著者
遠藤 秀紀 村田 浩一 鯉江 洋 中山 裕之
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

高齢動物の骨格を標本化、マクロ形態学的変化を検討し、三次元画像情報の構築に成功した。アジアゾウ、カバ、シロサイ、キリンなどにおいて、脊椎や四肢、頭蓋におけるマクロ形態学的異常を検出し、骨老化の基礎理論を構築した。アジアゾウでは、高齢での顎と臼歯の問題点を画像情報を用いて議論した。中型獣では顎や顔面の機能異常を観察、鳥類と爬虫類でも加齢と形態変化について、生理学的背景とともに把握することができた。成果は、高齢動物の直接的な研究にとどまらず、飼育動物に関する基礎生物学的また病理学的データ収集の機会を大幅に拡大することに成功した。また、動物園水族館に向けた動物福祉的提言を発展させることができた。
著者
柴田 慶一郎
出版者
香川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本研究は,3つの目的で構成されている.第一に,魚骨由来のヒドロキシアパタイト(以降FbA(Fishbone Absorber))がどのような物質,特に環境中で有害とされる物質に対して高い吸着特性を持つのかを実験的検討により明らかにすること,第二に,分子動力学シミュレーションを用いた数値解析によって吸着構造・メカニズム等を明らかにすること,第三に,他の吸着材料,あるいは他の吸着材料とのハイブリッドの可能性を検討し,吸着性能について検証を行うことである.第1年度目では,主に第一の目的と第三の目的を達成するために研究を遂行した.重金属に対する吸着特性を,FbAと新たな吸着材料として選択したもみ殻のそれぞれに対して実験により明らかにし,その成果を国際学会でポスター発表した後に,Journal に投稿した.現在は,重金属以外の有害物質に対する吸着特性の解明と,両材料をベースにした新規のハイブリッド材料を開発中である.また,本研究では,セシウム,ストロンチウムのような放射性物質の環境中からの除去もあわせて行っており,森林斜面の表土に沈着したセシウム,あるいはフレコンバッグに封入されたセシウムを含む汚染土壌に対する除去・回収手法を提案した.森林斜面の汚染土壌に対しては,傾斜を利用して流水によってセシウムを除去した上で,回収した汚染水に含まれるセシウムをゼオライトによって吸着した.フレコンバッグ中の汚染土壌に対しては,電気泳動とゼオライトを組み合わせることで土壌中のセシウム濃度を低減した.これらの成果は,前者に対しては国際学会でポスター発表後,Journalへ投稿し,後者については国内学会で口頭発表を行った.フレコンバッグ中の汚染土壌からのセシウム抽出と吸着に関する研究については,研究内容とプレゼンテーションのクオリティが認められ,地盤工学会より優秀論文発表者賞を頂戴した.
著者
酒井 保蔵
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

磁気分離による放射性セシウム汚染汚泥の除染技術を検討した。原発事故による放射性セシウムは最終的に土壌中の常磁性バーミュキュライトに保持され、雨水により下水中に流入し、汚泥に捕捉される。最大磁束密度1Tのマグネットバーを用いた磁気カラムに汚染汚泥を通すことで、カラムに保持される少量の放射性セシウム濃縮汚泥と大部分の除染汚泥に分離できた。実汚泥では0.37Bq/Lから5.4Bq/Lまで濃縮され1/15まで減容することができた。
著者
阪口 雅弘 辻本 元
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

犬においてワクチン接種後の副反応としてアナフィラキシーなどワクチン成分に対するアレルギー反応が認められている。このワクチン接種後の副反応の原因アレルゲンを検討したところ、ワクチンに含まれる牛胎児血清(FCS)成分が原因であることをこれまでに明らかにした。本研究においてはFCS中の原因アレルゲンを検討した。ワクチン接種後アレルギー反応を起こした犬血清を用いたImmunoblot法により、FCSを解析した。68kDaに強いバンドが、75kDaに弱いバンドが検出された。分子量から68kDaのタンパクとして牛血清アルブミン(BSA)が疑われたため、精製BSAに対するImmunoblot法を行ったところ、BSAに対する強いバンドが検出された。以上の結果から、BSAがFCS中に存在するアレルゲンの1つとして同定された。初めてワクチンを接種する犬においても副反応が起こることや犬の食物アレルギーの原因として牛肉が最も多く報告されている。これらの理由からワクチンを接種前に犬が牛肉等のアレルギーに感作されていた可能性があると考え、牛肉成分中のアレルゲン成分を解析した。牛肉アレルギー犬の血清を用いたImmunoblot法では、牛肉アレルギーの犬において67-kDaと55-kDaに陽性バンド認められた。精製タンパクを用いたimmunoblot法により、67-kDaのバンドはBSA、55-kDaのバンドはbovine gamma- globulin (BGG)であることが判った。BSAおよびBGGは、牛肉アレルギーの犬における牛肉成分中のアレルゲンであることが同定された。市販の犬用ワクチン中には多量のBSAおよびBGGが含まれていることから、本研究結果はワクチン接種後アレルギー反応と牛肉アレルギーの関連性を示唆している。
著者
片上 かおり
出版者
鶴見大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

下顎骨頬舌側の副孔・栄養管、下顎管分枝など、下顎骨に分布する脈管神経構造のCT画像上の特徴を明らかにした。それらの画像所見の解剖学的、組織学的な裏付けを行うことにより、顎骨およびその周囲組織に分布する脈管神経の解剖構造を明らかにし、その臨床的意義を提示した。
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 豊田 哲也 宮部 真由美 早川 杏子 田中 牧郎 ビアルケ 千咲 志賀 玲子 志村 ゆかり
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

令和元年度は、日本の公立中学校でのフィールドワークを通した教材開発の成果として、外国につながる生徒のための日本語総合教科書(初級版、初中級版)を刊行し、その概要と具体的なアプローチについて、口頭発表を行った。JSL児童生徒のための漢字シラバス開発に資するべく、中学校教科書コーパスから漢字の音訓使用率を算出し、文理教科書における漢字情報の使用傾向の対照分析を行い、論文による成果報告を行った。また、非漢字圏のJSL児童生徒あるいは成人日本語学習者の効果的な漢字字形学習方法を探るために、彼/彼女らの漢字字形認知の様相を明らかにする目的で、漢字の構造と構成要素を軸に初見漢字の再認実験と漢字要素分解調査を行い、口頭発表によって報告を行った。ろう児に対する日本語教育の実践を続ける一方、日本語と日本手話の対照研究を続け、口頭発表で報告した。日本語学習教材の自動生成方法について検討し、言語処理分野の機械学習モデル「Word2Vec」を用いた類義語を用いて、日本語能力テストの多肢選択問題を構築する手法を検討する一方、学術共通語彙知識の発達やその読解力との関係についての横断的調査を行った。さらに、学習者の語彙力測定のためにWebブラウザから語彙情報を収集するフレームワークを提案し、学習者が登録した語彙から関連語彙を「Word2Vec」を用いて推定し、日本語学習教材の自動構築に役立てる仕組みを検討した。「やさしい日本語」の理念の拡張について考究するとともに、講演、新聞や雑誌への寄稿などを通して、「やさしい日本語」の理念の地域社会への普及に努めた。
著者
藤川 直樹
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

大日本帝国憲法と皇室典範からなる明治期日本の所謂「典憲体制」はその成立においてもその解釈論の展開においても、ドイツ法(学)の強い影響を受けていた。このようなドイツ法の「継受」を分析するに際しては、近代ドイツ法(学)史それ自体の精確な理解が不可欠であることは言を俟たない。この研究は近代ドイツの王位継承法と王室法の制度と学知を明らかにし、明治皇室典範の制定過程および解釈学説に対するドイツ法学の影響を測定し、それを通じて近代日本の皇室制度におけるドイツ法(学)継受の実相と国制的諸条件を明らかにすることを目的とする、王位継承の日独比較国制史の試みである。
著者
渡 孝則
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では亜鉛結晶釉 (Willemite結晶 (Zn2SiO4)) において, 平成30年度の議論を基に磁器素地に穴をあけずに、シード材(ZnO+陶土)を表面に塗布する方法による結晶成長に成功した。結晶の成長温度が成長速度及び結晶形態に及ぼす影響を調べた。また、Mn発光結晶の形成について、シードより釉薬への添加が良いことが分かった。結晶成長温度を1050~1200℃まで50℃刻みで変化させ、結晶の大きさ及び形状を調べた。1100℃及び1150℃で最も大きく成長し(3時間で16mm)、前者では円盤状結晶と針状結晶が混在した組織、後者では針状組織となった。これは高温ほど結晶がガラスへ融解し易いためと考えられる。各保持温度で得られた結晶の配向性を調べた処、1050℃では粒状結晶からなっていたため配向性は認められなかったが、1100℃及び1150℃では(hk0)面の強い配向が認められた。これまではシード材である(ZnO+陶土)へのみMnOを添加していたが、この場合には発光強度が中央で最も強く、結晶周辺では殆ど認められなかった。そこで、今回の実験ではこれ以外にMnOを釉薬へ配合した実験も行った。254nmの紫外線照射下で、Willemite結晶自身も薄い緑色の発光を示した。ただし、装飾には利用できない。シード材に混合した場合には昨年と同様に結晶内で発光強度が低下した。一方、釉薬にMnOを乳鉢混合した場合には結晶が2~3mmしか成長せず、添加MnOが成長阻害材となっていることが分かった。なお、この結晶は緑色発行を示した。ただし、(釉薬+MnO粒子)混合物をボール見る粉砕・混合すると成長阻害効果は認められず、16mmの結晶が得られた。MnO添加量は0.3mol%が適切で、多くすると結晶成長阻害が認められた。この結晶は均一に強い緑色発光を示し、実用へ一歩近づいたと考えられる。
著者
宮本 直和 福 典之
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、人間生体組織の硬さを直接的かつ非侵襲的に測定できる超音波剪断波エラストグラフィを用いることによって、以下のことを明らかにした。1) 関節可動域と筋肉の硬さ(伸びにくさ)には関連があるが、その関係は決して強くなく、関節可動域による評価では筋肉の硬さ(伸びにくさ)を適切に評価できない。2) 男性の筋肉は女性の筋肉よりも硬い。3) ストレッチによって対象とする全ての筋肉が軟らかくなるわけではない。4) 筋肉の硬さは遺伝要因の影響を受ける。
著者
小宮 秀明 森 豊 黒川 修行
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで内臓脂肪面積(VFA)と肥満関連遺伝子との関連性についての報告はない.今回は肥満関連遺伝子としてB3AR、B2ARやUCP1を用い、VFAの蓄積に及ぼす肥満関連遺伝子の影響について検討した.被験者は男性81名、女性186名である.測定項目はVFA、腹囲、血糖、血清脂質、血圧である.アンケートは生活習慣、食習慣及び運動習慣である.3遺伝子の多型別にVFAを比較した結果、有意差は認められなかった.また、年齢、運動習慣、歩行量を調整した分析においても多型間に有意差は見られなかった.一方、男性においては運動習慣との間に有意差が確認され、運動の実施がVFAの減少に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
小黒 章 佐藤 温重 福島 祥紘
出版者
明倫短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

特定病態下(骨粗鬆症,腎炎,糖尿病)ならびに日常よく用いられる薬剤ないし嗜好品(カフェイン,エタノール,ニコチン,アスピリン,ワルファリン)との併用経口投与時における,マウスへのNaF投与(5.26mM=100ppmF,10日間)に関して,飲水量,体重変化,血中フッ素濃度,骨髄幹細胞の非特異エステラーゼ,クロロアセテート・エステラーゼ発現,細胞表面抗原Mac-1,Gr-1,MOMA-2,F4/80の発現,また,細胞生存率,NBT還元能,LPS刺激によるNO産生(NO_2生成),LDH,β-glucuronidase, acid phosphatase(ACP)活性,貪食能,付着/浮遊細胞数比,核/細胞質比,ライト・ギムザ染色像,位相差像などの検索を行った.血中フッ素濃度は飲水中のフッ素により有意に上昇したが,LDH,β-glucuronidase, ACP活性を除く他のマーカーに顕著な変化を認めなかった.しかし,疾患動物における所見は不安定であった.マウス骨髄細胞を,1,25-dihydroxyvitamin D_3とNaF存在下において培養したところ,1,25-dihydroxyvitamin D_3ではなくNaF量に依存してMac-1,Gr-1,クロロアセテート・エステラーゼが発現し,非特異エステラーゼは影響されなかった.細胞生存率とNBT還元能は0.5mMにおいて損なわれ,NO産生,LDH,β-glucuronidase, ACP活性は0.2ないし0.6mMにおいて極大を示した.貪食能,付着/浮遊細胞数比,核/細胞質比,ライト・ギムザ染色像,位相差像には顕著な変化を認めなかった.In vivoでのNaFと薬物同時負荷,疾病罹患動物へのNaF負荷に際して,LDH,β-glucuronidase, ACP活性以外の上述の検査項目に差を見いだすことができない.疾病動物であっても,恒常性維持機能がNaF負荷に対応する結果と思われ,上述のようなin vitro実験によって先ず骨髄細胞分化の指向性を見い出し,しかる後,in vivo実験によって確定するのが確実のように見える.
著者
工藤 秀康
出版者
東邦大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年開発され、臨床的に利用されているflip angle可変型3D FSEは、比吸収率(SAR)を抑制することを実現した非常に画期的な撮像シークエンスである。2Dシークエンスと異なり、1mm以下の薄いスライス厚での評価が可能で、3次元的な任意の断面での観察することも可能である。ここでは薄層3次元再構成MRIと呼ぶ。こうした臨床利用は撮像パラメーターの調整が難しい面もあり、臨床利用が進んでいなかった。そこで我々は、膝関節を標的とし、3T MRIを用い、flip angle可変型3D FSEの利用を考え、撮像条件の検討を行った。撮像シークエンスは3D FSE SPACEで、1mm以下のスライス厚を考え、0.6mm程度が膝関節MRIにおいて最適なスライス厚との結果を得た。撮像パラメーターを調整し、6分台まで撮像時間を短縮できた。本研究では外側半月板後方支持組織という関節内微細構造の評価が目的であるため、関節内構造を対象に脂肪抑制プロトン密度強調画像とした。膝関節MRIで3D FSEを撮像し、外側半月板自体に異常が確認されなかった症例を対象として外側半月板後方支持組織について3D FSE、それをもとに再構成された再構成像で観察した。外側半月板後方支持組織としてmeniscofemoral ligaments、popliteomeniscal fasciclesを観察した。従来の2D FSEでの描出率よりも3D FSEでのほうがいずれの構造についても描出率は高かった。3D FSEでの観察は屍体膝を用いた過去の報告と一致していた。生体での評価方法としては、従来の2Dシークエンスによる評価方法に比べ、はるかに良い結果となった。さらに外側半月板後角の逸脱した症例ではpopliteomeniscal fasciclesの破綻があることが推測される結果となった。我々が考案した3D FSEを用いた薄層3次元再構成MRIは外側半月板後方支持組織の観察に有用で、外側半月板後角逸脱では外側半月板後方支持組織の破綻が推測される結果となった。
著者
亀井 伸孝
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

コートジボワールで、ろう者コミュニティとともに、フランス語圏アフリカ手話(コートジボワール方言)の動画撮影・編集作業・英仏二言語への対訳作成を進め、主要語彙などを中心とした3,537件の動画のデータセットを完成させた。また、1970年代のフランス語圏アフリカにおけるろう教育の成立史を解明し、この手話言語の成立過程の一端を明らかにした。フランスにおける調査の中で、フランス語圏アフリカ手話をフランス手話やカナダのケベック手話などと比較する作業を通じ、世界のフランス語圏における手話言語分布の成立史の中に位置付けるという視点を得た。
著者
小野 智史
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2019

中学生の読解力(リーディングスキル)の現状を把握し, 中学校社会科における「リーディングスキルテスト(RST)作りに取り組んだ。公立中学校と附属中学校2校でサンプルデータを得, リーディングスキルの違いを数値で明らかにした。また, 本県の学習診断テスト社会科問題過去5年分(香川県進路指導研究部提供)の中から, 「イメージ同定」, 「具体例同定(辞書)」を分類し, 社会科特有の問題を分類, 整理した。そして社会科独自の読解力や思考力を問う問題を作成した。
著者
大塚 篤司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

皮膚のかゆみは末梢神経が介していることは広く知られている。しかし、最近の研究では末梢神経は免疫細胞との相互作用がみられ、皮膚アレルギー疾患での病態形成に関与している可能性があることがわかった。本研究課題では、皮膚アレルギー疾患における末梢神経の役割を検討した。その結果、末梢神経から放出される神経ペプチドは接触皮膚炎に関与していることが明らかとなった。
著者
高橋 京子 高橋 幸一 植田 直見 御影 雅幸 雨森 久晃 松永 和浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本薬物文化の意義を明確にするため、自国の医療・社会環境に則して成熟してきた近世医療文化財(緒方洪庵使用薬箱他)の普遍的価値をマテリアルサイエンス導入による文理融合型手法で立証した。本草考証と非侵襲/微量分析法の構築が、医療文化財遺物分析を可能にし、実体物から生薬品質の暗黙知が解明できることを示唆した。人工ミュオンビームを初めて医療文化財分析に適用し、同一測定法で外部の容器と内部の薬物双方の元素組成分析に成功したことで、新規非破壊分析法としての人工ミュオンビームの有用性を明らかにした。
著者
柳原 直人 鈴木 夏夫 菅沢 深
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この車椅子は先端に4個の車輪が付いた十字アームを用いる。この4個の車輪はスプロケットが取り付いており、これらはループ状のチェーンとスプロケットを取り付けたモータによって同時に駆動される。この車輪付き十字アーム機構は平地では車輪の回転によって走行し、車輪が前方には小型の車輪付き十字アームを先端に持った姿勢保持アームを取り付け、これにはキャスターが取り付けられている。この車椅子は車輪付き十字アーム機構の4個の車輪のうち接地している車輪が駆動輪となる。平地走行では駆動輪が取り付けられている十字アームを回転させ、左右各一輪を駆動輪として走行する。階段昇降時には姿勢保持アームに加わる荷重を減少させるために座席を駆動モータによって移動させ、車体の重心の位置を駆動輪に近づける。また、階段昇降では段差による高さの変動よって座席の角度が変化しないようにするため、姿勢保持アームの高さを調整する。車椅子の操作用のジョイスティックは、どのような利用者でも容易に操作できることを目標とし、複雑な操作を必要とせずに、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えのみで運転できるシステムとした。この車椅子の走行実験の結果、けあげ高さ165mm、踏み面高さ320mmの階段を体重70kgの人が昇降した実験においては、一段あたりの上昇時間約3秒、降下時間約6秒で安定した昇降が可能であることが確かめられた。また、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えが数秒で可能となり、この車椅子の技術は実用レベルまで到達したと判断している。
著者
中林 誠一郎
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞性粘菌の飢餓集合をモデルにして、単細胞生物から多細胞生物への生物学的変化の熱力学的原因を解明した。二匹の粘菌細胞が接近するに伴ってNADH量が減少し、接触したときに最小値を示し、その後細胞の分離とともに上昇する事が判った。細胞性粘菌集団の総NADH 量を,飢餓による集合体形成前後で測定しても、集合体形成により総NADH量は減少した。これら2つの実験結果は、互いに調和的であり、多細胞化の初期過程は、多細胞化によるエネルギー代謝効率改善に支えられたと考える事ができる。
著者
小浜 正子 姚 毅 何 燕侠
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、上からの生殖コントロールの推進に対する中国の農村女性の対応を明らかにしようとしたものである。研究の結果、調査地の農村では、「一人っ子政策」開始以前の1970年代に生殖コントロールが急速に普及したが、これには出産・養育の負担にあえぐ女性たちが政府のキャンペーンに後押しされて、多子を望む家族を説得していった側面があることがわかった。政策は、リプロダクティブ・ライツの実現に対して、両義性を持っていたと言える。
著者
渡邉 敬逸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

国会図書館に所蔵される電信電話総合地図は他の地図と比較して細密な地名(居住地名=集落名)が収録されているにもかかわらず、これまで十分に活用されてこなかったマイクロジオデータである。本研究では、集落を対象とする各種調査においてマクロスケールの分析に耐えうる均一かつ細密なスケールの集落データの不在であったことを踏まえて、電話総合地図を元データとする細密集落データの作成とその応用を通じて、集落を対象とする地理学的研究の研究基盤を確立することを目的とする。