著者
矢守 克也 飯尾 能久 城下 英行
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2009, (Released:2020-12-24)
参考文献数
42
被引用文献数
3

巨大災害による被害,新型感染症の世界的蔓延など,科学(サイエンス)と社会の関係の問い直しを迫られる出来事が近年相次いでいる。本研究は,このような現状を踏まえて,地震学をめぐる科学コミュニケーションを事例に,「オープンサイエンス」を鍵概念として科学と社会の関係の再構築を試みようとしたものである。本リサーチでは,大学の付属研究施設である地震観測所を地震学のサイエンスミュージアム(博物館施設)としても機能させることを目指して,10年間にわたって実施してきたアクションリサーチについて報告する。具体的には,「阿武山サポーター」とよばれる市民ボランティアが,ミュージアムの展示内容に関する「解説・観覧」,地震活動の「観測・観察」,および,その結果得られた地震データ等の「解析・解読」,以上3つの側面で地震学に「参加」するための仕組みを作り上げた。以上を踏まえて,「学ぶ」ことを中心とした,従来,「アウトリーチ」と称されてきた科学コミュニケーションだけでなく,科学者と市民が地震学を「(共に)なす」ことを伴う,言いかえれば,「シチズンサイエンス」として行われる科学コミュニケーションを実現することが,地震学を「オープンサイエンス」として社会に定着させるためには必要であることを指摘した。
著者
島津 明人
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-6, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
38
被引用文献数
10 17

This article gives an overview of the recently introduced concept of work engagement: a positive, fulfilling, affective motivational state of work-related well-being. I first define engagement as a state including vigor, dedication, and absorption, and then refer to how engagement differs from related concepts (i.e., burnout and workaholism). Work engagement is a unique concept that is best predicted by job resources (e.g., autonomy, supervisory coaching, performance feedback) and personal resources (e.g., optimism, self-efficacy, self-esteem) and is predictive of psychological/physical health, proactive organizational behavior, and job performance. The most often used instrument to measure engagement is the Utrecht Work Engagement Scale, a self-report instrument that has been validated in many countries across the world. The paper closes with practical implications to improve work engagement in terms of job and personal resources.
著者
津本 周作 木村 知広 河村 敏彦 平野 章二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.AIMED-006, pp.12, 2018-11-21 (Released:2021-08-28)

病院情報システム蓄積された実行オーダー歴に系列マイニング・クラスタリングを適用して,外来診療におけるクリニカルパスを構成する方法の開発と検証について報告する。
著者
Takafumi TANEI Yasukazu KAJITA Shigenori TAKEBAYASHI Kosuke AOKI Norimoto NAKAHARA Toshihiko WAKABAYASHI
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.213-221, 2019 (Released:2019-06-15)
参考文献数
38
被引用文献数
6 17

The efficacy and predictive factors associated with successful spinal cord stimulation (SCS) for central post-stroke pain (CPSP) have yet to be definitively established. Thus, this study evaluated the rates of pain relief found after more than 12 months and the predictive factors associated with the success of SCS for CPSP. The degree of pain after SCS in 18 patients with CPSP was assessed using the Visual Analog Scale preoperatively, at 1, 6 and 12 months after surgery, and at the time of the last follow-up. After calculating the percentage of pain relief (PPR), patients were separated into two groups. The first group exhibited continuing PPR ≥30% at more than 12 months (effect group) while the second group exhibited successful/unsuccessful trials followed by decreasing PPR <30% within 12 months (no effect group). Pain relief for more than 12 months was achieved in eight out of 18 (44.4%) patients during the 67.3 ± 35.5 month follow-up period. Statistically significant differences were found for both the age and stroke location during comparisons of the preoperative characteristics between the two groups. There was a significantly younger mean age for the effect versus the no effect group. Patients with stoke in non-thalamus were significantly enriched in effect group compared with those with stoke in thalamus. Multivariable analysis using these two factors found no statistical differences, suggesting that these two factors might possibly exhibit the same behaviors for the SCS effect. These results suggest that SCS may be able to provide pain relief in young, non-thalamus stroke patients with CPSP.
著者
吉村 道由 荒田 仁 出口 尚寿 髙嶋 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1876-1884, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
5

しびれは個々でその定義が異なり,鑑別も非常に多い.高齢者においては,年齢に伴う動脈硬化性変化や骨性変化によりきたす疾患も多くみられる.診断をするにあたっては既往症や基礎疾患などの背景と伴に,発症様式,性状,部位なども重要となる.しびれのメカニズムを述べるとともに,末梢性,中枢性,部位別に分類してそれぞれの代表的な疾患の特徴や,診断をすすめるうえでの検査について述べる.
著者
熊谷 忠和 Kumagai Tadakazu
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.309-318, 2011

本稿は,「ハンセン病当事者のライフストーリーにみる健康自尊意識研究」の一貫した視点である社会構築主義に焦点をあてることとした.つまり,社会構築主義の定義を示したうえで,20世紀後半以降の社会構築主義の理論的潮流,とりわけ専門援助論に引きつけたその理論的潮流の再整理を試みた.結果,以下9点について,整理がなされた.(1)マルクス主義では,労働力として価値を持たないことが社会的不利,社会的スティグマを負わされることになり,またその体制維持のため「社会問題」として扱われるとされる.(2)マルクス主義への批判的立場は「客観的な基準や科学的な法則は存在しない」とした.(3)フーコーは,「自己統治性」の概念を打ち出し,権力や政治的な思惑が個人や身体やまなざしにきめ細かく貫徹,統治していくとした.(4)千田は,社会構築主義の理論的潮流の系譜を「社会問題をめぐる系譜」「物語叙述をめぐる系譜」「身体をめぐる系譜」に分類した.(5)フーコーは,専門家は支配的な言説を定義し,また「真理truth」の所有権をもち,その対象にある人は支配に晒され抑圧されるとした.(6)ポストモダニズムあるいは社会構築主義の考えは,1980年代後半,急激に専門援助者,とりわけ心理臨床の領域を中心に取り入れられていった.(7)マーゴリンは,フーコー思想を基盤にし,社会構築主義専門援助(ソーシャルワーク)論を展開した.(8)ジョンソンとグラントは,社会構築主義の視点から,専門援助の展望を開くためには,当事者の構築している世界観・文化観を共有する能力cultural competenceがその切り口になるとした.(9)社会構築主義の視点は,クライエントがどのように抑圧を受けてきたのか,またどのように内在化しているのか,そして,そこに立ち向かっているのか,を専門援助者が共同的対話によって,そのコンテクストを知り,学ぶツールとなる.This study is an attempt to review the theoretical currents of "Social Constructionism" after the 1950s as a premise of "A Study on "Health Esteem"(HE) in the Life Story of a Hansen's Patient". My research has found the following nine points. 1. Marxism regards patients as a kind of social disadvantage and even social problem due to their expulsion from the work force. 2. Postmodernism argues that there is no objective standard or scientific law. 3. Foucault proposes the concept of "self-governmentality". 4. Senda sets up the three theoretical currents of "SocialConstructionism". 5. Foucault also indicates that the experts define dominant discourses in which patients are oppressed. 6. The principle of social construction was swiftly adopted in the latter half of the 1980s by specialized standbys, especially in the field of clinical psychology. 7. Maglin founds his idea of special support rooted in the principle of social construction on Foucault's thoughts. 8. Johnson and Grant contend from the viewpoint of social construction that "cultural competence" can be a crucial factor in sharing views of the world and cultures. 9. The principle of social construction allows social workers to learn through interviews how their clients have received and confronted suppression.
著者
甲斐 太陽 永井 宏達 阪本 昌志 山本 愛 山本 ちさと 白岩 加代子 宮﨑 純弥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0792, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】運動場面におけるアイシングを用いた寒冷療法は,これまで広く行われており,運動後の疼痛の制御や,疲労の軽減,その他急性外傷による炎症や腫脹の軽減などが目的となっている。運動後のアイシングについては,オーバーユーズによる急性炎症反応の抑制や,組織治癒の際に伴う熱,発赤などを減少させる効果が確認されている。具体例としては,投球後の投手が肩をアイシングすることがあげられる。一方で,筋力トレーニング実施後に生じる副次的作用として遅発性筋痛があるが,トレーニングした筋そのものに対してのアイシングは,その効果に関する報告が少なく,また統一した見解が得ているわけではない。アイシングによる遅発性筋痛への影響を明らかにすることは,運動療法を効率よく行う上でも重要な知見となる。本研究では,アイシングによる寒冷療法は,遅発性筋痛の軽減に関与するのかを検証することを目的とした。【方法】対象は健常若年者29名(男14名,女15名18.6±0.9歳)とした。層化ブロックランダム割り付けにより,対象者を介入群14名,対照群15名に分類した。研究デザインは無作為化比較対照試験とし,両群に対して遅発性筋痛が生じうる負荷を加えた後に,介入群にのみアイシングを施行した。対象者の非利き手側の上腕二頭筋に遅発性筋痛を生じさせるため,ダンベル(男性5kg,女性3kg)を用いた肘関節屈曲運動を動作が継続できなくなるまで実施した。運動速度は屈伸運動が4秒に1回のペースになるように行い,メトロノームを用いて統制した。運動中止の判断は,肘関節屈曲角度が90°未満なる施行が2回連続で生じた時点とした。3分間の休憩の後,再度同様の運動を実施し,この過程を3セット繰りかえした。その後,介入群には軽度肘関節屈曲位で上腕二頭筋に氷嚢を用いてアイシングを20分間実施した。対照群には,介入群と同様の姿勢で20分間安静をとるよう指示した。評価項目はMMT(Manual Muscle Test)3レベル運動時のVAS(Visual Analog Scale),および上腕二頭筋の圧痛を評価した。圧痛の評価には徒手筋力計(μ-tas)を使用した。圧痛の測定部位は肩峰と肘窩を結んだ線の遠位3分の1を基準とし,徒手筋力計を介して上腕二頭筋に検者が圧追を加え,対象者が痛みを感じた時の数値を測定,記録した。VASは介入群,対照群ともに課題前,課題直後,アイシング直後,その後一週間毎日各個人で評価した。圧痛は課題前,課題直後,アイシング直後,実験一日後,二日後,五日後,六日後,七日後に評価した。圧痛の評価は同一の検者が実施し,評価は同一時間帯に行った。実験期間中は介入群,対照群ともに筋力トレーニング等を行わず,通常通りの生活を送るよう指導した。統計解析には,VAS,圧痛に関して,群,時間を要因とした分割プロットデザイン分散解析を用いた。交互作用のみられた項目については事後検定を行った。なお,圧痛の評価は,級内相関係数(ICC)を算出し信頼性の評価を検討した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って,対象者には研究の内容,身体に関わる影響を紙面上にて説明した上,書面にて同意を得た。【結果】今回の研究では,最終評価まで脱落者はおらず,全参加者が解析対象となった。圧痛検査のICC(1,1)は0.83であり,良好な信頼性を有していた。VASに関しては,介入群において,疼痛が有意に抑制されていた(交互作用:p<0.05)。VASにおける群間の差が最も大きかったのは,トレーニング三日後であり,介入群4.8±3.1cm,対照群6.8±1.7cmであった。圧痛に関しては,有意ではないものの中程度の効果量がみられた(交互作用:p<0.088,偏η2=0.07)。圧痛における群間の差が最も大きかったのはトレーニング二日後であり,介入群76±55N,対照群39±28Nであった。【考察】本研究の結果,筋力トレーニング後にアイシングを用いることによって,その後の遅発性筋痛の抑制に影響を与えることが明らかになった。遅発性筋痛が生じる原因としては,筋原線維の配列の乱れや筋疲労によって毛細血管拡張が生じることによる細胞間隙の浮腫および炎症反応などが述べられている。一方,アイシングの効果としては血管が収縮され血流量が減少し,炎症反応を抑えることができるとされている。今回の遅発性筋痛の抑制には,アイシングにより血流量が減少され,浮腫が軽減されたことが関与している可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】運動療法後のアイシングにより遅発性筋痛を抑制することができれば,その後のパフォーマンス低下の予防や,よりスムーズなリハビリテーション介入につながる可能性がある。今後,これらの関係性を明らかにしていくことで,理学療法研究としての意義がさらに高くなると考える。
著者
山本 聡 山崎 隆 山形 仁 佐藤 正
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.74-83, 2007 (Released:2021-06-01)

「ゲームの処方箋」プロジェクトは、早稲田大学こどもメディア研究所との産学協同研究である(プロジェクトリーダー:早稲田大学・河合隆史助教授)。本プロジェクトは、科学的手法でゲームの「人間にとっての良い影響(効能)」及び「遊び方・視聴方法等の活用方法(処方)」に関する研究を行い、ゲームが日常生活でサプリメントのような役割を果たすための知見を得ることを目的としている。第一線の科学者及び臨床家がプロジェクトに関わり、205年4月からの1年間を第1期として実験・研究を行ってきた。その結果、きわめて新規性・有効性の高い結果が得られた。206年7月にはシンポジウムを開催し、結果の発表を行っている。
著者
橋立 博幸 島田 裕之 潮見 泰藏 笹本 憲男
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.159-166, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
5

【目的】本研究は生活機能低下の危険のある高齢者において筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】二次予防対象者に選定された地域在住高齢者68人(平均年齢77.4歳)を,下肢粗大筋群の重錘負荷運動およびマシンを用いたトレーニングを行う筋力増強運動群(n = 40)と,下肢粗大筋群の重錘負荷運動とともに姿勢バランス練習,歩行練習を行う機能的トレーニング群(n = 28)に群別し,運動介入を3ヵ月間行った。介入前後には,下肢筋力,姿勢バランス能力,歩行機能(timed up & go test(TUG),最大歩行速度(MWS)),活動能力,主観的健康観を評価した。【結果】介入前後において機能的トレーニング群は筋力増強運動群に比べてTUG,MWS,主観的健康観の成績の有意な改善を示した。【結論】二次予防対象者における3ヵ月間の筋力増強運動を含む機能的トレーニングは,筋力増強運動のみの実施に比べて,歩行機能,主観的健康観の向上が得られる有用な介入である可能性が示唆された。
著者
橘 温 森岡 節夫 中井 滋郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.9-15, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
24
被引用文献数
2 4

早生ウンシュウ‘宮川早生’を, 無深耕•少肥及び深耕•施肥と, 無せん定•無摘果及びせん定•摘果の各栽培条件下で, ha 当たり1,250, 2,500, 5,000及び10,000本の4つの栽植密度で, 1967年に植え付けた. その後間伐せずに栽培を続け, 4年生時 (1969年) から19年生時(1984年) までのデータを用い, 各栽培条件下における栽植密度が, 単位面積当たりの収量に及ぼす影響を検討した. また各栽培条件が収量に及ぼす影響も比較検討した.1. いずれの栽培条件においても, 収量は初期に5,000及び10,000本/haの高密度で多かったが, やがて減少傾向に転じ, 樹齢とともに1,250及び2,500本/haの低密度で多くなった. 以上の関係は, 栽培条件によってほとんど影響を受けないようであった.2. 各樹齢において, 最高収量を示した栽植密度, すなわち収量に関する最適密度は, 4~5年生; 10,000本/ha, 6~7年生; 5,000本/ha, 8~13年生; 2,500本/ha, 及び14~19年生; 1,250本/haであり, 最適密度における4年生時から19年生時までの平均収量は68t/haであった.3. 各栽植密度が隔年結果を示し始めた時の樹齢は, 無せん定•無摘果条件において, いずれも初めて結果した翌年であった. せん定•摘果条件においては, 栽植密度の低下とともに遅れて現れた.4. 無深耕•少肥条件と深耕•施肥条件の収量を比較すると, 後者の方が年次変動は小さかったが, 両者の間にほとんど差はみられなかった.無せん定•無摘果条件とせん定•摘果条件の収量を比較すると, 前者の方が明らかに年次変動が大きく, また収量はやや多いようであった.
著者
大西 麻未
出版者
日本看護評価学会
雑誌
日本看護評価学会誌 (ISSN:21864500)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-9, 2013

本研究は,チームにイノベーションをもたらす風土(革新的風土)を測定する尺度としてAnderson&West(1998)によって開発されたTeam Climate Inventory(TCI)の日本語版を作成し,看護チームにおける信頼性・妥当性を検討することを目的として,看護職を対象とした自記式質問紙調査を実施した.14病院112部署2,955名の看護職に調査票を配布し,2,426票回収した(回収率82.1%).探索的因子分析の結果,TCI日本語版は原版と同様の因子構造を持つことが確認された.Cronbachの&alpha;信頼性係数は,総合得点及びすべての下位尺度において0.9以上であった.さらに,TCI日本語版の得点は,チーム単位での値として扱うことが妥当であることが示され,TCIを看護チームの革新的風土の評価指標として利用可能であると判断された.チーム属性との関連においては,病院平均勤続年数及び大卒以上の看護師割合がTCI得点と関連していたが,革新的風土と関連する要因については,今後さらなる調査が必要であると考えられた.
著者
末冨 浩
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.53-71, 2003-03-20 (Released:2018-04-25)
参考文献数
23

This paper examines J. G. A.Pocock's interpretation of Edmund Burke. Pocock's interpretation of Burke is well known among scholars of Burke's thought, but its relevance to other interpretations of Burke is not so clear. I make it clear that Pocock's interpretation can be read as a counterargument to the Namier school, who regarded Burke as an opportunist. This type of the interpretation propounded by the Namier school was virtually denied by the Natural Law Interpretation of Burke, which was offered by the American political philosophers under the influence of Leo Strauss. Pocock's interpretation is an counterargument not only to the Namier school but also to the Natural Law Interpretation. Through this examination, I suggest some implications of Pocock's interpretation in helping to appreciate the pragmatic aspects of Burk's thought.
著者
佐伯 英人 今村 大志 松永 武 水野 晃秀
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-36, 2013-07-17 (Released:2013-08-09)
参考文献数
14

チリメンモンスターとはチリメンジャコの混獲物のことである。これまで,中学校の理科の授業においてチリメンモンスターを教材として用い,授業実践を通して,その教育効果を検証した事例はみあたらなかった。そこで,本研究では,中学校理科第2学年の単元「動物の仲間」にチリメンモンスターを教材とした分類活動を単元の導入時と単元末に取り入れ,実践をそれぞれ行い,生徒の意識の変容と理解の程度を調べ,その教育効果を検証した。その結果,明らかになったことは次の①~⑤である。① 単元の導入時に行った分類活動は,生徒の興味を高めるのに有効であった。② 単元末に行った分類活動は,「脊椎動物の特徴を知っている」という意識を高めるのに有効であった。③ 単元末に行った分類活動を通して,「無脊椎動物の特徴を知っている」という意識に天井効果がみられた。④ 単元を通して,「生物を大切にしたい」という意識をもち続けていた。⑤ 単元末に行った分類活動の方が,単元の導入時に行った分類活動よりも,分類に関する理解が高いことが分かった。これらのことは,単元の導入時の分類活動は,生徒の興味を高めるのに有効であり,一方,単元末に行う分類活動は,生徒の理解を深めることに有効であることを示唆している。
著者
井口 治夫
出版者
上智大学
雑誌
アメリカ・カナダ研究 (ISSN:09148035)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-93, 2003-03-31

本稿は,太平洋戦争末期から連合国による対日占領初期における,ダグラス・マッカーサー将軍の信任が厚いとされた軍人ボナー・フェラーズの考えと行動を考察の対象としている。フェラーズは,1944年から1946年までマッカーサーの副官を務め,また,終戦までマッカーサーのもとで推進された対日心理作戦の中心人物であった。本稿で紹介されている,フェラーズの天皇・天皇制と日米戦争終結に対する見解,フェラーズが1946年夏に退官を決意するに至った理由と状況,そして最も重要である終戦後フェラーズが滞日中に行ったことなど,フェラーズに関する詳細の多くは,いまだ紹介されたことのないものである。終戦前後の日米関係におけるフェラーズの多大な貢献は,マッカーサーが指揮する軍隊内で,天皇制を利用することにより,終戦,武装解除,占領改革を達成するという見解を積極的に後押ししていったところにあったといえよう。フェラーズは,滞日時代に日本が降伏を決断するに至った経緯に関する歴史資料や証言を集め,これらをもとに1946年の最初の三ヵ月間で1944年から1945年にかけて彼が推進した対日心理作戦を総括する報告書を書き上げたが,この執筆作業を通じて彼は,ドイツの降伏から広島へ最初の原爆が投下されるまでの期間,日米両国は,太平洋戦争を早期に終結させる機会をなぜ有効利用できなかったのかという疑問に関心を強めていったのであった。
著者
大西 俊輝 山内 愛里沙 大串 旭 石井 亮 青野 裕司 宮田 章裕
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1620-1628, 2021-09-15

褒める行為は,対象の行動や性格に向けられた称賛を表現する言語的・非言語的な行動であると考えられているが,相手を上手く褒めるためには言語的・非言語的行動をどのように用いれば良いかは明らかにされていない.そこで我々は,人間の言語的・非言語的行動を利用して,対話における褒め方の上手さを分析する取り組みに着目する.本稿では,対話における褒め方の上手さと人間の行動の関係を分析する取り組みとして,言語的・非言語的行動の中から頭部と顔部の振舞いの着目し,相手を上手く褒めるためにはどのような頭部と顔部の振舞いが重要であるか明らかにする取り組みを行う.はじめに,頭部と顔部の振舞いと,褒め方の上手さの評価値を含む対話コーパスを作成した.次に,頭部と顔部の振舞いに関連する特徴量を用いて褒め方の上手さの評価値を推定する機械学習モデルを構築し,どのような頭部と顔部の振舞いが重要であるかを検証した.その結果,頭部の向きや視線の方向に関する振舞い,口角や口の開きに関する振舞いが相手を上手く褒めるためには重要であることが明らかになった.また,自分が相手を上手く褒められたかどうか判断する際は,相手の瞼や瞬きの様子に注目すれば良い可能性が示唆された.