著者
古田 潤
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

65nmのFD-SOIプロセスを用いて設計した非冗長フリップフロップの放射線起因のエラーの測定を中性子を照射する加速試験により行った。提案回路であるSLCCFFは通常のFFよりも耐性が高く、特に0.4Vと低い動作電圧では約30倍のソフトエラー耐性を持つことを確認した。この値は従来の放射線耐性回路であるstacked FFと等しい値である。SLCCFFは動作速度の点で従来回路よりも優れている。
著者
三本松 政之 朝倉 美江 原 史子 大井 智香子 中尾 友紀 新田 さやか 福山 清蔵 永田 理香 門 美由紀
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本の外国人移住生活者への政策は総論的な検討に止まり具体的対応は基礎自治体に委ねられており、移住生活者の支援にはデニズンシップとしての実質化という視点が重要となる。韓国では人権をミッションとする市民団体が外国人労働者の労働環境改善、移住女性の生活改善策提案などのための政策担当局との折衝ルート等を活用し、政府への政策形成やデニズンシップの実質化に向けて一定の影響力をもっていることが見い出せた。
著者
中井 泉 阿部 善也 扇谷 依李 和泉 亜理紗
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、これまでに2台のポータブル粉末X腺回折計を開発し、世界各地で考古化学的分析を行いその有用性を実証してきた。そこで、長年の現場分析の経験と世界の開発状況に基づき、高性能の新しいタイプのポータブル粉末回折計の開発を試みた。特徴は、「ポリキャピラリーハーフレンズ」を通して平行X線を試料に照射することで、絵画のような表面に凹凸のある試料でも、非破壊非接触で正しく測定できる点である。検出器は、SDD(分解能125 eV)を導入することで、同一照射点からX線回折データと蛍光X線スペクトルの両方を高いエネルギー分解能で測定できる装置を試作し、エジプトの壁画の分析に応用して成果を得ることができた。
著者
向井 理恵
出版者
徳島大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

不活動状態や無重力状態で引き起こる廃用性筋萎縮からの回復を助ける食品成分に関する研究を行った。実験動物に筋肉の萎縮を誘導し、そのあとにプレニルフラボノイドを混合した飼料を与えることで骨格筋の回復状況を評価した。プレニルフラボノイドを与えることで、骨格筋の萎縮からの回復の程度は改善した。作用メカニズムとしてフィトエストロゲン活性が寄与する可能性が示唆された。今回の成果は筋萎縮によって引き起こされるQOLの低下を改善する可能性がある。
著者
元木 博彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

急性心不全で入院加療を行った患者に心臓超音波検査、血清採取をおこなった。平成28年度末までに414名の心不全患者登録を行った。患者群の年齢は中央値で81歳、平均左室駆出率は48%でHFPEF症例が50%に認められた。今後800症例の登録完了後、前向きの予後調査を予定している。現時点では後方視的に解析をおこない、高齢者心不全、HFPEF患者の特徴を明らかにした。高齢者心不全患者は①高齢女性、②高血圧と心房細動を合併、③軽度の貧血と中等度の腎機能障害合併、④左室拡張末期容積低下が特徴であった。左心房機能解析可能症例としては76症例、うちHFPEF症例が28例、HFREF症例が16例であった。
著者
吉良 史明
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度は、昨年度に引き続き、中島広足周辺の国学者の資料を調査収集することに専念した。また、集めた資料をもとに今年度の研究課題として示した二つのテーマに取り組んだ。以下にその詳細を記す。まず一つ目のテーマである中島広足と幕末の国学者の交流の模様に関して。今年度研究業績の図書に示した『近世後期長崎和歌撰集集成』において、広足が中央の著名な人物と親交を深める際には肥前諏訪神社宮司青木永章、長崎会所請払役近藤光輔の両人を介していたことを明らかにした。そしてさらに、永章と光輔の文事を明らかにすることに主眼を置き、研究を進めた。結果、現時点までに永章の文事の実態を明らかにしつつある。同人が長崎文壇の中心人物の一人であったこと、また京都の綾小路家より雅楽の伝授を受け、その雅楽を長崎の地に広めていたこと、さらに江戸の歌人と長崎の歌人の交流の仲立ちをしていたことを明確にした。結果、永章は中央の文化を長崎の地に伝え、長崎の文化的興隆に多大な役割を果たした人物であることを明示し得たかと思う。次に二つ目のテーマである幕末国学者の歌作の実体に関して。歌語「神風」は地名の伊勢にかかる枕詞として上代より近世後期に至るまで詠まれてきた。一方、幕末の国学者の間においては、神に仇するものを滅ぼす意味に詠じられていたことも事実である。そこで、何故かく歌語「神風」が変容して和歌に詠まれるに至ったか、広足とその周辺の国学者の歌、ならびに歌学を検証した。結果、近世後期に折しも『蒙古襲来絵詞』が復元され、折柄の外圧の高まりを受けて外寇史の考証が盛んに行われる過程において、神風に護られた国とする神国史観が構築されたこと、また万葉集の柿本人麻呂詠の高市皇子の挽歌を証歌として、歌語「神風」を神に仇するものを滅ぼす意味ととる解釈が幕末の国学者の間において盛んになされていたこと、神風は神国の象徴であり、挙国一致を図る上で欠かせないイデオロギーとして和歌に詠まれていたことを明らかにした。なお、その成果は、すでに学会発表として公にしている。以上、本年度は上記の二点に関して、研究を進め、近日中に論文に取り纏める予定である.
著者
椨 瑞希子 小玉 亮子 赤坂 榮 Hevey Denise Ang Lynn Schoyerer Gabriel Riedel Birgit
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、日本、ドイツ、イギリスの3か国における家庭的保育の実態を明らかにすることを通して、子どもの視点が欠落しがちな3歳未満児保育の望ましい在り方を探ることにある。文献調査を通じて、3国いずれにあっても、①私的な営みとして存在していたものが過去20年の間に既存の就学前施設と同等の法的位置づけを得たこと、②家庭的保育法制化の誘因は緊急かつ大幅な保育拡充政策であったこと、③法制化の道程と到達点は各国における保育の歴史的背景によって異なること、④家庭的保育の衰退もしくは停滞が認められること、を明らかにした。日独、日英研究者による合同調査を通して、家庭的保育者の働き方や意識の異同も確認した。
著者
小倉 匡俊
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、動物園で飼育されている霊長類と鳥類を対象に認知科学的手法を導入し、認知能力の進化史を解明すること、および飼育環境を改善する環境エンリッチメントを開発することである。中でも、ヒトに特徴的な認知能力のうち道具使用行動に着目する。ヒトの進化の隣人である霊長類と、系統的に遠いが相同な行動を進化させた鳥類を対象として、道具使用行動の実験を実施し、背景にある認知能力の進化史を明らかにする。また、飼育環境の改善に不可欠である飼育環境に求められる認知要因の解明と環境エンリッチメントの発展にも貢献できる。こうした研究目的および昨年度までの実施状況に基づき、実施2年度目である本年度は東山動植物園を研究のフィールドとして、鳥類と霊長類を対象とした認知実験と行動観察を継続した。まず、鳥類を対象とした研究においては、本年度は簡単な刺激弁別課題をおこない、認知実験に必要な手順を学習させた。対象とした5個体のうち4個体で学習を完了できた。続いて道具使用行動についての実験に移る予定だったが、対象個体が繁殖期に入り実験の継続が難しくなったため、いったん中断した。霊長類を対象とする研究では、チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの大型類人猿3種を対象として選定し、道具使用行動を採食場面に導入することによる環境エンリッチメントの評価を目的として、行動観察を実施した。平常時の行動時間配分および行動レパートリーについて分析をおこなった。行動観察のために開発したモバイルアプリケーションについて論文と学会発表で公表した。また、平行して共同研究者と協力しておこなったコアラの採食選好性などについての研究をそれぞれ学会発表として公表した。自身の研究分野について書籍で概説したとともに、学会発表で公表し、アウトリーチ活動として高校で出前授業をおこなった。
著者
浦野 直人 石田 真巳 西沢 正文 西沢 正文
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は未利用資源である褐藻廃棄物から効率的にバイオエタノールを生産するため、褐藻糖化酵母を創出することを目的とした。酵母と酵素の活性温度を一致させるため、海洋低温菌由来のラミナラナーゼを探索し、相模湾由来のPseudoaltermonas haloplankitis LAを単離した。LAのラミナラナーゼPhLamは活性部位下流にX1, X2, X2の繰返し配列を持つ新奇酵素であり、活性発現にXが必要であった。PhLamを酵母Saccharomyces cerevisiaeで表層提示したところ、組換え酵母は褐藻ラミナランの分解活性を持ち、ラミナランから直接的にバイオエタノールを生産した。
著者
山本 薫子
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

バンクーバーDTES地区および横浜寿町地区はともにかつて日雇い労働者の街だった地域だが、生活困窮者、ホームレスの割合が増し、生活保護受給者数も大幅に増加した(「福祉化」)。一方で、公的支援、民間部門による支援活動も活発に展開されてきた。カナダでは障がい等を抱えた生活困窮者への福祉支援としてハウジングファースト施策が導入されたが、そのことは都市下層地域であるDTES地区に外部からさらに多くの生活困窮者を集中させる結果となった。また、横浜市においても市内他地域から生活保護受給を理由として寿町地区へ移住する者が増えている。これらの人々の中には衣食住は満たされていても社会的に孤立している者も多い。
著者
樋口 貴俊
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では、熟練した野球打者の投球視認能力を空間的な正確さと時間的な正確さに分けて分析することを目的として、以下の2つの実験を行った。まず、実験1では、空間的な投球視認能力の解明を目的として、大学野球選手9名を対象とし、ボールが投じられてから一定時間後に透明な状態から不透明な状態へと変化する視界遮へいメガネを打者に装着させた状態でピッチングマシンから投じられたボールを見送った後に、バットでボールの通過位置を示す課題を行わせた。実際にボールを打つ際と同程度の視覚情報のみを打者に与えるために、投球がホームプレートに到達した時点で遮蔽メガネが不透明状態になるように設定した。バットとボールの位置を2台の高速度カメラで記録した画像から計測した結果、バット長軸方向よりもバット短軸方向のボールとバットの距離の方が有意に大きかった。このことから、投球の高さを認識する能力が打者のパフォーマンスの優劣に大きく影響する可能性が示唆された。次に、実験2では、時間的な投球視認能力の解明を目的として、大学野球選手12名に、捕手方向から撮影した投球映像を呈示し、画面上に引いた線とボールが重なる瞬間にボタンを押す課題を3つの異なる球速の映像で合計90試行行わせた。毎試行直後にボタンを押した時間と正解時間との差を呈示し、次試行での修正ができるようにした。各条件の最初の10試行は各被験者が試行錯誤を行うと仮定し、分析対象外とした。いずれの条件においてもボタン押しのタイミングは実際のボール到達よりも早く、ボール速度が遅い条件の方が時間的誤差も大きかった(高速球条件 : -9.1ms, 中速球条件 : -9.91ms, 低速球条件 : -13.2ms)。投球視認できる時間の長い条件において時間的誤差が大きかったことから、投球視認時間が長くても時間的な正確さは改善されない可能性が示唆された。
著者
伊藤 正紀 本間 定 小井戸 薫雄 芝 清隆
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

細胞性免疫ワクチンには、アジュバントが必須であるが、副作用が指摘されている。アジュバントフリーワクチンを作成するため、これまでに抗原提示細胞への抗原取込能力(物理アジュバント機能)を包含した抗原を作成してきた。本研究では、物理アジュバント機能に加えて、抗原提示細胞を成熟化させる信号アジュバント機能を抗原自身に付与した。試験管内の実験では、抗原提示細胞の成熟化機能が発揮されたが、動物実験では信号アジュバント付与による物理アジュバント機能の低下が影響し、細胞性免疫の誘導が得られなかった。アジュバントフリーワクチンを作成するためにはアジュバント機能を最適化して抗原に導入する必要が明らかとなった。
著者
杉木 明子
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は多くの難民が第一次庇護国で長期難民状態となっている状況をふまえ、特に長期的難民が集中しているアフリカ難民受け入れ国に対する支援方法、及び難民保護の「負担分担」に対する国際協力の可能性を多角的に検討した。アフリカに居住する難民および難民受け入れ国のニーズと、ドナー諸国の動向という2つの側面から分析することにより、現在のアフリカにおける難民保護レジームの限界を明らかにし、今後の課題を提示した。
著者
植村 幸生 薩摩 雅登 小島 直文 尾高 暁子 松村 智郁子 久保 仁志 佐竹 悦子 塚原 康子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学附設の民族音楽アーカイブを拠点とし、地域の邦楽器製作者や販売者らとの協働を前提に、邦楽専門家を擁する拠点大学の地の利を生かして、当該地域の児童生徒や学内学生むけ地域文化プログラムの開発と提案を行った。具体的には、下町の邦楽器製作業者/職人への取材をもとに、楽器製作や技の継承をめぐる今日的課題を明らかにし、これに関する問題意識を次代を担う若い世代に喚起すべく、展示と実演の場を設けた。同時に、邦楽を含む下町の伝統芸能や儀礼について、広義の担い手・上演場所・機会を項目とするデータベースを作成し、邦楽を育んだ土壌を通時的に俯瞰する手だてを、アーカイブから発信する準備を整えた。
著者
小川 和孝
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究の目的は、企業という組織レベルの要因を1つの社会制度と見なし、それを労働市場における社会的地位の格差の生成メカニズムとみなした実証研究を行うことである。本研究では、以下の2点を明らかにした。(1)企業規模は、内部労働市場における技能形成の機会を通じて、収入の蓄積的な格差を生み出している。(2)企業規模は、人々の収入の平均だけではなく、ばらつきに影響し、大企業に従事する人々における安定性をもたらしている。
著者
伊原 久裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究プロジェクトは、1930年代から50年代までの間の米国における世界地図を対象として、そのデザインと社会的意味について分析を行うことを目的としている。この時期の地図デザインを代表するものとしてRichard Edes Harrison, Erwin Raisz, Norman Bel Geddes, Buckminster Fuller, Herbert bayerらの仕事を取り上げた。その結果、遠近法による「視点」の強調、レリーフや地形鳥瞰図描画などによる「リアリティ」の追求が共通するデザイン傾向として認められ、その背後に「航空時代」に対する意識がほぼ一貫して通底していることが分かった。
著者
菊池 直樹
出版者
日本体育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究の目的は、大規模アスリートコホートにおける競技パフォーマンス、トレーニング効果およびスポーツ傷害に関連する遺伝要因について検討することであった。初年度である26年度は運動パフォーマンス、トレーニング効果やスポーツ傷害などに関連する遺伝子多型に関するシステマティックレビューを行い、日本人において検出頻度が高い多型(マイナーアレル頻度が5%以上)を抽出した。その結果、ACTN3 R577X, ACE I/D, MCT1 A1470Tなど計20個ほどの遺伝子を選定した。現在、1,089名のアスリート(陸上、レスリング、体操、アメリカンフットボール、バスケットボールなど)のDNAを抽出を行い、多型を分析中である。今後、ターゲットとなる遺伝子多型を解析しまた、上記の本研究の対象者から199名のレスリング選手を対象としてMCT1遺伝子A1470T多型と競技実績との関連性を検討した。ケースコントロール研究を行った結果、MCT1遺伝子のAA型を有するレスリング選手の割合は、コントロールと比較して有意に高いことが明らかとなった(OR; 1.40, 95%CI;1.02-1.93, p=0.037)。さらに46名のレスリング選手を対象に無酸素性テスト時の血中乳酸濃度の測定を行ったところ、AA型を有する選手は血中乳酸濃度が低く推移することが示された。このことから、MCT1遺伝子多型はレスリング選手の競技パフォーマンスに関連する可能性が示唆された。今後は、その他の競技種目における競技実績、競技種目、体力要素および既往歴等の調査を行い、遺伝子多型との関連性を検討する。
著者
馬場 治 除本 理史 川辺 みどり
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

アサリの全国生産量は1980年代半ばまでは12〜14万トン程度で比較的安定して推移してきたが、それ以降一貫して減少を続け、近年では5万トンを下回る水準にまで低下している。その中にあって、かつて熊本県に次ぐ全国2位の産地であった千葉県は、東京湾の臨海部開発の影響等を受けて全国の産地の中でもいち早く生産を低下させてきた。しかし、1980年代前半に生産低下に歯止めがかかり、それ以降は1万トン前後で比較的安定し、近年では愛知県に次ぐ全国2位の生産を維持している。千葉県における生産維持の背景として、木更津沖合に比較的条件のよい干潟が残されていたことと、そこを利用した養貝事業(特定区域に稚貝を放流し、成長してから採捕する養殖事業)が、地元漁協によって積極的に実施されていることがあげられる。千葉県の東京湾沿岸部では古くからノリ養殖とアサリ漁業が地域経済を支える重要な産業であったが、沿海部埋立が進行した今日においても木更津周辺においては依然としてこれらの漁業が重要な位置を占めている。そこで、残された干潟の効率的利用と地域産業振興という観点から、漁協だけでなく地元自治体も種苗放流に対して財政支援策を講じてきた。また、木更津周辺では、干潟を利用た潮干狩り事業が各地区漁協の手で行われており、都市部に位置することから多くの都市住民の関心を集め、木更津漁協だけでも年間約8万人にのぼる潮干狩り入場者がある。潮干狩り事業は都市住民に貴重な自然環境の中でのレクリエーション機会を提供するとともに、漁協経営の維持にとっても重要な位置を占めている。このように、干潟の存在は、漁業者および漁協の経営維持という機能だけにとどまらず、都市住民に対するアメニティーの提供、そしてレジャー客の来訪にともなう地域経済への波及効果等、この地域にとっては極めて重要な意義を持っていることが分かった。今後は、干潟の持つこのような重要な意義に注目して、臨海部開発と干潟の保護のあり方を注意深く検討する必要があろう。
著者
小俣 昌樹 今宮 淳美
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,静止画や映像などの視覚刺激を提示された閲覧者の感情(感情価と覚せい度)と生体信号との関係および興味と生体信号との関係を実験・分析した.この結果から,感情価の評価された感情を喚起する写真を提示された閲覧者の脳血流のHEG率,脳波のα波およびθ波のパワー値とその感情価との間に関係があることがわかった.また,商品紹介の映像を提示された閲覧者の指尖容積脈波の高周波成分のパワー値,その高周波成分と低周波成分の比,および脳血流のHEG率と,その映像への興味の程度との間に関係があることがわかった.
著者
飯野 敬矩
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

昨年度は、接着力評価のための外力であるフェムト秒レーザー誘起衝撃力の評価研究を中心課題とし、その計測学的理解を深めた。また、それまで不明瞭であった衝撃力の現象論的描像を考察し、接着力の定量化におけるその適用範囲の指針を示した。これらの研究を行った上で、神経一マスト細胞共培養系を接着力評価のモデル系に用い、両者間の接着力を3時間ごとに定量化することでその時間変化を明らかにした。測定には7~30時間共生培養を行った培養系を用い、3時間毎に接着力を定量化した。測定時間は90分間とした。その結果、90分間で約150細胞の接着力を定量化することに成功した。この結果をヒストグラムにまとめたところ、両者の接着力は、0.5-2.0×10-12Nsであることが示された。また、共生培養7-14.5時間では、接着力が0.8×10^<-12>Nsである細胞が最も多く、そこから1.6×10^<-12>Nsにかけて、細胞数は指数分布を示した。また、共生培養時間の経過に伴い、指数関数の時定数が増加する形で、接着力が強化される細胞数が増加した。さらに時間が経過すると(共生培養16.5-18時間)、この指数分布において1.6×10^<-12>Nsにもピークが現れた。その後、共生培養20時間において0.8×10^<-12>Ns、及び1.6×10^<-12>Nsをピークとした二峰性の正規分布を示した。それ以降では、接着力の分布に顕著な変化はみられなかった。これは、共生培養20時間程度で接着が成熟状態に至り、且つその状態が系内の半数程度の細胞の接着力が倍程度まで強化される状態であることを示唆する。これまで、接着力を統計学的データとして時間軸に沿って示した報告例は無く、新規性の高い成果を得ることができた。現在、神経とマスト細胞の接触面への細胞接着分子の集積の可視化に成功しており、今後、接着分子の細胞内挙動の時間変化を明らかにすることで接着の力学機構と分子機構のダイナミクスを統合的に解析し、理解することが可能になると予測される。