著者
高橋 理喜男
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.413-416, 1996-03-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3

明治初年に計画された札幌は, 格子状の街区パターンをもち, その中に広幅員の大通 (火防線) を設定した。それが現在の大通公園である。この大通計画の目的は二つあった。市街地を大きく官地と民地に分け, 両者の空間的分離を図ること。同時に, 民地から頻発する火災による官地への延焼防止の役割を担わせることにあった。この大通火防線の計画は, 都市火災の予防という観点から, 近代的都市計画としての評価を受けてきたけれども, 支配, 被支配の構造が色濃くあらわれている近世城下町的な都市計画の論理を踏襲していることは, 角館や大野の事例からも明らかである。
著者
倉 真一
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.8, pp.191-202, 1995-06-05 (Released:2010-04-21)
参考文献数
13

This article is based on the data of a survey of Iranians currently living and working in Japan. Using Portes' theoretical framework, the author provides an analysis and discussion of several aspects relating to them in view of their strategies for survival and future life chances. The conclusions presented are that; 1) The group of Iranians living in Japan are composed of differing classes of origin and that there is a significant correlation between class of origin and purpose of coming to Japan; 2) The major factors that affects their working conditons are the point in time in the economic cycle they entered the labor market and the extent of their own social networks; 3) They see the Japanese society through the frames of reference that have been produced in view of their expected life chances; 4) Despite the persistence of the economic recession, some Iranians are gradually becoming permanent residents.
著者
大平 幸
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.160, pp.79-93, 2015 (Released:2017-06-21)
参考文献数
11

日本に住む外国人の多様化が進む中,ことばの教育や学習を生活の中において捉えようという取り組みが進んでいる。本稿(1)では異なる文脈における語り直しを経て,自動車整備に関する専門用語が研究協力者の「生活においてなくてはならない重要なことば」になっていく様子を記述する。そして,このことによって生活におけることばの学習の様相を捉え,ことばの学習のひとつのかたちを提示する。
著者
佐藤 拓哉 木曽 朋顕
出版者
一般社団法人 日本高圧力技術協会
雑誌
圧力技術 (ISSN:03870154)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.334-345, 2010-11-25 (Released:2011-01-07)
参考文献数
17

Pressure tests of pressure vessels and piping involve the potential danger of brittle fracture. Especially, pneumatic pressure tests involve the hazard of releasing energy stored in compressed gas. Engineers and designers relating to the pressure facilities have been taking care to minimize the chance of fracture during the pressure tests. The care must be taken into account in materials selection, design, welding and heat treatment, inspection and test procedure. However, the fracture accident could not be eradicated for a long time. Sometimes, this resulted in a fatal accident. It is important to wake the best effort to prevent the accident itself. Considering the difficulty of eradication of the accident, it is also important to protect the human lives during pressure tests. In this paper, several improvements were proposed in order to protect the human lives. The main points are the selection of test method (hydrostatic or pneumatic?) , pressure measurement, inspection during pressure test and exclusion zone. Some of these require the revision of laws, codes or standards.
著者
渡邊 亮士 岩本 隆茂
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.59-69, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、抑うつ傾向による随伴性認知の違いに関する知見の検討であった。実験に先立ち、393名の健常の大学生に対し、抑うつ傾向についてスクリーニングを行い、低抑うつ群、高抑うつ群として各24名ずつ選出した。実験では、被験者の行動(ボタン押しの有無)と、その行動を受けて示される結果(ライト点灯の有無)との随伴性について、被験者に評定させる課題が用いられた。おもな結果は以下の通りで、抑うつリアリズム理論や統制の錯覚現象は、非随伴事態で限局的にみられるものであるということが判明した。(1)評定の難易度が高い非随伴事態において、低抑うつ者は高抑うつ者に比べ、随伴性評定が不正確である度合いが有意に大きかった。(2)評定の難易度が低い非随伴事態において、随伴性評定の正確さに、両群の有意差はみられなかった。(3)低抑うつ者は、高抑うつ者と比較して、ベースラインの情報をそれほど重要視していなかった。
著者
織田 揮準
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.166-176, 1970-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
37 13

評定尺度研究の一環として程度量表現用語の意味づけに関する実態調査を, 一対比較法を用いて行なった。選ばれた程度量表現用語は,(1) 実現の程度量 (確信) 表現用語 (16語),(2) 現実の程度量表現用語 (18語),(3) 時間的程度量 (頻度) 表現用語 (16語), および,(4) 心理的時間表現用語 (18語) であり, 調査対象は小学4年生 (延べ2,588名), 小学6年生 (延べ2,379名), 中学2年生 (延べ2,617名) と大学生 (延べ2,084名) であった。程度量表現用語の程度量に関する一対比較判断の結果にもとづき, 判断の比率行列が作られ, また, 尺度値が算出された。その結果, 低学年の理解と大学生群の理解には大きなずれのみられる程度量表現用語のあることが明らかにされ, 評定尺度の作成にあたり, 判断カテゴリー用語の決定は研究者側の理解のみでなく, 同時に被験者群の理解をも配慮しなければならないことが示唆された。
著者
北島 純
雑誌
社会構想研究 = Journal of Social Design (ISSN:2433670X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-44, 2022-09-30

本論文は,広告をはじめとする表現活動が「文化の盗用」の非難を浴びせられるリスクを回避するために必要な考慮要素を,ジェームズ・O・ヤングの文化的盗用論,文化的植民地主義論及び無形文化遺産保護条約制度を参考にして検討したものである。伊ヴァレンティノのCMが非難を浴びた事案等の検討を通じて,無形文化遺産保護条約の規定する無形文化遺産一覧表の該当性,広告内容の強度性,不当な危害・不快感の有無,強者の視点への偏り(少数者への配慮),広告市場の客観的状況と歴史的コンテクスト,広告当事者の「声」の想起(対話性)という要素が,伝統文化に関わる広告等の表現活動の適切性を事前判断する基準になりうることを論じた。
著者
内田 博
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-32, 1986-10-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
6
被引用文献数
9 7

(1)1968-84年に,埼玉県中央部の比企•武蔵丘陵を中心とする森林で4種のタカ類(サシバ,ハチクマ,オオタカ,ツミ)の観察を行ない,そのうちサシバ,ハチクマ,ツミの3種の巣の周辺でスズメとオナガが繁殖しているのを確認した.しかし,オオタカには,そのようなことは見られなかった.(2)サシバの巣の周辺では,丘陵内ではふつう見ることのないスズメが数番いひんぱんに観察され,サシバの巣から数mの範囲内に巣をつくり繁殖してい虎.調査した11巣中,スズメが見られたのは9例で,合計9巣が確認された.スズメの見られた時期はサシバの繁殖時期と一致し,5月中旬から7月初旬にわたった.(3)ハチクマの巣の周辺でもスズメが見られ,繁殖した.調査した6巣中,スズメが見られたのは4例で,2巣が確認された.(4)ツミの巣の周辺では,一群のオナガが観察され,周辺数10mの範囲内に複数の巣がつくられた.調査した10巣中,8例でオナガが長期間観察され,オナガが巣の周辺に見られないとされた残りの2例でもオナガがツミの巣の林に短時間現われた.オナガの見られた8例の場所では,合計7巣のオナガの巣が確認された.(5)オオタカの場合は,調査した19巣の付近で繁殖する鳥は見られなかった.
著者
中里 浩也 大場 孝信 板谷 徹丸
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.1-10, 1996 (Released:2006-12-13)
参考文献数
14
被引用文献数
6 8

The geology and K-Ar geochronology of the Gassan volcano in Northeast Japan were carried out to establish the volcanic history.     This volcano is belonging to the Chokai volcanic zone, and composed of several volcanic edifices. On the basis of the field geology and K-Ar dating of the ejecta, the volcanic history is divided into five stages;      Stage I (0.88 Ma): the Amamoriyama was formed by dacite volcanism. The dacite lava is composed with hypersthene, augite, hornblende, biotite and quartz phenocrysts.     Stage II (0.7 Ma): The Yudonosan, which is composed of a stratovolcano and two lava domes of mainly dacite lava and pyroclastics.     Stage III: The volcanism occurred in the north of the Yudonosan. The dacite lava and pyroclastics covered on the basements in the caldera and the lower Yudonosan lava in the Ishihane river.     Stage IV (younger than 0.6 Ma): The volcanism of the major stratovolcanoes of central Gassan, the Waratahageyama and the Ubagatake, which are composed of lavas and pyroclastics. The rocks are calc-alkali andesite containing hypersthene, augite, sometimes a small amount of olivine and rarely hornblende.     Stage V: The collapse of the northwestern half of Gassan stratovolcano, caused the formation of a horseshoe-shaped caldera and dry avalanche deposits.     The rocks of the Gassan volcano are divided into two groups, dacite and andesite in their temporal as spatial distributions.
著者
下門 洋文 中田 由夫 富川 理充 高木 英樹 征矢 英昭
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.181-194, 2013 (Released:2013-06-08)
参考文献数
34
被引用文献数
4 3

The purpose of this study was to examine trends in the body mass index (BMI) and physical fitness of Japanese university students over a period of 26 years and the association between these parameters. We retrospectively collected data on 17,514 students aged 18-19 years attending a university in the years 1984, 1986, 1990, 1991, 1996, 1997, and 2004-2010. The subjects were classified into three body types on the basis of calculated BMI: underweight (BMI<18.5), normal (18.5≤BMI<25), and overweight (BMI≥25). We also calculated the physical fitness score on the basis of 4 fitness-test results (hand-grip power, handball throwing distance, 50-m running time, and 20-m shuttle run count). The time of assessment was categorized into three periods: 1980s (1984 and 1986), 1990s (1990, 1991, 1996, and 1997), and 2000s (2004-2010). The association of physical fitness with body type and period was analyzed using 2-factorial analysis of variance. Descriptive statistics showed that over the 26-year period, moderately increases in the prevalence of underweight and overweight individuals were observed, and the fitness score decreased for both sexes and all body types. A significant interaction between body type and period on physical fitness was observed in boys (P<0.05); underweight and overweight boys showed a greater decrease in physical fitness than normal-weight boys from the 1990s to the 2000s. These long-term data suggest that over 26 years, an increase in the prevalence of underweight and overweight individuals among university students resulted in a decrease in fitness levels to a greater extent in boys.
著者
山根 朋巳 鈴木 桂子
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

幸屋火砕流(宇井, 1973)は、約7300年前(福沢, 1995)の鬼界カルデラ形成に伴った鬼界アカホヤ噴火の際に発生した大規模な火砕流である。鬼界アカホヤ噴火はプリニー式噴火に始まり降下軽石とイントラプリニアン火砕流を発生させ、続く幸屋火砕流の噴出で終了した(町田・新井, 2003; Maeno and Taniguchi, 2007; 藤原・鈴木, 2013)。幸屋火砕流堆積物は、給源近傍の薩摩硫黄島・竹島のほか、周辺の陸地(薩摩半島・大隅半島・種子島・屋久島・口永良部島)で分布が確認されている(宇井, 1973; 町田・新井, 1978; 小野ほか, 1982; Maeno and Taniguchi, 2007; 下司, 2009; 藤原・鈴木, 2013)。噴火当時の海水準は現在とほとんど変わらない(例えばTanigawa et al., 2013)ことや堆積物の分布から海上を流走したことは明らかであるが、海の存在が幸屋火砕流に与えた影響は検討されてこなかった。 鬼界アカホヤ噴火噴出物中には、SiO2 wt.% = 75前後の“高SiO2ガラス”とSiO2 wt.% = 65前後の“低SiO2ガラス”の2種類の火山ガラスが含まれ、幸屋火砕流堆積物中で両ガラスの量比が垂直方向で変化を見せる(藤原・鈴木, 2013)。このことから、藤原・鈴木(2013)は、火砕流噴火初期には高SiO2ガラスのみからなる火砕流が発生し、噴火が継続していく中で低SiO2マグマが噴出し始めたとした。 本研究では、露頭記載、火山ガラス化学組成分析、層厚・軽石最大粒径測定という手法を用いて、これまで議論に含まれてこなかった種子島の堆積物に基づき幸屋火砕流の流動・堆積機構を議論し、また、海の存在が幸屋火砕流に与えた影響を検討することを目的とした。 火山ガラス組成分析には、種子島の4地点で幸屋火砕流堆積物の基底部から上位へ一定間隔で採取したマトリックス試料を用いた。分析結果から、基底部からは高SiO2ガラスのみ、上位層準からは低SiO2ガラスが少量混ざるという垂直変化が得られた。これは給源近傍や薩摩半島・大隅半島(藤原・鈴木, 2013)と同じ垂直変化であり、火砕流噴火初期に発生した高SiO2ガラスのみを含む火砕流は薩摩半島・大隅半島・種子島に到達・堆積したことが明らかになった。また、最も低SiO2ガラスの含有量比が大きくなると考えられる最上位層準で検出される低SiO2ガラスの量比を見ると、大隅半島に比べて小さいことが分かった。これは、継続する火砕流噴火のより後期に発生した低SiO2ガラスを多く含む火砕流が大隅半島には到達したが種子島には到達しなかったことを示していると考えられ、種子島では大隅半島より層厚が薄いことと整合的である。 軽石最大粒径は一般的な大規模な火砕流堆積物とは異なり、給源からの距離に伴って小さくなる傾向を示さない。しかし、海上流走距離との関係を見ると、海上流走距離が大きくなると軽石最大粒径が小さくなるという比例関係が明らかになった。これより、幸屋火砕流が運搬できる軽石粒径の上限は海上流走距離によって決定されたとみなせる。また、この比例関係から海上を流走する幸屋火砕流の到達限界は約70 kmと推定され、種子島は火砕流の到達限界に近いことが分かった。 以上の議論より、幸屋火砕流は海上流走中に多くの火砕物を落としたことは容易に想像でき、鬼界カルデラを取り巻く海底には広範囲に火砕流堆積物が堆積していると考えられる。
著者
永井 敦子 ナガイ アツコ Atsuko NAGAI
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-10, 2023-03-31

本論文では16世紀の王令における文書作成に関する規定を検証する。1490年代から16世紀にかけて、王権は長大な王令を繰り返し発布し、王国の司法制度・課税制度をそこに書き表しただけでなく、高等法院その他の裁判所に、王令の文字どおりの遵守、および王令に基づいた判決を命じた。またそれらの王令においては、それぞれの裁判所の判決、公証人の証書類、貴族の名簿、そして教区簿冊といった、文書記録の作成と参照についての規定が増えていく。これを本論では行政の文書化として捉える。16世紀後半のフランスは宗教戦争期にあたるが、文書化の視点を加えることによって、当時の治安行政(ポリス)を含めた行政体制を見直すきっかけとしたい。
著者
山岸 健三 佐々木 隆行 加藤 真梨奈
出版者
名城大学農学部
巻号頁・発行日
no.54, pp.7-16, 2018 (Released:2018-07-18)

2005年頃から愛知県豊田市で全身黒色のクマバチが見られるようになり,外来種のタイワンタケクマバチ(Xylocopa tranquebarorum)であることが判明した。本種は台湾のみならず,中国本土の長江(揚子江)以南に広く分布しており,竹を営巣基質として利用する。本種が日本国内に広がった場合,在来種であるキムネクマバチ(通称クマバチ)(X. appendiculata circumvolans)への悪影響が懸念された。そこで,筆者らは外来種であるタイワンタケクマバチが在来種と生態的に競合する可能性や,日本における今後の分布拡大を予測するため調査を行った。1)花資源をめぐる競合について調査したところ,2種のクマバチは同じ花に飛来するものの,種間で競合している様子は見られなかった。2)本種の分布状況を調査したところ,2009年時点では合併前の豊田市全域に広がっている程度であったが,2011年には愛知県全域に分布を拡大していた。3)本種が営巣のために利用する竹を調査したところ,直径19~25mmの直立した枯れ竹に営巣し,青竹は使わなかった。しかし,畑の竹の支柱,竹箒や竹製の垣根などにも営巣することで経済的被害が見られた。4)本種の生活史と営巣活動を調査したところ,キムネクマバチと同様の生活史を持ち,4月に越冬から目覚めた新成虫が交尾し,メスが単独で枯れ竹に営巣を開始し,5~7月に花粉団子を巣の中に溜め子育てをした。新成虫は7月下旬から8月に羽化し,その後,巣の中で越冬していた。1節間(巣)あたりの新成虫数は平均6~7頭,越冬している成虫数は巣内に残された育房跡数の約9割で,越冬までの生存率は非常に高いことがわかった。5)以上のように,2種の生活様式はほぼ一致しているものの,本種は枯れ竹に営巣し,キムネクマバチは枯れ枝に営巣するため,生態的に競合する可能性は低いことがわかった。また,本種の耐寒能力と日本の各地の年最低気温を比較したところ,将来的に本種は関東以西の西日本に広く分布することが予測された。
著者
深澤 瑞也 竜崎 崇和 亀井 大悟 川合 徹 川西 秀樹 菅野 義彦 篠田 俊雄 田倉 智之 土谷 健 友利 浩司 長谷川 毅 本間 崇 矢内 充 脇野 修 村上 淳 米川 元樹 中元 秀友
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.57-60, 2021 (Released:2021-03-03)
参考文献数
3

透析患者の高齢化および長期間化によりシャント系アクセスの作製困難症例が増加しており,カテーテルでの透析を余儀なくされる患者も多い.一方,透析用カテーテル挿入手技は現在の診療報酬上,注射コードに分類されており保険点数はついているもののDPC施設ではその期間内,消耗品であるカテーテル代も含めて保険請求ができない.一方,中心静脈へのカテーテル挿入手技においては体表超音波装置やX線透視装置などの周辺機器の使用や,医師・看護師・技師も含めた人的な負担を要すること,また血管損傷などによる死亡例も含めた重篤な合併症を呈することもあり,改善が必要と考える.そこで保険委員会として今般,手技のタイムスタディーを含めた現状把握を行い,診療報酬改定への足掛かりとなるべく実態調査を行った.本結果を基に,外科系学会社会保険委員会連合を通して改定の要望を提出する方向である.