著者
斎藤 秀紀 菱沼 透 横山 詔一 柳沢 好昭 大坪 一夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、次ぎに示す4項目の研究を行った。(1) 「漢字符号への二律背反機能の実装」現在、使用されている漢字符号には、種々の機能不足が指摘されている。代表的な事柄には、使用できる文字の拡張に対する要望と、適正規模の文字集合による処理の効率化の対立がある。本報告は、これらの対立する二つの関係を構造化4バイトコードに要求する機能として、構造の要素と構造および構造間の関係を使い規定する方法を述べた。(2) 「インターネットでの日本語教育リソース提供の試み」本研究では,海外で日本語教育大学機関及び富士通と日立ソフトエンジニアリングの協力を得て,協働学習による日本語学習リソースの授受を試行した。これにより,日本語学習リソース提供についての幾つかの課題は,受信側である現地機関側のコンピュータ及びネットワーク環境の整備,送受信双方で使用できるツールやユーティリティの選択,発信側のデータの作成方法の検討により解決することが判明した。(3) 「『新聞電子メディアの漢字』調査について」実際の新聞紙面とそのCD-ROMを詳細に照合して漢字の出現頻度を調査した。紙面に出現したJISにない漢字(JIS外漢字)254字については、TrueTypeFontoを開発し、合計6.611文字の漢字頻度表を作成した。(4) 「中国語情報科学用語における漢字の特性」日本語と中国語の情報科学用語を比較した場合、日本語はカタカナ表記の語が多いのに対し、中国語は漢字表記である。表記上の差異は、中国人の日本語学習者に負担となっている。表記上の差異に関わらず、日本語・中国語とも出自はほとんどが英語である。以上の考え方に基づき英語(原語)を媒介として中国語漢字とカタカナ語を含めた日本語の情報科学用語との対応を調べ、中国漢字1字との対応表を作成した。
著者
トゥリン カーン デュイ (2013) トゥリン カーンデュイ (2012)
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

元々の研究の目的は確率論を数論に応用することである。研究したいことは次の通りである : (1)ディリクレ列をスペクトルとするようなベシコビッチ概周期関数、一般ディリクレ級数の値分布, およびそれらの間の関係の研究、(2)臨界線上、あるいは臨界線の周辺での広義ディリクレ級数の極限分布の挙動の研究、そして(3)ランダム行列理論とそのリーマンゼータ関数の零点分布とモーメント問題への応用の研究。本年度には研究(3)を遂行するために、まずランダム行列理論とランダムな正則関数の理論を研究した。以下、得た結果を述べる。ウィグナー行列とは実対称行列で、対角成分と上対角成分がそれぞれ平均ゼロを持つ独立な同分布確率変数列であるときにいう。これらの確率変数はすべてのモーメントが存在することを仮定する。このランダムな行列は原子核のエネルギー準位の研究で1950年代にウィグナーが導入したものである。ウィグナー行列の経験分布が確率で半円分布に弱収束することをよく知られ、ウィグナー半円法則と呼ばれる。この結果はランダムな行列理論の出発点として考えられる。経験分布のモーメントは中心極限定理を満たすことも知られる(V. L. Girko 1988とG. W. Anderson & O. Zeitouni 2006)。私はウィグナー行列の経験分布ではなくスペクトル測度を研究した。スペクトル測度の性質は経験分布の上記で述べた性質はほとんど同じである。違うところは経験分布のモーメントの中心極限定理の極限分布は行列の成分の分布を依存しないが、スペクトル測度に対しては行列の対角成分の分布に依存する。証明方法はYa. Shinai&A. Soshnikov 1998の論文の手法を用いる。これらの結果は新しくて、ガウス型アンサンブルのスペクトル測度の分布に応用することができた。
著者
平井 広志
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

離散凸解析と離散距離空間の理論と応用に関して,本年度は以下のよう研究を行った1.6月と1月に韓国のPohang工科大学のJack Koolen教授を訪問し,Tight SpanやSplit分解法,正則多面体分割について有益なディスカッションを行った.特に2度目の訪問においては,私の研究すなわち,Tight SpanやSplit分解法の拡張や関連する話題のチュートリアル講演を行った.これにより,互いの研究のより良い理解が得られた.2.前年度に明らかになった4点条件を拡張した「木の上の部分木族間の距離の特徴付け」とTropical行列式との関連を調べた.特に「木の上のパス間の距離」が距離行列の「任意のサイズ4の主対角行列の行列式のTropical化が消える」ことによって特徴付けられることが分かった.これを踏まえて,関連するTropical幾何学に関する文献調査等を行った.また1月に開かれたRIMSの研究集会「計算可換代数と計算代数幾何」において,この結果の一部を講演した.3.私が提案した拡張スプリット分解法の系統学への応用に関して調査研究を行った.前年度の調査によって欠損のあるデータへの応用の可能性が見つかったのであるが,特に生物の形態学データからの系統樹構成問題において,絶滅した生物と現存する生物を混ぜて解析する場合にこのような問題が発生する.すなわち絶滅種は化石からデータを取るしかなく数多くの欠損データを含むのである.この問題を扱った論文をいくつか調査し,そこにあるデータに対し,実際に距離を構成して拡張スプリット分解を適用してみた.すると,いくつかのデータに対しては化石種が得られた系統樹内の部分木に対応させられた.これはこの手法の将来的有望性を物語るものと考えている.
著者
浜岡 政好 岡崎 祐司 鈴木 勉 関谷 龍子 高橋 憲二 佐藤 嘉夫
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

超高齢化が進むなかで地域コミュニティの維持と高齢者等への生活支援がいっそう困難化してきている。そのために地域コミュニティの再編成と行政による地域コミュニティへの支援が強化されている。2つの自治体ではともに小地域単位にコミュニティセンターを設け、住民の自治活動をきめ細かく支援する仕組みを作りつつあった。またNPOなどの非地縁型の組織は高齢化した地域コミュニティの生活課題の一部をカバーしつつあるが、まだ十分に補完機能を果たしているとはいえない。
著者
鈴木 善晴
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,地球温暖化進行時の豪雨頻発化を念頭に,クラウド・シーディングを用いた人為的豪雨抑制手法の開発とその効果的な実施条件について検討を行うものである.メソ気象モデルを使用して雨域面積や時間降水量の変化などの複数の観点からシーディングによる降水システムへの影響の有無や大小を解析するとともに,シーディングに伴う氷晶数濃度や霰の増減などに着目して抑制効果のメカニズムを解析した.その結果,シーディングにより積算降水量のピーク領域の面積や時間最大降水量が効果的に抑制され得ることなどが確認され,また,風下側への降水粒子の移動・拡散がシーディングによる豪雨抑制の重要な要因であることなどが示された.
著者
玉井 アキラ 高島 美和 宮崎 かすみ 松村 伸一 岩永 弘人 森岡 伸 野末 紀之 十枝内 康隆 角田 信恵
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

後期ヴィクトリア朝イギリスにおけるマスキュリニティの特質を理解するために、ウォルター・ペイター、オスカー・ワイルド、ジョン・アディントン・シモンズらの文学作品と批評作品について、まず綿密な読解を行い、続いて、それらのテクストに表象されている「友愛」との力学的関係を検証した。これにより、マスキュリニティと友愛との間のダイナミックな関係の諸相を把握することができた。
著者
亀井 若菜
出版者
学習院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、狩野元信の絵巻作品について研究することを目的とした。元信の絵巻を広く概観するとともに、北条氏綱によって1522年頃に作られたことが判明しているサントリ-美術館蔵「酒呑童子絵巻」を、絵の享受者や注文主の意識、また絵が制作された社会的文脈から研究することを計画した。本研究においては、まず、サントリ-美術館において調査した「酒呑童子絵巻」のスライドを整理し、絵を詳細に見ながら、詞書と絵の内容を各段毎に比較し、サントリ-本の絵の特質を考えた。また「酒呑童子」を主題とする絵巻、絵本などは30本にも及ぶ。それらを写真資料を添付したカードとして整理し、サントリ-本と比較した。また、芸術学の学会にも出席し、ヴィジュアルイメージを新たに解釈していくための理論を学んだ。その結果、鬼退治のストーリーを詞書で語り出すサントリ-本が、絵では、強い男同志の信頼関係や対決を讃えようとしていること、一方、女性は男性のために犠牲となるべきものであることを見せようとしていることが判明した。このような主張が「酒呑童子」という御伽話の絵として描かれている背景には、氏綱が子の氏康のためにこの絵巻を作らせたことが想定された。氏綱は、戦国の世に関東という地方で武士として生き抜く術を、子供が面白く見ることのできる御伽話の絵巻にして、氏康に見せようとしたのではないか。この成果を、学内の研究会において発表した。尚、狩野元信を考える上で、同じ室町時代に活躍した土佐光信の研究は不可欠である。元信は、江戸時代以降、光信と強く関連させて語られてきており、現在、我々が捉えている元信像は、光信を踏まえずには考えることはできない。この両者の関係を盛り込んだ小論を、「室町時代の土佐派をめぐる言説」としてまとめ、発表した。
著者
浅沼 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ゲルハルト・リヒターによる1960年代のフォト・ペインティング作品(写真を元にした絵画作品)については、リヒター本人の言もあって、多くの研究者がその政治的、歴史的意味を指摘することに慎重だった。しかしミステレク=プラッゲの基礎研究(1990/1992)以降、近年では、2007年のディートマー・エルガーやディートマー・リューベルの指摘に見られる通り、リヒターのフォト・ペインティング作品のさまざまな意味が指摘されている。本研究の第一の成果は、ミステレク=プラッゲにならって、ドイツの週刊誌「シュテルン」「クイック」「ブンテ」「レヴュ」「ノイエ」(「レヴュ」と「ノイエ」は1966年に統合された)の1962-66年を再調査し、さらに「シュピーゲル」誌の調査、前誌の1959年、1967年分等の調査を加えて、リヒターが切り抜いた約160枚のうち、約70枚の写真の出自を特定したことである。それによって、ミステレク=プラッゲやエルガーらが部分的に指摘した、リヒターのフォト・ペインティング作品の歴史的、さらにいえば「悲劇的」意味が、より説得力ある仕方で指摘されるに至った。本研究の第二の成果は、1960年代のゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティング作品から、1988年の『1977年10月18日』を経て、ドイツ国会議事堂のために制作された1998年の『黒、赤、金』にまで通底する意味的一貫性を指摘したことである。『黒、赤、金』は、一見すれば抽象的作品だが(これは油彩ではなくガラス作品である)、よく知られているように、リヒターはこれを「ホロコースト」写真をもとにした、1960年代以来のフォト・ペインティング的作品として構想していた。従って、1960年代から1990年代まで、リヒターの試みの一貫性が指摘され得るのである。こうして、リヒターの画業を1960年代から再構成することによって、従来個別にしか指摘されてこなかったその政治的、歴史的意味を、一貫したものとして描き出したのが本研究の重要な成果である。
著者
田邉 洋一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

鉄ニクタイド超伝導体のディラックコーンに特徴的な輸送現象の観測と不純物置換効果を明らかにすることを目的として、Ba(Fe_<1-x>TM_xA_s)_2(TM=Ru,Mn)において磁場中輸送特性の測定を行った。その結果、ディラックコーンの量子極限の出現に起因する線形な磁気抵抗効果を観測した。さらに、非磁性・磁性不純物に対してディラックコーンが安定であることを磁気抵抗効果から観測し、ポテンシャル散乱体による後方散乱が抑制されていることを確認した。さらに、磁性不純物とディラック電子の近藤効果に起因したバンド繰り込みと理解できる有効質量の増大を見出した。
著者
平賀 博之
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

断熱膨張による雲の発生に関する実験は,教えにくい内容,生徒の理解しにくい内容の一つであると感じてきた。今回考案した方法は,透明なポリエチレン袋に高感度のデジタル温度計を入れて輪ゴムで口を閉じ,それを真空保存容器内に入れて,容器内の圧力を下げるというものである。容器内の圧力低下につれて,透明なポリエチレン袋の中の空気が膨張し,同時にその中に入れた温度の示度が下がることが,視覚を通して直感的に観察できる。この方法によりこれまでより,断熱膨張の現象に対する理解度が上昇することがわかった。また雲の発生に関する内容については,この実験を基に段階的に論理的な思考を通して学ぶことができる指導モジュールを開発した。主な内容は,(1) 真空保存容器のポンプを引くと,内部の気圧が下がる。(ポンプを引くことは空気を上昇させることと同じ意味になる。)(2) 容器内に口を閉じたポリエチレン袋やゴム風船を入れてポンプを引くと,ポリエチレン袋やゴム風船の内部の空気が膨張し,温度が下がる。(3) ポリエチレン袋に少量の水と線香の煙を入れて口を閉じたものを,容器内に入れてポンプを引くと,袋の中の空気が露点に達し,雲ができる。この指導モジュールはビデオ教材,ワークシート,指導案からなり,これらを活用して雲の発生に関する学習を進めるものである。これらを1枚のDVDに収録した。また,開発した指導モジュールによる授業実践を行い,教材に対する評価を行ったところ,これまでの教材に比べて生徒の理解状況が向上すること,生徒の学習に対する満足度が高まることが明らかになった。なお,教材の教育課程上の実施時期の都合で授業実践並びに教材に対する評価が3学期になったため,発表は平成21年度におこなう予定である。
著者
大村 邦年
出版者
阪南大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究ではアパレル企業の新たなビジネスモデルの生成過程に着目し、その大きな要因が急速なグローバル化の進展と複雑で多様化する消費者ニーズへ適合することから生まれた、「進化型ビジネスモデル」であることに注目している。ファッション市場において競争優位を有するSPA型とFF型企業へのフィールドワークを中心とした実践的アプローチとともに環境適合による組織進化という観点による理論的アプローチをおこない、その成功要因を明らかし、企業変革に関する導出を試みた。
著者
赤星 琴美 赤星 哲也
出版者
別府溝部学園短期大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究ではインターネット対応型携帯電話による情報提供を行う【子育て支援携帯ネット】の「メール配信自動化システム」および「携帯電話への配信メール画面」「携帯電話向けWebサイト情報内容」について検討を行った。0〜3歳児を持つ母親を対象にシステムのプレゼンテーションとデモを行い、メール配信自動化システム、携帯電話への配信メール画面、携帯電話向けWebサイト情報内容の3項目にわたる情報収集を行った。<Webサイトを利用した予防接種保健情報の提供の有効性>場所、時間の制約を受けず情報の入手できるということ、いつでも好きな時間帯に内容を読むことができるという評価を得た。個別に情報を提供することにより、個人レベルで予防接種時期などが把握でき、予防接種に関する情報がタイムリーに携帯電話のメールに届くことにより、適切な対処行動がとれるようになると思われる。<行政サービスとしての役割>【子育て支援携帯ネット】は、子育て中の母親に対して、コミュニケーション不足を解消し、さらに、予防接種に関する知識を手に入れるツールとして有効である。より有意義なWebサイトにするには身近な地域情報の提供も欠かせない。今後も多くの方の要望に対応できるよう、更なる内容の充実、システムの自動化を図っていきたいと考えている。予防接種に対する過度な不安や不適切な情報の氾濫は保護者に混乱を招き、その結果、接種率低下を招いていると考えられる現在、定期的に電子メールを配信し、適切な情報を提供するという新しい形での育児支援は有効な手段である。
著者
奈倉 文二 千田 武志
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日露戦争を契機とする海軍兵器国産化過程で、その中軸的担い手であった海軍工廠による艦船兵器類の製造・修理の実態を明らかにし、また、民間軍事関連企業の有機的連携がどのようにはかられたかを解明した。本研究では、英国からの「武器移転」と関連する日本の「軍器独立」過程として捉えた。また、兵器の供給に関わる商社の活動をも明らかにした。そうした試みはジーメンス事件を捉え直す上でも重要な意味を持った。第一次大戦は、日英関係にとって「分水嶺」となり、英国系兵器火薬会社においても「技術移転」は基本的に完了するに至った。
著者
矢野 敬生 堀口 健治 吉沢 四郎 柿崎 京一 小玉 敏彦 林 在圭 金 一鐡 陸 学芸 間 宏 松田 苑子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本プロジェクトは、共通の漢字・儒教文化圏の中核をなす日本・中国・韓国を対象にして、社会学・文化人類学的実証研究法を駆使して、三国の民族社会の基層的な構造・文化的特質を明らかにすることを目的とした。そこで上記の目的を遂行するために、文化的伝統を比較的濃密に保持している村落社会(具体的には(日)長野県富士見町瀬沢新田、(中)中国山東省菜蕪市房幹村、(韓)韓国忠清南道唐津郡桃李里)を対象として、参与観察にもとづくフィールド調査を実施した。研究の枠組としては、第一に「家・家族・同族・宗族」、「土地・労働関係」、「信仰・地域統合」の3つのカテゴリーを設定した。第二に暫定的な結果として、以下述べるような諸点が明確となった。(1)中核的な文化概念が、例えば家族・同族・村落といった同一漢字で表現されていても、意味内容は相違しており、概念を再規定する必要がある。(2)社会結合の類型として定住型社会(日本)と移動型社会(中国・韓国)を設定することが可能であり、「村落」およびそれに基づく人間関係のあり方、村落祭祠、同族関係の様相が大いに異なっている。「信仰・地域統合」の面からみると、(3)日本の基礎構造が「ムラ」的地縁関係に規定される固定的な「入れ子型」体系をなすのに対して、韓国においては「ウリ」概念にみられるように伸縮自在の可変性を特徴としている。こうした特徴は「土地・労働慣行」においても同様であり、(4)日本の場合はムラを基盤として共同的志向が強いのに対して、中国・韓国では個人的祈願の志向が強くみられる。そして、(5)こうした全般的構造の特徴は、「親族・家族の構成や人間関係」においても顕著な差異をみせている。ただし、今回の研究では個別のフィールド調査に力点がおかれたために、三国の基層的文化構造の比較という側面はむしろ今後の課題として残されている。
著者
今井 芳昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

対面する二者が、説得テーマに関する長所と短所を相互に挙げた後、送り手が受け手に一定の意見をもつよう働きかけるという説得場面を実験的に設定した。その結果、長所に同期させる形で、送り手が受け手の動作をミラーリングすることが受け手に影響を与え得ること、個人的な利益よりも社会全体の利益を強調することが効果的である傾向、そして、受け手が自分に説得能力があると認知しているほど影響されにくいことが見出された。
著者
馬居 政幸 夫 伯 李 昌洙 ちょう 永達 POE Baek CHO Youngdal LEE Chang-soo
出版者
静岡大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

韓国では今なお過去の歴史に起因する反日意識は根強い。加えて、青少年の間に広がりつつある日本の漫画・アニメ等の大衆文化に対して、日本の新たな文化侵略であり、その内容が青少年教育にとって有害であるとの批判が青少年教育関係者から提起されている。他方、日本の大衆文化の良質のものを受容すべきである、との意見もある。本調査の目的は、(1)このような韓国青少年への日本の大衆文化浸透状況とそのことへの評価の実態を明らかにするための資料やデータを収集し、(2)その分析を通じて日韓両国の青少年における相互理解促進のための課題と方法を明らかにするとともに、(3)韓国だけでなく、アジア全体に広く浸透しつつある日本の大衆文化の影響や問題を解明するための調査研究の方法を検討するための基礎データを得ることである。そのため、日本の大衆文化浸透状況把握を目的に、(1)小・中・高校生とその父母、(2)大学生、(3)企業で働く青年に対して、また、評価の実態把握のため、(4)小・中・高等学校の教師、(5)青少年教育関係者、(6)教育研究者、(5)マスコミ関係者、(6)日本の大衆文化の翻訳、出版、販売事業の従事者・関係者に対して聞き取り調査を実施。その結果をふまえ、小・中・高校生300名への質問紙調査を実施。収集した資料やデータを「公的-私的」、「日常的-非日常的」の二の軸で分類・分析した結果、韓国青少年が小・中・高と成長する過程で次の(1)〜(6)のような社会過程が総合され、戦後(解放後)50年を経てもなお“反日意識"がより強く育成され続けていることが確認された。(1)日常的に学校教育を通じて教えられる公的な事実としての歴史認識 (2)日常的なテレビ・新聞等の情報環境における公的な反日情報と歴史認識の再確認 (3)日常の身近な人間関係や生活習慣に刻まれた私的な植民地時代の被害事実 (4)慶祝日や名所・旧跡の碑文などによる非日常的で聖的な価値に基づく公的な歴史認識の正当化 (5)家族や一族の忌日(命日)などで確認される非日常的で聖的な価値に基づく私的な反日意識の正当化 (6)このような韓国の現状を無視するとしか韓国の人達にとらえられない日本の側の対応とその事実を増幅する報道。このように韓国では今なお過去の歴史に基づく反日意識が根強く、公式には日本の現代文化は輸入禁止だが、小・中・高校生への調査結果から日本文化の浸透度について次のことが明らかになった。まず、ハングル訳の日本の漫画単行本を全体で61%、特に高校男子が90%、高校女子も79%が読んでいる。ハングル訳の日本のアニメを見た者はより多く全体の82%、特に小学男子は92%、小学女子も77%。ハングル訳でない日本のアニメを見ている高校男子も59%いる。日本のテレビゲーム経験者は全体の74%、高校男子は92%。日本の歌謡を高校女子の51%、高校男子の39%が聞き、日本の歌手を高校男子の39%、高校女子の30%が衛星放送で見ている。この実態から日本の大衆文化は韓国青少年の私的な日常生活に極めて広く浸透し、しかも、小・中・高と成長するにしたがい接触頻度や関心・意欲が高まることが聞き取り調査から確認できた。さらに本年度の調査結果から、日韓両国青少年の相互理解推進の課題を解明するためには、次の理由により新たな調査研究が必要との結論に至った。第一に、韓国独立50周年を契機に、改めて日本大衆文化容認を巡る賛否が激しく議論されたが、世論調査では容認派増の傾向がみられ、日本文化への評価はここ数年で大きく変化することが予測され、この変化過程の継続調査が必要である。第二に、韓国ではソウル市都市圏とそれ以外の地域との文化の差が極めて大きく、韓国全体の傾向ならびに今後の変化を分析する上で、ソウル市と韓国中・南部地域との比較調査が必要である。第三に、日本文化を受容する韓国青少年の意識と行動の構造を解明する上で、近年の急激な民主化と経済成長に伴う学校教育ならびに家庭や地域社会での生活様式の変化の多面的な調査が必要である。他方、このような急激な民主化と経済成長による青少年の生活様式の変化や都市部と非都市部の比較調査は、同様の社会変化の中にあるアジア各国における日本文化浸透の影響や問題を解明するための課題と方法を検討する上で貴重なデータとなりうることも確認できた。
著者
池辺 寧
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハイデガーは存在の思索を通じて、人間は他者との共同存在であることを一貫して堅持している。このことを示すために本研究では、ハイデガーが論じている住むことには他者と共に住むことも含まれていること、存在の真理を問うことは倫理学が生まれてくる存在論的根源を問うことでもあることを明らかにした。さらに、人間にとっての痛みの意味についての研究を行い、痛みの完全な根絶は、他者との共同存在である人間の生そのものを否定することにつながることを論じた。
著者
吉次 公介
出版者
沖縄国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

アメリカは、沖縄に米軍基地を長期的に維持するために、沖縄の施政権を日本に返還することを決めた。ニクソン・ドクトリンに伴って縮小されたアジア太平洋の軍事的プレゼンスの支柱として在沖米軍は不可欠なのであり、その在沖米軍基地を維持するために是非とも必要だったのが沖縄返還なのであった。デタントが進行し、ニクソン・ドクトリンによってアジア諸国から多くの米軍が撤退した。冷戦構造の変容や国際緊張の緩和はアジア諸国の米軍受け入れの負担を軽減していったといえる。しかし、沖縄が受けた緊張緩和の「配当」は限られたものとなり、沖縄の相対的負担が増していった。とりわけ、韓国と台湾は、在沖米軍基地機能の維持を強く望んでいたが、これは、沖縄返還が、アジア太平洋地域が沖縄への依存を深めるプロセスであったことを意味している。屋良ら琉球政府は、冷戦構造の変容と沖縄問題をリンクさせる視点がなかったわけではないが、主に「基地密度論」に代表される基地被害の軽減という観点から、在沖米軍基地を縮小することを求めた。他方、佐藤政権が、緊張緩和と在沖米軍基地の削減をリンクさせる発想を持っていたのかは定かではない。多極化、デタント、そしてニクソン・ドクトリンによってアジア太平洋地域から多くの米軍が撤退したにもかかわらず、在沖米軍の削減は限られたものとなり、アジア太平洋における米軍のプレゼンスを支えるうえでの沖縄の負担は相対的に増していった。沖縄返還とは、日本だけでなくアジア太平洋地域全体が、安全保障面で、即ち米軍の受け入れという点で、沖縄への依存を深めていくプロセスであったといえよう。
著者
鯉川 なつえ
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

我が国の女性アスリートの活躍はめざましく、ついにアテネ五輪に出場する女性が史上初めて男性を上回った。しかし、女性アスリートは男性アスリートとは異なり、「月経」があるため試合におけるコンディショニングに特に配慮しなければならない。また、月経が周期的に起こる選手であっても、月経前から月経中はスポーツ外傷が多いという報告や、競技成績が悪いという報告もあり、せっかくのトレーニングが水の泡と消えてしまう可能性もあるだろう。しかし、諸外国の月経コントロールに関する調査報告は非常に少ない。そこで本研究は、早くからピルが認可され、手軽にピルを使用できるアメリカの女性陸上競技者と、日本の女性陸上競技者を対象に、月経異常の発症、月経による競技パフォーマンスの影響および月経コントロールの実態についてアンケート調査を実施し、諸外国の月経に関する現状を明らかにすることを目的とした。本研究は、日本の学生陸上競技者42名(20.0±1.3歳)およびアメリカの学生陸上競技者34名(19.4±1.4歳)計76名を対象とし、比較検討を行った。その結果、月経が停止した経験のある人は、アメリカに比べ日本のアスリートの方が有意(p<0.01)に多かった。また正常月経の者は、月経に伴う症状は日本とアメリカに差はないが、日本のアスリートは月経によるパフォーマンスの低下を有意(p<0.05)に感じていた。ピルの使用経験や知識はアメリカのアスリートの方が有意(p<0.05)に多かったが、競技活動に有効に利用されていない現状がうかがわれた。
著者
青柳 幸一 宮城 啓子 藤原 静雄 藤井 樹也 小宮 信夫 渡井 理佳子 井上 禎男
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本共同研究の顕著な成果として、理論に留まらず実践的活動および政策論の実現を挙げることができる。そのようなものとして、まず、安全・安心まちづくりに関する研究・実施を挙げることができる。犯罪から住民を守るための具体的施策として、大人ばかりでなく子どもが参加した「地域安全マップ」の作成を推奨し、日本各地で実践してきた。他の顕著な政策論への結実として、現行の外国人登録制度に代わる新しい外国人台帳制度の提案に結びつく研究をあげることができる。