著者
Nakar Eldad
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.89-123, 2007-03

特集記憶の社会学投稿論文はじめに2. 第二次世界大戦を題材とする日本のマンガ 2.1. 1950年代後半から1960年代後半まで 2.1.1. 英雄的な戦闘 : 羅憲的語り 2.1.2 プロットの構成に見られる類似点 2.1.3. 単純なプロット,可愛らしい登場人物,歴史的リアリズム 2.1.4. 悲惨な戦争 : 拒絶された語り 2.2. 1960年代後半から1970年代後半まで 2.2.1. 悲惨な戦争 : 羅憲的語り 2.2.2 プロットの構成の類似点 2.2.3. 個人の証言と女性の記憶 2.2.4. 英雄的な戦闘 : 薄れゆく語り3. 自己を映す鏡 3.1. 1945年~1954年 : 時間の隔たり 3.2. 1950年代後半から1960年代後半まで : 肯定的な過去のイメージの出現 3.3. 1960年代後半から1970年代後半まで : 忌まわしい過去の記憶4. マンガの社会的枠組As the literature on collective memory acknowledges, when individuals recall their past, their memory is a collaborative product, influenced by society, and modeled by the collective frame of the day. Collective memory, scholars agree, is substantiated through multiple forms of communication. To infer on how a certain society remembers its past, scholars, thus, take on the task of investigating various mediums and different cultural productions. In Japan, it seems, however, that scholars failed to include manga into the above comprehension. As if manga is not a medium of communication that abide by the collective memory frame of the day, whenever the issue of collective memories of World War II in Japan has been addressed-and there were ample investigations on the issue so far-only few scholars looked at Japanese manga. Responding to the above tendency, in my paper, I choose to concern myself solely with the fictional representation of WW II over the manga. I seek to put manga tales of WW II against the social environment from which I argue they draw their ideas and worldview. I apt to demonstrate that manga narration of WW II is also a reflection of the different times in which it was produced.
著者
前川 直哉
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.5-23, 2007

This paper elucidates historical changes in the images of homoeroticism between male students in the Meiji Era and examines the factors behind this change.<BR><BR>During the Meiji Era, intellectuals subscribed to a morality that prohibited homosexuality. However, some male students, known as <I>kouha</I> (solid students), shared common values that placed a positive value on homoeroticism between male students. They loathed falling victim to womenʼs charms, and aspired to develop ideal relations between themselves and other elite male students.<BR><BR>In the 1900s, the number of girls attending school increased markedly, and the presence of female students increased. These women came to be seen as suitable love or marriage partners for male students. In modern Japan,the emergence of female students helped to form the ideology of romantic love and a new positive image composed of love, marriage, and family.<BR><BR>These changes brought about by the emergence of female students had an impact on the images of homoeroticism between male students. After the 1900s, a form of homoeroticism called "love between men" became popular among the <I>nampa</I> (soft students), and the <I>kouha</I> students lost their monopoly on homoeroticism. However, "love between men" was just a substitute for love between men and women. On the other hand,the kouha students strengthened their belief that they should avoid falling in love, as they thought it was too feminine. Therefore, they called close relations between men "friendships between men," avoiding the use of the word "love." In this way, homoeroticism between male students was separated into "love between men," as an imitation, and "friendship between men." Homoeroticism between male students was transformed into a form adapted to heterosexism.
著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.3, pp.90-101, 2005

乳児用粉ミルクに工業廃棄物由来のヒ素化合物が混入して大規模な被害が発生した森永ヒ素ミルク中毒事件は,今年2005年8月24日,公式発表から50年目を迎える.しかし,事件の全体像は今なお把握されていない.被害者に対する恒久救済機関の運営実態への疑問の声もある.被害者の現在を正視すると同時に,事件史の教訓を徹底的に整理する必要がある.病因物質が市場に流通してから恒久救済機関が発足するまでの約20年を振り返ると,食中毒事件における疫学と事故調査の独立性の必要が指摘できる.また,事後対応における行政と専門家の関係についての課題も指摘できる.本格的な歴史研究のためには本事件に関連する一次資料の収集・保存が必要である.
著者
福井 隆雄 木村 聡貴 門田 浩二 五味 裕章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.407, pp.37-42, 2006-11-28
参考文献数
5
被引用文献数
1

停止しているエスカレータに乗り込む際に違和感を持つことは多くの人々が経験する現象の1つである.従来は,停止していると認識しているにも関わらず,「動いているエスカレータ用」の運動プログラムが乗り込む前から働き,予測と実際の感覚フィードバックの不一致のため違和感が生じると説明されてきた.また,最初の段差が他に比べて低いといった構造的な不均一性によって違和感が生じるのではないかとも考えられた.本研究では,稼働中のエスカレータ,停止中のエスカレータ,段差の構造をエスカレータに似せた木製階段への運動における運動学的特性を比較検討した.その結果,停止エスカレータに乗り込むまでは,「止まっているエスカレータ」として適切に認識し運動していることが示された.そして,停止エスカレータに乗込んだ後に,身体が前の方に急激に傾く振る舞いが観察された.これは,木製階段では見られず,停止しているエスカレータ固有のものであった.このことから,停止しているエスカレータに乗り込んでから,「動いているエスカレータ用」の運動プログラムが潜在的に駆動されている可能性が示された.また,違和感については停止しているエスカレータ,木製階段への運動における内観評定を行った.内観評定については,木製階段においてはほとんど違和感が生じなかったのに対し,停止しているエスカレータでは乗り込み後,違和感と相関する行動指標が同定された.違和感は構造的不均一性により引き起こされるものではないことが示された.
著者
猪八重 涼子 深田 博己 樋口 匡貴 井邑 智哉
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.247-263, 2009

本研究では, 裁判員裁判を想定した状況設定を行い, 質問紙実験によって, 裁判員を演じる実験参加者の判断に及ぼす被告人の身体的魅力の影響を検討した。独立変数は, 被告人の身体的魅力(高, 低), 被告人の性(女性, 男性), 実験参加者の性(女性, 男性)の参加者間変数であり, 従属変数の測定は事後測定計画であった。実験参加者は, 219名の大学生であり, 印刷された裁判資料を読んだ後, 質問紙に回答した。被告人の身体的魅力は, 裁判員の課す量刑を軽くすることが示された。そして, 被告人の身体的魅力の増加は, 情状酌量の余地の認知を高め, 犯行の性格への帰属を低めることによって, 裁判員の量刑判断を甘くし, 殺人罪適用を減少させることが実証された。本研究の結果は, 身体的魅力のステレオタイプが裁判員の判断に影響することを証明した。
著者
馬場 恒子 マクヒュー 芙美
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University = 神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-17, 2012-03

「化学物質」に対する消費者のイメージは、人工的なもの、有害(有毒)なものであって、自然界に存在しないものであることが明らかになった。消費者は主にマスメディアを通して化学物質に関する情報を受け取っているという結果が得られた。マスメディアが化学物質を大きく取り上げる時は、事件や事故の原因物質として特定された場合である。消費者は「生態系のすべての物は化学物質で構成されている」という認識がないので、マスメディアからの危険情報だけをそのまま蓄積していると考えられる。しかし、どの年代の人々でも化学に関する基礎的な話を聞くことによって化学物質の認識が変わり得ることも明らかになった。
著者
村松 秀
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.531-535, 2007-07-05
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
安形 輝
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-18, 2005
被引用文献数
1

原著論文Benedetto et al. recently confirmed the validity of a method for measuring similarity using data compression software. Despite its potential, this method has not yet been applied to the field of information science. The present study proposes the use of CIR, a modified method that uses an improved ratio of compression, and describes two experiments on authorship attribution using data from modern Japanese literature. The first experiment compares the results of applying CIR and Benedetto's method to test collections of modified data (fixed length) using aprocedure similar to that described by Matsuura et al. The second experiment is based on original data (variable length).The first experiment showed an average precision rate of 97.7% for CIR, while Benedetto's method gave a rate of 90.5%. The CIR method proves to be an improvement on the best method described by Matsuura et al. The second experiment confirmed the e
著者
吉岡 郁夫
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.19, pp.135-140, 2003-11

中国には古来、女性の足を人工的に小さくする纏足の習俗があったことは、日本でもよく知られている。この習俗は漢民族の間に広く根強く定着し、近年になってようやく頽れた。一般には、この習俗が中国以外で行なわれたことがないという理由で、世界的に特異なものとみる傾向がある。・・・
著者
清原 一暁 中山 実 木村 博茂 清水 英夫 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.117-126, 2003
参考文献数
11
被引用文献数
9

本研究では,印刷物による提示とコンピュータ画面の提示による文章理解の違いを調べ,わかりやすい文章提示の方法を検討した.文章の理解度を内容に関するテスト成績で調べた.その結果,表示メディアについては,提示方法によらず印刷物がディスプレイに比べて良いことが分かった.また,LCDがCRTよりも理解度において優れていることが分かった.さらに,すべての表示メディアにおいて,明朝体と比べてゴシック体の方が文章理解において成績が良い事を明らかにした.
著者
米山 美智代 八塚 美樹 石田 陽子 新免 望 原 元子 松井 文
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.27-35, 2007-03
被引用文献数
3

「フットケア」とは足浴,爪きり,マッサージ,ツボ押しなどの総称で,その言葉は既に我が国でも一般的であり,足の健康への関心は高まりつつある.医療分野における「フットケア」の意義や有効性に関する研究が伸展しつつあるが,健康人を対象とした研究は少なくさらに生活習慣との関連をみた研究は皆無である.そこで,健康な大学生を対象として実態調査を行い,生活習慣と足のトラブルやフットケアの関連を明らかにする目的で本研究を行った.同意が得られた大学生623名に対し,独自に開発したアンケート調査を実施し,439名(70.4%)から有効回答を得た.その結果,足のトラブルを訴える者は女性226名(85.0%),男性87名(50.0%)で女性に有意に足のトラブルを訴える者が多かった.特に,「冷え」147名,(55.3%)「むくみ」131名(49.2%),「靴擦れ」95名(35.7%)が多く,足にマニキュアをしている者やパンプスなど先の尖った靴を履く者に足のトラブルの発生率が有意に高かった.また,足マッサージ,爪の手入れ,指圧等の足の手入れを行なっている者は,全体で238名(54.5%)おり,足にトラブルをもつ者と有意に関連があったが,フットケアに関する読み物への関心は97名(22.2%)と低かった.今後,足の観察,適切な爪の切り方や手入れの知識と技術等フットケアの専門家の育成,医療スタッフに対するフットケアの必要性と方法の教育を含めた健康人へのフットケアに関する健康教育に必要性が示唆された.
著者
小澤 正直
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.157-165, 2004-03-05
参考文献数
38
被引用文献数
1

古典力学は,過去の状態を完全に知れば,それ以後の物理量の値を完全に知りうるという決定論的世界観を導いたが,量子力学は,測定行為自体が対象を乱してしまい,対象の状態を完全に知ることはできないことを示した.ハイゼンベルクは,不確定性原理により,このことを端的にかつ数量的に示すことに成功したといわれてきたが,測定がどのように対象を乱すのかという点について,これまでの関係式は十分に一般的ではなかった.最近の研究により,この難点を解消した新しい関係式が発見され,これまで個別に得られてきた量子測定の精度や量子情報処理の効率の量子限界を統一的に導く第一原理の役割を果たすことが明らかになってきた.
著者
小島 奈々恵 大田 麻琴 高本 雪子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-85, 2006

大学生にとって,恋愛はとても関心の高い問題であり,恋愛における告白は恋愛関係を開始する上で重要なきっかけとなる.本研究では,恋愛における告白の成功・失敗の規定困について検討した.先行研究に習い,使用した規定因は,知り合ってから告白までの期間,告白時間,告白場所,告白方法,告白内容,告白時の相手の交際状況,交際行動であった.自分の恋愛感情に対する相手の気付きや,相手との年齢差をも新たに加えた.また,告白結果に最も影響を与えると考えられる告白者の魅力を個人特性として新たに加えた.知り合ってから3ヶ月末満に夜から深夜の時間帯に告白をしていること,二人で遊びや食事に行くなど二人きりになる交際行動を経ていること,告白時に交際の申し込みをはっきり伝えていることが,恋愛における告白の成功者のパターンであることが示された.Love is a high interest issue for university students, and confessing one's love is an important trigger to start a love relationship. The purpose of this study was to find the factors influencing success and failure of confessing one's love. As in the preceding study, factors used were the time needed until confession, the time of confession, the place, the method, the content, the kind of relationship the partner was involved in, and the kind of acts. Newly added were the partner's notice of the confessor's love and the age difference. Also, the confessor's attractiveness thought to give the most influence to the result of the confession was newly added as a personal trait. As a result, the confessor who was successful had confessed one's love within 3 months since the acquaintance with the partner between night and mid-night, had made time to be alone together by going out together or by going out for a meal together, and had made a proposal for a relationship at the time of confessing one's love.
著者
富田 昌平
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.177-188, 2009-06-10

本研究では,サンタクロースのリアリティに対する幼児の認識を調べた。研究1と2では,私たちは"昼間に保育園のクリスマス会で出会う大人が扮装したサンタ"(直接的経験)と"夜中に子どもの寝室にプレゼントを届けてくれるサンタ"(間接的経験)について子どもにインタビューした。その結果,4歳児は大人が扮装したサンタを"本物"と判断する傾向があるのに対し,6歳児は"偽物"と判断する傾向があることが示された。他方,6歳児は夜中にプレゼントを届けてくれるサンタを"本物"と判断していることが示唆された。研究3では,研究1と2の2種類のサンタに加えて,"デパートで出会うサンタ","昼に子どもの家を訪問するサンタ","夜に空を飛んでいるサンタ","夜にサンタ国に子どもを招待するサンタ"について,本物か偽物かの判断を求め,その根拠も求めた。その結果,5歳児は外見の類似をもとにサンタを「本物」と判断する傾向があるのに対し,6歳児は伝承されているサンタクロース物語と登場文脈との一致をもとに,"寝室","空の上","サンタの国"サンタを「本物」,"デパート","保育園","玄関"サンタを「偽物」と判断する傾向があった.以上の結果は,サンタクロースのリアリティ判断の発達における直接的経験と登場文脈の影響という点で議論された。