著者
安斎 勇樹 青木 翔子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.231-242, 2019-01-20 (Released:2019-02-02)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は,様々な領域でワークショップを行っている実践者(初心者~熟達者)を対象に,ファシリテーションにおいて認識されている困難さの実態について明らかにすることである.152名を対象とした質問紙調査と16名を対象としたインタビュー調査の結果,ワークショップのファシリテーションの主な困難さは(1)動機付け・場の空気作り,(2)適切な説明・教示,(3)コミュニケーションの支援,(4)参加者の状態把握,(5)不測の事態への対応,(6)プログラムの調整,に類型化することができた.また,ワークショップの実践領域の違いによって困難さの傾向は異なること,また熟達するにつれて困難さは軽減されていくが,初心者〜中堅には見えていなかった新たな困難さが認識されることが明らかになった.
著者
斉藤 真二 寺前 紀夫 田中 誠之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.9, pp.1363-1366, 1980-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
5

高速液体ク採マトグラフ(LC)にレーザーラマン分光光度計をオンライン接続した測定系(LC-Raman)を新たに開発し, 共鳴ラマン効果を示す物質に対するその有用性について検討を行なった結果,このLC-Raman法が高感度であり,かつ高度の選択性を併わせもつ新しい検出方法であることが判明した。メタノールを移動相とする逆相クロマトグラフから溶出する種々の置換基をもつ4-ジメチルアミノアゾベンゼン誘導体の検出を,発振波長488nm,出力200 mWのAr+レーザーを励起光源として1406cm-1のラマン散乱光を連続的に測定し,クロマトグラムを記録することにより行なった。2'-クロロ-4-ジメチルアミノアゾベンゼンについて検量線を作成したところ, 260ng/μl付近までの範囲において原点を通る良好な直線が得られ,また,この方法によりng単位の検出を行なうことができた。さらに, 対象とする化合物の保持時間で移動相の流れをいったん止め.共鳴ラマンスペクトルを測定し,おのおのの化合物の示す特徴的なラマン線に着目することにより,逆相クロマトグラフィーでは分離されずに溶出し, また, 多波長吸光度検出法でも区別することのできない2'-クロロ-4-ジメチルアミノアゾベンゼンと3'-メチル-4-ジメチルアミノアゾベンゼンの個々の検出を行なうことができた。
著者
百鬼 史訓 横山 直也 有田 祐二 久保 哲也 山神 眞一
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.1-11, 2005-03-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
16

本研究は,剣道において面や突きなどを打突された際に,剣道具(面)をとおして人体の頭部に伝達される衝撃力について,バイオメカニクス的観点から明らかにするために,打撃用ダミー人形や被験者への実戦的な打突が頭部へ及ぼす力学量(加速度)を計測し,頭部の安全性についてJARIの人体頭部耐性曲線を元に検討することを目的とした。得られた結果をまとめると以下の通りである。1.一足一刀の間合からの面打撃は,加速度レベルが低いため,加速度による傷害発生の可能性が3種類(MA:その場から,MB:送り足で,MC:一足一刀の間合から)の打ち込み条件の中では最も低かった。2.頭部への一回の打撃により頭蓋骨々折・脳震盪といった傷害が生じるレベルには達していない。しかし,慢性硬膜下血腫の発症との関連も心配されることから,連続的な衝撃や長年にわたる衝撃の影響について,今後検討する必要があると考える。3.突き動作では加速度レベルが低いため,加速度による頭部の傷害発生の可能性は低いと考えられる。
著者
吉川 悠貴 菅井 邦明
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 2005-04-30
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究の目的は,高齢者に対する発話調節について,認知症高齢者に対する場合,および発話者が介護職員である場合の特徴を明らかにすることであった.介護職員,一般成人各24名に対して,発話ターゲットとして同世代の成人,健康な高齢者,認知症高齢者を想定させた模擬的な話しかけの課題を実施した.また各ターゲットに対して発話調節を行うことの適切さの程度についても回答を求めた.話しかけ音声6カテゴリー14指標について分析を行い,ターゲットが高齢者であること,および認知症高齢者であることで促進される発話調節が別個に存在すること,また介護職員の特徴として特定のスピーチ・レジスターが使用されることが示された.一方,適切さの程度の評価では,発話者にかかわらず,同世代の成人,健康な高齢者,認知症高齢者の順で単純加算的に発話を調節するのが望ましいと評価されていた.以上の結果から介護職員の特性を中心に考察を行った.
著者
八十島 崇 木塚 朝博 埜口 博司 白木 仁 向井 直樹 宮永 豊
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.491-498, 2003-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

The purpose of this study is to identify the effect of position (full can, empty can) and change of angle on the activity of shoulder muscles during scapular plane abduction ; and also to examine its application to exercises used for rehabilitation of shoulder muscles. Seven healthy subjects (23.4±1.4 yr) with normal shoulder function performed scapular plane abduction with external rotation (full can) and scapular plane abduction with internal rotation (empty can) . An electromyogram was recorded with a fine wire intramuscular electrode at the supraspinatus, deltoid anterior, middle, posterior and trapezius upper with bipolar surface. The EMG activity (RMS) of each muscle was normalized by the highest EMG activity (100%RMS) during a maximum manual muscle test for each muscle (%RMS) . The %RMS of each muscle remarkably increased with a change of the angle for empty can, whereas it showed a slight increase with a change of the angle for full can. This finding suggests that the position of full can and empty can in scapular plane abduction affects the function of shoulder muscles. In addition, full can exercise is recommended in order to improve function of the supraspinatus and the muscular activity balance between the supraspinatus and the deltoid. Empty can exercise is applied to sport-specific exercise for rehabilitation of shoulder muscles.
著者
李 英児
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1-15, 2003-10

原因・理由を表す条件句「ホドニ」から「ニヨッテ」への勢力交替現象は,中世の口語資料を用いた先行研究全般において言及されているが,17世紀前半に成立したと推定される『捷解新語』においても,中世から近世にかけての歴史的変遷の影響と思われる「ホドニ」の減少と「ニヨリ」の増加が確認できる。本稿では,『捷解新語』原刊本の原因・理由表現句の改修本・重刊本における改修状況を,改修されなかった箇所も視野に入れ,意味論的解釈/語用論的解釈という観点を導入して新たな意味づけを行った。
著者
小要 博
出版者
法政大学史学会
雑誌
法政史学 (ISSN:03868893)
巻号頁・発行日
no.28, pp.p38-52, 1976-03
著者
池西 正孝 猿渡 朋澄
出版者
一般社団法人 日本時計学会
雑誌
日本時計学会誌 (ISSN:00290416)
巻号頁・発行日
vol.131, pp.14-22, 1989-12-20 (Released:2017-11-09)

A new quartz watch, "Step Melody", has been developed. The second hand of this clock swings to and fro with a melody produced in the watch. The melody is made during the period of musical notes, while the motor to make swing the second hand is driven during the period of rests. Thus, an epoch-making watch breaking out from convention only to tell time, which make people enjoy time swinging with melody has been developed. This paper describes the construction and the operation of this watch.
著者
澤田 稔
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.29-50, 2016-05-31 (Released:2017-06-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿の目的は,グローバル化に伴う知識・能力(観)の再編が各国で加速する現状にあって,この動向がマイノリティ集団にとってどのような意味を持つのかという問いに対する一定の答えを,アメリカ合衆国で批判的教育学と呼ばれる分野の研究成果を踏まえるとともに,初等中等教育のカリキュラム・教育方法に関する実践事例を参照することによって明らかにすることである。考察には以下のような手順をとる。まず,本考察の理論的基盤となる批判的教育学の特質と,本稿が採用する視座の位置付けを明らかにするために,アメリカにおけるカリキュラム論と批判的教育学との関係を整理して,批判的教育学内部における重要な論争点を取り上げ,その意義について考える。その上で,近年の批判的教育学でも言及されることが多いフレイザーによる「再配分の政治」と「承認の政治」という正義論の概念を導入し,これを再解釈して教育実践論に適用することで,グローバル化による知識・能力の再編に対応するとともに,不平等の拡大再生産の是正に資するカリキュラム・教育方法論の可能性について論じる。さらに,このような社会適応・地位達成の実現を目指す教育だけでなく,民主主義社会における,より積極的で活動的な主体性の涵養を目指す批判的市民性教育の可能性についても論究する。最後に,こうした可能性を実践的に具現化したとみなすことができる事例を取り上げる。
著者
山下 裕 西上 智彦 古後 晴基 壬生 彰 田中 克宜 東 登志夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-198_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】頚部痛患者において,単に筋や関節由来だけでなく,様々な要因が能力障害に関与することが明らかになっている.外傷性頚部痛は非外傷性頚部痛よりも,臨床症状がより重度であることが報告されているが,それぞれの能力障害に関与する要因は未だ明らかではない.近年,他害的な外傷や痛みに伴う不公平感を定量するInjustice Experience Questionnaire(IEQ)や,頚部の身体知覚異常を包括的に評価するFremantle Neck Awareness Questionnaire(FreNAQ)といった新たな疼痛関連指標が開発されているが,外傷性,非外傷性頚部痛それぞれの能力障害にどのように関与するか明らかでない.本研究の目的は,外傷性と非外傷性頚部痛の疼痛関連因子の比較及びそれぞれの能力障害に影響する因子を検討することである.【方法】対象は, 頚部痛患者119名(外傷性頚部痛患者74名,非外傷性頚部痛患者45名)とした.評価項目として,疼痛期間,安静時・運動時痛,能力障害はNeck Disability Index (NDI),不公平感は IEQ,身体知覚異常はFreNAQ,破局的思考は短縮版Pain Catastrophizing Scale(PCS6),運動恐怖感は短縮版Tampa scale for Kinesiophobia(TSK11),うつ症状はPatient Health Questionnaire(PHQ2)を調査した.統計解析は,Mann-Whitney U検定を用いて外傷性頚部痛と非外傷性頚部痛における各評価項目の差を比較検討した.さらに,NDIを従属変数とした重回帰分析を用いて,外傷性頚部痛,非外傷性頚部痛におけるそれぞれの関連因子を抽出した.【結果】2群間比較の結果,疼痛期間において有意な差を認めたが[外傷性頚部痛: 30日(0−10800日); 非外傷性頚部痛: 300日( 2−7200日),p<0.001],その他の項目に有意な差は認められなかった.重回帰分析の結果,NDIと有意な関連が認められた項目として,外傷性頚部痛ではIEQ(β=0.31, p =0.03)と運動時痛(β=0.17, p =0.01),非外傷性頚部痛においてはFreNAQ(β=0.79, p =0.002)のみが抽出された.【結論(考察も含む)】本研究の結果から,外傷性頚部痛患者と非外傷性頚部痛患者において,能力障害に影響を与える因子が異なる可能性が示された.したがって,外傷性頚部痛患者では不公平感を軽減する介入が必要であり,非外傷性頚部痛患者においては身体知覚異常を正常化する介入が必要である可能性が示唆された.【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の主旨と内容を口頭および書面で説明し,同意を得て研究を実施した.なお本研究は西九州大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号:H30 − 2).
著者
ファン ハイ リン
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日越交流における歴史、社会、文化の諸課題
巻号頁・発行日
pp.141-152, 2015-03-31

日越交流における歴史、社会、文化の諸課題, ハノイ, 2013年11月13日-15日
著者
Željko Bošković(ジェリコ ボシュコヴィッチ)
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.31-58, 2017 (Released:2017-12-29)
参考文献数
63

本論文は,台湾語におけるC 要素のkongについて考察する。Simpson and Wu (2002)に従い,kongがかかわる連続変調が多重スペルアウトを支持することを論じるとともに,kong構文の考察が,多重スペルアウトと連続循環的移動に対する異なるアプローチを区別する根拠となること,具体的には,Phase-Impenetrability Conditionを廃止し,スペルアウトはフェイズに適用され,連続循環的移動はフェイズの上にある句をターゲットにするというBošković(2016a)のアプローチを支持する証拠となることを示す。また,台湾語の連続変調に関する派生的PF効果と,Bresnan(1972)が指摘した英語の第一強勢付与に関する派生的PF効果について統一的な説明を与える。