著者
山崎 永尋 尾崎 紘子 谷 耕一 橋本 直樹
出版者
北海道農事試驗場北農會
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.419-424, 2012 (Released:2013-07-30)

アスパラガスに発生する条状傷が,再現試験によりツマグロアオカスミカメによる被害であることが確認された。アスパラガスが萌芽する5月中旬から本種の越冬卵が孵化し,同時に被害が始まり,収穫期間が終了する6月中旬頃に成虫になる。その後,株養成のために立茎されたアスパラガスに産卵された2世代目が増殖して越冬卵を産んで翌年の発生源に事が確認された。防除薬剤の検討を行ったところ,散布後時間が経過すると効果は認められず,有効な解決策は見いだせなかった。
著者
永峰 康一郎 茅野 琴乃
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.142, 2010 (Released:2010-08-30)

「丹」とも呼ばれた硫化水銀の鉱石である辰砂を産する地には「丹生(ニウ)」という地名がつけられているという。水銀鉱床と「丹生」という地名との関連性については、これまで歴史学の分野で研究が行われてきたが、由来がはっきりしない地点も多い。そこで本研究では、地球表層の元素濃度分布を地図に表した地球化学図を用いて両者の関連性の検証を試みた。但し北海道はアイヌ語に由来する地名が多いため対象から除外した。その結果、「丹生」の地名がある地点で、地球化学図からも辰砂の産出が認められる地点とそうでない地点があった。また「丹生」以外の辰砂産出を由来としていると考えられる地名が、高濃度の水銀が検出された地点の周辺にあった。
著者
Eiji YOSHIYA Tomoya NAKANISHI Tsuyoshi ISSHIKI
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences (ISSN:09168508)
巻号頁・発行日
vol.E105-A, no.7, pp.1061-1069, 2022-07-01
被引用文献数
2

In Internet of Things (IoT) applications, system-on-chip (SoCs) with embedded processors are widely used. As an embedded processor, RISC-V, which is license-free and has an extensible instruction set, is receiving attention. However, designing such embedded processors requires an enormous effort to achieve a highly efficient microarchitecture in terms of performance, power consumption, and circuit area, as well as the design verification of running complex software, including modern operating systems such as Linux. In this paper, we propose a method for directly describing the RTL structure of a pipelined RISC-V processor with cache memories, a memory management unit (MMU), and an AXI bus interface using the C++ language. This pipelined processor C++ model serves as a functional simulator of the complete RISC-V core, whereas our C2RTL framework translates the processor C++ model into a cycle-accurate RTL description in the Verilog-HDL and RTL-equivalent C model. Our processor design methodology using the C2RTL framework is unique compared to other existing methodologies because both the simulation and RTL models are derived from the same C++ source, which greatly simplifies the design verification and optimization processes. The effectiveness of our design methodology is demonstrated on a RISC-V processor that runs Linux OS on an FPGA board, achieving a significantly short simulation time of the original C++ processor model and RTL-equivalent C model in comparison to a commercial RTL simulator.
著者
篠藤 涼子
出版者
日本会計史学会
雑誌
会計史学会年報 (ISSN:18844405)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.39, pp.45-57, 2020 (Released:2022-07-05)

1895(明治28)年,学校教育制度において,女子の教科内容として家計簿記という用語が公的に使用された。本稿は,俸給生活者に対する家計簿記書の展開に焦点をあて,明治期の女子に対する教科書との関わりから検討をした。結果として,明治初期,台所の支出をその収入の範囲内で収めることを目的としていた出納教育は,家計簿記という用語が公的に使用された1895(明治28)年以後は,女子の職務として家計全般を記録する家計簿記へと展開したことが明らかとなった。明治期は,簿記の普及期にあり,簿記知識人によって最も早く家計簿記と表題する著書が出版された。家計簿記書は,簿記知識の普及を目的に,複式簿記を用いて家計全般を記録対象としていた。家計簿記を家計全般の記録と定義した場合,明治後期における日本の家計簿記書は,家計全般の収支管理を女性が記帳することを啓蒙した。そ して家計簿記の内容は,家長からの割り当て分を妻が記帳する収支計算から,教育機会を得られた社会階層や当時の社会的経済的状況から判断する限り,社会的に地位の高い夫の家計では財産計算へと展開した。
著者
山口 不二夫
出版者
日本会計史学会
雑誌
会計史学会年報 (ISSN:18844405)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.39, pp.31-44, 2020 (Released:2022-07-05)

本稿は19世紀初頭の東アジアで活躍した英国商人Country Traderの帳簿のデータの検討を行う。前稿では,すでに1799年の帳簿組織について検討している。本稿は1799年から1814年までのLedgerのなかのデータの変化と帳簿の変化を明らかにする。本商会は4人で始まったpartnership企業であり,最初の2期は剰余金を残さないようにProfit and Loss 勘定のなかで利益をpartner に分配した。ところが業績の低下にともないMagniacが経営に参加する中で,Commissionsやそれにともなって発生したHouse ExpensesをProfit and Loss 勘定に入れる前に分配してしまった。さらにMagniacがpartner に加わってからはLedger が2部作成され,資産負債で構成されたBalance勘定がStock勘定にとって代わり,剰余金が計上されるようになる。また1811-12年期からはJournalも作成されるようになる。最初,このpartnership会社の収入は,Interests,Commissions,Factory からであった。しだいにOpium取引が増加し,1812-13年期にはFactoryを売却し,Raw Silkの取引やOpium取引が主な収入となる。とくに初期にはInterestsで儲ける仕組みになっていたが,1808年以降は金利の支払いのほうが多い期もあった。Commissionsと資金を貸すことでの金利で儲けるビジネスから,実際にOpiumとRaw Silkの取引で儲けるビジネスに変貌しつつあるのである。
著者
古舘 嘉
出版者
千葉大学 = Chiba University
巻号頁・発行日
2021

学位記番号: 千大院人博甲第文51号

2 0 0 0 丶山存稿

著者
外山正一 (丶山) 著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
vol.前編, 1909
著者
岡部 悟志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.514-531, 2008-12-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本稿は,子ども期から成人期にかけての能力形成の過程を計量的に検討するものである.本田(2005)は,子ども期の家族コミュニケーションが豊富であることが,意欲や対人関係力,人柄,情動などを含めた学力以外の能力(=能力β.注4参照)を高める主な規定要因であると結論づけている.この本田の研究成果に検討を加えたうえで,新たに子ども期の家庭の経済状況,コミュニケーション対象の家族内から家族外への移行という2つの要因を付加した作業仮説モデルを構築し,調査データによる検証を行った.その結果,能力βの形成に対して,他の変数の影響を取り除いたうえで観測される家族コミュニケーションの直接的な効果は,本田が主張するほど決定的な影響力をもっていないこと,その一方で,出身家庭の経済力の関与や,家族コミュニケーションから家族外コミュニケーションを媒介した間接効果(=子どもの社会的自立の過程)などが,一定の影響力をもっていることが明らかとなった.この分析結果は,能力βの規定要因をもっぱら家族の内部に求めるものではなく,むしろ,家族の外部の資源をいかした能力βの形成ルートが存在することを意味している.以上を踏まえ,さいごに,能力形成の格差・不平等問題に対する政策的介入の可能性や,過剰なまでに高まった家庭の教育力言説をクール・ダウンさせる可能性などが示された.
著者
中村 克明
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学人文学会紀要 = Bulletin of the Society of Humanities Kanto Gakuin University (ISSN:21898987)
巻号頁・発行日
no.134, pp.105-121, 2016

自由民権運動の闘士・植木枝盛が,1881(明治14)年夏に起草した日本国国憲案は,周知のように国民(人民)主権,徹底した人権保障,連邦制等を採用し,「ブルジョア民主主義の極致を行く独創的な案」として高く評価されている。現行の日本国憲法にも影響を与えたとされる,この日本国国憲案の原本はすでに亡失しているようであるが,今日,毛筆写本2本と活版印刷本1本の,計3種の異本が伝わっている。本校訂では,これらの異本と同案の草稿本である「日本國憲法」とを厳密に比較考証し,条文の脱漏や脱字を補正するとともに,固有名詞等の明らかな誤字を訂正し,また大日本帝国憲法を参考に文言を統一して,日本国国憲案の,いわば完成校といえるものを提示した。
著者
武澤 友二 岩崎 暁生
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.60, pp.204-207, 2009 (Released:2017-05-25)
参考文献数
3

テンサイにおいて8 月下旬から発生するヨトウガ第2 世代幼虫に対し,昆虫生育制御剤(IGR 剤)を7 月上旬から8 月中旬に散布し,各薬剤の効果的な散布時期を明らかにした.フルフェノクスロン乳剤とノバルロン乳剤は7 月中旬以降,ルフェヌロン乳剤とテブフェノジド水和剤は8 月中旬以降の散布で被害を許容水準程度に抑制した.また,クロルフルアズロン乳剤は7 月上旬散布でルフェヌロン乳剤と同程度の効果があると考えられた.一方,テフルベンズロン乳剤は7 月上旬散布でほとんど効果が認められず,メトキシフェノジド水和剤は8 月中旬散布でも被害を充分に抑制できなかった.フルフェノクスロン乳剤は散布後40 日の時点でヨトウガ孵化幼虫に対して高い殺虫活性が確認され,散布後10 日から90 日でも目立った残留成分量の減少は認められなかった.
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.
著者
林 寛 碓井 美由紀 中山 宜典 清水 幸夫 西山 和孝 國中 均
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.55, no.647, pp.604-611, 2007 (Released:2007-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

An ion engine with 10,000sec-class high specific impulse is expected as primary propulsion for interplanetary space mission with extremely high delta-V, and needs high voltage for ion acceleration over 10kV. The microwave discharge ion source without solid electrodes can supply sophisticated technologies and simple composition on electrical isolation for such a high voltage. New electro-static grid made of carbon-carbon composite material was fabricated based on the numerical simulation of “igx” code. The “μ10HIsp” ion engine combining the ECR ion source, microwave discharge neutralizer, DC blocks, propellant isolators, carbon-carbon composite grid and so on generated successfully a plasma beam with 10,000sec specific impulse using 15kV acceleration voltage.
著者
比嘉 聖 帖佐 悦男 坂本 武郎 渡邊 信二 関本 朝久 濱田 浩朗 野崎 正太郎 前田 和徳 中村 嘉宏 舩元 太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.458-461, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
3

脛骨に発生した骨線維性異形成(OFD)に対し,腫瘍切除後の巨大骨欠損をβ-TCPのみにて補填した3症例(男性1例,女性2例,手術時平均年齢14歳11か月)を経験したので報告する.【方法】腫瘍をen blocにボーンソーにて切除し,β-TCPにて骨欠損を補填し,不安定性への対処としてギプス固定またはplateにて固定した.【考察】OFDに対する治療において,単純掻爬骨移植では再発例が多いというのは以前より報告されていることであり,拡大切除を選択している施設も多い.当科でも同様であるが,骨欠損部が大きくなり自家骨のみでは補填困難である.当科ではBone bankのシステムも確立しておらず,症例が若年者であり採骨のリスクを考えβ-TCPのみで対処した.今回の症例ではβ-TCPは骨に置換され現時点では副作用も認められないので巨大骨欠損に対する補填材料として有用と考えられた.
著者
Mei Gao-Takai Zen Lin Yuta Sugiyama Takane Katayama Ai Shinmura Hikaru Naito Ayako Katayama-Ikegami
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
pp.UTD-371, (Released:2022-07-05)

This study investigated anthocyanin accumulation, sugar contents, and endogenous hormone contents in the berry skin, as well as the expression of genes related to anthocyanin and abscisic acid (ABA) synthesis and metabolism, using grafted ‘Ruby Roman’ berries on the rootstocks of ‘Kober 5BB’ [5BB(2x), a semidwarf rootstock], ‘Hybrid Franc’ [HF(2x), a vigorous rootstock], and their colchicine-induced autotetraploids [5BB(4x) and HF(4x)]. Rootstock had significant effects on the total content, but not on the composition, of anthocyanins. The berries on 5BB(4x) rootstock, where the grapevine showed less vegetative growth, had higher anthocyanin content during the ripening process, and also had higher sugar and ABA contents around véraison. ABA, indole acetic acid (IAA), and cytokinins showed synchronous changes during berry development: they had the lowest levels at pre-véraison, and their metabolic pathways were accelerated after véraison. Furthermore, they all tended to be higher on 5BB(4x) than on the other rootstocks. Since the expression levels of most of the ABA biosynthesis-related genes did not show a corresponding increase with the contents of ABA and ABA-glucosyl ester (ABA-GE), it is considered that the increase in ABA content after véraison may be mainly due to the decrease in catabolism and/or exogenous import from other organs. This study provides an overview showing the dynamic changes and relationship of three phytohormones during the ripening of grape berries grafted on different rootstocks, and explores the mechanisms regulating ripening.
著者
本田 和也 森塚 倫也 伊藤 健大 松尾 彩香 日宇 健 川原 一郎 小野 智憲 原口 渉 牛島 隆二郎 堤 圭介
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10802, (Released:2020-08-31)
参考文献数
40

要旨:日本における脳卒中診療は,患者数増加・高齢化等,多様な問題に直面しており,専門医不足に伴う過重労働や燃え尽き症候群が危惧されている.医師以外の人的資源を有効活用した診療システムが必要であり,高度実践看護の能力を持つ nurse practitioner(NP)はこの診療分野に貢献し得る.NPは医師の指導・協働下に,専門性の高い特定行為や医師業務の代行が可能であり,脳卒中チーム内の多職種ならびに患者・家族間をコーディネートする中核的存在としても活躍している.米国ではすでに半世紀前より,医師の過重労働を予防・緩和する解決策のひとつとして,NP制度が多方面の医療現場で積極的に導入されてきた.NPの能力・技量や果たし得る業務の可能性は,未だ医師の間で十分に認識されている状況ではない.日本版NPは,今後の本邦脳卒中診療システムを改革する医療職として期待される存在である.