著者
田村 竜二 岡本 貴大 門脇 嘉彦 高橋 卓也 坂田 龍彦 高倉 範尚
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1776-1781, 2008-07-25
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

症例は25歳,女性.右側腹部痛と発熱を主訴に近医受診,腹部超音波検査にて肝腫瘤を指摘され当院へ紹介入院となった.HBs抗原およびHCV抗体は陰性,軽度肝機能異常,軽度炎症所見を認めるのみで,腫瘍マーカーは正常範囲であった.CTでは,肝右葉を占める巨大腫瘍で,充実性部分と嚢胞性部分が混在しており,充実性部分は早期相で濃染,晩期相でwash outされる肝細胞癌様所見を呈し,嚢胞性部分辺縁は淡く造影され中心部は全く造影されず,血管造影では腫瘍血管の増生と口径の不整が見られた.悪性肝腫瘍と診断し肝右葉切除術を施行した.腫瘍割面は充実性部分と嚢胞性部分が混在し,病理組織検査にて,細胆管細胞に類似した腫瘍細胞が小管腔を形成し,cytokeratin 7が陽性で抗肝細胞抗体が陰性であり,細胆管細胞癌と診断された.術後17日目に退院し,補助療法は行なわず,術後4年の現在,無再発生存中である.
著者
中谷 安男
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 = The Hosei University Economic Review (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1・2, pp.21-50, 2019-09-20

This paper explores the relationship between the results of the automated scoring system based on CEFR-J and human raters’ assessments. As a pilot study for further investigation dealing with more subjects, this study examines 3 different levels of CEFR-J writing test tasks for 37 participants. First, two independent raters evaluated a total of 111 test samples by using the CEFR-J assessment guidelines for each individual level. These results were compared with the assessment of a CEFR-J automated level judging system that utilized leveraged error types and text quality measures. The results show that although the indicators used for correlation are low, the consistency between each method of evaluation tends to be better at a higher level: B1.2.1. The qualitative analysis of the test samples with large discrepancies indicates that it is effective to use both human raters and methods and the automated level judging system when deciding candidates’ final scores and giving feedback on results.
著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-25, 2005-04-20 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
7

68組の夫婦に縦断研究(子どもの誕生前, 親になって2年後, 3年後)をおこない親になることによって夫婦関係がどのように変化していくかについて検討した。夫婦関係は「親密性」「頑固」「我慢」「冷静」の4因子からなる尺度によって明らかにした。その結果, 親密性は親になって2年後に男女ともに顕著に低くなるが, 2年後と3年後の間には大きな変化はなかった。このことから, 夫婦間の親密な感情は親になって2年の間に下がるが, 3年を経過するとその下がったレベルのまま安定し推移していくことが明らかになった。しかし妻の「頑固」得点は母親になると著しく高くなっており, 妻は母親になると夫に頑固になる傾向が認められた。さらに夫の「我慢」得点は3期にわたって常に妻よりも高かった。これは夫が妻の顔色をうかがって妻に不快なことがあっても我慢してしまう傾向があることを示している。最後に「親密性」が低下するのに関連する要因について重回帰分析を用いて検討した。その結果, 夫の場合は妻自身のイライラ度合いが強いことと夫の労働時間が長いことが親密さを低下させていた。一方の妻の場合は夫の育児参加が少ないことや子どもが育てにくいことが夫への親密性を低める要因としてかかわっていた。
著者
山室 信一
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.101, pp.63-80, 2011

1895年から1945年の敗戦に至るまでの日本は, 日本列島弧だけによって成立していたわけではない。それは本国といくっかの植民地をそれぞれに異なった法域として結合するという国制を採ることによって形成されていったが, そこでは権利と義務が差異化されることで統合が図られていった。こうした日本帝国の特質を明確化するために, 国民帝国という概念を提起する。国民帝国という概念には, 第1に国民国家と植民地帝国という二つの次元があり, それが一体化されたものであること, しかしながら, 第2にまさにそうした異なった二つの次元から成り立っているという理由において, 国民帝国は複雑に絡み合った法的状態にならざるをえず, そのために国民国家としても植民地帝国としてもそれぞれが矛盾し, 拮抗する事態から逃れられなかった事実の諸相を摘出した。その考察を通じて, 総体としての国民帝国・日本の歴史的特質の一面を明らかにする。The Meiji state's experience of forming a nation state affected its possession of colonies and also the changes that accompanied the Meiji state's becoming a colonial empire. In this paper, I will employ the concept of nation—empire for the purpose of clarifying the character of Japanese total empire. To do so, I wish first to emphasize that the concept of nation—empire has two dimensions, for it is meant to incorporate both the nation state and the colonial empire. But my second point is that for precisely that reason, it contains tendencies that contradict the nation—empire itself.
著者
金子 雅明 岡崎 倫江 上條 史子 上田 泰久 柿崎 藤泰 桜庭 景植
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.27-31, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2

〔目的〕足部・足関節アライメントに着目しACL損傷の危険肢位とされる膝関節軽度屈曲・外反および着地直前および直後の下肢筋群筋活動との関係を明確にし,予防や再建術後プログラムの指導に役立つ指標を示すことを目的とした。〔対象〕健常成人男性27名を対象とした。〔方法〕左片脚着地後の最大膝関節屈曲角と外反角,着地直前直後の筋活動,下肢アライメント評価として,脛骨捻転角,thigh foot angle,leg-heel angle,navicular drop testを計測した。〔結果〕navicular drop testの値が小さい場合,左片脚着地後の最大膝関節外反角が大きくなるとともに着地直前直後の半腱様筋の筋活動が大きくなった。〔結語〕navicular drop testの値が小さいことは,ACL損傷の危険肢位である膝関節外反を生じる可能性が高い選手を把握する指標になることが示唆された。
著者
韓 韡
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.129-147, 2013-09

本論は、従来の研究で注目されてこなかった清末「日本型教育体制」の成立における女子教育と日本モデルという問題を、女子手芸科目という視点から考察した。その結果、清松の女子師範学堂および民国の女子中学校と女子師範学校のカリキュラムに組み込まれた手芸科目「編物・組糸・嚢物・刺繍・造花」が、明治三十四年文部省発布の「高等女学校令施行規則」における随意科目の手芸内容の模倣であることを明らかにした。そして、富国強兵の方策を模索していた清末の教育視察者が、実業技能として教授された明治期の手芸が女性の職業と結びつき、国家の産業発展に貢献しているのを見て、またそれが伝統的な婦徳にも合致するため、中国でもこれを実現しようと意図的に中国の女子教育に組み込んだ結果であることを論証した。 しかし、中国に導入された手芸は、実用性がないものとして教育関係者から批判された。手芸が日本のような大きな発展を見せなかった理由の一つとして、教育制度の導入に際し、日本の高等女学校では随意科目とされた手芸科目を裁縫や家事と同様の家政科目として取り入れたことが考えられる。さらに、日本における手芸は、女子教育の中で実業技能という位置づけであったが、中国においては近代的産業の未発達が女子実業教育の社会的実利を妨げたため、実業教育としての手芸が成り立たなかった。また、日本では産業全体と女子実業教育の発展とが連動しており、手芸の中でも開化趣味に合った「編物」と「造花」は、明治後期にはすでに女性の職業の一つとして成立していた。一方、中国では、原材料すら日本からの輸入に頼らなければならない「編物」と「造花」は、その物自体も単なる装飾品・奢侈品として認識されるにとどまった。近代女子教育に導入された手芸は、当時の社会状況と産業経済の未熟さによって、日本のような職業と結びついた実業として発展を遂げることができなかった。
著者
家村 芳次 影山 由香里 松永 恒司 原 昌道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.515-520, 1996-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29
被引用文献数
6 6

(1) 白米のアミロース含量, 心白および腹白の何れもが白米の吸水性に強く影響を及ぼした。また, アミロース含量は白米の最大吸水量に影響を与えるのに対し, 心白および腹白は主に白米の吸水速度に影響を及ぼした。(2) 心白米や腹白米の吸水率が高い要囚は, アミロース含量や蛋白含量など成分上の違いによるのではなく, 心白や腹白そのもの, すなわち米粒構造の違いによるものと推定した。終わりに貴重な試料米を提供下さいました北海道立上川農業試験場, 中国農業試験場, 灘五郷酒造組合酒米研究会の皆様に深謝いたします。本研究の概要は平成2年度日本生物丁学会大会にて発表した。
著者
内田 立身 河内 康憲
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.436-439, 2014 (Released:2014-05-20)
参考文献数
13

鉄欠乏性貧血の症状としての異食症のうち氷食症について検討した。日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準で診断した鉄欠乏性貧血81例を対象とした。鉄欠乏性貧血全例に氷食行為の有無を問診した。同時に他の異食症,組織鉄欠乏の所見,血液学的データを検索し,鉄治療後のこれらの経過を観察した。氷食症は,氷食行為が強迫的異常行為として見られるもの,鉄剤の投与で氷食行為が消失するものと定義した。その結果,81例中13例(16.0%)に氷食症が見られた。氷食症はヘモグロビン値,血清フェリチン値とは関係がなく,鉄剤の投与により比較的早期に改善した。氷食症は他の異食症が極めて稀なのに比して,日本人の鉄欠乏性貧血の症状としてよく見られることが判明した。氷食症の本態は不明であるが,中枢神経系の生化学的研究の必要性が示唆された。
著者
室井 努
出版者
弘前学院大学文学部
雑誌
紀要 (ISSN:13479709)
巻号頁・発行日
no.50, pp.37-51, 2014-03-25

日本語学会の大会シンポジウム(ワークショップ)における小松英雄氏の発言をきっかけとして、氏の主張する書記における読み手の存在の考えをどのように定位するかを試みる。具体的には、同様の構造で論争が起きた岩波新『漱石全集』本文問題と、時枝誠記のソシュール批判の顛末、および時枝氏の主張する言語過程説においての「書く」「読む」といった文字と音声との関係の精読の二つを通じて、読み手の立場を考慮に入れた書記資料の扱いを説く小松氏の、日本語学史上の位置づけを考える。
著者
渋谷 綾子 石川 隆二 高島 晶彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では,1. 古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2. DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3. これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2018年度は,資料調査と混入物の分析,現生サンプルのDNA分析による紙材料の識別実験,混入物の標準的データの抽出を試みる。混入物の分析は,(1)資料調査と紙の繊維の分析,(2)混入物の分析,(3)多角的研究,(4)文書研究の4つを柱として設定する。料紙の成分特定については,分担者(石川)とともに現生の紙や原料サンプルのDNA分析を実施し,繊維や糊などの構成物の由来材料を特定する。今年度において,分析・検討を行ったのは主に次の項目である。すなわち,東京大学史料編纂所所蔵「中院一品記」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),国立歴史民俗博物館所蔵「廣橋家旧蔵記録文書典籍類」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),「松尾大社所蔵資料」および米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」の顕微鏡撮影と構成物の解析(高島・渋谷),現生の紙原料サンプル(カジノキ)のDNA分析(石川・渋谷)。また,AWRANA2018(フランス,2018年5月)や日本文化財科学会第35回大会(2018年7月),第33回日本植生史学会大会(2018年11月),Workshop on Integrated Microscopy Approaches in Archaeobotany 2019(イギリス,2019年2月)では研究手法の紹介と結果の見込みについて報告し,書籍『Integrated Studies of Cultural and Research Resources』では2018年度前半までに得られた研究成果について報告した。
著者
市原 雅也 依田 知久 小泉 貴子 斉藤 美香 平野 浩彦 山口 雅庸
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.104-109, 2004-09-30 (Released:2014-02-26)
参考文献数
12

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は血小板が減少する後天性疾患であり, ITPの患者において口腔症状が頻繁に観察される。本来ITP治療の第一選択は副腎皮質ステロイド療法であり, ついで摘脾, 免疫抑制療法の順序である。そのほかに標準的な治療に反応しない, いわゆる難治例では免疫グロブリン大量静注療法 (IVIg療法) などが適用される。また最近, H.pylori陽性ITP症例における除菌療法の有効性が注目され厚生労働省によるITPの新しい診断基準, 治療プロトコールの作成が行われている。今回, われわれは口腔症状を呈したITP症例2例を経験したのでその概要を報告する。症例1は87歳, 男性, 口腔内出血を主訴に受診した。口腔出血, 血腫, 体幹の紫斑がみられITPと診断された。止血処置およびIVIg療法を施行された。その後血小板回復がみられ, 咬傷および感染予防のため抜歯を行った。症例2は69歳, 女性, 口腔内腫脹を主訴に受診した。ITPと診断されており, H.pylori除菌療法を受け, 血小板の回復がみられたために歯肉腫脹の原因歯を抜歯した。その後の経過は順調で後出血はみられなかった。

3 0 0 0 成功

出版者
成功雜誌社
巻号頁・発行日
vol.16(5);8月號, 1909-08
著者
岩崎 寛 山本 聡 権 孝〓 渡邉 幹夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.247-249, 2006-08-31
被引用文献数
10 14

近年、植物による癒しの効果に注目され、屋内空間においても多くの植物が配置されるようになった。しかし、それらが実際に人の生理的側面に与える効果に関する検証は少ない。そこで本研究では屋内空間における植物の有無が人のストレスホルモンに与える影響を調べた。その結果、観葉植物を配置した場合、無い場合に比べ、ストレスホルモンが減少したことから、室内における植物の存在はストレス緩和に効果があると考えられた。