著者
柏 美智
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.29-39, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
22

本研究は,困難に陥った一般病棟看護チームのレジリエンス表出による回復のプロセスを記述することを目的とした.看護師経験が6か月以上で,一般病棟に勤務する常勤看護師20名を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法に基づき分析した.困難に陥った一般病棟看護チームのレジリエンス表出による回復のプロセスは,【混迷】の中でチームが粘り強く耐えて【模索】し始めることで,看護師個々の相互関係を【醸成】し,さらにチームとして【強化】することで,安心空間の創出という【変容】に至るプロセスをたどったと解釈された.これら5局面において,【醸成】における〔対話の成立〕の有無がその後の【変容】にまでつながる契機となり,チームは相互作用を高めながらレジリエンスを表出して回復すると考察された.このプロセスにおいて,省察の場,つながりを求めること,経験知を蓄積していくことの重要性が示唆された.
著者
山口 秀二 勝間田 静江
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.1275-1280, 2013 (Released:2018-01-25)
参考文献数
11

交通事故における衝突速度と死亡や重傷の受傷確率の関係を,いくつかの衝突形態毎に解析し例示する.目的はISO26262自動車の機能安全規格に定められた危害度severityを区分する境界速度を設定するための参考データを提供することである.文献調査を実施し,発表されていない衝突形態や条件のデータを主に解析した.解析には,米国のNASS-CDSおよびNASS-PDCSデータと日本のITARDA統計データを用いた.
著者
茂木 千恵 福山 貴昭
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.37-42, 2021

カンナビジオール(CBD)は大麻植物に由来する植物性カンナビノイド化合物であるが,テトラヒドロカンナビノールが有する精神活性作用は有していない.近年,CBDは医療および獣医医療における緩和な抗不安薬,抗てんかん薬,および鎮痛薬として注目されている.一方,CBDの犬および猫における行動学的影響はほとんど調査されていない.本研究では診断症状ごとに8頭の犬と4頭の猫を対象に非盲検試験を実施し,CBD製品の忍容性,安全性,および有効性や有用性について検討した.試験では葛藤関連,恐怖関連,反復的または自傷行為などの問題行動を伴う犬および猫に8週間,CBD成分として1回当たり0.15-0.85 mg/kg を1日2回,空腹時に経口投与した.行動症状は,試験開始前(0日目)および2週後(14日目),4週後(28日目),または8週後(56日目)に評価した.有効性は,獣医師による観察結果および飼育者の満足度により検討した.CBD製品を8週間継続投与した12頭の動物のうち,4例の異常行動の発現量が75%以上減少し,6例が減少した(50%±25%)と評価された.
著者
落合直澄 著
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.下, 1888
著者
宮坂 宥勝
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.71-87, 1993-12-12 (Released:2017-08-31)

漢訳『摩登伽経』は、経名の通りにマータンガ(matanga)すなわちチャンダーラにまつわる経典として、夙に知られる。本経に登場するマータンガ種族のトゥリシャンク(Trisanku.漢訳、帝勝伽)王は、チャンダーラ出身である。この王を中心とした物語は『ディヴィヤーヴァダーナ』(Divyavadana)、叙事詩『ハリヴァンシャ』(Harivamsa)などにも伝える。階級批判さらには社会的差別の否定がストーリーのなかでどのように展開するかを考察するのが本稿である。前回発表した同題(一)の続篇になる。なお前篇のチャンダーラ観の構成は、次のとおりである。(1)階級批判もしくは社会的差別の対象としての存在。(2)救済譚における存在。(3)出家についての比喩。(4)差別是認または社会的差別さらには蔑視対象。(5)尊格化。(6)その他。
著者
多田隈 理一郎
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

生活空間の様々な物体に動力伝達機能を持たせ、荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、直交する2方向に歯車構造を持つ全方向駆動歯車を中核とする様々な機械要素技術を創成し、その機構の小型化・高効率化を進め、従来技術では動力を付加できなかった小さい物体や狭い空間にも駆動機能を持たせた。具体的には、自動車のドアミラーに収納可能な、正およびゼロの曲率を有する「J型」の全方向駆動歯車を製作し、サイドミラーを収納形態から開いた通常の形態まで、滑らかに駆動した。また、全方向に物体を搬送できるロボット型のテーブルを、ゼロの曲率を有する平面型の全方向駆動歯車を用いて2種類製作した。
著者
佐見 由紀子 植田 誠治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.269-279, 2017-11-30 (Released:2017-11-30)
参考文献数
14

目的:中学校で取り上げる市販薬の使用における副作用の「罹患性」の自覚を高める教材を用いた保健の授業を行い,その効果を検討することを目的とした.
著者
岩野 卓 樋町 美華 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.52-63, 2012-08-20 (Released:2013-09-06)
参考文献数
55
被引用文献数
2

Psychological wellbeing (PWB) is known to be critical for promoting mental health. However, to date, the exact features resulting in PWB have not been identified. Therefore, the effects of factors promoting PWB suggested in previous studies were compared. Workers (n=447) that were covered different types of work such as medical, industrial, and educational staff, responded to the Psychological Well-Being Scale, the Automatic Thoughts Questionnaire-Revised, Positive and Negative Affect Schedule, Stress Coping Inventory, and the Job Content Questionnaire. Result of the multiple regression analyses and path analyses indicated that positive and negative automatic thoughts that comprised positive thinking and negative thoughts about the self, as well as the decision latitude had significant effects on PWB. Therefore, it is concluded that automatic thoughts and decision latitude are critical for promoting PWB.
著者
Yuta Masuda Issei Kato Kei Nagashima
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine (ISSN:21868131)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.243-253, 2021-09-25 (Released:2021-09-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

The aim of the present study was to clarify the factors affecting an increase in core body temperature during 40°C water immersion to the subclavian level. Fifteen healthy males were immersed in water for 60 min. Rectal temperature (Trec) and skin temperature (Tsk) at four skin sites were determined. Minute ventilation (VE) was measured, and metabolic rate was determined by indirect calorimetry. Skin blood flow and sweat rate at the forehead were assessed using laser-Doppler flowmetry (%LDFhead) and dew hygrometry (SRhead), respectively. Hot feeling was assessed with a visual analog scale. When Trec reached 39°C or participants reported an extremely hot feeling, the experiment was ceased. Eleven participants were unable to complete the protocol (ten participants due to Trec > 39°C; and one due to excessive hot feeling). Trec increased with immersion period. Mean Tsk was unchanged from 20 min. VE and metabolic rate increased with immersion period. %LDFhead and SRhead increased after immersion and remained unchanged from 15 and 30 min, respectively. Change in Trec from the baseline at 15, 30, and 45 min was correlated to cumulative change in metabolic rate from the baseline at 0-15, 0-30, and 0-45 min. No correlations were observed between change in Trec and cumulative changes in VE, %LDFhead, and SRhead from baseline, hot feeling, body weight and body composition. Water immersion at 40°C induced a large difference in the increase of Trec, in which metabolic responses to heat stress may be involved. The relationship between heat tolerance and change in Trec is different among individuals.

2 0 0 0 OA 国訳漢文大成

著者
国民文庫刊行会 編
出版者
国民文庫刊行会
巻号頁・発行日
vol.経子史部 第3巻, 1924
著者
疇地 希美
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育実践ジャーナル (ISSN:18809901)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 2007 (Released:2018-04-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

2 0 0 0 OA 鉱物学雑感

著者
熊沢 峰夫
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
鉱物学雜誌 (ISSN:04541146)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.73-81, 1983-03-30 (Released:2009-08-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

A personal view on the current state of mineralogical communities is presented in order to facilitate the expansion of future possibilities.
著者
土田 定克 Sadakatsu Tsuchida
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
vol.(74), pp.29-44, 2017-12-20

ラフマニノフの「音の絵」作品39は難解である。8曲も続く苦渋に満ちた短調の末、それを一気に覆すただ1曲の長調。その理解のカギは、終曲で響く聖三打(「タタタン」の律動動機)にある。この聖三打の意味は「行進」に限らない。ラフマニノフの二大ピアノ協奏曲はじめ他の作品の用例を見ると、「決意」「宿命」「勝利」等の意味を担っている。さらに聖三打は原初次元で三一性を脈打つため、原初の「三一性」も象ることができる。それは聴き手に「聖なる動機」を与える大役を担うものである。 ラフマニノフが三一性を重んじた証拠に、「24 の前奏曲」と同様、「音の絵」作品39の頂点では「三連打が三音域で三回」も強調される。こうして「私の力は弱さの中で発揮される」を表す聖三打は、「神の力」を象ったラフマニノフの信仰表現であり、小さくても大きな力を秘めた芥子種に他ならない。