著者
井上 次夫
出版者
小山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

論述文で適切な単語が使用できることを目的に、話しことばから書きことばへの書き換え能力を高める教材を開発し、冊子『アカデミック・ジャパニーズ表現の演習』(A4版、42ページ)を発行した。また、それを用いて、高専の3年生及び専攻科1年生、公立高校2年生を対象に授業実践し、自学自習にも役立つ多様な練習問題を中心に据えた語彙の指導法について提案した。
著者
大隈 貞嗣
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

われわれが作製した血管血球系特異的p38αコンディショナルノックアウトマウスおよびマクファージ特異的コンディショナルノックアウトマウスにおいて高脂肪食による肥満の抑制が観察され、マクロファージにおけるp38αが肥満を促進していることが示された。またマクロファージ特異的p38αcKOマウスにおいて食餌誘導性NASHモデルを作製したところ、肝における炎症および線維化が減少していた。また老化促進マウスとの交配に関しては作製途中であるため予備的にp38阻害剤投与実験を行ったところ、寿命延長効果が認められた。
著者
毛利 一平 小川 康恭 甲田 茂樹 熊谷 信二
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(産業医学総合研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.清掃作業者を対象としたコホートの構築全日本自治団体労働組合の協力を得、全国の清掃労働者に対してコホート調査への参加協力を呼びかけた。コホート構築に必要な個人情報の収集(ベースライン調査)に、ごみ焼却炉での経験を有する者(曝露群)2,866名、ごみ収集作業者(非曝露群)6,239名の協力を得た。発がんリスクについては早期の評価を目指し、退職者を対象としたコホートの構築を試みたが、個人情報保護にかかわる社会環境の変化もあり、実現は困難であった。2.ごみ焼却作業におけるダイオキシン類へのばく露の評価全コホートを対象に、個々のダイオキシン類への曝露を、血液試料の分析により客観的に評価することは困難である。このため、作業内容や従事期間などの代理指標による曝露評価が必要であった。ベースライン調査において、清掃職場での職歴と飛灰に接触する頻度を、自記式調査票によって記録した。また、58人のごみ焼却炉作業員を対象に代理指標による曝露評価と血中ダイオキシン類濃度の相関を検討したところ、曝露期間(飛灰に曝露する作業に従事した期間の総和)と血中HpCDF濃度(PCDD/DFの異性体の一つ)に相関が認められた。3.がん死亡リスクの評価研究期間内に構築したコホートはすべて現役の労働者であり、労働に伴うがん死亡リスクを評価するには、今後さらに10年以上の追跡期間が必要である。4.児の性比への影響生殖障害の指標として、児の性比を検討した。複数の曝露代理指標を用いて解析した結果、統計学的に有意ではなかったが曝露期間が長いほど女児の比率が多くなる傾向を認めた。この傾向は、母親の出産経験、出生時における父親の年齢、出生年を調整しても変わらなかった。ただし、最も曝露期間が短い群で非曝露群よりも男児が多い結果となり、飛灰曝露と子供の性比に関連があるとするには根拠が弱く、現段階で明確な結論は得られなかった。
著者
熊谷 信二 車谷 典男
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2007年に、旧石綿工場の周辺住民1907人の参加を得て後向きコホート調査を実施したが、本調査では観察期間を2012年12月まで延長して死亡状況を観察した。そして推定石綿濃度に基づき、対象者を4群に分類して、肺がん死亡状況を検討した結果、石綿濃度がもっとも高い地区では、職業性石綿曝露がない肺がん死亡者は男性9人および女性4人であり、標準化死亡比(日本の一般人と比較して何倍かの指標)はそれぞれ2.40(95%信頼区間1.10-4.55)、3.27(同0.89-8.39)となり、男性では統計学的に有意であった。この結果により、周辺住民の肺がん死亡リスクが上昇していることが示唆された。
著者
津田 敏秀 頼藤 貴志 土居 弘幸 鹿嶋 小緒里
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内では大気汚染の健康影響を評価した疫学研究は依然として少ない為、下記目的を達成するために研究を行った。①短期曝露と疾病罹患の関連評価、②短期曝露と疾病別死亡の関連評価、③大気汚染曝露と周産期指標の関連評価、④大気汚染曝露と児の疾病罹患との関連評価。結果として、①では短期曝露により、循環器疾患、呼吸器疾患、心停止による救急搬送のリスクが上昇していた。②においては、日々の二酸化硫黄の濃度と疾病別死亡との関連を認めた。③に関しては、曝露モデルの検討を行っており、更なるデータ蓄積と解析を行う予定である。④に関しては、妊娠中の曝露は満期低出生体重児を増加させ、発達にも影響を及ぼしていた。
著者
安西 信一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、研究の中でも特に基礎的な原理的分野に焦点を当てて行った。中でも日常性の美学や環境美学など、庭園という美的芸術的現象の中核をなしながら、しかもそれを現代美学の先端的な問題と接合するために重要な分野にかんする基礎研究が中心になった。具体的には、とりわけ現代日本におけるポストモダン的な美的芸術的諸現象を一つの特権的な事例として取り上げ、それを深く考究することで、そこにおいて顕著な、「今ここ」の重視、「近さの美学」、「日常性の美学」、「歴史回帰」、「ドメスティック指向(地方・国内・家庭指向)」などに光を当てた。そのことにより、庭園の根幹をなす土地への帰着とそこからの超越、また時間的には、現在でありながら永遠を指向するというその二重性を、広いコンテクストから考察することに成功した。と同時に、それらがグローバル化、フラット化、情報化、二次元化といったものの影響を受け、同時代的な変化を強く被っていることにも注目し、それらと調和しつつも、それらに対抗する戦略について考察した(たとえば、ハイブリッド性を確保しつつ、今ここに流れ込む歴史に回帰し、それを咀嚼し、批判的に発展させることなど)。またそのような観点から、現代の庭園美学は、当然テーマパーク研究を視野に含めなければならないが、不完全ながらそのような研究も行った。さらに同様の関心から、現代の映像作品の中で、庭園がどのように描かれるかにも注目し、自然と人工、開かれと閉ざされなどの二重性が、現代の二次元映像の中でも十分に意味を持ちうることを示した。さらに現代美学的な観点から最も重要と思われる風景式庭園(およびランドスケープ・アーキテクチャーやランドアート)についての受容史的な考察も引き続き行っている。
著者
田代 眞人 小田切 孝人 田中 利典
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.通常は予後の良いインフルエンザは、ハイリスク群では肺炎死をもたらし、重要な疾患として認識されるべきである。そこで、インフルエンザ肺炎の発症機序として、混合感染細菌が産生するプロテア-ゼによるウイルス感染性の増強(活性化)という機序を考え、これをマウスのモデルで証明するとともに、プロテア-ゼ阻害剤の投与によって、このようなインフルエンザ肺炎を治療しうる可能性を示した。2.ブドウ球菌によるマウス肺混合感染モデルでの解析。(1)4株の黄色ブドウ球菌は、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA)を解裂活性化しうるプロテア-ゼを産生していた。(2)インフルエンザウイルスとこれらの細菌は、各々の単独感染では、マウス肺に対して病原性を示さない。しかし、マウスに混合経鼻感染すると、ウイルスの活性化が亢進して多段増殖が進行して、致死的肺炎へと進展した。(3)これらの細菌性プロテア-ゼに対する阻害剤ロイペプチンを、混合感染マウスに連続投与すると、ウイルスの活性化が抑えられ、ウイルス増殖の低下と肺病変が軽減し、マウスは致死的肺炎から回復した。3.その他の細菌性プロテア-ゼについての検討。(1)現在のところ、肺炎球菌のプロテア-ゼには、直接ウイルスのHAを解裂活性化するものは検出されていない。これらの中には、血清プラズミノ-ゲンを活性化しうるものがあり、間接的にウイルスの感染性を高めている可能性がある。(2)ヘモフイルスは、IgA抗体を分解するプロテア-ゼを産生している。これが、インフルエンザウイルスの表層感染に対する生体防御機構を障碍している可能性がある。
著者
浅岡 定幸
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

親・疎水鎖の連結点にポルフィリンまたはレニウム錯体を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体を用いることによって、薄膜中で生ずる完全垂直配向シリンダー型のミクロ相分離界面をテンプレートとして、これらの色素分子が環状に集積化された構造体がスメクチック層状構造に従って一定の距離をもって周期配列した構造体を形成することに成功した。これらの共重合体を混合製膜したブレンド薄膜では、同様の垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造が維持されており、犠牲剤を含む二酸化炭素飽和溶液中でポルフィリンからレニウム錯体への光誘起電子移動に基づく光反応が進行することが示唆された。
著者
永井 美之 水本 清久 石浜 明 田代 真人 永田 恭介 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ウイルスの体内伝播機構や臓器向性、宿主域などを決定する機構をウイルスと宿主相互の特異的分子認識の立場から解析する「ウイルス病原性の分子基盤」という新視点からの研究グループを組織し、重点領域研究を申請する準備活動を行った。具体的には、シンポジウム「ウイルス遺伝子機能研究の新展開」(平成5年12月7〜8日、重点領域研究RNAレプリコンとの共催)を開催、わが国における当該分野の研究の現状を分析し今後の発展のさせ方について討議した。また班会議(同年8月28日、11月8日)、活動者会議(同年9月11日、12月1日、12月25日)においては、国際専門誌におけるわが国研究機関の論文発表状況の調査、シンポジウムの総括、なども行い、重点領域研究申請へと集約した。その結果、ウイルス複製の各過程に必須の生体側分子を分離・同定し、これら分子の生体内での組織分布を明らかにすることにより個体への種および組織特異的なウイルス感染の分子メカニズムを追求すること、すなわち、ウイルス複製と病原性発現機構を分子の水準で確立すべき機が熟していること、またそのことが同時に新しい生体分子の発見や既知生体分子の新機能の発見をも約束することを強く認識した。このように本領域が活気あふれる領域であるとの再確認の上に立ち、「ウイルス感染を決定する生体機能」を平成7年度発足重点領域研究として申請する運びとなった。尚、本総合研究の研究代表者永井美之が、同じく平成7年発足の「エイズ重点」申請代表者に強く推されている状況についても種々討議した。その結果、「エイズ重点」は永井が領域申請代表者を務めることとし、「ウイルス感染を決定する生体機能」は重点領域研究「RNAレプリコン」(平成4年〜6年度、代表 野本明男)の継承と飛躍の意味を込めて野本が担当することとした。
著者
豊田 裕 中潟 直己 馬場 忠 佐藤 英明 斉藤 泉 岩倉 洋一郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1)卵成熟と受精の制御A)卵胞液から卵丘膨化を促進させる熱に安定な物質を分離した。また本物質は精子核の膨化に対しても促進的に作用することを明らかにした。B)c-mos遺伝子欠損マウスの卵成熟と受精について解析するとともに、c-mos遺伝子欠損により単為発生が誘起されることを明らかにした。また、遺伝子ターゲット法によりアクロシン遺伝子欠損マウスを作製した。このようなマウスから得た精子は透明帯を通過し卵子に侵入するものの、受精成立に要する時間が長くなることを明らかにした。C)膨化卵丘に含まれる液状成分に受精促進作用のあること明らかにした。2)初期卵割の制御A)プロジェステロンにより単為発生の誘起されることを明らかにした。また、XX型胚とXY型胚を凝集したキメラ胚は雄になるが、組織学的に解析しキメラ胚における性腺の分化過程を明らかにした。B)エンドセリン遺伝子欠損マウスを作製しホモ化したものでは頭蓋顔面に奇形を誘発することを明らかにした。C)ラット初期胚の内部細胞塊に由来する多分化能細胞株を樹立した。3)初期胚保存の制御A)マウス初期胚の凍結保存条件、特に凍結に用いる溶液や平衡時間について解析し、胚保存の最適条件を決定した。また、超急速凍結法によりラットの受精卵の凍結保存に成功した。
著者
小島 理永 藤田 和樹 島本 英樹 内藤 智之 門田 浩二 河野 史倫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,大学生の生活習慣やメンタルヘルス等の健康状態を多元的視点から評価可能な生活習慣尺度を作成し,その妥当性を検討するとともに,回答者の健康状態と経時変化が確認できるWebアンケートシステムを構築した.そして,フィットネスとメンタルヘルスの因果関係について検討した結果,大学生の体力の低下は,直接的にメンタルヘルスに,また,間接的にソーシャルヘルスに影響を及ぼしており,性差によって影響要因が異なっていたことが明らかになった.これらの成果より,健康教育における本アンケートシステムの汎用性が確認できた.
著者
宇座 美代子 田場 真由美 儀間 繼子 當山 裕子 小笹 美子 古謝 安子 平良 一彦 宮城 瑛利奈
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、保健師マインド育成プログラムを検討するために保健師・看護師・住民に沖縄の伝統文化に関連した支援内容等を調査した。保健師マインドを育成するためには、保健師のアイデンティティが確立され始める保健師経験3年目に焦点を当て、沖縄の伝統文化に関連した知識や対応技術等の内容を中心に、自らの「経験」を語ることによって「自信」に繋がるプログラム構築の必要性が示唆された。
著者
櫻井 敬三
出版者
日本経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インタビュー調査(初年度から2年半、技術革新を実現した62社の中小製造企業)とアンケート調査(2014年6~7月、回収250社)を実施した。その結果から下請型企業と独立型中小企業では相違があった。技術醸成期間は下請型企業が社長主導、独立型企業が取引先や大学支援を受けながら新技術を獲得している。事業化推進期間は差異はなかった。ただし用途先調査や新たな取引先との接触は行われていないことがわかった。他に情報源や業界別分析も合わせて行った。
著者
首藤 伸夫 渡辺 晃 酒井 哲郎 宇多 高明 阿部 勝征 平沢 朋郎
出版者
東北大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1985

1)地震断層運動の特性:強震動継続時間の方位依存性から、断層長さと破壊の伝播方向を推定する新方法を開発した。日本海中部地震時の比較的大きな余震震源を、遠地での中周期P波及び長周期SH波から精密に決定した。これらの手法は他の地震にも適用され、良い結果を与えた。2)海底地盤変動と津波初期波形:南北2断層運動間の休止時間が津波分布に及ぼす影響を検討した。この休止が原因で、最高で10%程度の波高差が生ずる。津波記録を歪ませうる験潮井戸特性を14箇所について調査し、補正曲線を作製した。いくつかの井戸では、水位差1mを回復するのに10分以上かかり、日本海中部地震津波の記録に大きな影響を与えた事が立証された。3)エッジボアの理論と実験:大型水槽での実験から、津波進行方向にほぼ沿った斜面境界上で渦が発生し、海岸線に平行に津波と共に走っていく事を発見した。実験水槽奥部に置かれた川の内部での津波変形を追跡した。4)津波数値シミュレーション:高次近似の非線形分散波方程式を誘導し、1より大きいアーセル数に対する、摂動パラメタ(相対水深)の4次近似迄入れた式が他式に比べ精度が良い。非線形問題での数値解析誤差評価に、疑似微分方程式の解を使用する方法を開発した。空間格子寸法の決定に海底地形を考虜に入れる方法を示した。5)津波先端部形状の決定法:砕波段波の波形から最大衝撃圧を推定する手法を開発した。波状段波の変形過程を適当な渦動粘性係数の導入で追跡できる事を示した。巻き波型砕波の数値計算を行い、波頂から飛び出た水塊の運動及びそれにより引き起こされる運動についての知識を得た。6)津波先端部の破壊力:ブロックが完全に水没し最大水平波力が作用する瞬間、最も不安定になる。被災規模が大きくなるのは、津波先端に生じたソリトン列の連続性が原因である。
著者
奥村 久士
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

タンパク質のシミュレーションが難しい理由は,自由エネルギー曲面に多くの極小状態があるからである.この問題を解決するために提案されてきた手法の1つがレプリカ交換法である.本研究では狙った構造に近づくように力をかける「へリックス・ストランドレプリカ交換法」を提案し,ペプチドに応用した.その結果,この方法では通常のレプリカ交換法よりも天然構造により近づけ,折りたたみにより成功した.さらに「レプリカ置換法」を提案した.この手法では2つのレプリカ間だけで温度を交換するのではなく,3つ以上のレプリカ間で温度を置換する.この方法を用いることでレプリカ交換法よりも効率的なサンプリングを実現できることを示した.
著者
鐘巻 将人
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本助成により、植物ホルモンオーキシンが植物内で引き起こす分解システムを、異種真核生物に移植することに成功した。これにより、非植物細胞において標的タンパク質をオーキシン依存的に分解除去することが可能になり、私たちは本手法をオーキシン誘導デグロン(AID)法と命名した。私たちは本手法が出芽酵母、分裂酵母、ニワトリDT40細胞、マウスおよびヒト培養細胞で機能することを確認し、その成果を論文公表した。さらに、本手法を利用して、出芽酵母内の因子の機能解析に応用し、その成果を論文公表した。また、改良版AID 法を開発することに成功し、特許申請を行った。
著者
石谷 優行
出版者
神奈川県立横浜平沼高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は,昨年度,一昨年度に引き続き、「黒板での授業」「コンピュータの画面での表示や操作」「具体物」を直感的に生徒がとらえ,その中のおもしろさ,不思議さといった点に着目して発展的に考えられるようになるかについて検証したものである.本年度は,本校2年生,数学Bの「ベクトル」の授業に焦点を当て上記の3点を絡めた授業展開を行った.本年度の大きなポイントは,「具体物」のひとつとして「折り紙」を導入したことにある.今回,中心的に取り上げた例題は「平行四辺形ABCDにおいて,辺CDを2:1に内分する点をE,対角線BDを3:1に内分する点をPとする.3点A,P,Eは一直線上にあることを証明せよ.」である.すでに生徒たちはk倍が示せれば3点は一直線上にあるということが「黒板での授業」から分かってはいるものの,代数的処理のみに依存してしまいkの意味するところをはじめとして「実感を伴って分かっている」とは言い難い状況にあった.そこで,この問題を折り紙を使って実際に折ってみようということを何回か実践した.まず正方形から平行四辺形を作るところで生徒たちは、試行錯誤していたが,ある生徒の感想「正方形から平行四辺形を作るのは最初はいろいろ考えてもうまくいかなかったけど,ただ単に平行な線が2組交わればいいっていうことだけに気づいたらすぐできた.難しく考えなくてよかったんだと思ってほっとした.」を見てみるとこの感想は,数学は常に「難しく考えて解くもの」ということにとらわれているところから,「そうでなくていいんだ」と,ほっとしたことをまさに表現していると感じる.そして折り紙による2:1に内分する点や3:1に内分する点の折り方などまさに「折り紙の独壇場」といったところであった.また,折り紙を使った授業では、生徒同士による相談や意見交換など,言語活動が自然発生的に生まれるメリットもあった。そして最後に,3点A,P,Eが一直線上にあることを,定規を用いることでk倍の意味を確認していった.生徒たちは「仲間のどのものも本当にそうなる」と確認し,まさに教科書に書いてあることが実感を伴ってわかった瞬間であった.このあとPCにより,同様の操作を行い,平行四辺形を様々に変化させてもこの関係性が成り立つことを確認した。また,マウス操作のコンピュータのみならず,タッチパネル式PCやグラフ電卓等でも検証した.また生徒たちにオリガミクスの芳賀氏の「芳賀第一定理」を紹介したところ、後日,なぜそうなるのかとレポートにまとめた生徒も居て,その達成感はまた次のものをやってみようとする意欲につながって行った.通常行われている単なる「黒板での授業」だけでは得られない成果が本実践により得られた.
著者
増成 直美
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

患者の診療情報の電子化に際して、患者の自己情報コントロール権の保障等のために法的整備が必要である。研究等への患者の診療情報の利用を推進するためには、比例原則、組織・手続的保障を備えた憲法適合的個別分野法の制定が必要となる。したがって、行政機関や民間企業の個人情報の取り扱いを監督し、場合によっては直接訪問し、実態調査や監督指導等を行う権限を有し、国民からの苦情処理や被害救済機能を担う独立したデータ保護機関が設置されなければならない。これらの視点からすると、2013年12月に成立した、がん登録等の推進に関する法律には、検討すべき課題があるように思われる。
著者
加藤 安彦 篠崎 晃一
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

急速に普及した携帯電話を介したメイルでのコミュニケーション方法は、若年層においてすでに定着しており、日常生活に欠くことのできないコミュニケーション手段である。最近では様々な絵文字が現われ、携帯電話会社の中にはその充実に力を入れている会社もある。この携帯メイルによるコミュニケーションを研究対象として、若年層における携帯メイルの役割を明らかにすべく、アンケート調査と、実際のメイルデータの収集を行った。アンケート調査は、携帯メイルによる謝罪場面でどのような謝罪が行われるか、について簡単な意識調査を行った。これは、待ち合わせの約束をしてその約束に遅刻しそうな時、携帯メイルを介してどのような表現を採用するのかを調査したものである。また、若年層が、同年代を主に他の年代の相手も含めて実際に行った携帯メイルデータの収集も行った。携帯メイルには、携帯を所有している学生の生年月日や出身地、メイルをやりとりした相手の出身地と相手との関係、親しさ(親密度)といった情報を付与し、データ全体を表現の特徴によって情報との関係をみた。データを分析した結果、葉書や手紙などと異なり、顔文字・絵文字の出現、星(☆や★)、音符(♪)などの記号類、「(笑)」や「(泣)」などといった表現、すなわちパラ言語的な表現が多用されていることがわかった。また、こうしたパラ言語的な表現は、相手との関係、距離感、すなわち親密度によって使用される表現形式が異なることも明らかになった。
著者
水上 勝義
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アルツハイマー病(AD)の神経細胞保持に関連すると推察されるユビキリンとブチリルコリンエステラーゼについて剖検脳海馬を用いて免疫組織化学的検討を行った。ユビキリンはAD病理に対して抵抗性を示す海馬CA2-4領域の神経細胞内で増強した。ブチリルコリンエステラーゼもAD海馬の同部位において神経細胞内とニューロピルで増加した。これらの変化は、AD病理に対する抵抗性を関連する可能性が推察される。今後はこれらの変化と興奮毒性との関連について明らかにする必要がある。