著者
槌野 正裕 荒川 広宣 石井 郁江 西尾 幸博 高野 正太 山田 一隆 高野 正博
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AcOF1012-AcOF1012, 2011

【背景】アブラハム・マズローは、人間の基本的欲求を低次元から、1.生理的欲求、2.安全欲求、3.愛情欲求、4.承認欲求、5.自己実現欲求と5段階に分類している。生きていくうえで欠かすことの出来ない生理的欲求には、食欲、性欲、睡眠欲、排泄欲などが含まれている。リハビリテーション医療分野では、排泄欲に対する機能訓練は皆無である。排泄に関する問題は、個人だけではなく、その家族や介護者にとっても社会参加の阻害因子となり、Quality of Life(QOL)の重要な要素となる。我々は、大腸肛門病の専門病院として第43回当学会から継続して、排便に関する研究を行ってきた。今回、排便時の動態を調査することを目的として、排便姿勢の違いにより、直腸肛門角(anorectal angle:ARA)がどのように変化し、また、排出量に及ぼす影響について、排便造影検査(Defecography)を用いて検討したので以下に報告する。【方法】対象は、2010年1月~6月にDefecographyを行った160例とし、以下の3項目について検討した。1.排出時(strain)での伸展姿勢と前屈姿勢を撮影できた59例(男性21例、女性38例、62.2±18.7歳)を対象としてARAを比較した。2.大腿骨頭を頂点とし、仙骨上端(岬角)と尾骨先端との為す角(α)を計測できた23例(男性13例、女性10例、60.1±25.1歳)を対象として、排便姿勢の違いによる仙骨の傾きを比較した。3.排便困難を主訴とした症例の中で、排便姿勢を変えて排出量の測定が可能であった20例(男性7例、女性13例、64.6±13.7歳)では、伸展姿勢と前屈姿勢での排出量の差を比較した。Defecographyは、小麦粉と粉末バリウムを混ぜ合わせた疑似便(1回量225g)を直腸内に注入し、安静時(rest)、肛門収縮時(squeeze)、排出時(strain)の3動態と一連の動きを動画で撮影する。撮影された画像は、放射線技師が電子ファイル上で計測を行った。検定は、関連あるT検定と相関係数を用いて、有意水準5%未満を有意と判断した。【説明と同意】当院倫理委員会の許可を得て、臨床当研究に取り組んだ。【結果】59例の主訴の内訳は、便秘(排便困難含む)22例、便失禁(尿失禁含む)9例、脱出12例、肛門痛17例、その他21例(重複あり)であった。1.StrainでのARAは、伸展姿勢で114.1°±21.0°、前屈姿勢で134.6°±16.8°となり、前屈姿勢で有意に鈍角であった。また、相関係数は、0.716と高い正の相関を示した。2.α角は、伸展姿勢で84.9°±10.8°、前屈姿勢で92.4°±10.7°となり、前屈姿勢で有意に鈍角であり、仙骨はうなずいていた。相関係数は、0.826と高い正の相関を示した。3.排出量は、伸展姿勢で90.1g±18.3g、前屈姿勢で140.7g±20.9gであり、前屈姿勢で有意に排出量が増大した。【考察】今回、Defecographyを用いて、排便姿勢の違いはARAにどのような変化をもたらすのかを検討した。ARAに関する報告は多数存在するが、排便姿勢の違いによる報告は見当たらない。臨床場面での経験から、排便困難症例では、息めば息むほど背筋を伸ばした伸展姿勢となる症例が多く存在する。そのような症例に対して、排便姿勢の指導を行うことで排便困難が改善する症例もみられていた。今回の研究結果から、排便時は前屈姿勢の方がARAは鈍化し、排出量が増大する結果となり、姿勢指導の方法が妥当であったと考えられる。排便に関しては、まず、便意の出現が重要であることは言うまでもないが、その他の要素として、前屈姿勢になることで骨盤帯は後傾方向への動きとなる。骨盤が後傾することで仙骨は前方へ倒れ、うなずき運動を伴う。直腸は、仙骨前面の彎曲と一致することから、仙骨が前方へうなずくと、骨盤底の後方ゾーンで重要とされる肛門挙筋が緊張し、直腸を後上方へ引き上げるためARAは鈍化したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】生きていく上で、また、在宅生活を遂行する上で、排泄は大きな課題となる。日常生活動作に直結する排泄動作に関して、理学療法士が排便の仕組みを知ることで、適切なアドバイスが提供できるようになると考えられる。それは、例えば、介護分野で数年前から言われている、「寝たままのオムツでの排泄ではなく、トイレでの排泄を介助する。」ことの根拠となり、また、運動学的知識が豊富な理学療法士が、骨盤周囲の運動機能の評価・治療を行うことで、排便を行いやすくできる可能性があると考えられる。
著者
上岡 磨奈
出版者
三田哲學會
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
no.147, pp.135-159, 2021-03

This study examines the tools of communication between fans and young pop singers, also known as idols, focusing on the "Cheki" — a type of photography taken by small polaroid camera. It has been proposed that the figure of idol culture is in the relationship between idols and fans, and it is not vertical but horizontal. "Cheki" notably symbolize this relationship. In this paper, I will clarify the meaning of this phenomenon in the context of the Japanese idol culture. I demonstrate that the concept and process of taking "Cheki" photography has not been described in previous studies. Although "Cheki" can be considered a similar to Handshake events, there are many differences between these activities. To observe the rules and behavior during the "Cheki" shootings, I have conducted web survey and interview with participants, including both fans and idols. As a result, it became clear that "Cheki" photography has strong connection with and within the idol culture. I argue that intimacy between fans and idols tha t appears during the photo shooting is a symbol of idol culture. Moreover, the materialness of "Cheki" also visualizes accumulation and such connection.投稿論文
著者
芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.478-"486-1", 1963-07-10

樺太犬のもつ北方犬特有のすぐれた習性や本能,また寒地に適応した特殊な生理機能と若さの体力が,昭和基地という南極では比較的安全な露岸地帯の基地を中心にして生活をなし,またアザラシやペンギンにもめぐまれて生存し得たものと推察される。
著者
長沼 宏 小河原 忠彦 後藤 振一郎 松本 由朗 須田 耕一 茂垣 雅俊 鈴木 範美
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.509-514, 1990

イレウスの原因となった胆石が,きわめてまれな性状であった症例について,胆石の形成過程を考察し報告する. 症例は78歳女性. 突然の悪心, 嘔吐に続いてイレウス状態となり緊急に開腹したところ,4.5×3×3cmの胆石塊による回腸の閉塞で,胆嚢十二指腸瘻から消化管に逸脱したものであった. この胆石塊は直径1~1.5cm の混合石10個が胆石構成成分と同様の成分物質で接合され,gallstones in a giant gallstoneの状態となったものであった,成分分析の結果,小結石は多量のコレステロールと少量のビリルビンカルシウムから構成されている混合石であり,接合物質は,混合石よりは色素成分が多いがほぼ同じ構成成分からなるものであった.この胆石の形成機序は患者の生活史と密接に関係しているものと考えられ,興味ある症例と思われた.
著者
青山 薫
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-36, 2016

<p>昨年、全米で法制化されるなどして話題になった「同性婚」<sup>1 </sup>。日本では、その法制化が現実味を帯びないうちに賛否両論が出揃った感がある。本稿は、この議論をふまえ、「同性婚」やこれに準ずる「同性パートナーシップ」を想定することが、現在の世界と日本社会でどのような意味をもつのかを考察する。</p><p>そのために本稿は、まず、世界で初めて同性カップルの「登録パートナーシップ」を法制化したデンマーク、やはり初めて同性同士の法律婚を可能にしたオランダ、特徴的な「市民パートナーシップ」制度を創設したイギリス、そして「婚姻の平等」化で世界に影響を与えたアメリカにおける、「同性婚」制度の現代史を概観する。そしてこれら各国の経験に基づいて、「同性婚」が何を変え、何を温存するのかを考察する。そこでは、「同性婚」が近代産業資本主義社会の基礎としての異性婚に倣い、カップル主義規範を温存させることを指摘する。また、「同性婚」が、異性婚の必然であった性別役割分業・性と生殖の一致・「男同士の絆」(セジウィック)を変化させる可能性についても論じる。次に本稿は、近年の日本における「同性婚」に関する賛否両論を概観する。そこでは、賛成論が、同性婚の1)自由・平等の制度的保証面、2)国際法的正当性、3)象徴的意義、4)実生活の必要性に依拠していること、反対論が、同性婚の1) 性的少数者の中のマイノリティ排除、2)経済的弱者の排除、3)社会規範・国家法制度への包摂、4)新自由主義経済政策との親和性を問題視していることを指摘する。</p><p>そのうえで本稿は、異性愛規範が脆くなってきた今、抗し難い「愛」の言説を通じて「LGBT」が結婚できる「善き市民」として社会に包摂されるとき、他のマイノリティを排除していること、さらに、日本における包摂には、欧米の「同性婚」議論では「愛」と同様に重要視されてきた自由と平等の権利さえ伴っていないことに注意を注ぐよう、読者に呼びかける。</p>
著者
寉田 知久
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.62-69, 2002-03-29
被引用文献数
1

In the July 2001 election of the House of Councillors, THE YOMIURI SHIMBUN was able to conduct an accurate forecast of the landslide victory of the LDP in its nationwide survey on more than 60,000 eligible voters. For this poll, the YOMIURI adopted the telephone survey, selecting samples randomly from electoral registers. The suggested reasons for the gratifying results are the influence of "Koizumi phenomenon" and the improvements of the method of the survey. However, due to the large number of unlisted numbers, this survey actually failed to reach a considerable number of eligible voters. Furthermore, since listed numbers are already gradually on the decrease, by the next national election, the dilemma of reaching a significant number of voters will be even more problematic. Therefore, toward an accurate survey for the next election, improved methods of sampling are necessary, and in the case of the telephone survey, an adoption of RDD (Random Digit Dialing) is suggested.
著者
柳井 孝介 伊庭 斉志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. AL, アルゴリズム研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.1-8, 2005-03-17
参考文献数
11
被引用文献数
1

本稿ではNo Free Lunch Treorem (NFL)の別証明を与える.NFLは「どんな問題に対しても平均的に効率良く解けるような探索アルゴリズムは存在しない」ということを主張する定理であり, 探索アルゴリズムあるいは最適化法の研究に大きな影響を与えた.本稿では, より簡潔でかつ直観的な証明を与える.我々は評価関数の空間を部分集合に分割し, それぞれの部分集合ごとにパフォーマンスが得られる確率を合計する.関数空間の分割により, 定理のより深い理解が可能となり, またアルゴリズムと問題の関係が明確となる.
著者
野口 英之 ソウザ カシルダ アデリア サンパイオ シルバ ホジアニ オリベイラ オウリケ ルーカス 諏訪 錬平 梶本 卓也 石塚 森吉 ピント アルペルト カルロス マーティンス リマ アドリアーノ ジョゼ ノゲイラ サントス ジョアキン ヒグチ ニーロ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

細根は森林の炭素循環の重要な構成要素であるが、その動態を測定する各種の手法には、微環境の改変や測定値の信頼性、機材の価格等、それぞれに問題点がある。とくにアマゾン等の熱帯地域では細根の成長・枯死・分解のサイクルも早いと考えられるため、環境条件に応じた適切な測定方法の検討が不可欠である。本研究では、ブラジル・マナウス近郊の熱帯林において、砂質土壌が分布する斜面下部と、粘土質の土壌が分布する斜面上部で、フラットベッド・スキャナを用いて直径2 mm未満の細根の成長と枯死の動態を測定した。イングロースコアを用いた細根成長量の測定も併せて実施し、結果を比較した。また地形単位ごとに土壌含水率の変動も測定し、細根の動態との関係を検討した。スキャナによる測定では、とくに多雨期に斜面下部で活発な成長と枯死が観察されていたが、斜面上部では成長・枯死のサイクルは非常に緩慢であった。一方、イングロースコアによる測定では、斜面下部と上部で1年間の細根生長量にほとんど差がなかった。後者では埋設期間中の枯死分を測定できず、とくに斜面下部ではかなりの過小評価になっていた可能性が高い。
著者
柴田 陽一
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.105, pp.69-116, 2014

「大東亜戦争」期 (1941-1945年),京都帝国大学地理学教授であった小牧実繁は,「日本地政学」を標榜し,著書・雑誌・新聞・講演・ラジオなどさまざまなメディアを駆使したプロパガンダ活動をおこなった。けれども,国民の啓蒙を意図しておこなわれた彼の活動を可能にしたネットワークの存在,活動の社会的影響,プロパガンダの内容については,これまでほとんど検討されていない。本稿は,彼の著作をひろく利用することにより,彼のプロパガンダ活動の特徴と,その思想戦における役割を検討した。その結果,つぎの三点が明らかになった。すなわち,(1) 彼がプロパガンダ活動を多方面で展開できた理由に,当時の言論界で大きな力をもっていた情報機関 (内閣情報部・陸軍省情報部) や,スメラ学塾,大日本言論報国会,国民精神文化研究所とのネットワークが存在したことである。(2) 世界観というレベルの問題をとりあつかい,精神的側面を重視した彼のプロパガンダ活動は,全体としては当時の思想戦の動向と軌を一にしたものだが,単なる御用学者という言葉だけでかたづけられない側面ももちあわせていたことである。地政学的地誌を通じて彼が提示した独自の世界観に,この点がよく表れている。(3) 彼のプロパガンダ活動が当時の社会に影響を及ぼしたことは,おびただしい数の出版物や旺盛な講演活動などから間違いないが,活動の実質的効果については大いに疑問の余地が残ることである。
著者
谷山 茂人 柴野 啓輔 ニー ライミトナ 篠原 充 高谷 智裕 荒川 修
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.1-3, 2010-03

これまでシロサバフグは一般に無毒種とみなされてきたが、萩市近海産同種の肝臓266個体の毒性を調査したところ、6.0%の個体に2.0MU/g以上のマウス毒性が認められた。毒力は総じて低く、いずれも10MU/g未満であった。日本近海産のシロサバフグは微量ながら肝臓に毒をもつことがあり、食品衛生上注意を要することが示された。
著者
黒田 彰
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.109-151, 2013-11-30