著者
中村 佳敬
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

上向き落雷は冬季雷の特徴のひとつだが、一般的な雷放電との相違性などについて雲内電荷の観点からの議論がなされていない。冬季雲内の電荷領域、放電規模を放電路可視化装置により実証するため、夏季雷では実績のあるVHF帯干渉計とLF帯受信機を冬季雷に向けて改良した。VHF帯干渉計は記録方式を連続記録にすることで、従来機では制約のあるリコイルリーダを複数可視化し雲内電荷領域を推定した。冬季に発生する水平に広がる雷放電にはLF帯受信機が適しているが詳細な放電過程の可視化には不十分である。この一因にLF帯受信機のアンテナ周波数特性にあると考え、受信アンテナ回路の改良を実施し試験観測によりその有用性を評価した。
著者
門田 守
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ホイッグを中心としたイギリス政治体制とByronの関係を明らかにした。ホイッグには進歩的であるが、同時に体制擁護的側面があることを突き止め、Byronにも同様な政治的特性があることを示した。The Giaour、The Bride of Abydos、The Corsair等の初期東方物語詩群、The Islandという後期の詩、三つの政治演説等を分析して、彼のラディカリズムは必ず貴族的な保守主義によって抑制されていることを明らかにした。
著者
工藤 晴也 田中 聡子 楠八重 有紗 藤原 俊 クラウディア テデスキ チェッティ ムスコリーノ アントネッラ ラナルディ 宮田 順一
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

世界遺産であり5世紀に作られた初期キリスト教モザイク、ガッラ・プラチディア廟モザイク壁画の保存・修復を目的とする現状調査及び修復事業を行った。壁の構造、モザイク制作技法、材料の科学分析において研究成果をあげることができた。また、修復事業によって劣化箇所の補修及び全体の洗浄を行い保存環境の向上に務めると共に作品鑑賞の環境を改善した。研究成果は最終年度にイタリア文化会館において展覧会及びシンポジウムを開催し、広く国民に公開した。
著者
東 泰孝
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

インターロイキン(IL)-19遺伝子欠損マウス(KO)を用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルを作製した。生存率は、IL-19KOは野生型(WT)と比べて低下した。また、体重減少、血便の有無、下痢、いずれもIL-19KOの方がWTよりも酷かった。次に、遠位結腸のHE染色像でも、IL-19KOはWTよりも上皮細胞の欠損が多く、炎症性細胞の浸潤も顕著に増加し、炎症の明らかに悪化した。
著者
岩井 邦久 森永 八江 西嶋 智彦
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フラボノイドは抗酸化活性等の保健効果が期待されているが、吸収性が低い。我々は、ペクチンがフラボノイドの吸収を促進する作用とそれによる生理的影響について検討した。その結果、フラボノイドの水酸基が多いことやカルボニル基の有無等が作用に関与していることを明らかにした。また、ケルセチンの吸収はペクチンの摂取量依存的に増加し、それによって低密度リポタンパク質 (LDL) の酸化抵抗性も強まることも明らかになった。これらの結果は、ペクチンの新しい作用を示す可能性があると共に、フラボノイドの吸収性向上にアプローチするものである。
著者
安部 大就 山本 聡 下村 泰彦 増田 昇
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、GIS(地理情報システム)を研究ツールとして、流域管理の視点から都市近郊エリアにおける土地利用の適正化を図るための計画技術の開発を試みた。研究方法としては、関西際空港の建設に伴い都市基盤施設の整備が進む中で土地利用変化や人口動態が著しい大阪府南部地域をスタディエリアとして、1973年と1990年の大阪府作成の土地利用現況図と人口のデータ、国土地理院発行の標高データを用いて解析し、土地利用変化に影響を及ぽす地形条件や交通条件などの要因をまず明らかにした。次いで、本地域の2級河川流域にほぼ対応した市町域を解析単位として、その土地利用形態や人口分布形態などの地域環境データを用いて地域環境容量を試算し、土地利用変化が地域環境容量に与える影響の定量化を試みるとともに地域環境容量の変化を予測し、土地利用の適正化を図るための課題を探究した。土地利用変化に影響を及ぽす要因を採った結果、地形条件では本地域での標高50mは都市的土地利用から農村的土地利用に変化する境界領域であり、標高100mは農村的土地利用から山林的土地利用に転換する境界領域であることや交通条件では鉄道駅の土地利用変化への影響範囲は住居系用途に対しては約800m、商業系では約300m、工業系では約700m、幹線道路の影響範囲は住居系用途に対しては約500m、商業系では約100m、工業系では明確な影響範頗がないことを明らかにした。次いで、地域環境容量としては、CO_2固定容量、水資源容量を取り上げ、既往の研究成果を応用したモデル式により試算した。その結果、各容量の変化は都市的土地利用の拡大に伴う人口の増大と森林資源の減少に大きく依存することを明らかにし、土地利用の適正化を図るための課題を明らかにした。
著者
小坂田 耕太郎 NELI Mintcheva NELI N.Mintcheva-Peneva
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

前年度までの成果に基づき、かさだかい有機ケイ素配位子であるシルセスキオキサンを配位子とする有機白金およびパラジウム錯体の合成を行った。キレート配位するテトラメチルエチレンジアミンや2,2-ビピリジンを支持配位子とするフェニル(ヨード)およびジヨード錯体をシルセスキオキサン配位子の置換反応で新規錯体に導いた。シルセスキオキサンパラジウム錯体は、これまで合成例がなく、本研究がはじめての報告となる。錯体の構造は単結晶構造解析で明らかにしたが、溶液中の構造をNMRスペクトルで検討すると動的な挙動を示すことがわかった。H,C,FなどのNMRスペクトルを種々の温度で測定し、精密に解析することによって、この錯体はこれまでに申請者がみいだした、O-H-O水素結合のスイッチングに加えて、シルセスキオキサンが回転することによってコンフォメーション異性体の変換がおきていること、シルセスキオキサン配位子がきわめてかさだかいために、そのコンフォメーション異性体が低温では区別して観測されることが明らかになった。類似の錯体を多数合成し、比較することによって、中心金属の電子状態とコンフォメーション変化速度とに相関があることがわかった。このような結果と以前の結果とをあわせて、後期遷移金属のシルセスキオキサン配位錯体の合成法、構造変化について広範な立場からの区分をおこなった。その結果、種々の動的挙動のパラメーターがモデル化合物であるシリルオキソ錯体とは大きく異なることを明らかにすることができた。本研究によってシルセスキオキサン錯体についての重要な知見が得られ、これを米国化学会発行のOrganometallics誌に2報の論文として報告した。
著者
大清水 裕
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は研究計画の最終年度であり、これまでの研究をまとめ、公開することに精力を傾けた。他方、研究計画に沿って小アジアの諸遺跡、特にエフェソスやアフロディシアスの調査も行なっている。まず、学会での口頭発表としては、5月の日本西洋史学会第61回大会で「『マクタールの収穫夫』の世界-3世紀北アフリカの都市参事会の継続と変容-」と題した報告を行なった。「マクタールの収穫夫」とは、チュニジア中部の高原地帯に位置する都市マクタールで発見された3世紀後半の墓碑に登場する人物である。この碑文は、現在、ルーヴル美術館の所蔵となっており、2010年5月に行なった実地調査の成果を交えて報告を行なった。従来、「3世紀の危機」を反映したものと扱われてきた有名な碑文だが、その内容だけでなく、碑文の刻まれた石の形状や遺跡のコンテクストも含めてその位置づけを見直し、「危機」とされる時代の再評価を行なっている。次に、雑誌等に発表したものとしては、「マクシミヌス・トラクス政権の崩壊と北アフリカ」(『史学雑誌』121編2号、2012年2月、1-38頁)がある。この論文では、238年の北アフリカでの反乱で殺害された人物の墓碑の再評価を行なった。従来、その文言から、親元老院的な都市名望家とされてきたこの人物を、その石の形状や発見地などの情報をもとに、帝政期の北アフリカ独自の文化環境に生きた人物として描き出している。また、Les noms des empereurs tetrarchiques marteles: lesinscriptions de l'Afrique romaine,Classica et Christiana,6/2,2011,549-570も公表されている。四帝統治の時代の碑文から皇帝たちの名前が削り取られた理由を検討したもので、従来想定されてきた理由とは別に、碑文の刻まれた石の再利用という目的を重視するよう指摘した。遺跡での現地調査としては、今年度は9月にトルコの諸遺跡を訪れた。その成果は、今後何らかの形で公開していきたいと考えている。
著者
桃井 治郎
出版者
中部大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、欧州・地中海パートナーシップを事例に、地域統合組織(EU)と第三国各国(アルジェリアやチュニジア)という非対称なアクター間の地域協力関係について分析した。同事例では、(政治力の大きな)EUによる一方的なEU化が推進されているわけではなく、むしろ同パートナーシップの枠組みのもとで対話が促進されており、非対称地域協力は第三国の側にとっても有意義な国際レジームとなっていると評価することができる。
著者
入江 光輝 柏木 健一 梅田 信 韓 畯奎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

乾燥地の貯水池は集水域の植生被服率が低いため土砂流入が多く、堆砂が進みやすい。対策として浚渫は有効だが、特に発展途上国では経済的理由で行われず利用可能な水資源量が減少している。そこで、チュニジアの貯水池で堆砂に関わる詳細な調査を行い、同時に堆砂を有効利用して得る収益によって浚渫事業を促進する可能性を検討した。土壌改良、機能性食品、レンガ原料といった用途での利用可能性を検証し、浚渫を含めた事業費負担の試算を行った。
著者
増田 好純
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

航空機産業における「労働動員」を政策レベルと労働現場の二点から考察し、ナチ体制下の社会秩序形成過程の解明を試みた。政策レベルの分析からは、ナチ体制下の労働動員政策が、全ての要素を戦争遂行のために包摂・結集すべき「総力戦」とは相容れないものだったことが明らかとなった。また、労働現場の分析からは、「傾向として」様々な国籍・人種集団間の関係はナチ・イデオロギーに強く規定されていたが、その陰で個人的な問題もまた重要な要素であったことが明らかとなった。
著者
大床 太郎
出版者
獨協大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,ヒアリング・アンケートといった社会調査手法を駆使して,有業者がどのような子育て支援を必要としているのか,実証的に明らかにした.とりわけ,行政が実施する育児関連の福祉政策ではなく,企業が取り組む育児支援として,休暇や勤務時間に関する支援制度に集中して分析を進めた.ベストワースト尺度法を用いた分析の結果,神戸周辺地域の有業者は,平均的には育児休暇,(子どもの)看護休暇,短時間勤務,始業/終業時間の繰上げ/繰下げ,フレックスタイム,(育児支援としての)所定外労働の免除,在宅勤務の順に重視していることが明らかとなった.
著者
海老澤 豊
出版者
駿河台大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の対象は18世紀英国の牧歌だが、前提としてテオクリトスとウェルギリウス、ルネサンス期イタリア、スペンサーやミルトンの牧歌を概観した。これらは18世紀初頭の英国で起きた牧歌論争を分析するために必要な手続であった。18世紀英国の詩人たちは「田園で羊飼いが歌い交わす」牧歌を変形し、地方色牧歌、都会風牧歌、漁夫牧歌、異国風牧歌、反奴隷牧歌などを生み出し、牧歌という古い器に新しい酒を盛ろうとした。
著者
河崎 哲嗣 守屋 誠司 岡部 恭幸 垣東 弘一 小田桐 良一
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、算数・数学の苦手な学生を多く抱えた小学校教員養成課程を有する大学における数学的モデリングの授業体系の提案とその有用性を示そうとした。そこで、1.授業の教材づくりとカリキュラム構成のための調査・文献、2.算数的活動を学ばせるための基礎研究、3.算数・数学的活動を計画・授業・改良させるための実践を目的とした。小学校で行う数学的モデリングのような数学的活動は「①どんな数学を使うのかを課題内容に明確に組み込む②数学の体系化を意識する③オープンエンドである」の要素を含んだ課題を設定するとともに、学生の数学の学力向上が重要となった。その結果を踏まえ、数学的モデリングの講義案を示すことができた。
著者
松本 尚之
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、民政移管後のナイジェリアを事例とし、アフリカにおける民主主義の実践について、政治人類学の視点から考察した。特に、民族・宗教・地域対立を乗り越え政治参加の平等性を保証する方策として、同国において重要視されている「輪番制」と「均等配分制」という2つの政治慣習について、フィールドワークに基づく分析を行った。連邦政治から地方政治に至るまで、2つの政治慣習の実際の運用を調査するとともに、それら運用に対する人々の解釈・言説を収集した。それによって、国民の融和を目的とした政治慣習の可能性と問題点を分析し、「輪番制」と「均等配分制」が政治的競合における秩序産出に果たす役割について論じた。
著者
有馬 道久
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

教職1年目の小学校教師の頭部にアイカメラを装着し、その教師の視点から2回の授業を録画した。その映像を見ながらその教員と指導教員が視線の向け方についてリフレクションを行った。その結果、指導教員から、全く視線を向けない場所があること、視線の移動が多いこと、子どもの方を見ているが一人ひとりの学習状態を把握できていないことなどが指摘された。2回目の授業とリフレクションから、1回目に指摘された課題は少し改善されたが、まだ残された課題は多いこと、また、授業力を上げるためには新たな課題があることが指摘された。
著者
平田 公一 佐藤 昇志 鳥越 俊彦 古畑 智久 大村 東生 亀嶋 秀和 木村 康利 九冨 五郎
出版者
札幌医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

消化器領域あるいは乳腺領域の超進行切除不能癌あるいは再発癌に対し、サバイビン2Bペプチドを用いた癌ペプチド療法を8例に実施した。6例に明らかな免疫学的反応を認め、臨床効果についてはrecist基準では6例にSD、2例にPDであった。尚、注射局所反応を除くと、有害事象についてはグレードIの発熱以外に面倒なものを認めなかった。したがって全例でプロトコル上の臨床研究は可能であった。一方、従来よりMHCクラスI発現が無いか極めて低い癌細胞のあることが知られており、それらについては、発現亢進のためにHDAC阻害剤の投与の有用性が動物実験的研究において知られていた。そこで適応症例については、ワクチン療法前にHDAC阻害剤の経口投与を試みた。登録症例研究計画期間終了直前に生じたことにより、現在、進行中であり、今後の分析対象とする。研究については安全に実施できたと言えるが、登録症例数の円滑な増加がみられないことが課題として残った。
著者
岩永 喜久子 小板橋 喜久代 神田 清子 二渡 玉枝 常盤 洋子 岡 美智代 牛久保 美津子 小泉 美佐子 前田 三枝子
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

A大学附属病院に9領域の教育-臨床連携による看護専門外来を開設し、看護のイノベーションとして看護役割拡大モデルを提示した。9領域の看護専門外来は、リラクセーションマッサージ、リラクセーション外来、リンパ浮腫外来、がん看護相談外来、乳腺看護外来、糖尿病療養相談・フットケア外来、母性看護外来、神経内科看護相談外来、母乳外来である。従来の診療体制の医学モデルに看護独自の専門性を加えて、キュアとケアを融合させた。
著者
駒崎 慎一 足立 吉隆
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では,BWR模擬環境中での低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の水素誘起加速酸化(HAO)のメカニズムを明らかにすることを目的とした.その結果,鋼中への水素添加によって,内層酸化皮膜中のCr濃度が減少し,空孔濃度が増加することを改めて確認した.加えて,BWR模擬環境中にてスモールパンチ試験を行ったところ,水素添加材のみで応力腐食割れ(SCC)が発生し,またき裂先端で酸化が加速されていたため,SCC初期き裂発生には水素による加速酸化が大きく影響することがはじめて明らかとなった.
著者
松岡 宏明 泉谷 淑夫 赤木 里香子 大橋 功 萱 のり子 新関 伸也 藤田 雅也 大嶋 彰
出版者
大阪総合保育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

図画工作科・美術科における鑑賞学習指導には、その目標設定と評価の在り方に課題があることを全国調査により突き止めた。そこで、鑑賞学習ルーブリック(コモンルーブリックと題材ルーブリック)を作成し、現場教員に実践をしてもらいながら共同研究を重ね、全国3箇所で活用実践報告会を開催した。また、同時に『鑑賞学習ルーブリック&ガイド』5000部を完成させ、学会や研究会などを通して全国の実践者に届けた。さらにその成果と課題を学会誌に研究論文として発表するとともに、学会の口頭発表を4回に渡って行った。