著者
内川 昌則
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、転写制御因子 SOX2 とそのパートナー因子の協調的作用による感覚器原基の特異化機構について研究した。鼻、眼、耳などの感覚器原基は頭部外胚葉に由来し、Sox2が常に発現される。この発現は時期・領域特異的な制御領域(エンハンサー)により制御される。今回解析した NOP1 エンハンサーは、嗅上皮・内耳プラコード特異的に活性を示す。その活性に必須な配列の一つは、SOX2/9と Sall4 により協調的に制御されることを明らかにした。さらにドミナントネガティブフォーム SOX2 は、内耳プラコードで NOP1 エンハンサー活性を阻害したことから、嗅上皮・内耳プラコード特異的な NOP1 エンハンサーの活性にはSOX と Sall4 の協調的な作用が重要であることが示された。
著者
中井 泉
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

文化財のオンサイト分析用ポータブル蛍光X線分析装置を開発し、国内外の遺跡・社寺・美術館等において、出土ガラスや収蔵ガラスのその場分析を行い、日本の古代ガラスの組成的変遷を解明した。また、西アジアから東アジアまでのユーラシア大陸各地のガラスの組成と比較し、古代世界におけるガラスの西から東への流通について考察した。顕著な成果は、日本のガラス工芸の最高傑作である東大寺法華堂不空羂索観音菩薩の宝冠(国宝)のガラスの全容を解明し、日本の古代ガラスの変遷から宝冠を理解できたことと、今まで、未解明であったキルギス、ラオス、カンボジアのガラスを現地で分析し、日本のガラスとの関連を明らかにできたことである。
著者
山下 弘巳 森 浩亮 桑原 泰隆 亀川 孝
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

ゼオライトやメソポーラスシリカなどのナノ多孔材料を利用して、細孔空間や骨格内に調製したシングルサイト光触媒(孤立四配位酸化物種、光機能性金属錯体)の機能・特性の評価、ナノ多孔材料の構造・形態制御、表面修飾や他の機能性材料との複合化を通して、シングルサイト光触媒を利用する環境調和型機能材料の開発と応用を試みた。平成29年度では、以下の研究を実施した。1)シングルサイト光触媒の特異反応性の評価と可視光応答性の付与: 複数金属元素からなる多核錯体を前駆体とする可視光応答型光触媒の調製を試みた。 2)シングルサイト光触媒を組込んだ三次元ナノ細孔構造とコア・シェル構造の設計: ヨーク・シェル構造の設計に特化し、サイズ制御した細孔をシェル構造に組み込むことを目指した。 3)疎水性多孔体の創製による光触媒の高効率化: ナノ細孔内表面を機能性炭素や酸・塩基官能基で修飾することで、細孔内の疎水性や酸塩基性を制御し、反応基質の吸着濃縮を進め触媒反応の高効率化を目指した。 4)シングルサイト光触媒を利用する金属ナノ触媒・プラズモニック触媒の調製: 貴金属の使用低減を目指した汎用元素を利用するプラズモニック触媒の開発、幅広い波長域の光を効率利用する光触媒系の開発を目指した。 5)コア・シェル構造触媒設計による高効率ワンポット触媒反応系の設計: ヨーク・シェル構造の設計においてシェル内部空間の反応場環境を制御することで、ワンポット触媒反応の高効率化を目指した。 6)ナノ細孔空間で機能する金属錯体シングルサイト光触媒の設計: 励起電子の移動性が高い高表面積多孔性カーボンやC3N4を利用し、多孔担体表面の化学特性が金属錯体に与える影響を検討した。
著者
Kim Minseok 青柳 貴洋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,人体周辺の無線センサネットワーク(BAN)において,複数のセンサから取得した伝搬路の時間変動と人体の状態(動作や姿勢)との関係を実験的に明らかにし,人体の状態を高精度で同定する手法の開発を行った.また,人体の状態と伝搬路の状態との関係性(通信品質を決定する特徴量)を具体化し,人体の状態に応じたコーディネータの送信電力の最適化するコンテキストアウェアネス通信法を開発し評価を行った.具体的な実施内容は次のようである.「伝搬路測定系の構築」,「信号設計と伝搬路測定法の開発」,「伝搬路の時間特性による人体状態の同定法の確立」,「人体状態による伝搬路状態の分類とモデル化」などを実施した.
著者
鈴木 誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建設的干渉現象を援用した同時送信型フラッディング技術を基礎として,様々なトラフィックを効率的に同一技術で収容可能とする無線センサネットワーク技術を開発した.また,開発した通信機構を利用して,橋梁モニタリングおよび農場モニタリングに適用し,消費電力,スループットなどの観点から,十分な性能を実現できることを確認した.要求の異なる2つのアプリケーションを同一技術で高効率に実現できることから,従来の無線センサネットワークで必須であった,アプリケーションごとの作り込み作業が不要となり,開発容易化が可能であることを示した.
著者
須之部 友基 国吉 久人 坂井 陽一
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

単系統群を形成するハゼ科ベニハゼ属・イレズミハゼ属を用いて, 一夫一妻,一夫多妻を示す種について,繁殖行動への関与が知られるアルギニンバソトシン(VT)およびイソトシン (IT) の上流域を種間で比較し, 配偶システムとの関連を探索した. 配偶システムは5種で一夫一妻, 7種で一夫多妻であった.一夫一妻3種, 一夫多妻2種について, VT遺伝子及びIT遺伝子上流域の塩基配列を決定した.配偶システムと関連は見られなかったが,雌雄異体のカスリモヨウベニハゼと雌雄同体の他種の間に塩基配列の変異が認められた.これはVTが性転換に関係した転写調節機構を有している可能性を示唆している.
著者
杉本 周作
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観測資料(Argoフロートによる水温・塩分観測資料,人工衛星観測海面水温資料・海面高度計資料,大気再解析資料等)解析を行うことで,黒潮再循環域の海洋構造(水温・塩分)の時間変動特性を調べた.その結果,水温の決定には,黒潮蛇行期に現れる四国沖の再循環流(高気圧性循環流)による熱輸送が重要な役割を果たすことがわかった.そして,形成された水温偏差が,直上大気場への熱放出源になることを指摘した.また,再循環域の塩分は,暖候期の降水量を反映しており,この降水量は再循環域上を通過する温帯低気圧によると結論づけた.
著者
濱中 春
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

18世紀後半のドイツの物理学者・著述家ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(1742-99)の諸活動(美術史、観相学、自然科学、スケッチ、雑誌メディア)を通して、この時代の知の形成と伝達における言語とイメージの相互作用を考察した。近世から近代への移行期のヨーロッパにおいては多くの領域で知の枠組みの変化や転換が起こったが、それは言語とイメージの機能および相互関係にみられる多様性と変動の中で展開したものであることが明らかになった。
著者
岩本 通弥 森 明子 重信 幸彦 法橋 量 山 泰幸 田村 和彦 門田 岳久 島村 恭則 松田 睦彦 及川 祥平 フェルトカンプ エルメル
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、日独の民俗学的実践のあり方の相違を、市民社会との関連から把捉することを目指し、大学・文化行政・市民活動の3者の社会的布置に関して、比較研究を行った。観光資源化や国家ブランド化に供しやすい日本の民俗学的実践に対し、市民本位のガバナビリティが構築されたドイツにおける地域住民運動には、その基盤に〈社会-文化〉という観念が根深く息づいており、住民主体の文化運動を推進している実態が明確となった。
著者
楠 房子 稲垣 成哲 徳久 悟 石山 琢子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で開発したスタンプオンシステムは、「スタンプ」デバイスを用いた展示の理解支援システムである。本システムは3つの特色がある(1)展示物の説明を取得するにはiPadなどのモバイル端末を使用する (2)「スタンプ」と呼ばれる有形デバイスをタッチすると、モバイル・デバイス内に含まれる対応する説明を開始する(3)来館者の自発的な探索活動を支援する。本システムの有効性を検証するために、6年生の児童を対象として、科学博物館で実験を行った。実験結果から、子どもたちは、博物館の展示物の観察を本システムを用いて楽しく行うことができた。また本システムは展示物の理解のために、効果的であることが明確になった。
著者
扇原 淳 山路 学
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,高齢者介護施設における感染対策の実態と感染対策を目的とした研修プログラムの開発とその評価を行った.その結果,集団感染が起こってから研修や感染マニュアルの整備を行っている可能性が否定できなかった.また,感染管理に関するビジュアルマニュアルを含む学習管理システムを開発し,その効果の検証を行った.その結果,開発した研修プログラムについては肯定的な評価を得られたが,画像コンテンツの表示の方法についてはいくつかの改善点が指摘された.今後は,学歴や職歴等の多様な背景を有する介護施設職員の個別性に配慮した感染対策研修プログラムのカスタマイズの方策について検討が必要である.
著者
皆川 卓 Horst Carl
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神聖ローマ帝国に属するドイツ・イタリアの諸領邦は、17世紀に多くの占領・進駐を経験し、平時の統治者である領邦君主はしばしば不在となった。軍と交渉当事者となったのは、なお自律性を保っていた官僚集団や貴族、都市、農村であり、主権のメルクマールの一つである外交権、すなわち他者の制約を受けない対外的交渉権は彼らにも開かれていた。そうした軍との交渉の機会が、その後の帝国における各領邦の外交権の成立にどのように影響したかを分析したのが本研究である。本研究の結果、邦属団体が占領軍と展開した交渉の形態によって、領邦の外交権のあり方が規定されたことが明らかになった。
著者
菅野 正泰
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マクロ経済の景気循環性が,ミクロとしての企業の信用力変化に与える影響を計量モデル化した。このモデルを使用した実証分析の結果,マクロ経済変数そのものよりも,フィルターで当該変数を要素分解して得たトレンド項やサイクル項を変数として導入したモデルの方が,日本企業の信用力をより良く説明することを示した。また,景気変動のストレスを企業の信用リスクのパラメーターに変換するモデルを開発し,従来,財務指標中心に評価していた企業の信用リスクをマクロ経済変数と業種相関の影響を考慮して評価することが可能となった。以上の研究成果は,査読論文2本他に収録された。更に,1本投稿予定である。
著者
伊藤 英一 谷田 林人 神尾 裕治 梅垣 正広
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

大学に障害学生が就学する割合は年々上昇している。聴覚障害の場合、講義において要約筆記やノートテイクを導入することで教員の音声情報を視覚化でき、ある程度の情報保障は可能となる。しかし、大学の講義では、教員は単に音声で解説することに留まらず、板書やスライドを利用しながら、さらにはそれぞれを連動させながら授業を展開している。そのため、聴覚障害のある学生は視覚化された音声情報に注視するだけでは情報が欠落してしまうため、必要に応じて注意喚起を促す必要がある。本研究では、注意喚起の必要な状況が発現した際、聴覚障害学生に対して注意を促す振動を呈示する無線通信システムを開発し、その必要性を実験により確認した。
著者
津田 良夫 沢辺 京子 高木 正洋 杉山 章 江下 優樹 都野 展子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

野外のネッタイシマカ集団が有する斑紋変異の現状をベトナム、インドネシア、ラオス、シンガポール、フィリピン、タイを調査地として調べた。その結果大陸に位置する調査地(ベトナム、タイ、ラオス)では、体色の黒い個体が集団の95%以上を占めていることがわかった。これに対して島嶼に位置する調査地(フィリピン、インドネシア)では白色化した個体の割合が高く変異の幅も広いことがわかった。インドネシア、ベトナム、タイで採集された個体を親世代として、それぞれの集団に対して体色のより黒い個体あるいはより白い個体の人為淘汰を行った結果、どの地域の集団からも黒色個体と白色個体を選抜することができた。スラバヤの集団より選抜された黒色系統と白色系統を用いて、個体群形質の比較を行った。その結果、(1)白色系統は黒色系統に比べて発育が遅い、(2)砂糖水だけで飼育したときの寿命はほぼ同じ、(3)繰り返し吸血させ産卵させた場合は白色系統の寿命の方が短い、(4)成虫の令別生残率と令別産卵数とから求めた繁殖能力は黒色系統の方が大きいことがわかった。白色系統と黒色系統の産卵場所選択について調べるために、インドネシア・アイルランガー大学の動物舎でmark-release-recapture実験を行った。黒色個体は放逐場所に最も近い屋内に設置したオビトラップに集中的に産卵したが、約40m離れた屋外のオビトラップにも産卵していた。一方白色個体は動物舎内の比較的明るい場所に設置したオビトラップにより多く産卵し、屋外のトラップへの産卵はごくわずかであった。野外集団のデング熱ウイルス媒介能力を成虫のトラップ調査によって実施するためには二酸化炭素源が必要であり、簡便に二酸化炭素を発生できる装置を考案し定期調査を実施した。
著者
味村 周平 能町 正治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現在の進行中もしくは実施される各物理実験では、検出器からの信号のパイルアップを避けるため検出器の大型化、細分割化のため多数のデータを並列に読み出す必要がある。そのため効率のよいデータ収集系が必要である。最新の工業規格を応用し、低コストで小規模から中規模実験に対応できるデータ収集系を開発した。シリアルデータ転送路を用いて多数のデータを並行して転送する。こういった次世代高速読み出しシステムを開発・構築し、実際の実験で実証を行う。
著者
崎山 治男
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、現代の新自由主義化とグローバル化が労働場面や私的場面での関係性を変容させる力学に関して、心理主義化に注目した理論的かつ実証的な研究を行った。具体的には、労働の感情労働化が進む中で公私における感情マネジメント能力を得ることへと人々が煽られる中で、「生の感情労働化」と社会への包摂ー排除が進むことを、感情社会学と現代社会学、社会哲学における統治論・権力論とを接合させる中で示した。それを裏付けるために、1990年代から現代に至るジェンダー、階層を異にする雑誌や自己啓発書におけるビジネススキル書、恋愛作法書などを分析し、「生の感情労働化」が階層差をも生み出すメカニズムを示した。
著者
崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

胚性幹細胞(ES cell)は、胚盤胞の内部細胞塊を起源とする株化細胞で、多分化能を持ち遺伝子組換えマウスの作成に必須である。現在ノックアウトマウス作成に利用されているES細胞株のほとんどは、株化が容易で生殖系列遺伝するキメラが得やすい129系統由来のものである。しかし、129系統は脳に奇形があり脳の機能解析には不向きであるため、膨大な時間と手間をかけて他の系統のマウスに戻し交配する必要があった。そのため129系統以外の系統由来のES細胞が世界的に求められているが、他のマウス系統由来の高効率で生殖系列遺伝するES細胞株はほとんどないのが現状である。本研究の目的は、様々な系統のマウスからES細胞株を系統的に樹立する方法を開発し、今後の発生工学を利用した研究に供することである。まずC57BL/6系統マウスより再現性良くES細胞株を樹立する方法を確立するために、細胞を採取する胚の培養条件と多分化能を持つ細胞の採取の時期と方法を詳細に検討した。その結果、特定の時期に物理的な方法で内部細胞塊を分離することが、ES細胞株樹立に重要であることが明らかになった。この方法を用いてC57BL/6N由来ES細胞株「RENKA」を樹立することに成功した。さらにこのES細胞株から生殖系列遺伝をするキメラマウスを効率的に作成する方法を検討した。その結果、ES細胞を導入する胚の成長時期と導入するES細胞の数が重要な要素であることが明らかになった。これらの研究成果は、「近交系C57BL/6由来ES細胞株RENKA及びこの細胞を用いたキメラマウス作製法」として特許出願中である。
著者
山本 健太
出版者
九州国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,現代演劇,とりわけ小劇場演劇に着目して,その流通,消費の空間分布から当該文化産業の大都市集積の構造と大都市の文化創造機能について明らかにしたものである.小劇場演劇が東京において発展し,また多くの劇団が東京で活動している要因の一つとして,観劇者による公演前後の文化施設のハシゴ行動が明らかになった.下北沢地域が,近接地域を含む文化活動の集積や相互作用によって,サブカルチャーを中心とした都市型文化産業の核心地域となっていた.
著者
小川 雅廣
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

老廃牛肉や廃鶏肉などの硬い肉を、肉特有のテクスチャーを損なうことなく軟化させる技術が求められている。本研究では、肉の硬さの原因であるコラーゲン線維を分解できる酵素(CDE)を海洋生物から探し出し、その酵素が肉を軟化できるか検討した。魚介類(ハマチと帆立貝)の内臓と魚類体表に付着した細菌89菌株にCDEを見出した。最も強い活性を示したのはPseudomonas属菌SF10株(ババガレイ体表に付着)とShewanella属菌JS51株(スズキ体表に付着)由来の酵素であった。SF10由来酵素を大量生産し、牛肉塊に添加し4℃で5日間保存したところ、肉は柔らかくなった。