著者
麻生 久 海老名 卓三郎 石田 名香雄 鈴木 富士夫
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.665-671, 1986-08-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
26

有機ゲルマニウム製剤Ge-132 (Carboxyethylgermanium sesquioxide) のマウスのインフルエンザウイルス感染症に対する防御効果を検討した。DDIマウスにインフルエンザウイルス (A2/熊本/H2N2株) を10LD50経鼻感染させ, 感染当日より1日1回計6回Ge-132を連続経口投与したところ, 100mg/kg投与, つづいては20mg/kg投与で有意な延命効果を認め, また上記投与マウスにおいて肺内ウイルスの増殖抑制と肺のコンソリデーションの進展停止が確認された。Ge-132はin vitroでは直接の抗ウイルス作用を全く示さないことから, マウスにおけるインフルエンザ感染防御効果はGe-132投与により誘起されたIFNが生体の免疫系を賦活化した結果と考えた。なおGe-132の経口投与を行なったマウスにおいて著明なNK活性の増強が脾細胞中でも, 肺組織でも認められ, 特に感染マウスにおいて著明であった。Ge-132投与でin vivoで活性化されたNK細胞はウイルス感染細胞に対し殺傷作用を示したことから, Ge-132のマウスインフルエンザウイルス感染防御効果はGe-132投与で増強されたNK細胞が肺内ウイルスの増殖を阻止するとともにコンソリデーションの進展を停止した結果と考えられる。
著者
村田 隆史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1066-1067, 2016 (Released:2016-11-01)

タケダのかぜ薬「ベンザ」が生まれたのは1955年(昭和30年)。「ベンザ」という名称は、当時の配合成分ピリベンザミンに由来します。「ベンザ」の特徴は、服用錠数を抑えて飲みやすくしたカプセル様の錠剤カプレット。「あなたのかぜはどこから?」のコピーでお馴染みのベンザブロックシリーズは、有効成分に医療用から転用した効き目の強い成分を率先して配合し、かぜ症状のタイプに合わせて選べる製品シリーズとなっています。
著者
石井 由起 春原 則子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.422-428, 2018-12-31 (Released:2020-01-03)
参考文献数
19

複数の意味属性語の想起により目標語の喚語を促すSemantic Feature Analysis (SFA) による失語症の呼称訓練では般化や維持の報告が多い。しかし本邦での検討はほとんどない。今回, 慢性期流暢性失語症 2 例に SFA 訓練を行い, 訓練および維持効果, 非訓練語への般化を検討した。訓練前の呼称では, 両症例とも迂言がみられた。訓練は, 多層ベースラインをもとに 2 週に 1 回の頻度で 2 つのリストを実施し, 訓練前後に 100 語呼称を行った。その結果, ベースライン期 (基準期) に比べ訓練語の成績は有意に改善し, 維持期にも効果が持続した。非訓練語と 100 語呼称の成績も基準期より維持期で高かった。両症例の呼称の改善と般化には, SFA の手法を症例自身が self-generated cues として用いるようになったことの影響が考えられた。意味属性に関する語を有効な cue として活用するためにSFA の手法を意図的に用いるよう指導することの有用性が示唆された。
著者
大嶋 直浩
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

オウゴンは強力な抗炎症作用を示すことから、様々な漢方処方に配合されており、主に臨床現場で重宝されている。一方で、オウゴン含有漢方処方は間質性肺炎を引き起こしやすく稀に重篤になるため「予防」が重要である。しかし、その方法は確立されていない。最近私はオウゴン含有漢方処方の一つである黄連解毒湯の研究を行い、当該処方を調製する過程で間質性肺炎の原因物質とされているフラボノイドの抽出効率が著しく変化することを見出した。このことは生薬の配合により、フラボノイドの量を調節できることを示唆しており、より最適な生薬を組み合わせることで間質性肺炎の発症を予防できるのではないかと考えている。この仮説を立証するため、本研究ではオウゴンに様々な生薬を配合し、有効性と安全性を勘案したフラボノイドの量を明らかにすると共に配合すべき生薬の最適化を行う。昨年度はオウゴンに含まれるフラボノイドの一つであり、間質性肺炎の関連が最も強く疑われているバイカレインに焦点を当て、バイカレインと相互作用を示す生薬の探索を行った。今年度では、バイカレインの配糖体であり、オウゴンの主成分であるバイカリンに焦点を当てて、任意の生薬との組み合わせによる抽出量の増減を検討した。その結果、ベルベリンとの沈殿形成が考えられるオウレンとの組み合わせでは減少したが、オウバクとの組み合わせでは大きな変化を示さなかった。一方、リョウキョウとの組み合わせでは、バイカリンの抽出量は増加した。エキス自体の抽出効率に大きな変化を示さなかったことから、リョウキョウ由来の成分がバイカリンの抽出量を増加させる作用があることが示唆された。
著者
髙木 俊雄
出版者
明治大学
巻号頁・発行日
2022

Article
著者
山崎 博敏 島田 博司 浦田 広朗 藤村 正司 菊井 隆雄
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.94-109, 1983-10-20 (Released:2011-03-18)
参考文献数
172
被引用文献数
1
著者
西條 剛央
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.93-114, 2013-03-25 (Released:2017-08-01)
参考文献数
59
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to show the philosophical functions of structural constructivism by solving the fundamental problems of the philosophy of science and providing a theoretical basis for the human sciences. Firstly, the paper explains the basic principles and concepts of structural constructivism. Secondly, it identifies the difficult problems that previous notable scholars could not solve in the science of philosophy. Thirdly, it argues that by applying the structuralist of the philosophy of science and structural constructivism, those philosophical problems can be resolved and a theoretical basis for the human sciences can be established. This indicates the theoretical and epistemological superiority of structural constructivism.
著者
緒方 康介
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.37-45, 2009-07-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
22

本研究は,被虐待児のP–Fスタディへの反応を分析することで,虐待の被害児童における攻撃性に関する知見を得ることを目的に実施された。調査対象として,児童相談所のケース記録の中から,P–Fスタディが実施されていた215名分(虐待群65名,比較群150名)の児童のデータが回顧的に抽出された。分析に際しては,まず初めに虐待群の平均値を標準化データにおける理論値(ノルム)と比較し,続いて比較群との群間における差異を検証した。ノルムおよび比較群との差異が両方有意であったものを虐待群の特徴ととらえ,多変量分散分析とボンフェローニの修正を施したt検定の結果から,虐待群ではI-AとGCRが高くE-Aが低いという知見が得られた。この分析結果に対して,自責傾向(I-A)の高さは他責傾向(E-A)を抑制した結果との解釈がなされ,GCRの高さは過剰適応のためであると考えられた。本研究知見と先行研究で得られている知見とを重ね合わせることで,被虐待児は虐待されるかもしれない環境下では攻撃性を抑制しており,虐待の恐怖が取り除かれると攻撃性を爆発させるという心理的な傾向を持つことが示唆された。
著者
落合 いずみ
出版者
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
雑誌
アジア・アフリカ言語文化研究 (ISSN:03872807)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.106, pp.5-18, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)

This study discusses the manner in which Atayal (Atayalic subgroup, Austronesian language family) underwent a semantic shift in time expressions such as “a little while ago,” “now, today,” and “morning, tomorrow.” In relation to this, the forms for “yesterday,” “a little while ago,” and “later” are also discussed. In Proto-Austronesian, the meanings of “morning” and “tomorrow” are inseparable, and this form is reconstructed as *dama. In earlier Atayal, sasan meant both “morning” and “tomorrow.” The Atayal form, sasan, “morning, tomorrow,” does not reflect *dama. This study examines the origin of sasan in Seediq (Atayalic subgroup), a language closely related to Atayal. In Seediq, the form for “now, today” is saða, and it later became saya. The ð dates back to the Proto-Atayalic *j; thus, a tentative form in Proto-Atayalic can be reconstructed as *saja, meaning “now, today.” The Proto-Atayalic *j is reflected as g, r, or s in Atayal, so *saja can be reflected as saga, sara, or sasa. The last form, sasa, may be related to sasan “morning, tomorrow.” It is likely that -an was attached, a suffix indicating time or space, resulting in sasa-an. Then, one of the a’s was deleted from the consecutive vowels, becoming sasan. Somehow, its meaning shifted from “now, today” to “morning, tomorrow.” This study proposes that this semantic shift was driven by another semantic shift relating to a Proto-Atayalic form, *sawni, which means “a little while ago.” This word extended its meaning to include “today in the morning” and then further extended to refer to “today”; it probably also referred to “now.” As sawni became “now, today,” sasan, the original word for “now, today,” shifted its meaning to “morning, tomorrow.”
著者
利部 慎 嶋田 純 島野 安雄 樋口 覚 野田 尚子
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF HYDOROLOGICAL SCIENCES
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-17, 2011 (Released:2011-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
15 9

阿蘇カルデラ内を水文化学的な特性に基づいて4 地域に区分し,その4 地域から得られた地下水の滞留時間を明らかにすることで,阿蘇カルデラ内の地下水流動機構を明らかにした。安定同位体比特性および水質特性,さらに水素安定同位体比から推定された涵養標高により,カルデラ内を外輪山山麓系:領域( I ),中央火口丘群系:領域( II ),カルデラ低地系不圧地下水系:領域( III ),カルデラ低地系自噴井系:領域( IV )の4 領域に区分した。領域( I )と( III )では推定される涵養標高が相対的に低く,溶存成分量の少ないCa-HCO3 型であるため,涵養から湧出までの経路は比較的短い流動規模の小さなグループと考えられた。一方,領域( II )と( IV )は,推定涵養標高が高く溶存成分量の多いSO4 成分に富んだ水質組成であるため,中央火口丘群で涵養された流動規模の大きなグループと考えられた。また,年代トレーサーであるトリチウムやCFCs を用いて地下水の滞留時間の推定を行った。まず,トリチウムによるピストン流での滞留時間は全領域において約3 年未満と推定された。そして,トリチウムの濃度履歴を利用した詳細な滞留時間の推定が,領域( I )および領域( II )で行うことができ,領域( I )ではピストン流の流動形態で約20 年の滞留時間と推定され,CFCs の分析結果と整合的であった。一方,領域( II )ではトリチウムとCFCsにより推定された滞留時間に相違がみられたが,これは流動形態が混合流によるものと考えられ,その際に推定された平均滞留時間として約3 年が得られた。このような長い滞留時間は、水文化学特性や推定された地下水流動機構と調和的なものである。なお,領域( III )では人為起源によるものと考えられる過剰付加により,CFCs による滞留時間の推定を行うことができなかった。また,領域( IV )ではCFCs によるピストン流の滞留時間が約2 年と推定されたものの,溶存成分量が多いことや推定涵養標高が高いことを考慮すると,より長い滞留時間を有している可能性を否定できないため,今後他の年代トレーサーとの比較を行うことが期待される。