著者
中藤 亜衣子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

【プロセス3:小惑星の熱変成】1・2年目の研究により,40個のCMコンドライト隕石から,20個の加熱脱水を経験した試料を同定した.これらの試料に対して,微細組織観察,微量元素定量分析,極微細組織観察・極微小領域の化学組成定性分析を行い,岩石学的にCMコンドライト隕石として分類できる8個の試料について更に詳細研究を行った.特に熱に敏感な層状珪酸塩鉱物の観察と,主要構成鉱物組み合わせに基づいて,これら8個の隕石の熱変成の程度と推定経験温度領域を以下のように分類することができた.《強い加熱(750-1000度),中程度の加熱(500-600度),弱い加熱(300-500度)》強い加熱を経験したグループの隕石は,層状珪酸塩鉱物の化学組成,全岩の酸素同位体組成が,弱い加熱を受けた隕石とは大きく異なっていた.この結果は,強い加熱グループに属する試料が,母天体上で水質変質を経験した際,その水溶液の化学組成がCMコンドライト隕石母天体とは異なっていたことを示唆している.また,これらの試料に関しては,マトリクス中に部分溶融したトロイライトと非溶融トロイライトが点在している組織が観察されている.この観察結果は,これらの隕石の最高到達温度が,試料内で不均一であった証拠である.加えて,珪酸塩鉱物に弱い衝撃組織が認められることから,強い加熱グループの熱源として,世界で初めて「衝撃加熱」であると特定することができた.また,韓国極地研究所にて,全岩の酸素同位体組成分析のシステム改良にも引き続き取り組んだ.このシステムを使用した結果に基づくと,弱い加熱を経験したグループ属する2つの隕石について,非常に興味深い結果が得られた.そのデータによると,これまで推測されてきた太陽系始原水の組成に,大きなばらつきがある可能性が示唆される.これは,始原的小惑星の進化のみならず,太陽系の進化にも直結する非常に大きな意味を持つ.この結果は,2011年8月にイギリスで開催された,国際隕石学会で発表するとともに,現在論文を準備中である.【プロセス1:惑星の形成】2年目に引き続き,探査機はやぶさの回収した小惑星イトカワの表面試料の初期分析を行った.この結果は,2011年3月の国際月惑星科学会議,2012年8月の国際隕石学会,科学雑誌サイエンスで報告された.この分析の結果,これまで広く研究されてきた隕石が,確かに小惑星から飛来したものであると初めて確認された.また,地球に飛来する最も一般的な隕石である普通コンドライトと,その母天体であるS型小惑星の表面の反射スペクトルの違いは,試料表面に宇宙線照射による宇宙風化が生じるためであるとした従来の定説が,正しいものであったと確かに立証することに成功した.これは隕石研究にとって歴史的な成果である.
著者
堀井 惠子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

国内外からの社会的ニーズの高い留学生の就職支援のためのビジネス日本語教育のための調査研究として、中国、ベトナム、タイなどの海外の日系企業の人事担当者ならびに元留学生にニーズ調査を行った。調査結果の分析から、ロールプレイ教材、プロジェクト型教材を開発、教育実践を行い改善をはかりながら、教授法を構築した。口頭表現教育、文書表現教育、読解教育の実践をまとめビジネス日本語教育の評価としてCAN-DO-STATEMENTの施策を試みた。研究の発信と活性化のために日本語教育学会テーマ研究会としてビジネス日本語研究会を設立した。
著者
松尾 正人
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、旧藩華族について、史料に基づいた実証的な研究を行い、旧藩華族の国家的役割及び社会的意義を明らかにすることを目的とした。第一に、山口県文書館に所蔵されている毛利家文庫の調査を行い、廃藩置県後の大名家当主に関係する資料を収集してその内容を分析した。これにより、廃藩置県とその後の長州藩の動きを明らかにし、幕末長州藩研究に新たな視点を提起することができた。毛利家研究の前進に結びつけることができたと思われる。第二に、徳川幕府崩壊後に徳川家を相続し、静岡藩主となった徳川家達について、英国での調査や静岡県立図書館所蔵史料の調査を実施して、史料を収集し、考察を行った。
著者
山田 淳夫 BRAPANDA Prabeer BARAPANDA Prabeer BARPANDA Prabeer
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

リチウムイオン電池の正極材料として様々な鉄の2価化合物が注目を集めている。鉄は豊富な元素であり低コスト化の可能性も秘めるが、2価鉄の原料は高価であり化合物の生成には高温での長時間熱処理が必要である。また、電極特性を高めるには粒子サイズを抑制する必要があるが、これは長時間熱処理とは相反する方向である。これらの技術的障壁により、鉄系電極材料はその低コスト化可能性が議論され高い電極性能についての実証もされているものの、実際には工業化段階での様々な追加措置の必要性があり、十分にその潜在能力が社会還元されていない状況である。これを打開する手法として、3価の鉄原料と還元剤かつカーボン源としての有機物との燃焼反応時の自己発熱により、2価鉄からなる均一性の極めて高い前駆体を生成させ、これを比較的低温で短時間処理することでカーボンコートされた最終生成物を得る方法を昨年度開発した。今年度は、この合成手法の特徴を用いピロリン酸アニオンを骨格とする新規正極材料の探索に展開した。また、リチウム電池のみならずナトリウムイオン電池用電極材料にも探索範囲を拡大した。その結果、複数の新規機能材料ならびにその低温準安定相を発見した。特に、ピロリン酸鉄ナトリウムは3V付近の高電位で作動し、ナトリウム電池用正極としてはこれまでで最も優れた負荷特性を示した。国際的な研究ネットワークを構築し、多くの開発材料の低温磁気特性を明らかにする研究を短時間で完成させるとともに、実用的な見地から安全性に関する熱力学的データの実験的収集を行い、高度に安全性が確保できることを実証した。
著者
大山 正幸 竹中 規訓 中島 孝江
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

毎年5名の喘息症状有症者を対象に、9月から約3カ月間、週毎の室内の亜硝酸(HONO)や二酸化窒素(NO_2)やオゾン(O_3)の濃度を測定し、毎日の喘息発作や呼吸器症状を調べた。その結果、U検定ではNO_2と喘息発作との関連に有意差は無かったが、HONOと喘息発作との関連に有意差が認められた(P=0.0013)。また、測定局データを利用した多変量解析後でも、HONOと喘息発作との関連に有意差が認められた。今回の結果は、NO_2よりHONOの方が喘息発作との関連が強いことを示唆する。
著者
加藤 京里
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

後頸部温罨法のランダム化比較試験では、入院患者60名を対象に実施し「手掌温を上昇させ、夜間睡眠の促進、自覚症状の軽減、気持ちの安定につながり、入院患者がより生活しやすいように心身を整え、回復を促すきっかけとなる」後頸部温罨法の快を説明するモデルを開発した。臨床経験5年以上の病棟看護師に行ったアンケート調査では、温熱を用いた看護技術実施中に「温かくて気持ちいい」患者は「安楽」な状態となり、「休息」と「活力の向上」の両者がもたらされた後に「生活改善」がはかられ、「症状緩和」「気持ちの安定」が生じることがモデルで説明された。
著者
蝶野 成臣 辻 知宏 楠川 量啓
出版者
高知工科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

単純せん断流中で回転し続けるタンブリング液晶が“液体状圧電体”になり得るかどうかを調べるため、せん断印加時に液晶が発生する分極値の時間変化を測定した。本研究が一定の成功を収めれば自在形状のマイクロ力学センサの開発に繋がる。内径6 mmの外筒と外径5 mmの内筒からなる同心二重円筒間に液晶を充填して、内筒を回転させて液晶にせん断を印加した。使用した液晶は4-cyano-4'-octylbiphenylである。内筒回転数が0.2 rpmのとき電位差はパルス状の波形を示し、その大きさは最大で±70 mVに達した。従ってタンブリング液晶が圧電体に適していることがわかった。
著者
小林 健太
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

非凸領域において有限要素法を用いて数値計算を行う場合,領域の非凸性によって厳密解の滑らかさが失われ,精度の良い数値計算が困難になるケースが多い.このような場合については,解の特異性を表現するような特異関数を有限要素基底に用いたり,非凸な角でメッシュを細かく切るメッシュリファインメントを用いたりすることによって精度を改善できることが知られている.これらの手法について,今までは数値実験結果からの経験則や収束のオーダーしか知られていなかったが,我々はいくつかの手法について厳密な誤差評価を与えることに成功した.これらの結果は精度保証付き数値計算への応用上も重要である.
著者
植田 毅 藤井 雅留太 森本 元 宮本 潔 小作 明則
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

青い羽根を持つルリビタキの羽枝の断面TEM画像より、羽枝を多孔質誘電体円筒とした数理モデルを完成し、様々な入射角に対する反射特性を計算した。その結果、ルリビタキの羽の反射スペクトルはポーラス構造による反射で、また、エアーロッドがランダムに並んでいることが本質的であること、反射スペクトルが青色より長波長側に尾を引くのは光が斜めに入射した部分の寄与であることを示した。また、網目構造を持ち、より複雑なカワセミの羽枝の実測に基づく数理モデルを完成した。
著者
溝部 明男 銭 閑適 劉 晴暄 張 泓明 ガザンジエ
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大村英昭は「煽る文化」と「鎮める文化」という図式を提唱した。ある戦友会の参与観察と大村の図式に基づいて、戦友会とは、旧軍の将兵意識を鎮めるための一つの装置であると特徴づけた。戦友会のメンバーは、(1)過去の軍隊風振舞いの再現、(2)戦争体験の物語り、(3)戦死者の慰霊を通じて、彼らの軍隊体験を見直す共同作業に従事していると考えられる。軍隊体験の物語りの一つのタイプは、次のようなものである。出征を拒否することはできなかった。国を守るために戦った。戦死者は戦争の犠牲者である。英霊ではない。彼らの物語りの根底には、太平洋戦争は国を守るための戦いであった、という見方が横たわっているように思われる。
著者
緒方 徹 長尾 元史 杉森 道也
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

脊髄損傷後の再髄鞘化促進は、損傷脊髄の機能回復に向けた重要な治療戦略のひとつである。再髄鞘化を促進するためには、オリゴデンドロサイトの前駆細胞を活性化し、その増殖、分化、成熟を促進する必要があるが、この過程の分子メカニズムは未だ不明な点も多い。本研究では、チャージ症候群の原因遺伝子として知られているクロマチン再構成因子Chd7が、転写因子Sox2と協調して働き、脊髄損傷後の前駆細胞の活性化を制御することを明らかにした。
著者
大出 春江 中村 美優 松田 弘美 古川 早苗
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成19年度は過去3年間の研究成果をまとめる形で、定例研究会の実施、学会報告、報告書の作成を行った。また在宅医療をめぐる全国大会が開催され、このうち千葉、東京、岐阜、大阪の大会に参加し、在宅医療にかかわる専門職者らと交流を深めた。以下は、学会発表と報告書の骨子でもある研究成果を担当毎に要約したものである。1)在宅の看取りと家庭看護の歴史(大出):明治期から現代までおよそ100年間の在宅の看取りの変遷について、家庭看護書の記述をもとに明らかにした。1960年代前後から、死にゆく身体への関わりは看護職にゆだねられる経過が示される。2)死後処置からみた看取りの歴史と担い手(古川):明治期の看護職による死後処置が伝染病対策からはじまり、そこに民俗慣習の儀礼が組み込まれていった経過が看護教科書等の文献研究から示される。さらに近年、急速な広がりをみせる〈エンゼルメイク〉のもつ効果と危うさについても触れ、死後処置の行方を論ずる。3)看取りを実践した家族からみた在宅医療と訪問看護(中村):看取りを実践した兵庫県・家族7例に対し、主介護者を対象に実施した半構造化インタビュー調査(2004年12月〜2006年8月実施)結果の分析。看取る家族からみた病院、疾師、訪闇看講師、存宅疾療に必藝た俗源やネットワークの必要性が明らかにされる。4)長野市訪問看護ステーションからみる在宅医療と訪問(松田):長野市内4カ所の訪問ステーションにおける調査をもとに、訪問看講STが病院併設型の場合、病院との円滑なコミュニケーションと情報の共有により、在宅療養の患者および患者家族の<ゆれ>を支える構造的な基磐を提供していることが示きれた。5)在宅医療という経験と運動(大出):長野県、兵庫県、大阪府にそれぞれ在宅医療を実践する無床診療所を開設する医師ヘのインタビュー調査から、2006年度在宅療養支援診療所という新たな制度の導入と受容を医師の視点から捉えている。
著者
宮脇 永吏
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度は、本研究において最も重要な論点となる「視覚」の問題系について、ベケットの後期作品に的を絞り、以下の点について検討した。1.ベケット後期作品に表出する視覚描写と同時代のフランス思想との照合S・コナーは、ベケットの作品が視覚の権威を懐疑的な検査に付すことで、西洋的な「視覚中心主義」を批判する潮流に加わっていると指摘する。この「視覚中心主義」とはアメリカの思想史家M・ジェイの用語であるが、ジェイの企ては、20世紀フランスの思想家が映像技術や監視装置といったものに引き寄せられる一方で、この伝統的視覚中心主義を批判するかたちで形成されてきたことを示すということであった。本研究では、ベケットの後期戯曲『芝居』、散文『人べらし役』『終わりなき光線の観察』を中心に考察し、ベケットが視覚と理性を結びつけた西欧哲学の伝統的解釈を踏まえたうえで「光」や「理性的なまなざし」を用いており、あたかもM・フーコーの言う「まなざしの権力」を操りながら、その権威的視覚に疑問を呈していることを証明した。2.ベケットが参照した哲学書との照合視覚の問題系を取り上げる過程で、とくにデカルトの『情念論』とべケットの視覚との関係を精査する必要性を見出した。この書は、デカルトが人間の眼の機能を説明するうちに、自ら説いた心身二元論の矛盾を露呈するものであり、最後の著作であると同時に最大の問題作でもある。ベケットが『終わりなき光線の観察』や『フィルム』といった作品のなかで「身体的な眼」と「精神的な眼」に分離した視覚を表現することが、最終的にはいわばデカルトの心身二元論批判に至るということは、この著作のはらむ問題と照らし合わせることによって明らかなものとなる。後期ベケット作品は、「視覚」にまつわる諸問題を検討するというプロセスそのものを提示することによって、心身の合一を説く現象学的視点を得るに至っていることを確認した。
著者
星 英司
出版者
財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
若手研究(S)
巻号頁・発行日
2007

神経解剖学的研究は、前頭葉と大脳基底核、そして、前頭葉と小脳が形成するネットワーク構造を細胞レベルの精度で明らかにした。神経生理学的研究は、随意運動課題を遂行している動物の脳の各部位から記録されたニューロン活動を比較することによって、各々の特異的な機能(機能分散)とその関連性(機能連関)の実態を明らかにした。こうした結果を総合することにより、随意運動の発現における前頭葉、大脳基底核、小脳の役割について、分散と連関という観点から新しい理解をもたらした。
著者
臼杵 陽 加藤 博 長澤 榮治 福田 安志 水島 多喜男
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最終年度の今年度は3年間の研究のとりまとめと次の段階へのステップとして位置づけられる。今年度の研究成果として次の二点があげられる。まず、尾崎三雄氏所蔵アフガニスタン関係資料の整理である。本資料の整理は3グループに分かれて行われた。すなわち、第一は尾崎氏がアフガニスタン滞在中に記した日誌・日記等の活字記録の整理・入力作業である。本作業は一橋大学の加藤博(分担者)が中心に行った。第二は、アジア経済研究所の鈴木均(研究協力者)を中心に尾崎氏がアフガニスタンで収集した書籍のデーターベース化と収集民具などの整理である。第三は国立民族学博物館の臼杵陽(分担者)尾崎氏がアフガニスタン滞在中に撮影した写真のCD-ROM化の作業である。この3グループの作業としては第二、第三のグループがその一部のデータをCD-ROMを焼き付けた。また、第一のグループは日誌類の入力作業が終わったところである。このアフガニスタン関係資料の整理は本研究プロジェクトが終了した後も続けられる予定である。第二の成果として、日本・中東イスラーム関係をより比較の視点を導入して、議論を幅広く発展させていくことであった。この成果は国際ワークショップ「植民地主義を比較する-エジプト、イスラエル、日本、朝鮮半島を比較する」を2005年25日に開催したことである。このワークショップを通じて、日本・中東イスラーム関係は植民地主義の性格とその形態の地域間比較を通して、より広くイギリス・中東関係、日本・朝鮮半島、さらにはイスラエル・パレスチナ関係にも敷衍できることを確認した。すなわち、この知見は日本・イスラーム関係を基礎研究から製作提言まで幅広い可能性をもった中東イスラーム研究の今後のあり方を考えていく上での前提作業と位置づけられるのである。
著者
倉田 明子
出版者
国際基督教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度はまず、従来の上海・香港における開港場知識人、および洪仁〓に関する研究をすすめ、それらを博士論文「19世紀南中国におけるプロテスタント布教の発展と「開港場知識人」の誕生--洪仁〓と『資政新篇』の位置づけをめぐって--」としてまとめた。この博士論文を通して筆者は、洪仁〓と中国における近代化の最初の試みとされる洋務運動の実務的な担い手たちや香港の中国人エリートらを、一定の共通体験を持つ人々として「開港場知識人」という枠組みでとらえ、洪仁〓の太平天国における改革への試みも孤立した改革運動ではなく、洋務運動やその後の近代化への道筋と同じ源流を持っていたと見なすことができることを指摘した。博士論文提出後は、(1)中国キリスト教史、(2)洪仁〓研究、(3)開港場知識人に関する研究、の3点について史料調査・収集及びその分析を進めた。(1)については、宣教師によって出版された雑誌『教会新報』に注目し、1860年代に入り急速に中国国内でキリスト教布教の規模や勢力が拡大したこと、また宗教思想にとどまらない、西洋の文化、特に科学知識の伝播の担い手として再び宣教師や信徒たちが一定の役割を担ったこと等を確認した。また、『教会新報』の続編である『万国公報』についても内容の整理と分析を進めている。また、(2)については、洪仁〓の晩年のキリスト教に対する考え方について検討を加えようと試みた。『資政新篇』以外の洪仁〓の著作についても改めて丁寧に読み込み、分析を行っている。さらに、(3)の開港場知識人の関する研究については、1840年代から50年代にかけて、上海のロンドン伝道会やイギリス国教会の宣教師やその助手たちが、琉球布教に携わっていたベッテルハイム宣教師と緊密な関わりを持っていたことも明らかになってきた。そこで、香港においてベッテルハイム関係の資料の調査、収集を進めたほか、台湾においても関係資料の収集を行った。
著者
稲垣 成哲 楠 房子
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,科学系ミュージアムやフィールドでの学習における近未来の学習支援のためのデザイン指針と評価手法を明らかにすることである。近年の科学系ミュージアムやフィールドには,従来のHands-onタイプの展示だけでなく,ユビキタス社会を反映した様々なテクノロジが実験的に導入されており,それらによって可能になった近未来型のインタラクティブな学習支援・展示支援の現場が出現している。最終年度では,(1)文献・資料の収集とデータベース整理,(2)国内外の事例に関する実地調査,(3)デザイン指針の策定とその評価手法の開発及び試行,(4)成果発表を行った。まず(1)については,科学教育関連図書や博物館・フィールド学習関連図書及びこれらの関連領域の学術論文を収集し,科学教育の観点からみた学習支援のためのデザイン指針の理論的枠組及びその評価手法に関する仮説的提案を行った。(2)については,当該テーマにおける先進的な学習支援・展示支援の実例として,国外では,ベルギー自然史博物館,ポンピドーセンター,シュトゥットガルト自然博物館,メルセデス・ベンツ・ミュージアム,ビトラデザインミュージアム,ゼンケンベルク博物館等における新しいタイプの学習支援・展示支援のあり方について実地調査をした。他方,国内では山口情報芸術センター,北九州市立いのちのたび博物館等において調査を行った。(3)については,申請者らが従来から取組んでいる兵庫県六甲山を対象にした「実世界と仮想世界をインタラクティブに統合したフィールド学習」を題材にして,上記(1)における仮説的提案の適用可能性について調査した。最後に,(4)については,日本科学教育学会第34回年会(広島大学)において,テクノロジを利用した新しい学習支援・展示支援研究4件から構成された自主企画課題研究「インタラクション・デザイン・学習II」を組織した。
著者
高須賀 俊輔
出版者
秋田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

ホスファチジルグリセロールリン酸(PGP)は、カルジオリピンの前駆体として知られるミトコンドリアにあるグリセロリン脂質の一つである。我々は、このPGPの独自の生理機能の解明を目的にして、PGP結合タンパク質の同定を試みた。その結果、既知の脂質結合ドメインを有するミトコンドリアタンパク質は、いずれもPGPに結合しないことが明らかとなった。PGP結合タンパク質は新規のリン脂質結合ドメインを有している可能性が示唆された。
著者
有薗 育生 竹本 康彦
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生産技術の向上から精密な製造が可能となった近年では,規格値を満たさない不適合品が製造される割合,不適合品率は極めて小さい環境が現実のものとなってきた.ただし,これに対応してより高度な解析技術を組込んだ品質管理システムの設計・開発が急務であった.本研究では,適合・不適合とする従来の品質評価と比べ緻密な評価を与える品質基準を採用して従来の解析技術の高度化を図り,ハイクオリティ環境下での次世代品質管理システムの土台となる方法の確立を実現した.
著者
松本 有
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

核酸内包薬物送達システム(Drug Delivery System; DDS)開発では、細胞外環境における高い安定性と標的細胞内における効率的な核酸分子の放出という二律背反的な性能が要求される。本研究では生体内における蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer; FRET)計測を行った。DDSの血中安定性、組織移行性、細胞内安定性、核酸放出といった評価法を確立した。