回避行動に対して,日々の生活の中で接する報道がどのように影響を与えているのか,その実態を検証することを目的とし,質問紙調査および報道の分析を行う。2020年4月現在,新型コロナウィルスの流行により社会に大きな影響が生じ,多くの人が不安を抱え生活している。専門家や政府が発する情報が一般市民へ正確に伝わることが非常時のリスクコミュニケーションにおいては重要であるが,この点についてどのような問題があるかについてもあわせて検討を行う。
著者
安原 隆雄 内藤 宏道 道上 宏之 菱川 朋人 田尻 直輝 佐々木 達也 佐々田 晋
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、再現性・精度の高いCTEモデルを確立し、行動学的な変容とリン酸化タウ蛋白の蓄積具合を明らかにすることを1つめの目的とする。2つめの目的として、CTEにおける炎症性サイトカイン、細胞増殖、アポトーシス等に関連する遺伝子発現を明らかにすることである。3つめの目的としては、CTEにおける細胞療法(特にヒト骨髄由来多能性幹細胞の動脈内投与)の治療効果を明らかにすること、及び、タウ蛋白蓄積や遺伝子発現がどのような変化を受けるか明らかにすること とする。
著者
伊達 勲 道上 宏之 藤井 謙太郎 安原 隆雄 平松 匡文 菱川 朋人 春間 純 田尻 直輝 佐々木 達也 佐々田 晋 石田 穣治
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

脳梗塞モデルラットに対して、ヒト骨髄由来多能性幹細胞・脳内移植を行う。A:電気刺激治療、B:リハビリテーション、C:電気刺激治療+リハビリテーションにより次の項目の評価を行う。1. 組織学的評価:移植細胞の生存・遊走・分化、脳梗塞・神経新生評価、炎症・血管新生評価2. 行動学的評価:運動機能評価、認知機能評価・うつ様症状評価3. 遺伝子発現プロファイル評価:治療による虚血ペナンブラ領域の遺伝子発現変化を解析する
著者
錦織 千佳子
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

フロンガスによるオゾン層の破壊が進むと従来オゾン層により遮断されていた300nm以下の、より生物効果の大きい短波長の紫外線(UV)まで地球に到達するようになり、UVB領域(280-320nm)の紫外線の人体に及ぼす影響と、その防御について研究することは、急務である。本研究は太陽光紫外線がヒト遺伝子レベルでどのような変化を及ぼすかを解明することを目的としてヒト皮膚に類似する無毛マウス背部に太陽光近似の紫外線を照射し、その紫外線の照射量に依存してp53遺伝子にどのような変化がおこっているかをみた。一方、紫外線によって、露光部に皮膚腫瘍が生じる疾患である色素性乾皮症(XP)患者に生じた露光部皮膚腫瘍におけるp53遺伝子の変化についても調べ、実際のヒトにおいて太陽光によってp53遺伝子にどのような変化がおこっているかを解析し、マウスの結果と比較しすることをめざした。紫外線は点突然変異をおこしやすいとされており、これまでの私達の研究から、紫外線がras遺伝子に突然変異をおこさせることにより20%くらいの頻度でras遺伝子が活性化されることが明らかになった。p53遺伝子では、点突然変異をおこすことにより正常の機能の制御からはずれる例が知られているので、p53遺伝子に着目し、露光部と非露光部皮膚及び肝臓でこれら遺伝子の変化がないか、またどのくらいの照射量によりどのような変化があらわれるかについて解析した。無毛マウスに健康蛍光ランプを週2-3回、20週照射したマウス皮膚の露出部皮膚に生じた腫瘍からDNAを抽出し、PCR法で増幅したp53遺伝子部を一本鎖DNA高次構造多型解析法(SSCP法)によりp53遺伝子のエクソン6、7、8の突然変異の有無をスクリーニングしたところ3/16に正常とは異なる永動度を示すものが検出された。一方XPの患者皮膚腫瘍では16/37にSSCPの異常が見つかった。それらについて、塩基配列を決定したところCC→TT(4つ),C→T(2つ)の変異が多く見られ、大腸菌などにUVCを照射して得られた研究結果で示されているように、ピリミジンの並んだところに変異がおこりやすい傾向がみられた。しかし、一塩基挿入、G→C,G→TなどのトランスバージョンもみられUVBとUVCとで損傷の種類、生じる突然変異のタイプが異なる可能性もしめされ太陽光近似のUVBをもちいることの重要性が示唆された。今後マウスにおいてSSCPの異常がみられたものについても塩基配列を決定して実験的なサンランプ照射が実際の太陽光照射のモデルとしてどの程度有用かを検討したい。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アリストテレスの体系の頂点に形而上学が位置する。これは存在としての存在を研究する存在論であり、また第一の永遠の不動の存在者を研究する神学でもあるが、「第一のものであるが故に普遍的である」という仕方で両者は総合される。彼の体系は壮大で緻密なカテドラルに比すことができる。尖塔は天界の証人として神学であり、基礎およびネイブは弁証術と自然学である。本研究は弁証術と自然学の相補性を方法論上明らかにしている。弁証術の方法と実践は区別されるべきであり、その方法は「弁証術的に(dialektikos)」にではなく「ロギコースに(形式言論構築上)」形成されていることを明らかにした。従来はこの二つの方法が区別されていなかった。そして存在の形式言論構築的な分析としての「ロギコース」という手法は自然学の探究のみならず、神の存在の探究にいたるまで用いられる手法であることを明らかにした。(報告書第一論文)彼の重要な形而上学的概念である「本質(toti en einai)」もロギコースに、非因果論的に論じられることを明らかにした。実体に自体的同一性が端的にあることがロギコースに主張される。ロギコースに自体的同一性として特定される本質を現実世界で因果論的に実現しているものの理解を可能にするものが質料形相論である。従来は実体の一性を構成する因果論上基礎的な特徴を本質として理解してきた。本質は形式言論上存在要請され、それを満たすものが自然のうちに因果論的に探究される。(第二論文)さらに、この因果論的展開を可能にし、弁証術と自然科学を架橋するのが彼の論証と定義の理論であることを明らかにした。因果性を明らかにする論証をソクラテス以来の「何であるか」の探究の延長線上に種々の定義を判別する定義論に組み込む様式を明らかにした。(第三論文)
著者
佐々木 優子 佐々木 祐典 小野寺 理恵 岡 真一 本望 修
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまでの研究から、老化により生体内のMSCが機能低下(stem cell failure)を起こすことが、個体の老化の原因となっていると考えており、本研究で、MSCの投与・補充による“抗加齢効果”をもたらす詳細なメカニズムを解析し、健康寿命の延長をもたらす治療薬の開発に展開することができると考えている。本研究の成果により、老化の本質が明らかとなり、健康寿命の延長が可能となれば、超高齢化社会を迎えているわが国において、大きな福音となり、波及効果は極めて高いと思われる。
著者
田中 章詞 唐木田 亮 瀧 雅人
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2022-06-16

ここ十数年のうちに起こった機械学習(Machine Learning)の技術の劇的な発展のうちの多くが、深層学習(Deep Learning)の手法によるものであることは疑いの余地がないが、それにもかかわらず深層学習は従来の統計的機械学習の常識から見ると理論保証が難しいこともよく知られた事実である。本研究では従来の機械学習の理論研究手法に加え、物理学からもたらされた知見を結合し、深層学習の理論/応用の両方にさらなる深い理解、発展をもたらすことを目的とする。
著者
阪東 勇輝
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

神経細胞は多様なイオンチャネルを発現しており、それらが協調して活動依存的神経回路形成に寄与すると考えられる。申請者はこれまでに、静止膜電位制御に重要な漏洩K+チャネルが神経細胞移動を制御することを発見した(Bando et al., Cereb. Cortex, 2014)。漏洩Na+チャネル・NALCNも静止膜電位制御に重要で、ヒト神経疾患との関連も報告されているが、神経回路形成における役割は不明である。そこで、NALCNの機能阻害および亢進を行い、NALCNによる神経活動依存的神経回路形成機構を分子、形態、生理の視点から統合的に解明する。
著者
辻 三郎 今井 正和 山田 誠二 石黒 浩 徐 剛
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

自律的に環境を観測し、そのモデルを作成する知能ロボットを実現するために全方位ビジョンを開発し、その能動的利用方式の確立を研究の目的とする。[1]全方位画像理解の研究 カメラを回転させながら連続的に撮像した画像列から作成する全方位画像は、広い視野を持つが、物体までの距離が得られない欠点があった。本研究では、カメラを円弧上で移動しながら連続撮像し、2本のスリットからサンプルする2枚の全方位画像間の視差から距離情報を算定する方式を考案し、実験で有効性を検証した。[2]全方位画像から環境地図の作成 全方位ステレオの距離情報から粗い環境地図を構成し、それに基づいて次の観測点を計画し、移動して観測を繰り返す。それぞれの場所で得られた全方位ステレオデータを融合して、より信頼性のある地図を作成する方式を提案し、実験で検証した。[3]能動ビジョンによる環境地図の作成 全方位ステレオは、基準線が短く精度の高い計測は難しい。そこで、離れた2点での2枚の全方位画像を用いて計測する両眼全方位ステレオが有効と考えられる。しかし、ロボットが移動するために2点間の距離と、移動前後の回転成分を決定する必要がある。環境内の2個の特徴点を360度の視差に保ちながら移動するアクティブビジョンの方式を利用することにより、回転成分を0とし容易に高精度で環境地図を作成する考えを提案し、実験で有効性を示した。[4]定性的室内地図の作成 ロボットの移動のためには、環境の構造を示す定性的地図が有用である。ロボットが、自律的に環境観測の計画を作り、それに従って全方位パノラマ画像、経路パノラマ画像を撮像し、それらを融合して地図を作成するシステムを試作し、実環境で検証した。
著者
林 辰弥 玉田 章
出版者
三重県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、アロマオイルを組み合わせた足浴の血栓症予防効果について科学的に検証した。その結果、アロマオイルとしてローズマリーを組み合わせた足浴の場合、健常女性では37℃、40℃及び43℃という広範な湯温を用いた20分の足浴により、足浴後20分までのいずれかの時間で血管内皮細胞で産生される線溶阻害因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1の血漿濃度が低下することによる血栓症予防効果が認められた。現在、長期臥床の患者様を被験者として、同様な検討を実施している。
著者
針塚 進 吉川 昌子 大靏 香 森田 理香
出版者
筑紫女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

学童保育支援員および学童保育巡回相談員(臨床心理士・スクールカウンセラー)に学童保育のあり方に関する質問紙調査を行った。その結果、「対応に難しさを感じる子どもの特徴」は、「他者への加害行動」が最も強く、「自己中心・自己制御困難」、「遊びが中心で学習困難」「不注意」であった。支援員が必要だとしていたことは、「支援員相互の連携」「専門家の支援」「保護者や担任・学校との連携」であり、「支援員の資質向上」の必要性も求められた。また、「支援員」「相談員」共に「学校・担任」と及び地域との連携の必要性を強く感じていた。カウンセラーは、支援員への助言や支援が十分でないと考えていた。
著者
山本 洋平 小倉 咲 ゴーマン マイケル 下條 恵子 舌津 智之 高野 泰志 松永 京子 貞廣 真紀
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、西部文学・西部表象を移動・環境・女性の観点から捉え直すことを試みる。これまでの研究の多くが東部作家による西部表象の問題を扱ってきたのに対し、本研究は、西部へと流入してきた作家、あるいは、西部間を移動する作家が西部をどのように描いているのかという問いを主軸に置く。この問いを考える上で、トランスリージョナリズムという本研究独自の概念(ヒト・モノの移動が地域に及ぼす文化的諸相)を提唱する。さらに、主として男性作家に担われてきた西部文学にあって女性はどのように描かれているのか、女性作家は西部をどのように描いているのか、移動の文化と女性との関係はいかなるものか、といった問いを追究する。
著者
小泉 公乃 吉田 右子 池内 淳 松林 麻実子 和気 尚美 河本 毬馨
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

21世紀社会における中心的課題は,産業構造の変化や不安定化する国際政治によって生じた社会分断を克服することであり,地域コミュニティの中心にある図書館は社会分断克服空間への変化を求められている。本研究では,①包括的文献レビュー,②北欧北米と日本における図書館の政策分析,③北欧北米と日本の先進的な図書館を対象とした詳細な事例分析,④先進的な図書館の立地する地域を対象としたエスノグラフィ,⑤新しく創造された社会分断克服空間を対象とした図書館評価法の開発という5つの研究を通して,伝統的な図書館から21世紀の次世代図書館への<革新メカニズム>を解明したうえで,<新しい図書館評価法>を開発する。