著者
浅海 智之 柳田 紀之 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.1966-1974, 2016-10-10 (Released:2017-10-10)
参考文献数
25

食物アレルギーは,特定の食物摂取時に症状が誘発されることと,それが特異的IgEなどによる免疫学的機序を介する可能性の確認によって診断される.食物アレルギーの最も確実な診断法は,食物経口負荷試験である.一般内科医が遭遇する可能性のある症例において専門医にコンサルトするタイミングは,①小児期発症の食物アレルギーの診断の見直しが必要な場合,②耐性獲得確認のための食物経口負荷試験が必要な場合,③患者,家族が経口免疫療法を希望する場合,④原因不明のアナフィラキシーを繰り返す場合などである.
著者
高中 健一郎 安藤 元一 小川 博 土屋 公幸 吉行 瑞子 天野 卓
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-9, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

小型哺乳類の側溝への落下状況を明らかにすることを目的とし,静岡県富士宮市にある水が常時流れている約1.5 kmの側溝(深さ45 cm × 幅45 cm,水深10~25 cm,流速約1.3~1.6 m/s)において,2001年6月から2004年9月の間に落下個体調査を131日行った.その結果,食虫目6種,齧歯目7種,合計2目3科13種152個体の落下・死亡個体が確認でき,側溝への落下は1日あたり平均1.16個体の頻度で起きていることが明らかになった.落下していた種は周辺に生息する小型哺乳類種の種数81%に及び,その中にはミズラモグラ(Euroscaptor mizura)などの準絶滅危惧種も含まれていた.また,ハタネズミ(Microtus montebelli)の落下が植林地より牧草地において顕著に多くみられ,落下する種は側溝周辺の小型哺乳類相を反映していると思われた.側溝への落下には季節性がみられ,それぞれの種の繁殖期と関連している可能性が示唆された.以上のことから,このような側溝を開放状態のまま放置しておくのは小動物にとって危険であり,側溝への落下防止策および脱出対策を講じる必要があると考える.

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著者
佐道 直身
出版者
早稲田大学政治経済学部教養諸学研究会
雑誌
敎養諸學研究 (ISSN:02884801)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.63-83, 2007-12-27
著者
青山 和夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.6, pp.366-374, 2023-06-01

LiDARは,地上の踏査では明らかにし難い密林に覆われた広範な地域の三次元構造を面的に捉えるリモートセンシングとして,マヤ文明のセトルメント・パターンに関する革新的なデータを提供しつつある.本論文では,筆者らによるグアテマラのセイバル遺跡とメキシコのアグアダ・フェニックス遺跡の調査の成果について論じる.筆者らの調査によって,大規模な公共祭祀建造物は農耕定住共同体や王権が確立された後ではなく,それ以前から建設されたことが明らかになった.初期の公共祭祀建造物の共同建設作業や公共広場で繰り返し慣習的に行われた公共祭祀という反復的な実践は社会的記憶を生成し,中心的な役割を果たす権力者の権力が時代とともに強化された.
著者
横須賀 柳子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.50-64, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
21

日本社会では少子高齢化により労働者人口が減少する中,若年者の職業的・社会的自立を促すインターンシップへの参加者数が著しく拡大してきている。大学在籍中の就職活動前に行う企業でのビジネス実践は,日本人学生のみならず,グローバル人材としての活躍が期待される外国人留学生のキャリア形成に大きな影響を与えるはずだ。質的転換を志向する大学教育にとっても,インターンシップはアクティブ・ラーニングの重要な一方法となる。 本稿では,「キャリア」を生涯発達の視座から捉え,まず,政府・民間企業などによる調査結果を基にインターンシップ全般について概説する。また,留学生の事例を取り上げて,ビジネスの現場と多様な他者との関わりの中でことばや文化を学び,将来の自分の生き方を探求する実態を明らかにする。
著者
西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1-15, 2003-10-31

これまで,一般的に縄文時代の家畜はイヌのみであり,ブタなどの家畜はいないと言われてきた。しかし,イノシシ形土製品やイノシシの埋葬,離島でのイノシシ出土例から縄文時代のイノシシ飼育が議論されてきた。イノシシ飼育の主張でもっとも大きな問題点は,縄文時代のイノシシ骨に家畜化現象が見られなかったことである。ところが縄文時代のイノシシ骨の中にも家畜化現象と疑われる例があることが分かった。また,イノシシがヒトやイヌと共に埋葬されている例が知られるようになり,改めてイノシシについてヒトやイヌとの共通性を議論する必要が出てきた。そこで,本論では千葉県茂原市下太田貝塚出土資料を紹介するとともに,イノシシ形土製品・イノシシ埋葬・離島のイノシシ・骨格の家畜化現象の4項目について再検討した。その結果,文化的要素からみれば,縄文時代中期以降にブタが飼育されていたことはほぼ確実である。また,離島への持ち込みという文化的項目と骨格の家畜化現象の点から見ると,縄文前期からすでにブタが飼育されていた可能性が大きいことが分かった。しかし,縄文時代のブタは,骨格的変化が小さいことから,野生イノシシと家畜のブタが交雑可能な程度のかなり粗放的な飼育であったと推測された。ブタの存在がほぼ確実になったことは,縄文時代が単純な狩猟・漁労・採集経済ではなく,イヌとブタを飼育し,ある程度の栽培植物を利用する新石器文化であったことを意味するものである。
著者
松本 隆 マツモト タカシ Takashi MATSUMOTO
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.35, pp.271-286, 2014-03

1874年に翻訳出版された化学入門書『ものわり の はしご』の語彙、特に巻頭の用語解説付録「ことば の さだめ」の見出し項目を分析した。本書は、漢字と漢語を廃し、化学的な現象や物質名を含め、全文を平仮名の和語で訳しており、その語彙分析から主な特徴として次の3点を見出した。(1)和語による造語は、それまでの漢字を用いた造語の流れを汲んでおり、和語でも体系的で簡明な命名が可能である。(2)類義関係にある和語動詞群を使い分けることにより、混同しやすい類似の化学現象を区別して表現できる。(3)漢語よりも和語の方が、現実世界の事象を巧みに言語に写像し命名した例も見られる。つまり本書は、近代の西洋思想を和語で表現し、論旨の通った文章を平仮名で表記できることを、化学の分野で世に示した先駆的実践ということができる。
著者
木島 泰三
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.5-19, 1999-03-27 (Released:2018-04-25)

In 1957, Howard Warrender published an influential and controversial work, The Political Philosopy of Hobbes, which gives so-called “religionist interpretation” of Hobbes's “natural law” theory. We critically evaluate Warrender's claim that God plays an essential role in the foundation of Hobbes's rational/natural law theory. This examination mainly deals with chapter 31 of Leviathan, “of the Kingdom of God by Nature”, on which Warrender's claim is based. After having examined the Hobbesian topic in the chapter, “natural punishments”, we conclude that Warrender's “religionist interpretation” is unsustainable.
著者
神部 智
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.114-127, 2008-12-31 (Released:2017-05-22)

The aim of this paper is to explore the nationalistic and modernistic aspects in the Second Symphony of Jean Sibelius through the examination of its musical expression and reception. By virtue of its historical backdrop, Finnish audiences have considered the symphony to be nationalistic. Sibelius's musical expression such as the insistent repetition of a short melodic phrase, which is related certainly on a Finnish folk ethos, strengthens that viewpoint. On the other hand, English audiences have perceived the Second Symphony to be modernistic and revolutionary because Sibelius succeeded to address the call for new principles of symphonic form. Cecil Gray, for example, believed that Sibelius radically redefined, in the first movement of the symphony, the formal process of the sonata structure. In England, the similar viewpoints were considered authoritative at least until 1960s. The above opinions, which can eventually influence our interpretation of the composition, suggest that the identity of a musical work reflects the historical situation of the pertinent culture.
著者
神部 智
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-28, 2008-11-30 (Released:2020-05-25)
参考文献数
27

本稿の目的は、ジャン・シベリウスの《交響曲第 3 番》作品 52 における創作概念と表現手法の考察を通して、同交響曲に認められる新たな様式的方向を明らかにすることにある。民族ロマン主義からの芸術的飛躍を試みた中期創作期のシベリウスは、古典的作風の内に堅固な音楽的論理の確立を求めた。そこにおいて重要な鍵となったのが「交響的幻想曲」の創作概念である。《交響曲第 3 番》においてシベリウスは、伝統的なソナタ様式への斬新なアプローチ、そしてスケルツォとフィナーレ的要素の融合という独自の表現手法を拓いたが、それは自由な形式と堅固な論理の両立を求めた同時期のシベリウスの新たな創作概念に基づくものであったといえる。
著者
吉本 直人 鈴木 謙一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.6, pp.208-215, 2023-06-01

最後の「デジタル・デバイド領域」と言われている海中・水中環境をデジタル化・ネットワーク化することによって,広大な水中世界をIoTサービスが提供可能な領域とする「水中IoTサービスプラートフォーム」や「水中デジタルツイン」の構築を通じ,次世代の経済成長のエンジンとして水中環境を新たな経済圏として創出することが期待されている.近年,水中環境や構造物を3Dで高精度にデジタル化する手段の一つとして,水中LiDARが注目を集めている.本論文では,まず水中LiDARの基本的な構成技術の概要について述べた後,社会実装する上での水中LiDARへの要求条件を整理する.次に,開発を行った水中LiDARの水中環境下での測定対象物の3Dデータ計測実験結果を紹介し,今後の課題と技術開発の方向性について示す.
著者
原 雄大
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.11, pp.1391-1396, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

Over the last decade there has been an increase in the prevalence of autism spectrum disorder (ASD); however, its pathogenic mechanisms remain unclear. To date, no effective drug has been developed to treat the core symptoms of ASD, especially social interaction deficits. Previous studies have mainly focused on the glutamatergic, GABAergic, and serotonergic signaling pathways; however, a growing number of studies have reported abnormalities in the dopaminergic pathway, such as mutations and functional alterations of dopamine-related molecules, in ASD patients. Furthermore, atypical antipsychotic drugs risperidone and aripiprazole are prescribed for the treatment of non-core symptoms, such as irritability, in patients with ASD. These observations suggest that the dopaminergic pathway is involved in the pathogenesis of ASD. Previously, we have established a mouse model of ASD based on clinical research, which shows that exposure to valproic acid, an antiepileptic drug, during pregnancy causes an increase in the risk of developing ASD in children. This review summarizes our recent studies, which have assessed alterations in the prefrontal dopaminergic pathway. In addition, we discuss the effects of treatment with attention deficit/hyperactivity disorder drugs and atypical antipsychotic drugs, which activate the prefrontal dopaminergic pathway, on ASD-like behavioral abnormalities in the valproic acid exposure mouse model of ASD.
著者
飯田 秀延
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.192-196, 2020-01-15

高等学校で実践した,課題解決型のアクティブ・ラーニングをとり入れた,映像制作の授業を紹介する.本授業では,能動的に動画制作(問題解決)を行うことにより,生徒の創造的な思考力や,問題を発見したり解決したりする能力を育むことができる.また,グループ内でコミュニケーションを取り,自主的に作業を行うことで,「知識および技能」や「思考力・判断力・表現力」のみならず,「学びに向かう力,人間性」などの向上も図れる.アンケートでは,「今回のようなアクティブ・ラーニングの授業を今後も受けたいか」という質問に対して,86%の生徒が「ぜひ受けたい」または「どちらかというと受けたい」と回答した.