著者
小林 勝
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.407-428, 1992-03-30 (Released:2018-03-27)

南インド・ケーララにおけるカースト制は,ナンブーディリ・ブラーフマンを中心=頂点とする<儀礼的位階>イデオロギーが著しく貫徹され,彼らが王権を超える地位を獲得していたことによって特徴付けられる。そのことの意味は,一番に,この地域が古代の統一王権を喪失して以来近代にいたるまで慢性的な政治的分裂状況にあり,そこにおける汎ケーララ的な次元での社会的統合の宗教的な要としての役割がこのブラーフマンに対して要請されてきたという歴史的な経緯に求められる。また,ナンプーディリは他に例をみない大土地保有者であり,そしてある場合には地方小王権に対抗し得るような強大な武力をさえ抱え込んでいたのであって,そうした彼らの世俗的な側面は一方で自らの汎ケーララ性を裏切りながら,しかし全体からすれば彼らの宗教的権威を王権から自立させて維持するのに大きな意義をもったのである。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.97-111, 1999-10
被引用文献数
3

筆者らは, 1992年から北タイで情報化と商品経済化が住民に与える影響や共同体の変容について調査研究に取組んでいる。調査対象の村では, 未電化時では外部情報をほとんど得ることができず, そのため稼得機会に恵まれなかった。電化後, テレビを通じて生活情報や商品情報が大量流入し, 口コミによる情報交換活動も活発化した。小論では, 急激な情報化が村人の意識・行動や生活価値観にどのように影響を与えたかについて情報文化の視点から分析する。村人は, 商品構買意欲を増進させた一方で農業情報に強い関心を示すようになり, 情報源や販売方法を多様化させ, 情報戦略をとるようになった。また, 電灯下での労働, 出稼ぎの増加, 内職など, 労働態様を変え所得上昇を図っている。生活価値観では, 他村への羨望の減少, 情報キーパーソン信頼度の低下, 子供が贅沢になることへの危惧の増加など大きな変化が見られる一方, 国王への尊敬や村の習慣・決まりに関して変化は見られない。急激な情報化は, 意識・行動と生活価値観が同時・並行的に変化し, 相互に影響しあっていることが認められた。
著者
佐々木 脩 伊藤 寛治 乳井 恒雄
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1061-1064, 2008 (Released:2011-01-18)

2 0 0 0 OA 安倍能成年譜

著者
助川 徳是
出版者
福岡女子大学
雑誌
香椎潟 (ISSN:02874113)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.60-70, 1968-08-31
著者
角坂 照貴 金子 清俊 浅沼 靖
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-43, 1987
被引用文献数
2

国内で採集された鳥類の鼻腔内寄生ダニを整理したところ, 1新種と7新記録種が明らかとなった。そこで, 新種を記載し, 既知種を図を加えて報告した。宿主と8種のダニの関係は, ヒヨドリ : Ptilonyssus hiyodori n. sp., メジロ : Ptilonyssus ruandae Fain, 1956,コカワラヒワ : P. sairae Castro, 1948,ツグミ : P. euroturdi Fain and Hyland, 1963,イカルチドリ : Rhinonyssus himantopus Strandtmann, 1951,トラツグミおよびツグミ : Sternostoma technaui (Vitzthum), 1935,バン : Rallinyssus caudistigmus Strandtmann, 1948,サンショウクイ : Ruandanyssus terpsiphonei Fain, 1957のとおりであった。
著者
角坂 照貴 金子 清俊 浅沼 靖
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.221-227, 1983
被引用文献数
1

日本産ハナダニ科Rhinonyssidaeについては, 金子(1973,1977,1978), 江原(1980), 角坂ら(1981)が6属11種を記録している。著者らはさらに鳥類の鼻腔内寄生ダニを整理したところ, 4種の新記録種が明らかとなったので再記載に図を加えて報告した。オオルリからはPtilonyssus dioptrornis Fain, 1956,コマドリからはPtilonyssus enicuri Fain and Nadchatram, 1962,アオジおよびノジコからはPtilonyssus emberizae Fain, 1956,シジュウカラ, ヒガラおよびヤマガラからはPtilonyssus pari Fain and Hyland, 1963が新たに記録された。
著者
高橋康也著
出版者
晶文社
巻号頁・発行日
1977
著者
石橋 史朗
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.2_11-2_19, 2020-06-30 (Released:2020-07-31)
参考文献数
13

地域貢献型大学として位置付けられることが多い地方大学において,地域連携は大学に期待される重要な役割の1つである.地域連携や地域課題解決に関わる活動は,大学の持つ社会貢献の使命の枠内で捉えられることが多いが,実際には他の2つの使命である教育や研究と密接な結びつきの下で実施されることも多い.本稿では,地方公立大学である会津大学における地域課題解決に関する取組み事例を,大学の3つの使命との関わりの中で紹介する.またこれらの地域連携活動が,大学の3つの使命の遂行と共存する形で円滑に実施されている要因についても考察する.
著者
斎藤,常正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.49, 1998-03-27

1960年代後半, 地球科学の新しいパラダイムとして誕生したプレート・テクトニクス説は, 海洋底は中央海嶺で生産され, 海溝で沈み込むと説明する。この説が正しければ, 大西洋の海底地殻は海嶺の中軸でもっとも若く, 中央海嶺から離れるにしたがって古くなるはずである。1968年アフリカのセネガールを出港し, ブラジルのリオディジャネイロに向かったグローマー・チャレンジャー号の第3次航海は, 南緯30°線にそって大西洋中央海嶺の東西斜面の掘削を行い, いかなる論理的な疑問をはさむ余地が無いほどに大西洋は海洋底拡大の結果生まれたことを証明した。海嶺中軸をはさんで, 東斜面の2地点, 西斜面の7地点で掘削された堆積物中の石灰質浮遊性微化石による年代決定は, 大西洋の海嶺が, それぞれの方向に年に2cmの速度で拡大していることを示した。筆者は, この歴史的な航海に参加して浮遊性微化石の年代決定にあたったが, 微化石年代法の成立までの筆者の体験を回顧しながら, さまざまな研究が一つの仮説を理論へと高めて行った過程を論じている。

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1936年05月08日, 1936-05-08
著者
衣笠 泰介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.44_2, 2017 (Released:2018-02-15)

独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)と連携する地域タレント発掘・育成(TID)事業は、現在、24地域にまで拡大している。こうした中、平成25年度に立ち上げた全国規模のナショナルタレント発掘・育成(NTID)プログラムでは、将来性の豊かな人材と優れたコーチを出会わせるため、「発掘・検証・育成」の3つの段階がある。発掘においては、種目適性型、種目選抜型、種目最適(転向)型の3つのモデルがあり、コーチの眼のみならず、科学的分析を行っている。この段階では、エビデンスに基づいた測定項目の選定やワールドクラスの選考基準の設定が求められる。検証においては、成長率の算出等を通してポテンシャル(潜在力)を見極めている。育成においては、目標大会から逆算して設定した最低水準(ベンチマーク)に対するパフォーマンスを追跡している。平成28年度には、オリンピック・パラリンピック一体型発掘プログラムを開発し、クラス分けと科学的測定によるパラリンピック選手の発掘も開始した。最終的には、暦年齢よりも生物学的アプローチを通して、エビデンスを蓄積しながらオリンピック・パラリンピックパスウェイの構築を目指す。
著者
石原 豊一
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.59-70, 2010-03-20 (Released:2016-10-05)
参考文献数
32

グローバル化に伴うスポーツの世界的拡大の中、野球も資本との関わりの中、北米トップ・プロリーグMLBを核とした広がりを見せている。本稿ではその拡大における周縁に位置するイスラエルに発足したプロリーグであるイスラエル野球リーグ(IBL)の観察から、スポーツのグローバル化をスポーツ労働移民という切り口から探った。 IBLの現実はプロ野球という言葉から一般に想像されるような華やいだ世界ではない。ここで展開されているのは、ひとびとが低賃金で過酷な労働を強いられている周辺の世界である。しかし、IBLの選手の姿は、搾取される低賃金労働者というイメージともすぐには結びつかない。それは、彼らが自ら望んでこの地でのプレーを選んだことに由来している。特に先進国からの選手の観察からは、本来労働であるはずのプロとしてのプレーが、一種のレジャーや社会からの逃避に変質を遂げている様さえ窺えた。 この新たなプロリーグに集った選手たちへのインタビューを通じた彼らのスポーツ労働移民としての特徴の分析は、スポーツのグローバル化が経済資本の単一的な広がりというよりは、選手個々の背景や動機が絡んだモザイク的な拡大と浸透の様相を呈している現状を示している。 従来の世界システム的観点から見たスポーツの地球的拡大の文脈においては、プロアスリートの国境を越えた移動もその要因を経済的なものに求めがちである。アスリートの移籍理由を経済的要因以外に求める研究もなされてはいるものの、本稿での事例分析の結果得られた「プロスペクト」型、「野球労働者」型、「バケーション」型、「自分探し」型というスポーツ移民の分類のうち、先進国からの「バケーション」型、「自分探し」型は従来の研究の枠組みには収まりきらないものである。このことはスポーツのグローバル化がもたらした人間の移動要因の変質という点において、今後のグローバリゼーション研究に新たな地平を開拓する可能性を持つ。