著者
堀口 亜有未 宮城 拓也 山口 さやか 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.289-292, 2019

<p>80 歳,男性。約 4 カ月前から体幹四肢に瘙痒を伴わない浮腫性紅斑と皮膚の硬化,疼痛があり,当科を受診した。手足を除く上下肢に左右対称性に皮膚の硬化と皮膚表面に光沢があり,下肢には敷石状に凹凸があった。爪上皮出血点や後爪郭の血管拡張,レイノー症状はなかった。MRI T2 強調像で大腿二頭筋膜の肥厚と高信号があり,病理組織検査で筋膜の肥厚と筋膜に併走するように帯状の細胞浸潤があり好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン(PSL)40 mg/日で治療を開始したが,PSL を漸減する過程でアルドラーゼ値の上昇があったためメトトレキサート(MTX)を併用した。以後,皮膚硬化は改善,アルドラーゼ値は低下し,PSL を漸減できた。現在まで MTX による副作用はない。ステロイド抵抗性の好酸球性筋膜炎において,MTX は有用であると考える。</p>
著者
郭 玲玲
出版者
山口大学大学院東アジア研究科
雑誌
東アジア研究 (ISSN:13479415)
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-43, 2015-03

『弟子』は師孔子に教化されつつも、己を堅持する子路を描いている。従来の研究では孔子を『わが西遊記』の三蔵法師と同様に規範的な存在と捉え、己を堅持する子路像は中島敦自身の「愚かさ」に由来すると論じられている。本稿では『弟子』とほぼ同時期に創作された『わが西遊記』との比較により、三蔵法師と同様に規範的な存在である孔子像に変化が起こることを解明した。『わが西遊記』の三蔵法師は菩薩によって悟浄や悟空の師として指定されたものであり、弟子への指導は見られない。一方、『弟子』の孔子は子路が自ら選んだ師であり、彼は子路を積極的に指導する。そして子路の不満を抑えず、その己を堅持する姿勢を美点と認める。ことに子路の不満を理解する孔子像は中島敦なりの思考を示し、己を堅持する子路像の成立に不可欠な存在である。また、子路は行動者悟空と思索者悟浄の特質を兼ね備え、さらに己の人生を自ら切り開こうとする意欲がみられる。これにより、彼は師孔子に教化されているうちに真の己に気づく。規範とする師にも屈しないことは己の存在に対する肯定である。これは中島文学における新たな展開と見なす。更に、子路のモデルである斗南先生の著作と当時の礼儀作法を考察し、中島敦が創造した子路像―形式的な礼に抵抗感を示す一面は当時の形式的な礼への中島の批判も込められていることを明らかにした。
著者
永村 眞
出版者
中世文学会
雑誌
中世文学 (ISSN:05782376)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.38-47, 2018
著者
三宅, 也来
出版者
菱屋治兵衛
巻号頁・発行日
vol.[3], 1732
著者
水野 實
出版者
中国古典学会
雑誌
中国古典研究 (ISSN:02877910)
巻号頁・発行日
no.55, pp.22-45, 2013-12
著者
荻野 千砂子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.1-16, 2007-07-01
著者
玉井 晶章
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.23, pp.262-275, 2016-11-26

宮澤賢治が生前出版した詩集『春と修羅』(大正一三年四月)に所収された詩篇「蠕虫舞手」に「ナチラナトラ」という単語がある。この「ナチラナトラ」については、詩を解釈する上で重要な意味を持つにも関わらず、これまで具体的な検証が行われてこなかった。本稿では『春と修羅』刊行初期の生前批評に触れつつ、「ナチラナトラ」の意味を明らかにすることで「蠕虫舞手」に新しい解釈を加えたい。
著者
Daisuke NISHIO-HAMANE Masayuki OHNISHI Tetsuo MINAKAWA Jun-ichi YAMAURA Shohei SAITO Ryo KADOTA
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (ISSN:13456296)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-02-29)
参考文献数
17
被引用文献数
3 7

The first Cr-dominant amphibole, ehimeite, ideally NaCa2Mg4CrSi6Al2O22(OH)2, has been found in a chromitite deposit in the Akaishi Mine, Higashi-Akaishi Mountain, Ehime Prefecture, Japan. Ehimeite occurs as prismatic crystals of up to 1.5 cm in length and 0.5 cm in width and is found in association with chromite, kämmererite (Cr-rich clinochlore), Cr-poor clinochlore, phlogopite, and uvarovite. It is transparent, emerald green to pale green in color with pale green streaks, and has a vitreous luster. Optically, it is biaxial positive with α = 1.644(2), β = 1.647(2), γ = 1.659(2), and 2Vcalc. = 53°. It has a Mohs’ hardness of 6 and densities of 3.08(3) g/cm3 (measured using heavy liquids) and 3.121 g/cm3 (calculated from powder diffraction data and the empirical formula). The empirical formula is (Na0.88K0.07)Σ0.95(Ca1.89Na0.02Mg0.09)Σ2.00(Mg4.03Cr0.62Al0.19Fe3+0.07Fe2+0.07Ti0.03)Σ5.00(Si6.14Al1.86)Σ8.00O22(OH)2 on the basis of O = 22 and OH = 2, and ehimeite mainly forms a solid solution, NaCa2Mg4(Cr, Al)Si6Al2O22(OH)2, with pargasite. It has a monoclinic unit cell with a = 9.9176(14) Å, b = 18.0009(12) Å, c = 5.2850(7) Å, β = 105.400(7)°, V = 909.6 (17) Å3, and Z = 2, and it belongs to the space group C2/m, as refined from powder XRD data. The eight strongest lines in the powder XRD pattern [d (Å), I/I0, hkl] are (3.370, 58, 150), (2.932, 43, 221), (2.697, 81, 151), (2.585, 50, 061), (2.546, 100, 202), (2.346, 42, 351), (2.156, 35, 261), and (1.514, 55, 263). The crystal structure has been refined to R1 = 0.0488 using single-crystal XRD data. It has been concluded that ehimeite in the Akaishi Mine was formed by the reaction of chromitite and the metamorphic fluid in the retrograde stage of serpentinization during the Sanbagawa metamorphism.
著者
土屋富士夫作絵
出版者
ひかりのくに
巻号頁・発行日
1992
著者
山田 晴通
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100039, 2015 (Released:2015-10-05)

水岡不二雄一橋大学名誉教授は、一橋大学教授であった2011年夏に、Third Global Conference on Economic Geography 2011(韓国ソウル)において「The resignation obliterated: The Japan Association of Economic Geographers and Toshio Nohara, a prominent critical economic geographer」 と題した報告をされた。発表者=山田はこの集会に参加しておらず、この発表があったという事実も2015年春に初めて知った。この報告は、要旨がインターネット上で公開されている(Mizuoka, 2011)。 しかし、少なくともこの要旨を見る限りでは、水岡報告は、Wikipediaにおけるルールなど、事実関係についての誤解に基づいた、不適切な憶測を含むものであり、読み手に、山田個人についての社会的評価を含め、諸々の誤解を生じさせる虞れが大きいものである。 また、英文で綴られたこの要旨の内容は、Wikipedia日本語版において、2010年にごく短期間だけ編集を行なった「経済地狸学会」(強調は引用者)という利用者が、日本語で書き込んだ内容と酷似した箇所を含んでいる。この利用者は、当時、記事「経済地理学」のノートページに山田の編集を批判する、やはり誤った認識に基づくコメントを書き込んだ後、それに応答して問題点を指摘した山田の、問いかけを含むコメントには答えないまま、その後はいっさい活動していない。(2015年7月13日現在) もし、水岡教授が「経済地狸学会」を名乗った利用者と同一人物であるなら、なぜ、Wikipediaの中で起こった問題について、Wikipedia内での対話を拒み、適切なコミュニケーションを通した解決を図らず、山田からの指摘に応答もしないまま、Wikipedia外の、また、山田が参加するはずがない海外の集会において、山田が既にWikipediaにおいて指摘した問題点について何らの自己批判も反省もないまま、英語で発表をされたのか、真意をご説明いただきたい。このような発表の仕方は、山田との建設的な議論を求める真摯な姿勢を示すものではないように思われる。 逆に、もし、水岡教授が「経済地狸学会」を名乗った利用者と同一人物ではないのなら、水岡教授は、2011年のご自身の報告と、2010年時点の「経済地狸学会」の書き込みの類似性について、具体的な説明、あるいは、釈明をすべきである。著作権者である「経済地狸学会」が水岡教授を著作権侵害で訴える可能性が限りなくゼロに近いとしても、ネット上で別人の名義で公開されている記述と酷似した内容のコメントを、自らの名義で発表したことは、研究者としての倫理性に疑念を生じさせる遺憾な事態である。   山田が、日本地理学会の場において公開状という形で水岡教授への質問を公にするのは、本学会が水岡教授と山田が共に所属する数少ない学会のひとつだからである。水岡教授は、従来から論争においては正々堂々と、婉曲な表現などは用いず、論難すべき対象に対しては厳しい直接的な言葉を用いられてきた方である。この公開状にも、真摯に対応され、建設的な議論が展開することを期待する。
著者
村上 謙
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.17-32, 2006-10-01

本稿では近世前期上方で生じた状態性を有する尊敬語表現「テ+指定辞」(ex.聞いてじゃ)の成立過程について論じる。これについてはこれまで、省略説、体言化説、状態化説、「ての事だ」の関与説、の四説が論じられているがいずれも採るべきではなく、本稿ではこれらに代わるものとして、「テゴザルからの変化」説を提出する。この説は、状態性を有する尊敬語表現形式テゴザルのゴザル部分をジャなどで代用することで新形態「テ+指定辞」が出現したと考えるものである。このように考えれば、「テ+指定辞」が敬意を有する語を含まない尊敬語表現であった事、近世前期に生じた事、状態性表現であった事を有機的に関連づけて説明できる。
著者
内田 立身 西村 拓史 瀧本 宏美 佐藤 美津子 西尾 由美子 福家 洋子 野崎 正範
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.215-217, 1996-10-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

We evaluated the effect of repeated 400ml whole blood donation on storage iron status in 26 males and 196 females. Iron status was estimated from hemoglobin concentration, transferrin saturation and serum ferritin. Storage iron was calculated according to the formula proposed by the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES). Calculated storage iron after repeated donation of 400ml was 806±174mg in male donors and 292±248mg in females. Levels after 400ml donation decreased to 606mg in males and to 92mg in females. Among females, 20.5% were in negative iron balance before donation, increasing to 37.7% after donation. However, no significant decrease in storage iron by repeated blood donation was recognized, when standards for blood collection were strictly complied with.
著者
賀 玉辰
出版者
日中社会学会
雑誌
21世紀東アジア社会学 (ISSN:18830862)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.9, pp.257-268, 2018

<p> 日本と中国のアクティブ・エイジング比較研究に向けた準備・試論として、その分析枠組みのひとつを、主に民俗学者の宮本常一が描いた「年寄り」から抽出することを試みたい。ここでは特に、〈媒介者としての老人〉に着目することで、民俗学的観察からの具体的な描写を社会関係に転換し、媒介者としての役割や機能を形式化することで、比較の基準を明らかにしたい。そして、既存のアクティブ・エイジング論に存在論からのひとつの視点を加えることで、高齢者エイジングにかかわる問題の発見やその説明、解決方法の可能性をさらに押し広げるための一助としたい。<br><br> 为进行中日老人活动理论比较研究,本文试从日本民俗学者宫本常一描述的"老人"中归纳并创建老人活动的相关理论,即"老人的媒介功能"。本文通过把民俗学领域的具体描述和观察转化成具体的社会关系,并对媒介者的劳动分工及效能进行格式化,明确了比较研究标准,即"老人的媒介功能"。另外,通过在老人学研究领域里提出存在论观点,希望能为进一步拓展老人学研究的发现问题、分析问题、解决问题之视域而推波助澜。</p>
著者
築舘 香澄 大森 正司
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.176, 2012 (Released:2013-09-18)

目的 γ-アミノ酪酸(GABA)は抑制性の神経伝達物質として脊椎動物の脳内に存在することが知られている.また,現在では様々な末梢組織にGABAが存在することも認められている.近年,GABAは血圧上昇抑制作用や抗ストレス作用,成長ホルモン分泌促進作用,腎機能障害抑制作用,中性脂肪増加抑制作用を有することが知られ,機能性食品素材として注目されているが,食餌性GABAの体内における挙動について検討した研究はほとんどない.そこで本研究では,ラットにGABAを経口投与し,各臓器におけるGABAの分布について検討した.方法 6週齢のWistar系雄性ラットを用いた.ラットに10%GABA溶液を1mL強制経口投与し,1,3,5時間後に二酸化炭素による安楽死の後開腹し,心臓採血を行った.その後,生理食塩水を灌流して脱血し,胃,肝臓,腎臓,脾臓,十二指腸,盲腸,大腸,睾丸,脳を摘出した.採取した血液および臓器についてTCA溶液で除タンパク後,L-8800形日立高速アミノ酸分析計を用いてGABA含量を測定した.結果 血液,肝臓,十二指腸および睾丸中のGABA含量は,投与後1時間で最大値を示し,時間とともに緩やかに減少した.胃では投与後1時間で最大値を示し,その後,急激な減少が認められた.腎臓では,投与後1時間から3時間で最高値を示し,その後減少した.脾臓では投与後3時間で最大値を示した.盲腸および大腸では,投与後,時間とともに増加した.GABA投与後,脳中GABA含量の大きな変化は認められなかった.
著者
山中 敏彰 和田 佳郎
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

姿勢や歩行機能の障害が存続する難治化した慢性平衡障害者に対して前庭覚代行装(Vestibular Substitution Tongue Device: VSTD)を用いるリハビリテーション治療を試みて、長期効果を検討した。期間延長の理由により、2018年度は症例確保が進まず、1例のみの追加で合計11例に対して中期の評価を行なった。頭位の傾きを感知する加速度計からの情報を電気信号に変換して舌に設置したインタフェースに伝達する、VSTDのシステムを使用して、バランストレーニングを8週間行った。評価項目として、重心動揺検査から得られる30秒間の動揺軌跡長と歩行条件から点数化した歩行機能視標(30点満点)を用いた。重心動揺総軌長は237.5 ± 22.4 cm/30 s から 85.4 ± 15.4 cm/30 s に、歩行機能スコアは、13.5 ± 1.5から23.5± 1.6にそれぞれ変化し 両者ともに治療直後より著明な改善を示した。VSTDを取り外した後の効果を追跡観察したところ、12か月以上の時点で、重心動揺総軌長88.6± 18.9、歩行機能スコアは23.8±3.0となり、改善は、最短12か月でほぼ変動なく、効果は維持された。現在は、短期間ではあるがトレーニング効果は持ち越され維持できる傾向が示されている。
著者
徐 嘉楽 野々村 美宗 峯田 貴
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌) (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.139, no.12, pp.393-399, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

In this paper, we fabricated periodic Si micro-bump structure, and sensory evaluation of tactile feeling of roughness and frictional resistance with human finger was conducted with paired comparison method. In addition, friction coefficient between the micro-bump array and an artificial urethane finger model that mimics human fingertip was evaluated. The samples had various bump sizes with width of 20∼600 µm and space of 20 µm. The space between the bumps (20 µm) was decided so that finger skin cannot enter the grooves. The result of sensory evaluation showed that rough feeling was increased with decreasing the micro bump size from 600 µm to 50 µm due to the edge effects of micro bump. The friction resistance feeling was influenced by contact area between the skin and bump surface. In addition, the friction resistance feeling was strong when the micro bump size was 50 µm. Also, the stick-slip phenomenon was strongly observed in the frictional measurement using artificial finger model.
著者
張 愚
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-47, 2014-01

本稿では,漢語「むざん(無慙)」という一語を取り上げ,その語義変化と文中での統語的機能の変化との関わり合いに注目し,日本語史におけるその受容と変容の過程について考察した。初期の文献に見られる「むざん」は,形容(動)詞の連体修飾用法として多用されており,「心に恥じない」の意で用いられていたが,平安後期以降になると,述語文の位置に現れることによって,本来含まれている感情的意味がより強調されるようになり,「ひどい」という新しい意味を派生し,その後「ひどい」の意を表す用法との意味上の隣接性を元にして,「いたわしい・かわいそう」といった意味をも獲得した。さらに,近代に入ると,「むざん」は連用修飾用法で用いられることによって,程度性を表す特殊な用法も派生したことが見受けられる。考察を通して明らかになったのは,「むざん」の語義変化がその文中での統語的機能の変化に深く関わっているということである。