著者
肥前 洋一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

市町村合併の是非を問う住民投票の多くで、その成立要件として、投票率が予め定められた水準(多くの場合50%)を超えなければならないというルールが設けられた。本研究の目的は、この成立要件が有権者の投票行動に与える影響を理論と実験により明らかにすることである。今年度は、前年度の理論研究の成果を「Imposing a Lower Bound on Voter Turnout」と題して9月の日本経済学会秋季大会にて報告した。さらに、理論研究に基づいて実験研究を行い、その成果を論文Yoichi Hizen,"A Referendum Experiment with a Validity Condition on Voter Turnout,"mimeoにまとめた。ディスカッションペーパーにしたのち、学術誌に投稿する予定である。また、平成20年5月の日本選挙学会研究会・方法論部会II「実験と調査の間」にて「投票の成立要件が投票行動に与える影響-実験室実験による検証-」と題して報告することが決まっている。実験研究では、1セッション13人からなる住民投票実験を6セッション実施した。「投票前に見込まれる賛成派と反対派の人数比」と「最低投票率の水準」に応じて、どちらの派の有権者がどのくらい棄権するかを観察した。得られた結果は、各有権者は、多数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には最低投票率の水準にかかわらず投票する一方、少数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には、最低投票率が低ければ投票するが高いと棄権するというものであった。すなわち、最低投票率を高くしすぎると戦略的棄権が生じて不成立になりうることが確認された。
著者
高須 俊明 高島 郁夫 上村 清 橋本 信夫 高橋 三雄 土井 陸雄 五十嵐 章 ANWAR Wagar 石井 慶蔵 磯村 思〓 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 YASMEEN Akba MUBINA Agbor AKRAM D.S. SHAISTA Rauf AKHTAR Ahmed AKBANI Yasmeen AGBOATWALLA Mubina AHMED Akhtar RAUF Shaista WAQAR Anwar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

研究代表者らは、昭和57年度以後の調査研究で、カラチでは亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生頻度が日本や欧米の大多数国に比べ数十倍以上高く、また血清学的にみて日本脳炎(JE)が疑われる患者が発生していることを知った。この事実に立脚して、今回SSPE多発の要因解析とJE様脳炎の病原研究に取り組んだ。成果の概況としては亜急性硬化性全脳炎(SSPE)については著しい進展があり、特にSSPEおよび麻疹の疫学やウイルス学での成果が目立っている。しかし、日本脳炎(JE)様脳炎については目立った進展は得られなかった。1.パキスタンにおけるSSPE多発の要因解析SSPEは麻疹ウイルスが個体に持続感染している間に生じた変異株が遅発性に脳を侵して起こる疾患である。今回の研究で、パキスタンにおけるその多発の要因は、以下の点でかなり明らかになった。(1)疫学的成果:SSPE患者の麻疹罹患年齢がパキスタンでは日本や欧米の大多数国と異なりearly measles(EM;2歳未満罹患麻疹)0.353、late measles(LM;2歳以上罹患麻疹)のうち5歳未満罹患麻疹(LM5>)0.340、5歳以上罹患麻疹(LM5≦)0.307(いずれも全measlesに対する比率)とLMが大多数を占めているという事実が判明した。これに基づき麻疹罹患年齢層別に計算されたパキスタンにおける麻疹罹患者からのSSPEの発生率は、EMからは308.1×10^<-6>、LM5>からは197.4×10^<-6>、LM5≦からは585.2×10^<-6>、麻疹罹患者全体からは280.2×10^<-6>と推定され、いずれも日本におけるそれぞれの数値に比べ高く、特にLM5>は46倍、LM5≦は296倍と著しく高いことがわかった。一般人口からの麻疹発生率のパキスタン対日本比は麻疹罹患年齢で層別しても高々2倍に留まる。したがって、パキスタンにおけるSSPE多発の最大の理由は、麻疹罹患者からのSSPEの多発、特にlate measlesからの多発にあると考えられた。[高須]第2に、SSPEのcase control studyの結果、患児は対照に比べて生下時体重が低く、出生後頭部外傷やけいれんに罹患している頻度が高い傾向がみられたことから、麻疹罹患前および後の環境因子がSSPEの発生に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された
著者
後藤 仁 明石 博臣 酒井 健夫 高島 郁夫 橋本 信夫 品川 森一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

我が国で分離されている代表的なアルボウイルスとして、日本脳炎ウイルス(JEV),ゲタウイルス(GTV),アカバネウイルス(ABV)があげられる。日本脳炎の発生は近年日本では激減しているが、東南アジアではしばしば流行して多数の患者が出ている。GTVは馬に発疹,浮腫を伴う熱性疾患を起こし、ABVは牛の死、流産の原因となり,ともに周期的に流行している。またダニ脳炎ウイルスも分離されているが、その生態学的意義は不明である。本研究では、日本各地の家畜についてウイルス抗体の変動,ウイルス分離,抗原分析などからこれらウイルスの動物間での動向を明らかにしようと試みた。その結果、北海道で収集した馬血清のGTV抗体は道南と道北で抗体保有率が高く、7月〜11月間に本ウイルスの伝播のあったことを明らかにした。一方、1985年6月札幌近郊で豚のJEVによる異常産の発生と媒介蚊の収集成績から自然界におけるJEVの基本的な存続様式に新たな問題を提起した。JEVの全国的動態では、牛の血中抗体を指標とした場合、南部の鹿児島県から北部の岩手県に、4月から9月にかけて抗体陽性牛が漸次北上する傾向を明らかにした。ABV日本分離株10株とオーストラリア分離株2株のフィガプリント法によるRNAの解析では、両国分離株間はもちろん、日本分離株間でも相違がみられ、本ウイルスの変異がかなりの頻度で起こっていることが推定された。このことは単クローン抗体によるウイルス抗原蛋白の分析でも確認され、ABV感染の疫学を解明する上に極めて重要である。次にダニ脳炎ウイルスの根岸株の単クローン抗体による中和反応の機序に関する基礎的研究では、多種類の抗体を混和したとき、本ウイルスの中和活性が著しく増強され、この反応系はmulti-hit modelとなることが示唆され、今後のアルボウイルスの基礎的研究に大いに寄与するものと考えられる。
著者
西島 孜哉
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

西鶴の使用語彙から策定された人間文化の総体について、現時点では次のような試案を想定し、その吟味と検証、補訂を行っている。それは新しい人間文化のモデルを提言しうるものと考えている。人間文化を大きく5 つの構成要素に分類し、その要素を生成する小概念をたてる。What/Why何を/なぜ大切にするか(人間尊重・帰属性・規律性・社交性キーワード : 不義・人はならはせ・生国・義理・情・はなしHow/どのような生き方をするか(誠実性・着実性・知の継承)キーワード : 誠・長者丸・世の鑑What/How何を/どのように創り出すか(創造性・素人性・玄人性)キーワード : 仕出し・贔屓・家職・家業What/How何を/どのように求めるか(現実重視・精神性・向上心・競争心)キーワード : 浮世・訳知り・粋・天下一What/How何を/どのように受けつぐか(伝統文化融合・地域文化融合・国際性)キーワード : 俗源氏・珍奇・世界括弧内の小概念を成立させるキーワードを設定する。西鶴作品の中で人間文化と関わりのある語彙を選定してキーワードとして取り上げた。短期間の研究であり、キーワードは僅かしかあげえないが、今後引き続いて西鶴作品から数多くのキーワードを抽出しうると考えている。そのキーワード群によって構築する西鶴の人間文化図と現代の人間文化との対比によって、新しい提言が可能となるのである。
著者
佐々木 保行 八木 成和
出版者
鳴門教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究は子どもが様々な局面をのりこえることを通して、子どもに独立心や自主性を獲得させるための方策を検討することである。具体的には性被害から自らのからだと心を守ることのできる確かな態度と行動を学習できるスキルとそのプログラムの開発を行った。この研究を具体化するため、主にアメリカでの研究を参照しながら、幼児が自己の存在と人間性が否定されるような事態に遭遇した場合にとるべき態度と行動の実践的技法は、自己尊重の感情を表現する能力の育成である。そのため自己の感情を識別する学習が重要な課題となる。この感情識別学習は、学校教育でもまた家庭教育の中でも、わが国で取りあげられることが少なく、人権感覚や人権意識の育成の基礎的プロセスとして重要視されなければならない課題である。本研究では、幼児に対し絵本を使用して、“たのしい"“きもちいい"“おもしろい"“うれしい"などの快的・肯定的感情言語と“つまらない"“きもちわるい"“いやな"“かなしい"などの不快・否定的感情言語を、自己の言葉として表現できるプログラムを作成して実験した。その結果、幼児でも自己の感情を適切な感情言語を使用して、表現することが可能となった。一方、この感情識別学習の目的は肯定的自己イメージを育成することであるが、この課題と密接な関連をもつ側面に、性被害から自己を守る方法としての適切な判断のもとに対応できるスキルの獲得という課題がある。本年度はとくに、幼稚園の保育カリキュラムの中に“ロール・プレイ"を取り入れ、実践的な研究を行った。その結果、不快な感情を引き起こすような困難な事態の場合でも、明確な感情言語を発してその場から離れ、しかも“いやだ"という意志決定言語を使用することが可能となった。今後は小学生以上の子どもを対象とした具体的プログラムの開発を目的とする研究を展開する。
著者
仲 真紀子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

子どもが司法場面で情報提供を求められることは少なくない。本研究の目的は, 出来事の報告, 特に人物の記述と, 刑事事件でも民事事件でも問題になる感情・気持ちの表現に焦点を当て, 発達的変化を明らかにするとともに, 得られた資料を司法面接の開発に活かすことであった。成果は以下の3点となる。(1) 実験研究により, 語彙は限られているものの, 幼児による人物記述の度合いは人物の再認の正確さと関わっていること, 感情・気持ちについては, 特にネガティブな気持ちを表す語彙が学童期に増加することを示した。(2) 幼児の供述の信用性に関する大人の意識, 認識を検討し, 一般市民は子どもの供述の信用性を高く見積もりがちであることを示した。(3) これらの成果, 文献調査, 国外での調査などを踏まえ, 面接ガイドラインを提案した。
著者
青木 研作
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

信仰学校(faith school)に対する国の政策、設置に関する地方行政の対応、信仰学校の実態等を研究することにより次の3点を明らかにした。第一に、イギリス社会において信仰学校は教育の私事性を拡大する存在として認識されていること。第二に、しかしながら、信仰学校の設置が認められている背景には、教育効果やニーズや社会的一体性(social cohesion)などの複数要因を総合的に判断して公教育制度をよりよいものにしようとする教育行政機関の考えが反映されていること。第三に、今後の信仰学校の課題としては、各宗教団体の利害を超えた教育供給主体としての責任、すなわち教育の公共性への関与が積極的に求められていること。これらを通じて、イギリスにおける教育の公共性議論がどのように展開されているのかの一端を明らかにできた。
著者
奥村 史朗 齋藤 浩之
出版者
福岡県工業技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パラスポリン4 はヒト大腸がん由来のCACO-2 細胞をはじめとするヒト培養がん細胞に対して高い細胞傷害活性を示す一方で、正常細胞に対しては細胞傷害活性を示さないが、このことは正常な哺乳動物に対して毒性を示さないことを保証するものではない。そこで、マウスに対する急性毒性および長期投与における健康への影響を検討した。また、パラスポリン4 前駆体封入体の経口投与によるがん抑制効果の検討を行った。
著者
堀部 智久
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)関連タンパク質の一つであるPDI P5(P5)の活性阻害剤の低分子化合物スクリーニングを行い、これまでに得られた候補化合物の関連および類似骨格を有する低分子化合物のP5の還元酵素活性への影響を調べた。また、候補化合物の癌細胞におよぼす影響さらには、既存の抗癌剤との併用効果の検討を行った。
著者
照井 優一
出版者
昭和大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

ナノジルコニアの表面処理の影響と陶材の熱膨張係数(CTE)が焼付け強さに与える影響を明らかにするため,ナノジルコニアに対し各種表面処理を行い,表面性状の評価とX線回折分析による結晶状態の同定を行うと共に,市販の4種類のジルコニア専用陶材と,ボディ陶材のCTEだけを変化させた3種類の試作陶材(CTE 9.0, 9.5, 10.0)での焼付強さを測定した.破断後の試験片に対しSEM観察ならびにEPMA分析を行い,ナノジルコニアとライナー陶材間の親和性も検討した.その結果,ナノジルコニアのCTEを境に,僅かに低いCTEを持つ陶材が,他の2種と比較して有意に高い陶材焼付強さを示すことが分かった.
著者
玉澤 かほる 板垣 由美 井川 資英 米田 栄吉 福田 俊男 石幡 浩志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,高周波プラズマ状態のガス雰囲気中で,有機物を迅速に分解除去して滅菌効果を得ることを目的としており,研究した結果,以下の成果を得た.1)フォトレジストをウエハに塗布して酸素ガスにてプラズマ処理(アッシング装置:PACK-1,ワイエイシイ社)した.レジストの膜厚(膜厚計にて測定)は,ウエハを石英ラックに水平でなく垂直に設置した方が,また出力が大きいほど,放電方式が同軸電極より対向電極の方が,減少量が大きかった.2)細菌芽胞を塗布した試料を,対向電極方式でプラズマ処理した.試料をトリプトケース培地にて培養すると,ヒータ温度が高いほど,処理時間が長いほど,出力が大きいほど,芽胞の死滅効果は大となった.ヒーター温度60℃,10分間のプラズマ処理により,芽胞B.Stearothemophilus10^4を塗布した試料10例すべてが培養陰性を示した.非プラズマ処理群(ヒーター温度60℃,100℃,140℃)では,試料は全て陽性培養であった.これより,プラズマ処理時の殺菌効果は,熱効果でなくプラズマ本来の物理的効果に依存することが明らかとなった.3)過酸化水素・低温プラズマ滅菌装置(STERRAD^*100R,ジョンソン&ジョンソン,ST装置)の滅菌機序を検討した.チャンバ内にバイオロジカルインディケータ(BI,ジョンソン&ジョンソン)を置いて電源を投入し,表示パネルの処理完了時刻の25分前に故意に電源を切ってプラズマ行程をスキップした.培養されたBIは10検体すべて陰性であった.この結果は,ST装置では,プラズマ行程前に,滅菌処理が既に完了しており,滅菌の主体はプラズマではなく過酸化水素ガスの薬理作用に依存していることを示唆するものである以上より,本研究で開発した装置は,過酸化水素などの薬剤を併用しないで,プラズマのみで滅菌効果を得ることのできる新しい画期的な滅菌方法である.
著者
後藤 健介 金子 聰 藤井 仁人 奥村 順子 Panditharathne N. G. S. Gunasekera Deepa
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、スリランカにおけるデング熱の実態を把握するとともに、同国でデング熱の対策として実施されている、環境負荷のない、地域レベルでの地域清掃プログラムについて、エビデンス度の高い評価を行う研究を展開し、持続可能なデング熱対策を構築するために必要な基礎情報を収集することとした。研究成果として、実際に地域清掃プログラムが実施された、および拡大されている地域においてはデング熱患者が減少していることが分かった。この減少は自然環境の変化によるものではなく、本プログラムによるものであることも判明し、かつ、リサイクルや住民の協力、政府の指導の下、本プログラムが持続可能性が高いものでることが分かった。
著者
柴田 篤
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1,『天主実義』の諸版本を調査・検討することによって、本書の成立事情、諸版本の異同、文字の改竄などについて明らかにした。2,『天主実義』に見える西洋人と中国人との対話の背景について、引用文の典拠や前提となっている思想を具体的に明らかにした。3,『天主実義』の著者であるマテオ・リッチの中国思想に対する考え方を明らかにした4,マテオ・リッチが『天主実義』を著述した意図と目的を、本文に即して具体的に明らかにした。5,『天主実義』の重要概念である「天主」と「霊魂」に関して、原文(中国文)の使用方法を分析することによって、従来の誤読を修正した。6,『天主実義』全篇の現代語訳を完成させ、我が国ではじめて出版した。7,『天主実義』を正確に現代語訳することによって、本書の持つ思想史的意味が従来以上に明らかになった。8,『天主実義』本文に見える固有名詞(人名・書名・地名)の索引を作成した。9,明代末期から清代にかけて、『天主実義』がどのように読まれてきたかを具体的に明らかにした。10,朝鮮王朝において、『天主実義』がどのような影響を与えたかということを具体的に明らかにした。11,江戸時代において、『天主実義』がどのような影響を与えたかということを具体的に明らかにした。12,『天主実義』と関係深い『畸人十篇』の内容を検討することによって、今後の研究の方向性が明らかになった。
著者
丹菊 逸治
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

百年〜数十年前にかけてピウスツキ、高橋盛孝らによって採録されたニヴフ語口承文学筆録資料、近年の音声資料の解読・分析をニヴフ語話者の協力を得ておこなった。その結果、各伝承が個人の生活史と密接な関連を持つことが判明した。話者が属する血縁集団、個人的な事件、最近の伝承では近代化との関わりがジャンルに応じた形で反映されている。話者自身もそれを前提とし、自分にふさわしいと意識する内容を取捨選択して語っている。
著者
月本 昭男 置田 雅昭 山我 哲雄 市川 裕 杉本 智俊 牧野 久実 桑原 久男 置田 雅昭 市川 裕 桑原 久男
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

現在のイスラエル国ガリラヤ地方にあるテル・レヘシュ遺跡にて、5次にわたる考古学調査を行った。これによって、同地域における青銅器時代から鉄器時代にかけて見られる都市の発達とその文化的特性を明らかにすることができた。またアマルナ文書をはじめとする文献研究においては、上記テル・レヘシュが前2千年紀後半のエジプト碑文に言及されるアナハラトと同定されることが明らかになった。またこれまで発信地が不明であったアマルナ書簡237~239番がテル・レヘシュから発信された可能性が高いことを突き止めた。
著者
中村 則弘 陳 捷 首藤 明和 石井 健一 南 誠 池本 淳一 中村 圭 穐山 新
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代における「中国的なるもの」がいかに構成され、その特性はいかなるものかを明らかにした。中国の少数民族、中国企業、中国武術団体、中国残留孤児、台湾・中国・日本の交流関係担当者への聞き取り調査、および中国国内でのアンケート調査から、両義性と流動性、曖昧さがチャイニーズネスの構成を考える上で重要な意味をもつことが解明された。またそれは、領域とネットワークの振幅というべき動態メカニズムに結びついていることが指摘された。
著者
永田 弾
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

冠動脈炎モデルマウスにおいてマイクロアレイ解析からサイトカイン、ケモカイン関連遺伝子が高発現していることがわかり、抗IL-6受容体抗体と抗CCL2抗体を投与した。結果としてこの物質だけでは炎症を抑制できないことがわかり、いろいろな物質の関与があることが示唆された。また、モデルマウスにおいて心機能は炎症によって低下する傾向がみられたがエコー輝度と冠動脈炎の程度との相関を見出すことはできなかった。検討数を増やすとともに手法も含め更なる検討が必要と考えられた。
著者
川真田 聖一
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

生体の主要な有機成分は、タンパク、糖と脂質である。これらのうちタンパクと糖については、研究が進展している。しかし、脂質は、試料作製の脱水操作で失われたり、特定の脂質に結合する物質がほとんど無いため、脂質の種類の同定は極めて困難である。本研究の目的は、組織や細胞中の脂質を、質量分析法(mass spectrometry)で角翠析して、脂質の種類を同定し定量化する方法を開拓し、ステロイドホルモン産生器官に応用することである。脂質の質量分析には、2つの技術的課題がある。第1に、脂質はイオン化しにくい傾向があるので、良いイオン化条件の検討が必要である。第2は、細胞や組織には多種類の脂質が含まれているので、測定や解析を困難にするおそれがある。研究では、ラットの副腎を取り出し、メタノールで抽出した。抽出液を、50%メタノールと0.1%蟻酸を含む水溶液で希釈して、イオンスプレー法(APCI)法を使い、イオンスプレー電圧5.500 Vで測定した。しかし、安定したピークは得られなかった。そのため、成分が既知の物質で測定を試みた。コレステロールなどのステロイド化合物をメタノールで溶解し、イオンスプレー法(APCI)法で測定したが、明瞭なピークは検出されなかった。次に、これらの測定物質を積極的にイオン化する必要があると考え、トリメチルクロロシランでシリル化させるなど、ガスクロマトグラフィーで使用される手法を試みているが、未だ安定して測定する方法を確立するには至っていない。
著者
大原 亮
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

我々はラットの海馬神経細胞の分離培養の実験で、軸索損傷後に新たな軸索が生じる現象(軸索新生)を認め、さらにp-stat3が損傷シグナルとして逆行性軸索輸送により細胞体まで運搬され軸索新生を引き起こすことを確認した。脊髄損傷モデルラットを用いたin vivoの実験では、ウェスタンブロッティング法を用いた解析では、損傷部、損傷より吻側部のいずれにても、p-stat3の発現上昇を認めた。この結果から、p-STAT3が逆行性軸索輸送により運搬されている可能性が示唆された。しかし、神経回路の可塑性に関与しているかについてはさらなる研究が必要である。
著者
伊谷 樹一 黒崎 龍悟 近藤 史 加藤 太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これは、経済成長にともなって深刻化しているタンザニア半乾燥地域の環境破壊に焦点をあて、人と林が共存しうる社会の形成を目指した実践的な地域研究である。環境破壊を引き起こしてきた内外の要因を探りながら、環境保全と地域経済に関わる活動を計画・実践し、それらの連携をとおして新たな循環型環境利用モデルを構築しようとした。諸活動のモニタリングや住民との議論を重ねるなかで、環境保全に取って不可欠な技術的・社会的要素を解明していった。