著者
野坂 俊夫
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

南西インド洋海嶺のアトランティス・バンクにおいてIODP 第360次航海で掘削されたHole U1473Aから採取された斑れい岩類と,高知コア研究センターに保管してあったODP Hole 735Bのコア試料の一部について,研究期間内に計画していた分析のほとんどを完了した。今年度は補足的な顕微鏡観察,電子線マイクロアナライザー分析,レーザーラマン分光分析,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析を行った。特に電子線マイクロアナライザー分析とレーザーラマン分光分析の結果から,黒雲母と緑泥石混合層の存在を確定することができ,この混合層が広範囲にわたって生じていることが明らかになった。さらにコンピューターによる熱力学的解析を行い,黒雲母と緑泥石,および両者の混合層の生成条件を求めた結果,それらの鉱物はほぼ同程度の温度条件(700℃前後)で,シリカとカリウムの濃度の異なる流体が関与する変質作用によって生じたことが推定された。黒雲母とそれを含む混合層の形成は剪断帯や割れ目に沿って浸透した珪長質含水メルトと関連しており,そのようなメルトの浸透は超低速拡大海嶺周辺の海洋下部地殻に特徴的な現象である可能性が高い。以上の研究成果は,海洋下部地殻における水と岩石の相互作用を理解するうえで重要な新知見を提供するものである。この成果は日本鉱物科学会で発表し,論文にまとめて国際学術誌に投稿した。また現世の海洋リソスフェアと比較するために,過去の海洋リソスフェアであるオフィオライトの低温変質作用,特に蛇紋岩化作用についても並行して研究を進めてきた。その結果,蛇紋岩化作用に伴ってかんらん石の鉄とマンガンの含有量が系統的に変化すること,およびモンチセリかんらん石を生じる場合があることを明らかにした。これらも海洋底構成岩の変質作用に関わる重要な新知見であり,国内学会と国際学術誌上で発表した。
著者
土田 浩治 小島 純一 工藤 起来
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本から侵入したと考えられてきたニュージーランドのフタモンアシナガバチの遺伝的多様性を、日本の個体群の遺伝的多様性と比較した。比較した部位は、ミトコンドリアのCOI 領域である。全個体群からは26ハプロタイプが見つかり、そのうち、日本からは16ハプロタイプが、ニュージーランドからは19ハプロタイプが見つかった。両個体群に共通したのは9ハプロタイプのみであり、日本以外の地域からの侵入が有ったことが示唆された。
著者
吉村 利夫 藤岡 留美子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、紙おむつなどに含まれる高分子吸収材を分離・回収した後に、新品に匹敵する高い吸収性を有するものに再生するための基本技術を確立することである。少量ではあるが、紙おむつのリサイクル工場が稼働し始めている。しかし、現在のところ材料として再利用できているのはパルプのみであり、高分子吸収材やプラスチック類は固形燃料として燃やされている。高分子吸収材の離水メカニズムを明らかにすることで、効率的な水分除去の方法が確立できる。これまでの検討の結果、浸透圧を利用した離水が有効であることが明らかとなった。また、水酸化カリウムを用いることで高分子吸収材の再生が可能であることが判明した。
著者
坪井 孝太郎
出版者
愛知医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

家兎に対して、意図的毛様体解離を作成し、眼圧下降効果を評価し、以下の知見が得られた。0.05mlのヒーロンV(眼科手術用ヒアルロン酸ナトリウム)を使用した毛様体解離では、術前と比較し、術後に一定の眼圧下降効果が得られたが、有意な眼圧下降は1~2週間のみで、術後1ヶ月では術眼と非術眼に有意差は認められなかった。また前眼部OCT検査では毛様体解離の形成は認められたが、毛様体解離の範囲と眼圧下降の相関は認められなかった。また家兎における毛様体解離作成時に、ヒアルロン酸による加圧により頻度は多くないが脈絡膜破裂を生じるリスクが、本検討から明らかとなった。以上より、強膜創からヒアルロン酸ナトリウムを注入することで、意図的毛様体解離を作成することが可能であったが、一定範囲の毛様体解離を再現性を持って作成することは、現在行っている手法ではやや困難である可能性が示唆された。そのため、より安全かつ再現性を高める手法の検討を行った。まず術中の毛様体解離作成に使用するヒアルロン酸ナトリウム量に応じた術前低眼圧状態を作成してから、意図的毛様体解離作成を行った。また眼内観察下にて照明付きカテーテルデバイスを用いた毛様体解離作成をすることで、脈絡膜破裂のリスクを低減し、毛様体解離を作成することが可能であった。また眼内観察下での作成により、毛様体解離範囲の再現性も高まると考えており、今後は毛様体解離範囲の定量的評価にて再現性の評価を検討している。
著者
後藤 良彰
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Lauricella の超幾何関数 F_C に関連して, 昨年度行なった研究に引き続き, モノドロミー群が有限既約になる場合について調べた. この問題は20年ほど前に加藤満生氏によって2変数の場合(Appell の F_4 と呼ばれる)について結果が得られていたが, 3変数以上については未解決であった. 本研究により, 2変数の場合の多変数化として, 有限既約性の必要十分条件をパラメータに関する条件として明示的に書くことができた. 2変数の場合と類似した議論も多用しているが, 3変数以上の場合の特殊性が現れ, 2変数の場合の条件を直接一般化するだけでは不十分であることも判明した. この結果は, 既に論文としてまとめたので, 近日中に学術論文誌に投稿する予定である.A-超幾何系の級数解に対応するねじれサイクルについては, 神戸大学の松原宰栄氏の仕事により, 多くの結果が得られており, 特にユニモジュラーな三角形分割を持つAに対しては, 交点理論もかなり整備されている. この理論を土台に, 松原氏と共同で, ユニモジュラーでない場合に交点理論がうまくいくサイクルの構成に関する研究を開始した. 線積分表示を持つ場合については, 典型例についてサイクルを構成することができたため, 具体的なAに対する例の構成に取り組んでいる. サイクルの構成を進め, ねじれ周期関係式などの公式を導出していき, 論文としてまとめていく予定である.
著者
塚本 容子
出版者
北海道医療大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、(1)HIV患者における抗HIV薬のアドヒアランスの現状調査;(2)現状を基に、アドヒアランスサポートプログラムを構築する;(3)アドヒアランスサポートプログラムを実施し、そのプログラムを評価, 以上の3点を目的として実施した。サンプル抽出に関しての問題点もあるが、我が国のHIV患者のアドヒアランスは米国の患者と比較して、高く保たれていた。しかし治療による副作用が発生しても、医療従事者(特に医師)に対して副作用に対しての現状を伝えられていなかった。また治療決定の際に、積極的な関わりができている患者も少なかった。この現状結果を基に、患者が積極的に治療決定が行えるようなサポートをプログラムを構築し、実際使用しその評価を行った。その評価に関して、であるが改善点はいくつかあったが、90%以上の患者がそのプログラムを良いもしくはとても良いと評価していた。またアドヒアランスサポートプログラムがすべての外来にあると良いということも意見として挙っていた。今後の課題としてこのプログラムを継続的に行い、患者のアウトカム、プログラムの経済性に関して調査する必要がある。
著者
登谷 伸宏
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、織豊系城下町の形成過程と歴史的特質を明らかにするため、織豊政権が建設した城下町に注目し、その空間・社会構造について検討を進めている。平成30年度は、①昨年度から検討を進めていた小浜城下町の形成過程について、さらなる史料の収集を行うとともに、論文の執筆に着手すること、②織豊系城下町の空間・社会構造の特徴を見極めるため、戦国期末から近世初頭に各地で建設された構・惣構に囲繞された都市の空間・社会構造を明らかにすること、③織豊系城下町形成に関する研究支援データベースの構築を継続的に進めることを計画していた。以上の研究目的・計画にもとづき、当該年度は具体的につぎの2つの作業を行った。第1が、小浜城下町の形成過程をより具体的に検討し、大まかな流れを把握することである。具体的には、港町小浜が若狭武田氏の城下町として位置づけられた大永2年(1522)頃から慶長6年(1601)の京極氏による小浜城築城までに、いかなる都市形成が進められたのかを、先行研究でも注目されている「小路」名のつく街路、および寺社の移動という視点から改めて整理し直した。また、小浜城下町は、織田信長の重臣であった丹羽長秀により改変が行われたものの、長秀自身は近江国の佐和山城を拠点としており日常的に小浜にはいなかったという点を重視し、信長の家臣団の建設した城下町のうち、同様の条件を持つ事例との比較検討も行った。以上の結果については、論文として執筆し始めている。第2が、織豊系城下町の空間・社会構造の特徴を明らかにするため、構・惣構といった防御施設により囲繞された都市を比較対象としてえらび、その空間・社会構造を解明することである。具体的には、京都近郊の吉田社・醍醐寺という権門寺社を対象として分析を行い、いずれも境内・伽藍中心部を囲繞する構、門前集落全体を囲う構という二重の構を形成していたことを明らかにした。
著者
三舟 隆之
出版者
東京医療保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本の古代寺院の伽藍配置については、従来古代の仏教観を表しているとされてきたが、地方寺院の伽藍配置を見ると金堂だけの寺院も多く、定型化していない。朝鮮半島では古代寺院の伽藍配置は定型化した形式で、王権が寺院を造営する技術を把握していたことが判明する。しかし日本では寺院の伽藍配置は多様であり、とくに地方寺院では規格性に欠け、畿内から離れた地域では、地方寺院はさまざまな技術が用いられ、そこに仏教の教義を見出すのは困難であり、畿内寺院の伽藍配置を意識しながらも、地方独自な伽藍配置も採用されている。日本古代の地方寺院は、ある程度規制されず自由なプランで造営されていたと考えられる。
著者
高橋 英也 江村 健介
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、「ラ抜き言葉」や「レ足す言葉」、岩手県宮古市方言で用いられる能力可能形式「エ足す言葉(例:読めえる)」といった、日本語の可能動詞の形式に見られる「方言多様性」と、それを実現させる日本語母語話者の「文法知識の獲得」を、日本語の膠着性の理論的定式化という観点から考察する。特に、語彙の形態分解と文法構造の階層性の間に一定の対応関係が存在することを標榜する分散形態論(Marantz 1997他)の枠組みを用いて、日本語の可能動詞化を具現するラレ/rare/が2つの独立した形態素(r)arとeに分解されるとの作業仮説に立脚し、可能動詞の諸相に広く目を配った、多角的かつ統合的な研究を実施する。
著者
茂木 淳
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

体内時計は生物にとって、昼夜の光環境の変化に代表される、周期的な外部環境の変化に対応し、自らの行動や生理活性を最適化するうえで重要な機構である。多くの生物では、安定性と柔軟性を兼ね備えた、体内時計の計時メカニズムは「内因性の自律振動の発振」と「外部環境への同調」という二つの要素によって形成されている。照明条件は養殖魚の生残率、成長量に関わる要因の一つである。一般に長日照明飼育は成長を促進させるが、それによって形態異常を持つ割合が増加する魚種も多く知られている。照明条件は、現在までのところ、養殖業者の経験に基づいて設定されている。本研究では、魚類の体内時計と照明条件の関係を理解し、養殖魚の健苗性の向上において最適な照明条件を魚種ごとに予測することを目的とした。これまでの研究で、ヒラメでは、ゼブラフィッシュとは異なる、これまで魚類では知られていなかった視交叉上核を介した体内時計の制御機構が働いていること、中枢時計の同調因子としてコルチゾルが働いていることを示唆した。当該年度では、当初の計画にあった、ヒラメ以外の魚種(カンパチ、フグ、メダカ)における時計遺伝子per2の発現解析をおこなった。カンパチではヒラメと同様に視交叉上核特異的な発現が見られた。それに対してフグでは染色が見られたが他領域の染色と差はなく、組織特異的に強く発現しているとはいえない。これはゼブラフィッシュの染色パターンに類似している。メダカでは、染色が見られなかったため、発現量がISH法の検出可能レベルよりも低いと考えられる。これらのことから魚類の視交叉上核のリズム発信には魚種間で種差があることが推測される。
著者
飯郷 雅之 宮本 教生
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

深海は極限環境であり,地球上に残されたフロンティアのひとつである.深海生物の生理や行動が日周リズムを示すかどうかは不明である.そこで,本研究では,深海魚における体内時計の存在とその特性を明らかにすることを目的に研究を進めた.次世代シーケンサーを用いたmRNA-Seqにより網膜,脳の光受容体および時計遺伝子群の網羅的同定を試みた.その結果,コンゴウアナゴでは,2種のロドプシンと非視覚オプシンが網膜に発現することが明らかになった.色覚に関与する錐体オプシンの発現は確認できなかった.Clock,Npas2,Bmal1,Per1,Cry1,Cry2などの時計遺伝子群の部分塩基配列も同定された.
著者
瀧澤 理穂
出版者
石川県立看護大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

子どもをもつがん患者は、自身の病名を子どもに伝えるか否かに苦悩を抱き、本来治療に向けるべきエネルギーを消耗し、心身の負担が増大することが報告されている。しかし、看護師は十分な患者支援が出来ていない現状にある。患者への寄り添いを看護師の重要な役割を考えるNewmanは、看護師が患者とパートナーとなり対話を行うことで、患者が自分らしい生き方を見出すことが出来ると述べている。そこで本研究は、子どもに自分の病名を伝えることに悩むがん患者と研究者が、Newman理論に基づいたパートナーとなり対話を行ったならば、患者が自分なりにどのような解決の方向性を見出していくか、その体験を明らかとする。
著者
池辺 幸正 任 天山 王 作元 永峰 康一郎 飯田 孝夫 WANG Zuoyuan
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

中国・日本を含むアジア地域における大気中トリチウム動態の解明に資するために、中国で実施されている環境トリチウムの全国組織による調査の機会に合わせて、中国における水蒸気中トリチウムの全国規模調査を実施した。1.測定法水蒸気のサンプリングにはモレキュラーシ-ブスを用いた。従来用いられてきたポンプを用いて捕集するactive法のほか、新たに開発した動力を用いないpassive法による捕集を行った。これは、アクリル製容器にモレキュラーシ-ブスを入れ、ふたに設けたフィルターを通して自然換気により一定速度で空気中水蒸気の捕集を行うものである。モレキュラーシ-ブスに吸着した水蒸気を加熱により水として回収するための装置を作成し、北京の衛生部工業衛生実験所に設置した。回収した水の蒸留および液体シンチレーションカウンター(Aloka LB-1)を用いた放射能計数は北京で行われた。上記の予備実験として、passive法とactive法による同時採取サンプルの放射能測定値の比較および同一水試料の中国側と日本側でのトリチウム濃度測定値の比較を行い、それぞれほぼ良好な一致を見た。passive法に用いた容器の気密性が完全でなく、月単位の期間では外気中の水蒸気の混入が問題となることが判明したため、サンプリング前後の容器は常に鉄製の密閉容器に保管した。2.passive法による地域分布の測定東アジア地域の水蒸気中トリチウムの地域分布をみるため、passive法によるサンプリングを二ヶ月毎くり返し実施した。採集期間は1992年6月から1993年9月までの16か月間(8回)、採集地点は中国全域にわたる13市(ハルピン、長春、北京、蘭州、武漢、西安、上海、杭州、福州、成都、深〓、ウルムチ、ラサ)および日本の5市(札幌、仙台、名古屋、熊本、那覇)である。得られた測定値の誤差についての最終的評価には至っていないが、測定の結果は以下の通りである。(1)中国・日本を含む東アジア地域の水蒸気中トリチウムの大略の地域分布が二ヶ月毎に得られた。また年平均値の地域分布を得た。(2)濃度レベルはウルムチと蘭州が最も高く、年平均濃度は約15Bq/lである。次に高いグループは、ハルピン、長春、北京、西安、ラサ(8〜11Bq/l)であり、武漢、成都がこれに次ぐ。沿岸部(杭州、福州、深〓)は数Bq/lで低濃度であり、日本の5地点は1〜2Bq/lで最も低いグループに属する。(3)地域分布には内陸効果および緯度効果が認められる。また過去の核実験の影響も検討すべき要素と思われる。(4)全体的に、濃度は秋、冬に高く、春、夏に低い傾向が認められる。(5)水蒸気中トリチウム濃度は、降水中濃度の推測値よりも高いレベルである。3.active法による日々変動の測定濃度の日々変動を見るため、active法によるサンプリングを地理的に特徴のある北京、蘭州、福州の3地点で実施した。サンプリングは春夏秋冬の各季節毎に10日間づつ、2日毎に実施した。北京では1992年9月の訪中時にもサンプリングを行い、水の回収および放射能測定を日本で行った。北京の9月、秋および冬のデータについては、2層流跡線モデルによる計算値との比較を行った。9月と秋のデータに関しては、測定値と計算値の濃度レベルはかなり近い値を示したが、1月の測定値は計算値の約3倍であり、今後に問題を残した。モデル計算においては、地表水のトリチウム濃度分布を過去の中国の文献値等から推測して発生源分布(蒸発による)として与えているが、今回の中国側の全国規模調査によって現在の発生源分布が測定によって得られるものと期待される。この研究で得られたデータと中国側が得ているデータに基づいて、今後トリチウムの広域環境動態の解析が進むものと期待される。
著者
松本 博 増田 幸宏 源城 かほり 近藤 恵美
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,観葉植物のもつグリーンアメニティ効果に着目し,植物の熱・湿気環境調整効果及び化学物質除去効果を定量的に評価し,模擬オフィスと実オフィスを対象とした被験者実験により,観葉植物がオフィスワーカーの心理・生理反応及びプロフダクティビティに及ぼす影響を定量的に解明し,その経済性評価法及び室内環境デザイン手法の開発を行った。その結果,室内植物の種類や量がオフィスワーカーのメンタルストレスの軽減やプロダクティビティの向上に与える影響を明らかにし,また,その経済性評価モデル及び室内環境デザイン手法の妥当性を検証した。
著者
糸崎 秀夫 赤羽 英夫
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本課題では、MHz帯の電磁波と圧電効果を用いて不正薬物を非破壊・非接触で検知できる要素技術開発とその有効性について評価した。 要素技術では、MHz帯の電磁波の送受信回路と遠方での放射強度を抑えたグラジオ構造を有するプローブを開発した。また、実際に覚せい剤を用いた検出評価実験を行い、圧電効果を用いた新しい覚せい剤の検知方法の有効性を確かめることが出来た。
著者
井上 稔 阿座上 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

マイクロ波の熱作用と放射線が複合して作用した場合,単独被曝とは異なった生体影響が現れる可能性がある.本年は,マウスにマイクロ波を照射するためのアプリケ-タを設計・製作し,マウスのSAR(比吸収率)を測定した.この装置では実験者が漏洩電波に被曝する恐れは無い.50匹のSlc:ICRマウスに,マイクロ波に影響を受けないファイバ-センサ温度計をもちいてリアル・タイムで直腸温測定をしながら,体温が42.5℃になるまでマイクロ波照射を行った.体温の上昇直線とマウスの体重,比重,頭臀長,腹囲の測定値よりSAR(比吸収率)を計算した.マウス胎仔の大脳が最も高い障害感受性を示す妊娠13日の母獣に2.45GHz,0.5W(非妊娠マウスを用いて計算したSAR:134W/kg)のマイクロ波照射を3分間行い,胎仔の脳に及ぼす急性影響を検索した.この時,直腸温は42.3±1.3℃に達した.マイクロ波処理1ー12時間後に母獣を殺して胎仔の脳を採取し,一部71kdの熱ショック蛋白の検索に用い,他は組織切片にした.大脳外套脳室帯の細胞死の頻度を調べたところ,対照群の0.14%に対して照射5時間後には1.0%の増加し,生体影響が検出された.熱ショック蛋白hsp70は検出されなかった.つぎに複合被曝の実験として,マイクロ波被曝1ー12時間後にさらに0.24Gyのγ線照射を行い,γ線被曝8時間後に同様に胎仔を採取し,大脳の細胞死頻度を観察した.マイクロ波被曝1ー9時間後のγ線被曝では,γ線単独被曝による細胞死8.3%と比べ有意な差はなかったが,12時間後のγ線被曝では6.8%(p<0.05)と,わずかながら低抗性がみられた.
著者
和泉 秀彦
出版者
名古屋学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

精白米を酸性溶液に浸漬させることで、低アレルゲン米を作製した。また、その低アレルゲン米中のアレルゲンの消化性は向上していたが、難消化性タンパク質であるプロラミンの消化性は変化していなかった。
著者
今石 宣之 秋山 泰伸 佐藤 恒之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

半導体や酸化物などの高品位単結晶の製造のために,単結晶育成炉内の融液の流れを正確に理解し,合目的的に制御する技術を開発することが要求されている。このなかで,自然対流に関する理解はかなり深まっているが,表面張力対流(マランゴニ対流)およびマランゴニ対流と自然対流の共存対流についての基礎的理解が不足している。マランゴニ対流は,微小重力環境における流体運動の基礎科学としても重要である。本研究では,マランゴニ対流の基礎的理解を深めるため,通常の流体と異なる表面張力の温度係数σT (σT≡∂σ/∂T)を持つ溶融苛性ソーダ(NaOH)の微小液柱内に生じるマランゴニ対流,および溶融NaNO_3の液柱内に生じるマランゴニ対流と自然対流の共存流について,実験および数値解析による検討を行い,下記の結果を得た。1)溶融NaOHの表面張力を,最大泡圧法を用いて測定し,融点(600K)〜T^*=725Kの温度域ではσT>0,T^*以上の温度域ではσT<0となることを明らかにした。2)T^*以下の低温域では,表面液が定温度点から高温度点へと向かう方向に流れるマランゴニ対流が観察された。実測した流速分布等は,数値解析結果と良く一致した。3)T^*以上の温度域では,通常の流体におけるマランゴニ対流と同様に,高温度点から定温度点へ向かって流れる表面流が観察され,数値解析結果と良く一致した。4)加熱板温度がT^*の近傍に設定される場合,温度および温度差に依存して,液柱内には2〜4個のロールセルが発生する。このマルチロールセル流れの発生機構は数値解析の結果,定量的に説明できた。5)液中を水平に置いた場合に生じるマランゴニ対流と自然対流との共存流の解析用の3次元数値解析コードを開発し,NaNO_3融液に対して解析を行い,実験結果を説明した。
著者
青柳 将 栗田 僚二
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脂質ナノチューブと集電体のナノ炭素材料の複合化を検討して、複合体上での酵素反応を電気化学測定により評価した。また脂質ナノチューブの代わりにアミノ基含有高分子を電極表面に塗布して、その効果を検討した。その結果、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)を使用したカソード反応には電流値が増大する効果が確認されたが、フルクトースデヒドロゲナーゼを用いたアノード反応には電流値が減少した。さらに集電体のナノ炭素材料の種類や表面官能基についてそれぞれ検討を行った。また、高耐久性の人工耐熱性BODについても検討行ったところ、キトサンの添加により大きな電流地を得た。
著者
村田 茂穂 千葉 智樹
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

当該研究部門ではCDK(サイクリン依存性キナーゼ)インヒビターであるp57^<Kip2>の作用についてマウスやラットから分離した骨芽細胞における機能解析を進めてきた.その結果,申請者らは(1)p57^<Kip2>がTGFβの刺激で速やかに分解すること(J.Biol.Chem.,1999)と(2)TGFβ依存的なp57^<Kip2>の分解が,TGFβシグナル系の仲介因子Smad依存的な転写を介していることを明らかにした(J.Biol.Chem.,2001).その後の研究から,もう一つのCDKインヒビターであるp27^<Kip1>の動態と併せて解析した結果,TGFβ刺激はp57^<Kip2>の分解を誘導したが,、p27^<Kip1>の分解を誘導しないこと,さらにp57^<Kip2>の分解消失は細胞の増殖開始とは関係しないことを突き止めた.次に骨分化を誘導するBMP (bone morphologic protein)刺激を加えたところp57^<Kip2>の分解消失は認められない事を見い出し,さらにp57^<Kip2>がTGFβ刺激によって分解されるとBMP刺激による骨分化誘導が阻害されることを明らかにした(論文投稿中).これらの結果から,p57^<Kip2>のノックアウトマウスで報告された骨形成異常の生理的意義を説明することが可能となった.即ち,p27^<Kip1>とp57^<Kip2>のユビキチン化依存的な分解は,骨芽細胞の増殖と分化の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになったのである.我々は以前にSCFユビキチンリガーゼの必須な制御因子であるUba3のノックアウトマウスでp57^<Kip2>が蓄積していることを明らかにしており,現在TGFβ刺激によって誘導される新たなユビキチンリガーゼ(E3)がp57^<Kip2>特異的なユビキチンリガーゼである可能性について解析を行っている.そして骨芽細胞にTGFβ刺激したさいに発現が誘導されるE3の同定に成功した。さらにこのE3がp57に特異的に結合すること、in vitroでp57のリン酸化特異的にユビキチン化を行うことを見いだし、p57特異的なE3であることを明らかにした。