著者
鳥飼 勝隆 浜本 龍生
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ウイルス感染が結合織疾患(CTD)の発症に関与する可能性が従来より考えられていた。1986年にSalahuddinらによって、免疫不全患者より新しいヘルペス群ウイルス、HHVー6が分離された。これはTリンパ球にも感染するので、自己免疫疾患との関連性が想定された。そこで、本ウイルスとCTDとの関連性を検索した。間接蛍光抗体法と中和反応とで、各種CTD66例の血清の抗HHVー6抗体価を測定した。その結果、CTDでは健常人に比し、抗HHVー6IgG,IgM抗体が有意に高値であった。しかし、他のヘルペス群ウイルスであるEBウイルス,サイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルスなどに対する抗体価とは必ずしも相関していなかった。また、各種自己抗体との相関をみたところ、抗HHVー6抗体価は抗nuclear RNP抗体価と相関した。しかし、抗DNA抗体や抗SSーA抗体などとは相関しなかった。このことより、抗HHVー6抗体価が高値である理由は、多クロ-ン性B細胞活性化現象によるもののみでは説明できなかった。このウイルスの持続感染や、ウイルス抗原とnuclearとの抗原性のホモロジ-が存在する可能性が示唆された。これはHHVー6がCTDの原症機序に関与しうることを示唆するものである。CTDにおいて本ウイルスが持続感染している可能性を検索した。末梢血単核球,唾液,皮膚生検組織などからウイルスの分離を試みた。しかし、現時点では、ウイルスは分離できなかった。今後は、持続感染していると予想される本ウイルスを、感度のよいDNA検出法であるPCR法などを用いて検討することが課題であると考えられた。
著者
坂田 敦子 平島 光臣
出版者
尚絅大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

U937細胞およびヒトPBMCを用いて、ガレクチンファミリー分子の中で、特に多様な免疫調節作用をもつガレクチン9の発現調節活性を指標に、食品の機能性成分の探索を行った。結果、フコイダンは強い炎症性サイトカイン誘導活性と同時にガレクチン9発現抑制活性を有することがわかった。レイシ抽出液やカテキンにはガレクチン9発現調節活性は認められなかった。本研究により、フコイダンが、免疫抑制的機能をもつガレクチン9の発現を低下させることにより単球/マクロファージ系細胞を活性化へ誘導している可能性が示唆された。
著者
蒲地 正幸 重松 昭生 渡辺 浩行
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.フォスファチジルコリンとコレステロ―ルとを用い,ロータリーエバポレータ(Haake-Buckler社)にてCL2MDPリポソームを作製した.2.CL2MDPをラットの気管内に投与して肺胞内MFを枯渇させた群とCl2MDPを含まないリポソームを気管内投与した群とにわけて,エンドトキシンによる肺血管透過性の変化について調べた.エンドトキシンの腹腔内投与による肺血管透過性亢進はCl2MDP投与群において抑制されることをエンドトキシン投与後24時間目に^<125>Iと^<51>Crを用いたdouble isotope methodで肺血管外水分量を測定することで確認した.3.次にCl2MDPを血管内投与した場合,肺胞MFの数には影響を与えず,血管内MFはほぼ完全に枯渇する事を確認した.しかしエンドトキシンの腹腔内投与による肺血管外水分量の増加は,気管内投与した場合と逆にCl2MDP投与群おいてコントロール群に比較して高度であった.4.今回の実験においてエンドトキシンショック時の肺障害には肺胞マクロファージが強く関与していることが示唆されたが,Cl2MDPを全身投与することによってエンドトキシンによる肺血管外水分量の増加が増強されたことの理由は不明である.現在,血中のサイトカインやエンドトキシンの動態,またマクロファージ以外の細胞の関与について研究中である.
著者
綿貫 茂喜 太田 博樹 星 良和 近藤 隆一郎 キム ヨンキュ 西村 貴孝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

人類の寒冷適応や病気との関係が示唆されているミトコンドリアDNA多型(ハプログループ)を遺伝的背景の一つとし、ヒトの生理的多型を構成する遺伝要因を明らかにすることを目的とした。研究は主に寒冷曝露時及び低圧低酸素時のヒトの生理反応を検討した。10℃及び16℃の寒冷曝露実験では、ハプログループDが耐寒性に優れた。また4000m相当の低圧低酸素環境に曝露した時、Dグループは他のグループより血中酸素飽和度が高かった。以上よりミトコンドリアDNA多型はヒトの生理反応に影響し、生理的多型の一部を説明する可能性を示した。
著者
大野 誠吾
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではメタマテリアルを用いてテラヘルツ帯の光学応答が動的に自在に変えられるデバイス、プログラマブルメタマテリアル回路の実現をめざし開発を行った。半導体基板上に作製したスプリットチューブ配列構造と、CW光源で励起した光励起キャリアを組み合わせることで、その共鳴周波数付近で、透過するテラヘルツ波の振幅、および位相が変調できることが、シミュレーションから予想でき、実験においてもわずかではあるがそれらのパラメータが制御できることが分かった。
著者
松永 修一
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では自然度の高い音声データ収集を行い、音調の世代差と変化の方向性を探索した。特に、若年層の自然談話の収集に力を入れ、その中で出現する方言語彙、アクセントなどを抽出し分析を行った。また、高校生100人に対して、伝統的方言の残存度、宮崎方言の浸透度、帰属意識、方言意識などの項目を調査した。また、都城市内の高校生、中年層、高年層の方々を対象に、自分たちの方言を考えるワークショップを都城市教育委員会との共催で開催した。自分たちの方言の多様性について考え、地域づくりのリソース、また、帰属意識の醸成のためにどのように活かせるかなどを考え、対話型の研究手法についても試行した。
著者
鬼柳 善明 加美山 隆 古坂 道弘 宇野 彰二 持木 幸一 篠原 武尚 木野 幸一 佐藤 博隆 長谷美 宏幸 甲斐 哲也 塩田 佳徳 岩瀬 謙二 矢代 航 大竹 淑恵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

パルス中性子源を用いたエネルギー分析型透過イメージング法の高度化と応用分野の拡大を行った。まず、解析コードを改良し、焼き入れ鉄のマルテンサイト相、日本刀や新材料の結晶組織構造情報の分布を得、硬さ分布の非破壊測定法を見いだした。さらに、CT法の開発を行った。水素貯蔵合金への適応可能性を示すとともに、小角散乱イメージング法を開発し、共鳴吸収スペクトルの定量解析を可能とした。磁気イメージング法の定量性の評価と磁性薄膜への応用、さらに、世界初のパルス中性子による位相コントラスト測定を成功させた。また、高計数率2次元検出器やカメラタイプで短時間チャンネル飛行時間測定ができる検出器の開発に成功した。
著者
清水 啓介
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

北太平洋の5地点から軟体動物翼足類(Limacina helicina)を採集し、ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子の塩基配列を決定し、集団解析を行った結果、北大西洋の集団と遺伝的交流がほとんどないことを明らかにした。また、100年後に予想されるような大気二酸化炭素濃度の高い海水で10日間の飼育実験を行った結果、貝殻への大きな影響は見られなかったが、いくつかの貝殻形成関連遺伝子の発現が促進されていることが明らかとなった。
著者
松村 功徳
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

数10nm オーダーの金属粒子相と粒子表面の数nm の酸化物誘電体層を基本構造として持つ材料を作製した。この材料の電波透過特性と材料構造の関係を調べ、電波透過のメカニズムが金属粒子相間の電気的なパーコレーション現象に起因することを明らかにした。また、金属相粒子相直径と金属相体積率の関係を制御することにより、数10GHz の周波数帯域におい60%以上の電波透過率を持つ材料を実現した。特に、金属相の体積率が20%以上、試料暑さ1mm 以上の材料において、電波透過性を持つ誘電体と同等の電波透過率である透過率80%を実現できた。
著者
勝山 稔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中国白話小説の受容に多大な貢献を果たした支那愛好者の文化受容の研究の一環として、先行研究で「謎の男(三石善吉「後藤朝太郎と井上紅梅」)」と称されていた井上紅梅の受容活動の全貌を把握するため、日本各地に散在している井上紅梅に関する著述の収集を行った。彼の著述活動の大半は上海・南京・蘇州という当時で言うところの「外地」で行われたこと。一部の活動は戦中期に重複しているため、保存状況は劣悪でしかも少数の記録しか残されていなかった。そのため資料収集を実施し、特に神戸大学や国会図書館(東京本館・関西館)などでは従来誰もその存在を知らなかった井上紅梅に関する著作や記録を発見することが出来た。
著者
川村 光
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

地震現象の代表的な統計物理モデルとして知られるバネ-ブロックモデルを、標準的な摩擦構成則である「速度状態依存摩擦則」と組み合わせたモデルを用いて、通常の高速破壊地震のみならずスロースリップ現象を含めた地震現象の物理を、主として数値シミュレーションによって調べた。単純なバネ‐ブロックモデルの範囲で少数個のモデル・パラメータを変化させることにより、通常の高速破壊地震のみならず、地震核形成過程、余効すべりやサイレント地震等のスロースリップ現象までが、統一的な枠組みの中で再現出来ることを明らかにした。このようなモデルと枠組みの同定は、今後の地震研究に対しても重要なレフェレンスを提供することであろう。
著者
泉田 一賢
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究では,PJD法に用いるHA粒子合成過程でフッ素を添加し,歯質上にフッ素化アパタイト(FHA)膜を生成することにより,フッ素徐放による齲蝕抑制,歯質強化等の機能を付与した新たな歯科治療開発に資するため,その基礎研究としてFHA粒子の合成方法および最適成膜条件を模索し,さらに擬似口腔内環境におけるFHA膜の特性を解明する.平成29年度は,FHA粒子の合成と最適FHA成膜条件の検討を行った.HAの前駆体である非晶質リン酸カルシウム(ACP)を用いて,ACPからHAへの転化の際にF-イオンを添加させてFHA粒子の合成を図った.pH 11.2の硝酸カルシウム・四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)水溶液とpH 9.5のリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)水溶液を,Ca/P = 1.67となるように混合し,沈殿生成後,濾過,アンモニア洗浄し,凍結乾燥してACP粒子を合成した.ACP粒子を異なる濃度(0-200 mM)のフッ化ナトリウム水溶液中に投入し,室温にて撹拌後,濾過,洗浄し,40 ℃で乾燥後に1200 ℃で焼成してFHA粒子を合成した.FHA粒子の物理化学的特性をXRDを用いた組成分析,SEMを用いた形態分析,電極法によりF濃度を測定した化学分析を行い,100mMのフッ化ナトリウム水溶液中に投入することで,最もフッ素徐放性の高いFHA粒子の合成に成功した.次年度の予定であった最適噴射条件の模索にも着手したが,噴射時にPJD装置およびホース内にFHA粒子の目詰まりが生じ,効率的な成膜が困難な状況にある.追加で計上したファイバースコープを用いたホース内の粒子の観察と、ANSYS FLUENTによるコンピュータシミュレーションにより、現在、目詰まりの原因究明を図っている.
著者
前野 弘志
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に,2010年にレバノン南部の都市ティール郊外の地下墓で発見された呪詛板の解読と研究成果を,レバノン文化省考古総局が発行する学術雑誌に掲載した(現在印刷中)。第二に,呪詛を含む魔術がなぜ「効く」と考えられたのか,その理論を,ギリシア語魔術パピルスを史料として,実証的に明らかにした。第三は,ローマにおける戦車競技の持つ豊穣呪術的機能とローマ国家の起源との関係を明らかにした。
著者
森 政之
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

SM/JとA/Jという遺伝的背景が異なる実験用マウス系統を交配して得られた雑種第一世代は繁殖性が両親より優れていることが判明した。このような雑種強勢と称される現象と、その逆の現象である近交退化(血縁個体間の交雑仔に、成長の遅れ、繁殖性の低下や、高率な奇形の発生などが起きる現象)が生じるメカニズムの解明には、これらの2系統マウスから作られたリコンビナント近交系マウスが有用である可能性を示した。
著者
高橋 広夫 佐々木 博己
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では、国立がん研究センター独自の細胞バンクから、生体内分子の網羅情報であるオミクスと抗がん剤感受性情報を得て、その関係を機械学習でモデル化し、難治胃がんの精密医療(Precision Medicine)を目指す。そのために、web上で公開されている各がん細胞株のオミクス情報と薬剤感受性情報の関係を機械学習し、転移学習による再最適化に基づき、胃がんの薬剤感受性予測モデルの構築を行う。
著者
大川 玲子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

この研究は、カンボジアの少数民族であるチャム人ムスリム(イスラーム教徒)が、2011年に初めて聖典クルアーンをクメール語(カンボジア語)とチャム語に翻訳したことに着目し、クルアーン訳が成立した経緯やその理解(解釈)に焦点をあて、調査研究を行った。その成果として、クルアーン翻訳事業が二つの異なる集団によってなされたこと、カンボジア以外のムスリム国の援助を受けていること、人々による理解はクルアーンの呪術的使用や学校教育の場と通して行われていることが明らかになった。
著者
中屋 愼 北村 進一 水野 淨子 庄條 愛子 藤原 永年 小谷口 美也子 高橋 良輔
出版者
大阪府立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

葉菜類であるクレソンはさまざまな健康増進効果をもつことが知られているが、そのメカニズムなど科学的根拠が明確には示されていない。我々はクレソンがもつ食品の3次機能(健康機能性)を調べ、クレソンが脂質代謝改善効果を示すことを動物実験により明らかにし、さらにこの改善効果をもたらす機能性成分を調べた。その結果、フェネチルイソチオシアネートおよび1,3-ジフェネチルウレアである可能性が高いことが分かった。特に、1,3-ジフェネチルウレアは、微量でありながら強い改善効果を示したことから、クレソンに含まれる主要かつ新規な機能性成分であると考察している。
著者
高田 智和 田島 孝治 堤 智昭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研課題究は、前近代の漢文訓点資料を対象として、(1)漢文本文及び訓点(読み仮名、送り仮名、ヲコト点・声点・句読点・語順点などの各種記号)を文書構造の国際記述(TEI: Text Encoding Initiative)に基づく構造化記述法を考案する。(2)平安・鎌倉時代を特徴付ける訓点であるヲコト点(漢字の四隅・四辺等に記入して読みを表す記号)のデータベースを作成する。(3)(1)と(2)のデータに基づいて、ヲコト点の類型と系統を定量的観点から考察する。(4)(1)と(2)のデータに基づいて、漢文訓点資料の書き下し文の自動生成方法を検討する。これらにより、漢文訓点資料の解読成果を学界で共有するための基盤構築を目的とする。2018年度は以下の活動を行った。(1)訓点の定量的分析のための文書記述を2017年度に引き続き検討した。(2)2017年度に作成した移点ツールのプロトタイプに、仮名点・語順点入力機能を追加し、『尚書(古活字版)』(国立国語研究所蔵)の記述を行った。(3)(2)の移点ツールと『尚書(古活字版)』の記述データ(試行版)を公開した(http://www.gifu-nct.ac.jp/elec/ktajima/tools.html)。(4)これまでに各研究者が作成した点図について、座標表現によるデータ化を試行した。(5)点図データと連携させる訓点資料の書誌情報データの設計を検討した。(6)ヲコト点図データベースに公開した(https://cid.ninjal.ac.jp/wokototendb)。
著者
酒井 大輔
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、物理的・化学的に安定しており、高い透過率を有するガラスの中で、世界的にもっとも普及しているソーダライムガラスに対し、微細な屈折構造を形成し、光学機能を付与する方法の確立と実現を目的とした研究を行う。従来、ガラスに対する微細構造形成には、大掛かりで高価な装置が必要であったが、本研究では、より安価な装置で処理が可能な独自の電界プロセスによる構造形成を目標としている。4年間での研究遂行に向け、・電圧プリント法の確立・選択堆積法の発展・微細屈折構造の光学機能計算・実装・評価の3点に着目した研究を計画している。初年度となる2018年度は、まず、電圧プリント用実験装置を作製した。電圧印加プロセスにおける昇圧タイミングを制御し、その際に流れる電流値を収集する必要があったため、LabVIEWを用いた機器制御プログラムとデータ収集プログラムを開発した。必要となる高圧電源などは過去の研究で用いた装置を流用し、ヒーター並びに徐冷機構を備え、温調も可能とした。作製した装置を用い、電圧プリント実験を行った。正極には荒い周期構造を加工した金属を用い、ソーダライムガラスとの間に微細な凹凸構造を形成した樹脂をはさみ、電圧印加を行った。電圧印加後、ガラス表面をレーザー顕微鏡により観察した結果、ガラス上には正極の荒い周期に応じて、樹脂上に形成されていた微細な構造を転写できていることが明らかとなった。加工の容易な樹脂上に形成した構造を加工の困難なガラスに転写できる新たな手法となり得るため、特許出願を行い、国際会議などで発表を行った。
著者
加倉井 真樹
出版者
自治医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1 皮膚における神経ペプチドの局在について免疫組織化学的に検討した。アトピー性皮膚炎と乾癬患者の病変部皮膚と健常者について比較した。神経ペプチドはVasoactive intestinal peptide(VIP),サブスタンスP(SP),calcitonin gene related peptide(CGRP)について検討した。抗VIP抗体では、アトピー性皮膚炎および乾癬患者の病変部皮膚において表皮細胞間に蛍光が認められ、健常者との差が見られた。CGRP抗体では、アトピー性皮膚炎、乾癬患者の病変部皮膚の表皮内や、真皮乳頭層に神経線維様の蛍光が認められ、健常者との間に差が認められた。SP抗体では、健常人との差は認められなかった。2 有棘細胞癌株(DJM-1),ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF),ヒト皮膚角化細胞(NHEK)のtotal RNAを抽出し,RT-PCR法により,VIP,VIP receptor 1(VIP1R),VIP receptor 2(VIP2R)の発現をmRNAレベルで検討した。DJM-1において、VIP1R-およびVIP2R-mRNAは認められたが、VIP-mRNAは認められなかった。NHEKでは、VIP1R-mRNAのみ認められた。NHDFにおいては、いずれも認められなかった。3 培養表皮細胞におけるのVIP1Rの発現に対するサイトカインの作用をRT-PCR法により検討した。DJM-1を培養し、培養液中にIL-4,TNF-α,INF-γを添加した。サイトカイン添加培養1,3,6,12,24時間培養後,DJM-1中VIP1RのmRNAの発現を半定量し、比較したが、サイトカイン添加前後において有為な差は認められなかった。今回の検討では、VIPやCGRPがアトピー性皮膚炎や乾癬において何らかの役割を果たしている可能性が示唆されたが、マスト細胞やリンパ球など真皮に存在する細胞から放出されるサイトカインが、表皮細胞のVIP receptorの発現の制御に関わっているかどうかについては明らかにされなかった。