著者
下司 忠大 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.119-127, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本研究の目的はDark Triad (マキャベリアニズム,自己愛傾向,サイコパシー傾向)と他者操作方略(寺島・小玉,2004)との関連を検討することであった。大学生210名がDark Triad尺度と他者操作方略尺度を含む質問紙に回答を行った。共分散構造分析の結果,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は自己優越的行動操作に加えて,自己卑下的行動操作や各感情操作に対して正の影響を示した。また,自己愛傾向は自己優越的感情操作のみに正の影響が示された。本研究の結果はDark Triad尺度の妥当性を示すとともに,Dark Triadが高い者は自己優越的行動操作だけでなく,自己卑下的行動操作や感情操作を用いる傾向にあることを示すものであった。

3 0 0 0 IR 傾聴する仏教

著者
櫻井 義秀 サクライ ヨシヒデ Sakurai Yoshihide
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.29-53, 2015-04

This paper considers social exclusion in modern society through the lens of child poverty, arguing that exclusion should be addressed through provision of mental support as well as livelihood security. In particular, the practice of active listening, which aims to respond to modern people's needs for recognition and self-esteem, is examined. The case studies considered here show that self-recognition and recognition by others are important elements of care. Moreover, clinical religion guided by religious scholars and Buddhist monks should not be limited to unidirectional active listening between care-givers and care receivers, but should be the basis for constructing reciprocal relations in community. This point is illustrated through the case of a Buddhist priest in Fujisato-cho, Akita prefecture, who became the key person in creating collaboration between the local administration and social welfare providers.本稿では、子どもの貧困を糸口として現代社会における社会的排除の問題と考え、社会支援には生活基盤を確保するためのアプローチと精神的支援のアプローチがあることを確認する。その上で、現代人が求める承認欲求に応えようという傾聴の実践をさまざまな角度から捉え、自己承認や他者からの承認がケアにとって重要であることを論じる。宗教者や宗教学者によって提案された臨床宗教にとって課題となることは、傾聴の実践を一方的なケアの提供者・享受者の関係にとどめることなく、互酬的なケアのコミュニティ作りに関わっていくことだろう。その点で秋田県藤里町の事例は、僧侶がキーパーソンとなり、行政や社会福祉協議会と連携して地域福祉を実現する格好のケースとして参照されるものとなる。
著者
今野 卓哉 梅田 能生 梅田 麻衣子 河内 泉 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.330-333, 2011 (Released:2011-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 6

症例は49歳女性である.スピルリナ(サプリメント含有成分)を摂取した数日後に顔面から両上肢・体幹へと拡大する浮腫性紅斑が出現した.2カ月後にスピルリナを中止した後も皮疹は増悪し,5カ月後に筋力低下と筋原性酵素の上昇をみとめ,当科に入院した.筋生検では,多数の壊死線維と好酸球の浸潤をみとめ,免疫染色では血管周囲にCD20陽性B細胞の集簇をみとめた.副腎皮質ステロイドとシクロフォスファミドを併用し,症状は改善した.スピルリナはtumor necrosis factor(TNF)-αの産生を促進するなどの免疫刺激作用を有し,これにより皮膚症状をともなった炎症性筋疾患の発症がうながされた可能性があると考えられた.
著者
彌永 信美
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.106, pp.17-41, 1999-03-30
著者
Tadayuki Tanimura Masayuki Teramoto Akiko Tamakoshi Hiroyasu Iso
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.63416, (Released:2022-07-06)
参考文献数
32

Aims: Evidence of the effects of physical activity on mortality from aortic diseases, especially in Asian populations, remains limited. This study aimed to examine these effects using data from a large long-term cohort study of Japanese men and women. Methods: Between 1988 and 1990, 32,083 men and 43,454 women in Japan, aged 40–79 years with no history of coronary heart disease, stroke, aortic diseases, or cancer, filled in questionnaires on time spent walking and participating in sports and were followed up until 2009. Multivariable hazard ratios (HRs) with 95% confidence intervals (CIs) of aortic disease mortality and its types (aortic aneurysm and dissection) according to the time spent walking and participating in sports were calculated after adjusting for potential confounding factors using the Cox proportional hazards model. Results: During a median follow-up of 19.1 years, a total of 173 deaths from aortic disease (91 cases of aortic dissection and 82 of aortic aneurysm) were documented. Sports participation time was inversely associated with the risk of death from aortic aneurysm: the multivariable HRs (95% CIs) were 0.68 (0.40–1.16) for <1 h/week, 0.50 (0.19–1.35) for 3–4 h/week, and 0.31 (0.10–0.93) for ≥ 5 h/week (p for trend=0.23) compared with 1–2 h/week. The time spent walking was not associated with death from aortic aneurysm, dissection, and total aortic diseases. Conclusions: Greater time spent in sports participation was associated with a reduced risk of mortality from aortic aneurism in the Japanese population. Further studies are needed to investigate the relationship between physical activity and aortic dissection.
著者
小川 秀司 CHALISE Mukesh K. MALAIVIJITNOND Suchinda KOIRALA Sabina 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第33回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.66-67, 2017-07-01 (Released:2017-10-12)

マカク属における社会行動の進化を考察するために,アッサムモンキー(Macaca assamensis)とチベットモンキー(Macaca thibetana)のブリッジング行動や他の親和的社会行動の種類や頻度を比較した。アッサムモンキーは(1)タイのチェンライにあるTham Pla寺院(北緯20°20′,東経99°51′,高度843m)で2009~2012年にと,(2)ネパールのカトマンドゥー近郊のShivapuri-Nagarjun国立公園西部のNagarjun地域(北緯27°44′,東経85°17′,高度1300~2100m)で2014~2015年に,チベットモンキーは中国安徽省の黄山(北緯30°29′′,東経118°11′,高度700~800m)で1991~1992年に,餌づけされた複雄複雌郡内の数頭のオトナオスとオトナメスを交尾季と出産季にそれぞれ各10時間個体追跡した。ブリッジング行動は,チベットモンキーと(1)タイのアッサムモンキーにおいて観察されたが,(2)ネパールのアッサムモンキーにおいては観察されなかった。(ブリッジング行動とは,2頭のオトナが一緒にコドモを抱き上げる行動であり,その際オトナは抱き上げたコドモの性器をしばしば舐めたり触ったりする。コドモを抱いているオトナに別のオトナが近づいていって行われる場合と,あるオトナが抱いたコドモを別のオトナに運んでいって行われる場合がある。)また,オトナオス間のペニスサッキング行動は,チベットモンキーにおいて観察されたが,(1)と(2)両国のアッサムモンキーにおいては観察されなかった。アッサムモンキーとチベットモンキーが含まれるマカク属のシニカ種群においては,まずアッサムモンキーのうちの東の分布域に生息する個体群においてブリッジング行動が生じ,そこから分岐していったチベットモンキーにおいてはさらにオトナオス間のペニスサッキング行動が加わったと考えることが可能であろう。
出版者
第三高等学校
巻号頁・発行日
vol.昭和5年4月起昭和6年3月止, 1930
著者
一瀬 豊日 中村 早人 戸倉 新樹
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.73-81, 2010-03-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
3 2

専属産業医を選任する必要のある事業所は, 労働安全衛生規則に定められているが, 専属産業医を必要とする事業所の数は公開されている厚生労働省の統計数値上には未掲載である. しかし本邦では経済基本構造を把握するために, 総務省統計局経済基本構造統計課により, 事業所における従事者数および業種の全数調査が行われている. 本報告では総務省統計局経済基本構造統計課の事業所・企業統計調査を基に法的に必要とされている最低限度の専属産業医数を推計した. 1,000名以上従業員がいる事業所の数は1,228ヶ所(確定数)あり, 特定有害業務を有する業務に常時500名以上の労働者を使用する事業所数と事業所兼任などを考慮すると, 2,000名から2,500名の専属産業医の需要が最低限あると考えられる.
著者
中畑 邦夫
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.49-60, 2010

坂口安吾の短編「桜の森の満開の下」を、我々はいわゆる「社会契約説」における「自然状態」から「社会状態」への移行を物語として表現したものとして解釈することができる。従来、社会契約説に特有のアポリアの一つとして、「自然状態に生きる無知なる自然人が、なぜ未知の社会状態へと進むことを選ぶのか」という「動機」の問題が指摘されてきた。それは無知な自然人を突き動かすほどの魅力をそなえたものでなければならないはずであり、安吾によればそれは「美」なのである。しかし美は、社会状態全体の一つの側面に過ぎないのであって、自然人は社会状態において文化や秩序の醜悪さに直面することになる。この物語は自然人である主人公が都という社会状態からやってきた一人の女の美しさによって自然状態を離脱し、社会状態の中で文化や秩序の醜悪さと退屈さに苦悩しつつ、結末においてそういったものの根源にある「虚空」に気付いてしまうというプロセスを悲劇的に描いたものである。物語の中で描かれる文化や秩序とは読者である我々が現にその中で生きているものであり、その根源にも虚空が横たわっている。したがってこの作品はたんに一つの物語であることを超えて、安吾独自の自然-社会状態論として解釈することも出来るのである。
著者
渡邉 裕也
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.18-24, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
24

企業内にイノベーションに貢献するリードユーザーが存在し,その企業内リードユーザーが発案した製品のアイデア評価や,市場での製品パフォーマンスが高いことが明らかになっている。本研究では,企業内リードユーザーの資質を持った小売店舗販売員が,新製品開発において,どのようにイノベーションに貢献しているかを明らかにすることを目的とする。小売店舗販売員は,顧客接点から様々な情報を持ち,企業のイノベーション・プロセスに貢献ができると考えられる。その企業内リードユーザーの特徴を持った小売店舗販売員を活用した新製品開発のケーススタディを行なった。グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した結果,企業内リードユーザーの特性を持つ小売店舗販売員は,個人要因としてのリードユーザー特性を活用し,文脈要因としての企画開発部門との共創を通じて,顧客要因としての自身のニーズと顧客ニーズの融合することにより,新製品開発に貢献していることが確認された。
著者
吉田 靖雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.51-68, 2004-09-30

『史記』にみえる徐福 (徐市とも、〜前二一九〜二一〇〜) は、不老不死の薬の獲得を始皇帝に勧めて巨費を得たぺてん師として描かれている。しかし中国大陸では、一九八四年に徐福の出身地という土地の発見以来、研究が高潮して二百を超える論文が発表されている。それらは、徐福らが前三世紀、数千の若者・技術者・五穀の種と共に日本列島に到着し、弥生時代を切り開いたと主張している。徐福は偉大な航海者・日中友好の使者と評価されているが、そうした状況を紹介し、かつ『史記』記事の吟味を試み日本上陸説が成立しないと論じる。
著者
葛 崎偉 中田 充 呉 靭 松野 浩嗣 北沢 千里
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

経脈とは東洋医学における人体の代謝物質(気と血)の通り道であり,経穴(ツボ)の連絡系(道)を指す.鍼灸治療は鍼や灸で経穴を刺激することにより,気や血の流れを良くする治療法であり,世界保健機関(WHO)にも認められている.本研究では鍼灸治療を支援するシステムに関する三つの技術を開発する.その一つ目は東洋医学における五行説,臓腑の表裏関係,経穴の補瀉(ほしゃ)役割等に基づいた人体モデル構築の手法である.二つ目は東洋医学の診察法である四診(望診・聞診・問診・切診)のデータ解析の手法である.三つ目は四診の解析結果と人体モデルを用いて鍼灸治療法を推定するシミュレーションシステム設計の手法である.