著者
小島 智恵子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.研究内容本研究は、原子力の民事利用開発の中でも高速増殖炉(以下FBR)を事例とし、日本とフランスのFBR開発を歴史的に分析することを目的としている。本研究では一次資料の収集に最も重点をおいた。特にフランスのFBR開発に関する一次資料に基づいた歴史研究はこれまで日本では殆ど行なわれていないので、同一次資料をフランス原子力庁アーカイブス,フランス国立図書館,パリ国立高等鉱業学校図書館等で可能な限り収集した。本研究ではさらにオーラルヒストリーの手法を導入し、FBR研究に貢献したフランス人研究者へのインタビューを実施した。日本よりも早くFBR開発が進められたフランスでは、その中心的役割を果たした研究者の方々がご高齢になられていることもあり、最優先でインタビューを行った。以上の資料をもとにFBR開発の歴史をまとめその中で日本とフランスのFBR開発の歴史的特徴、日仏研究協力の歴史的変遷を総括した。2.研究の意義・重要性これまでの原子力開発史に関する研究は主にアメリカの研究を対象としていたが、本研究では日本とフランスのFBR開発を中心に歴史分析をするという新しい視点を導入したことに意義がある。少なくとも日本では本研究が日仏FBR開発の通史としては初めての試みである。この研究の中で、初期のフランスのFBR開発においては米仏協力が重要な役割を果たしていたこと、FBR開発では国際協力が大きく貢献していたこと、初期の日本のFBR開発においてはフランスが指導的立場であったこと等を明らかにした。フランス人研究者へのインタビューの回答では、フランスではタブー視されている内容も含まれており、またフランス人的観点による日本のFBR開発に対する建設的な批判も得た。本研究のテーマは、日本人の研究者だからこそ扱うことができたという点においても重要であると考える。
著者
中川 丈久
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

最初の2年間(平成15年度及び16年度)の研究調査の成果は,次のとおりである。第1に,行政法の伝統的な教育が,主として行政官(すなわち国の行政職員)を念頭に,国法体系及びその執行を教授するものであったこと,またそれを克服しようとして提唱された新しい行政法教育が,主として地方行政職員の視点にたつものであったことを踏まえて,法科大学院においては,こうした行政機関の視線ではなく,法曹の視線から行政法教育を行う必要性があるという観点から従来の行政法教育を組み替えるための基礎的研究を行った。第2に,行政訴訟と民事訴訟の通約可能性,憲法論と行政法理論との共通言語化作業、民刑事実体法と行政法(個別法の仕組み)の間の共通言語化作業を行って異なる領域をシームレスに考察するための理論的環境整備である。最終年である平成17年度においては,これらの理論的成果を法科大学院における教育に応用するべく,教材として成果を結実させた。すなわち,法科大学院・における公法系の「実務と理論の融合」のための教育教材案を作成し,授業で試用した。その教材は,政上の紛争が実際に生起し,解決されるプロセスに即して,教材を組み立てて授業を行うというものである。この教材においては,とりわけ,紛争の発端における原告側及び被告側の弁護士の役割及び裁判所の役割という視点を明確に分けて,それぞれの立場において,憲法や民事訴訟とあわせて,行政法・行政訴訟の理論がどのように実務家にとって有効であるのかを示したものである。同時に,実務への導入教育ともなっている。平成18年度においては,この試用経験をもとに,さらに教材案を改定した。
著者
末岡 淳男 井上 卓見 松崎 健一郎 高山 佳久 劉 孝宏
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

高速増殖炉ヘリカル伝熱管深傷プローブの振動によるセンサノイズの原因とその対策を,モックアップによる実験と数値シュミレーションによって明らかにした.得られた結果は以下のようにまとめられる.(1)ECT(Eddy current testing)プローブを静止させて蒸発管内で圧縮空気だけを流しても,プローブには振動は発生しないが,プローブの圧送時には振動を生じる,すなわち,プローブの振動の原因は流体力ではなく,蒸発管内壁とプローブにあるフロートとの間の摩擦と考えられる.(2)ECTプローブの挿入過程では,挿入距離の増大に伴ってプローブの振動が激しくなる.ヘリカル管の中間部を過ぎると,約20HZの卓越した振動数で振動し,それに伴ってRF(Remote field)ノイズも大きくなる.そのとき,ECTプローブは軸および径方向に連成振動をしており,RFセンサは尺取り虫的な動きをする.一方,引戻過程では,卓越した振動数を持つ振動は発生せず,振動レベル,RFノイズとも挿入過程よりも低い.(3)挿入時には,ECTプローブはヘリカル伝熱管の内径側に張り付き,引戻時には,逆に外径側に張り付くように圧送される.したがって,挿入時および引戻時で,ECTプローブにはそれぞれ張力および圧縮力が作用している.(4)ECTプローブの搬送速度を高くするほど,圧送用の空気量を多くするほど,ヘリカル直径を小さくするほど,ECTプローブの軸および径方向振動もRFノイズも大きくなる.(5)ECTプローブの径方向の振動は,先端にいくほど大きい.また,RFノイズは励磁センサと検出センサの径方向相対振動の大きさと相関があるが,軸方向振動とは相関がない.(6)RFノイズを最小化するためには,6m以上で,曲げ剛性が比較的低い先導プローブを持つECTプローブを構成することである.(7)伝達影響係数法を適用して,大規模なプローブ列を対象とした流体による搬送力を含む摩擦振動を解析した結果,モックアップの実験結果とほぼ同様な数値計算結果を得ることができた.
著者
吉岡 斉
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、次の3つである。(1)冷戦終結後の世界の核エネルギー研究におけるリストラクチャリングの動向を概観すること。(2)リストラクチャリングにともなう研究資源(研究者、研究施設、研究資金など)のコンヴァージョンを促進するための主要国の政策について概観すること。(3)日本におけるリストラクチャリングおよびコンヴァージョン政策の在り方について、批判的分析を行うこと。コンヴァージョン政策が重要である理由は、2つある。第1は、リストラクチャリングの副作用を抑えること。第2は、コンヴァージョンの受け皿を用意することによって利害関係者の抵抗を弱めること。なお本研究では主として、民事利用の分析に力点を置いた。それは第1に、軍事利用分野に関しては世界的に調査が進んでいるからである。また第2に、日本の場合は軍事利用事業自体が存在しないからである。研究成果の相当部分はすでに出版されており、そのリストは報告書にある。代表的な3点のみを裏面に記す。主な研究の知見は次の3点である。(1)欧米諸国では周到なコンヴァージョン政策が不在であるにもかかわらず、リストラクチャリングは比較的順調に進んでいる。(2)それとは対照的に日本では、従来からの基本政策の見直しがいまだ実現しておらず、リストラクチャリングは限定的なものにとどまっている。その主要な原因は、日本の政策的意思決定機構の閉鎖性にある。そこでは当該政策の所轄官庁の利害が、過剰に保護されるのである。(3)リストラクチャリングを進めるためには、政策的意思決定機構の抜本的な改革が絶対的に不可欠である。それと同時に、適切で効果的なコンヴァージョン政策の立案が重要である。
著者
宮崎 慶次 浜田 勝彦 井上 正二 堀池 寛 折田 潤一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、高い安全性を確保しつつ高速増殖炉の経済性の向上を図るため、中間熱交換機と蒸気発生器を一体化して簡素化する独自案AIHX(Advanced Intermediate Heat eXchanger)の展開研究である。本科研により昨年度に制作した長尺加熱装置を試験部本体として熱媒体ガリウムを追加し、本年度に購入した液体金属ガリウム循環ポンプおよび液体金属循環装置用架台を付加して昨年度の自然循環実験に引き続いて、中間熱媒体ガリウムの強制循環(Pe【less than or equal】500)熱伝達実験を行った。(1)新型中間熱交換機(AIHX)内の液体金属Gaの強制循環熱伝達特性加熱ヒーター群側では熱伝達特性はSubbotinの式(Nu=5+0.025Pe0.8)と比較して、中流速領域(100【less than or equal】Pe【less than or equal】500)では高い熱伝達を示し、Nu=5+0.05Pe0.8となる。ヘリカル状冷却管側ではHoeの式(Nu=0.43+0.228Pe0.67)に比べて高く、中Pe領域で6.34+0.256Pe0.67となった。これらの結果については、尚、精査し確認を要するが、良好な熱伝達特性を示す結果である。(2)温度揺らぎの測定と局所的な流体移動・伝達メカニズムの解析経路が単純形状の加熱側では、相互相関による局所流速は電磁流量計流速と一致する。温度揺らぎのRMS値は流速増加とともに一旦増加してから減少する。これは発生メカニズムが加熱面近傍の温度勾配に流れの乱れが加わって発生することを示している。(3)高速増殖炉実用化への適応性の検討強制循環させれば優れた熱伝達特性が得られるが、実機のような長尺では自然循環でも「もんじゅ」同等以上の特性が期待される。実験結果を精査して、詳細検討を行い、結果は学会誌に発表の予定。
著者
鷹取 昭 後藤 範章 中泉 啓
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

科研費の交付を受けての研究の最終年度にあたる本年度は、(1)埼玉県戸田・与野・八潮の3市を対象とする大量調査とケース・インタビュー、(2)東京・福岡・札幌その他の大都市圏での資料の収集・ヒアリング・踏査を主とする現地調査、の補充調査を実施しながら、これまで進めてきた調査研究の成果のとりまとめ作業にあたった。(1)は、メトロポリタニゼーション(巨大都市化)が個々の地域社会に与える社会的効果を明らかにすることを、(2)は、巨大都市化の歴史的推移やメカニズムを、比較大都市園研究と交差させながら明らかにすることを、それぞれ目的としていたが、これらの調査研究によって実証的に分析・解明し得た主要な点は、次の通りである。I)巨大都市化は、とりわけ交通・通信ネットワークの整備・拡充と密接な関連性をもって進展してきた、ということ。II)交通・通信は、各都市・地域相互の時間・費用上の距離を短縮させることによって、その地理的・空間的距離を実質的に短縮させるばかりか、諸都市・地域を分かちがたく結びつけて、その社会的・文化的及び心理的な隔たりをうめていく効果をも有する、ということ。III)交通・通信ネットワークの結節点(ノード)となる都市は、社会的交流の結節点としての機能を高めて、一国内ばかりが、全世界の諸都市・地域との結びつきをも強めている、ということ。IV)その結果、交通・通信を介しての世界的なネットワーキングが進み、分化と統合を軸とした地球一国一地域(リージョン)の各サイズの垂直的分業体系の巨大で多段的な重層構造と機能連関が、現下の巨大都市化の推進力として強力に作用するようになっている、ということ。
著者
鈴木 雅一 執印 康裕 堀田 紀文 田中 延亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1. 幼令スギ・ヒノキ林を対象に、斜面上部下部の蒸発散量、土壌水分、土壌呼吸量を計測するとともに、流域内の微気象の空間分布計測を行ない、斜面がもたらす不均一さを明らかにするための計測を進めた。1) 植栽された樹木の成長が斜面部位で異なることについて、谷を横断する側線約50mについて、樹高、幹直径、葉窒素含有量、土壌水分、地下水位、土壌溶液水質、土壌窒素量などが調べた。5年生のスギの成長が谷で旺盛であり、尾根部が劣る理由は、尾根部における水ストレスがもたらすものではなく、湿潤な谷部の土壌有機物の分解による窒素の供給が谷部の活発な成長に関わっているという結果をえた。2)レーザプロファイラのデータを用いて植栽された樹木位置と樹高を小流域単位で評価する手法について検討を進め、小流域の全域について樹高の分布が図化された。2. タイ国チェンマイ近郊のドイプイ山に位置するKog-Ma試験地(樹高約30mの常緑林)にある50mタワーにおいて取得された微気象データを解析し、斜面風の形成と樹冠上から林内の気温形成過程、風速鉛直分布の形成過程について、解析した。1)樹冠上から林内の気温形成過程に与える夜間斜面下降風の影響は、夜間に生ずる斜面下降風発生の発生、非発生は大気安定度の指標であるバルクリチャードソン数に関係している。夜間の放射冷却が弱いとき、気温鉛直分布における最低気温は林床近くで生ずる。放射冷却が強くなると、樹冠上部で最低気温が生ずる。そして、更に放射冷却が強くなると樹冠上を吹く斜面下降風が強くなり、再び林床付近で最低気温が生ずるという、3段階の気温鉛直分布形成機構があることが、明らかにされた。2)昼間の風速鉛直分布の形成過程は、夜間に比べて解析が困難であった昼間の風速鉛直分布について、大気安定度と鉛直分布の関係を解析した。
著者
植田 宏昭
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成17年度では、熱帯アジアモンスーン地域での気候変動について、日変化・季節変化・年々変動さらには地球温暖化を含む長期変動スケールの研究を行った。使用したデータは客観解析データ(GAME再解析,NCEP,ERA40)、衛星リモートセンシングデータ(TRMM,NOAA)などで、大気海洋結合モデル、海洋1.5層モデルなどの数値モデルと組み合わせて包括的な研究を実施した。個別の成果は下記の通りである:1)IPCC-AR4にむけた複数の地球温暖化数値実験(排出シナリオはSRESA1-B)の結果に基づき、モンスーン降水量の将来変化とその要因について、モンスーン強度、熱帯循環、水蒸気収支などの観点から調査した。解析には8つのモデルを用いた。地球温暖化時には日本を含むモンスーン域の降水量は広域で増える傾向にある。しかしながらモンスーン西風気流は弱くなっており、パラドックスが生じている。この理由として、モンスーン域への水蒸気輸送の増加の寄与が明らかとなった。2)ERA40、NCEP/NCAR再解析データを用いて、インドシナ半島における非断熱加熱の時空間構造とトレンドを調べた。インドシナ半島ではモンスーン期間の始まりと終わりの年2回、積雲対流が多雨をもたらす。雨は春よりも秋に強まる傾向があるが、いづれも風が比較的弱く東側からの水蒸気フラックスの流入がある時期であった。対照的に風が強い7〜8月には地面からの蒸発が顕著であった。どちらのデータを用いても気候学的な特徴は同様に見られたが、トレンドに関しては一貫性のある結果は得られていない。この原因のひとつにはモデルに含まれるバイアスが考えられる。3)インド洋の海面水温はENSOの影響を強く受け、全域で昇温することが知られている。一方、ダイポールモードと呼ばれる東西非対称の海面水温(SST)偏差の発生が指摘されるようになり、ENSOとは独立した存在だと考えられていた。我々は大気海洋結合モデル(CGCM)にEl Ninoの海洋温度を季節を変えて挿入するという実験を行い、夏にEl Ninoが現れた場合は東西非対称海面水温偏差を、一方秋に現れた場合は全域昇温することを証明した。このことからこれらの海面水温偏差の発生にはモンスーン循環とENSOの影響の季節的な結合過程が主因として考えられる。
著者
桜井 泰憲 齊藤 誠一 BOWER John R. 山本 潤
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,スルメイカを対象として,気象の寒冷・温暖レジームシフト,アリューシャン低気圧の発達に影響される冬季季節風の強さ,海面気温などによって変化する本種の再生産・加入海域の表層暖水と季節混合層深度の季節・経年的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているのかを明らかにすることを目的としている.申請年度3年間の成果は以下の通りである.人工授精により得たふ化幼生を用いて,各発育段階の幼生の鉛直方向への遊泳行動を精査した.その結果,発育ステージ31以降の幼生だけが,水温18-23℃の条件下で垂直上昇遊泳し,特に19.5-23℃の狭い水温範囲で最も活発に遊泳することを確認した.そこで,スルメイカの新しい再生産仮説として,「スルメイカの再生産可能海域は,水深が100m〜500mの陸棚から斜面上の表層暖水内であり,その水温が18〜23℃,特に19.5-23℃で,中層に水温躍層が発達する海域」を提案できた.この新再生産仮説に基づいて,2000-2005年の冬生まれ群の再生産海域である東シナ海の冬季の再生産可能海域を抽出した.その結果,黒潮流軸より大陸側の東シナ海に南西に伸びた細長くて狭い陸棚斜面域と薩南海域が,スルメイカの産卵からふ化幼生の生残に最も適した海域であることが明らかにできた.さらに,ネット採集したふ化直後の1mm未満の幼生は,九州南東の黒潮内側の複雑な渦流域の表層に集積することが判明した.特に,薩南海域では黒潮の前線波動による集積と本州沿岸への受動的輸送の可能性を見出した.また,新再生産仮説に基づいて,1970-80年代の寒冷レジーム期における冬の再生産海域は著しく縮小もしくは消滅し,1980年代後半からは陸棚斜面に沿って形成されることが明らかにできた.これにより,より精度の高い気候変化に応答する再生産機構の成否の解明に,新たな研究展開の道ができた.
著者
船木 実
出版者
国立極地研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究で開発した自動飛行する小型無人飛行機の飛行データを解析した。その結果、ガソリンエンジンから発生する電磁ノイズは電磁シールドにより磁力計に大きな影響を与えていなかったが、プラグ電圧を低下させていることが判明した。風が7m以下と弱かった桜島での実験では、自動飛行によるルートの誤差は30m以内で、単独測位GPSと同程度の誤差範囲内で、満足できる結果であった。高度は旋回中に約30m下降し、その後急上昇し設定高度を約20mオーバーシュートしていた。設定高度を±10m以内で飛行するには、旋回終了後少なくとも250mの直線距離が必要であることが判明した。しかし、22m/sの最大風速が235°の方向から吹いていた鳥海山での飛行実験では、飛行ルートは風上側でコースの逸脱はほとんど見られなかったが、風下側では100m近くルートが流された。東西方向の直線飛行のルートは満足できるものであったが、コースは絶えず修正され、機体は絶えず揺動していたことが推定される。以上の結果、我々の開発した小型無人機の場合、風が弱い時は単独GPS測位の精度以内の飛行が行われるが、風が強いときには設定ルートからの逸脱や、機体姿勢の修正のため多くのエネルギーが消耗することが分かった。第46次南極観測隊(越冬隊)に本機を託し、越冬期間中に飛行実験を試みた。低温でのエンジン始動や平坦な滑走路の確保の困難さから、地上滑走実験のみで、飛行は行われなかった。南極で高度なラジコン技術を持たない隊員が小型無人航空機で空中磁場探査を行うには、カタパルトの開発が不可欠である。本研究で開発した機体と飛行実験の結果は2006年1月に行われたInternational Symposium on Airborne Geophysics 2006で報告した。
著者
上原 克人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東シナ海陸棚は面積こそ全海洋の0.35%にすぎないが、この海域へ黄河・長江両河川から流入する土砂は世界中の河川から海洋へ流入する量の12%に達し、光透過度や栄養塩の輸送、海底堆積物の粒径変化などを通して海域の生態系に大きな影響を与えるとともに、中国東岸での過去6千年で200kmに及ぶ海岸線の前進を引きおこすなど陸棚の地形発達にも深く関与してきた。そのため東シナ海においてこの陸起源の土砂の振る舞いを把握することは当該海域の海洋環境を理解する上で非常に重要である。過去の観測結果からこの河川由来の土砂の多くは沿岸域でいったん堆積した後、再懸濁を繰り返しながら陸棚域を移動することが示唆されてきたが、再懸濁の発生頻度や空間分布は、陸棚全体にまたがる年間を通した研究はこれまで行われておらず、理解が十分であるとは言えなかった。そこで本研究では陸起源の土砂輸送過程の中でも再懸濁過程に的を絞り、東シナ海陸棚上で一般流、潮流、波浪に起因する底摩擦の強度を過去10年間にわたって推定し、再懸濁を引き起こす可能性のある強い底摩擦が発生する頻度を調べた。その結果、従来から指摘されていた冬場の暴風だけではなく、台風通過も再懸濁を引き起こす大きな要因となりうることが判明し、夏から初秋にかけての再懸濁も東シナ海の物質輸送に影響を与えている可能性が示唆された。さらに黄海の中国沿岸と韓国沿岸では、同じモンスーン気候の影響下にあるにもかかわらず、陸域配置の関係から再懸濁発生の季節変化のパターンが異なることが明らかになった。この結果は両岸での干潟発達の観測結果と良く対応しており、東シナ海沿岸の潮間帯の季節変動を理解する上で海域全体を体系的に調べることの重要性を示している。
著者
金子 成彦 斎藤 登 渡邉 辰郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故で発生した、温度計ウェルの流れ方向振動に起因する温度計さや管の自励振動に関係するものである。動燃事業団(現:核燃料サイクル事業団)から提出された報告書によると、特定の一本の温度計ウェルが損傷した理由は、損傷した温度計ウェル内の熱電対が曲がって挿入されたため熱電対鞘管の内壁に接触し、温度計ウェルは1自由度系として振る舞い、大きな振動が発生し疲労破壊に至ったとのことである。この事実は、損傷を受けなかった他の温度計ウェルでは、熱電対が熱電対鞘管の内壁に常時接触してはいないので、振動することが可能で、熱電対は副振動系の役目を果たし、ダイナミックダンパを構成し、熱電対鞘管の振動を抑制したため破損しなかったことを示唆している。このように対称渦によって発生する流体振動現象は、複雑で、完全には解明できていない現象である。そこで本研究では、電力中央研究所我孫子研究所にある重力落下式水槽を用いて、加振円柱に作用する対象渦の放出による変動流体力の詳細な測定を行い、その結果を、定常流体力、加振変位に比例する変動流体力、加振変位と90度位相のずれた変動流体力に分けて、換算流速(無次元流速)と加振振幅の非線形関数で表現したデータベースを構築した。その結果を元に、振幅がある一定の大きさになった時に始めて発振が起こる硬発振の振動系であることを明らかにした。これまでにデータの蓄積ない、微小振幅の条件下での流体力の測定に初めて成功し、流れ方向の抗力は、対称渦が発生しているときには、その大きさが約二分の一に減少するという事実が判明した。
著者
岡島 厚 上野 久儀 溝田 武人 岡野 行光 木綿 隆弘 木村 繁男
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

工業プラントの配管内センサーに用いられるブラフな断面構造物の後流域は、流れの剥離による複雑な渦構造を呈し、構造物は後流渦によって様々な自励振動現象が生じる。高速増殖炉「もんじゆ」のナトリウム漏洩事故の主な原因であった低流速域で起こった流れ方向振動も自励振動の一つである。本研究は円柱や矩形柱断面柱などの構造物の流れ方向流力振動の発生機構に関し、風洞実験、水槽実験、数値シミュレーションによって、主として両端弾性支持円柱した自由振動試験によって、次のようなことを明らかにした。(1)振動する円柱及び種々な断面比の矩形断面柱周りの流れ(レイノルズ数Re=10^4)をスモーク・ワイヤー法によって可視化し、振動特性と流れパターンの対応を示し、共振流速の1/2を境にして二つの励振域において、それぞれ振動円柱周りの対称渦及び交互渦の鮮明な可視化映像を得た。(2)表面粗さを導入して、臨界域以上の高いレイノルズ数領域の円柱周りの流れを実現して、高レイノルズ数領域の渦励振の様相を明らかにした。臨界域では直角方向振動が極端に抑制されることを見出した。(3)矩形断面柱の流れ方向振動に関しては,断面比が小さく垂直平板に近い場合には交互渦による第二励振域が断面比が大きくなりアフターボディーが長くなると、対称渦を伴う第一励振域が支配的となることを明らかにした。(4)二自由度弾性支持円柱の流れ方向の流力振動時の対称渦及び交互渦の渦構造を数値シミュレーションして、それぞれの後流の三次元構造の様相には、相違があることなどを見出し、2つの励振現象は後流の交互渦の形成強さと密接に関係していることを示した。
著者
戸瀬 信之
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1(特異約なフーリ工積分作用素)線形双曲型偏微分方程式の解の(超局所)特異性の伝播の研究においては、解の特異性の分岐、conical refractionなど様々な現象が解析されてきた。特に、結晶光学に現れるconical rehactionの現象は、自然界に現れる自然なものとして多くの視点から研究が進められてきた。1985年ころから、conical refractionの研究に、余接束をその包合的な多様体に沿って爆裂して解析を行なう第2超局所解析(second microlization)を用いて分析を行なうことが試みられ、P. Laubin(LIEGE大)や私の研究により一定の結果を得る事ができた。第2超局所解析は、包合的な多様体上の超局所特異性を、余接束をその包合的な特性多様体にそって爆裂した空間上で解析を行なうものであるが、上で述べた研究で中途半端になっているものがある。超局所解析では、量子化接触変換、フーリ工積分作用素によつて、擬微分方程式が単純特性的な点において簡単な標準形にうつることが示されているが、第2超局所解析ではこの方向の研究が不十分である。すなわち、変換理論自体はあるのであるが、マイクロ函数の第2超局所特異性を分解した層を部分層として含む第2マイクロ函数の層の枠組みで構成されたものである。この研究では、解の構成に変換理論が使えるように、マイクロ函数の第2超局所特異性を分解した層の枠組みで変換理論を構成するための様々な準備を行なつた。2(第2超局所特異性の基礎的な研究)第2超局所解析で自然に現れる第2超函数の層は、正則包合的な多様体上に制限した佐藤のマイクロ函数の層を含む。この第2超函数の層を退化した偏微分方程式の境界値問題に応用した。
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。
著者
矢口 直道
出版者
岐阜市立女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は、調査データの整理と考察に努めた。成果の一部は、『ホイサラ多神格寺院の平面構成』と題した論文にまとめ、鈴木博之・石山修・伊藤毅・山岸常人編、「シリーズ都市・建築・歴史 第2巻 古代社会の崩壊」(東京大学出版会、2005年)の第4章(pp.237-308)として、発表した。ここでは、従前の研究成果に本研究費によって行った2度に渡る現地調査の知見を加えて、ホイサラ朝を中心としてデカン高原の諸ヒンドゥー王朝の寺院を構成する室の形状と配置に着目し、政治的、宗教的背景をふまえて寺院の平面構成を論じた。まず、寺院本殿を構成する各室の平面形態との関連をみることにより,複雑な平面類型の寺院内部の様相を理解することができることを述べた。これに加えて、本研究の課題である宗教建築の左右対称性に関して、寺院にまつられた神格と寺院の入口の位置に着目することによって、主祠堂にいたる軸線に対して対称、非対称を論ずることができると指摘した上で、複数の神格をまつる多神格寺院の平面は、同宗派の神格をまつる寺院では複数の祠堂が対称に配置され、異種の神格をまつる重層信仰寺院では非対称に配置される傾向にあると述べた。具体的には最も吉兆な西方にシヴァ神をまつり、それに準ずる入口正面にヴィシュヌ神をまつることが多く、当時の宗教的背景を勘案すると、シヴァ派の優位を確立しながらヴィシュヌ信仰を取込んだヒエラルキカルな建築表現であると結論づけた。これは成果の一部であるが、このような見地からインド寺院建築を勘案した研究はほとんどなく、複雑な平面形が特徴の一つである中世ヒンドゥー教寺院を理解するため一つの考え方であろうと考える。
著者
堀口 健雄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は渦鞭毛藻類における眼点の多様性の実体を把握しようとするものである。また,分子系統学的な解析により,渦鞭毛藻類において眼点がどの系統で獲得され,あるいは二次的に消失したのかといった問に対する答えを見いだすことも目標とした。さらに特殊な眼点をもつDinothrix paradoxaについては,その眼点の分裂機構を明らかにつることに努めた。各地から採集した渦鞭毛藻類の眼点の有無を調査した結果,タイドプールに生育するGymnodinium pyrenoidosum,Scrippsiella hexapraecingula,Scrippsiella sp.の3種で眼点の存在が確認された。これらの眼点の微細構造を調べたところ,3種とも葉緑体中に脂質顆粒が並ぶタイプの眼点で,しかも脂質顆粒が2列に並ぶ構造をもっていた。このように脂質顆粒が2列に並ぶタイプの眼点は今まで知られていない。18SrRNA遺伝子の塩基配列を9種類の渦鞭毛藻類について決定し,DDBJのデータベースから取得した25種のデータを加えて分子系統解析をおこなった。その結果,同じタイプの眼点をもつG.pyrenoidosumとS.hexapraecingula が単系統となり,D.paradoxaも上記2種と同じクレードに含まれることが明らかとなった。このことは特殊であるとされるD.paradoxaの眼点も通常の眼点の変形である可能性を示唆するものである。D.paradoxaの眼点の分裂については光学顕微鏡レベルで連続観察をおこなった。その結果,元の眼点は分裂することなく,細胞質内でde novoに眼点が形成されるらしいことが明らかになった。この点については,眼点を包む膜の由来などの問題もありさらなる検討が必要である。
著者
右田 王介
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

先天代謝異常症では、近年造血幹細胞移植や酵素補充療法といった根本的治療が可能となり、早期診断が急務となってきている。しかし、病因遺伝子が明らかであり遺伝子検査が未発症もしくは発症早期の診断の有力な根拠となりうるにもかかわらず、実際的な低コスト・迅速な遺伝子検査体制については、いまだ検討段階にある。本研究では遺伝子変異の新しい検査方法について検討し、将来の遺伝子検査体制の開発をめざした。・遺伝子変異スクリーニング法の確立10の遺伝子(ATP8B1, ABCB11, JAG1, OTCD, IDS, GUSB, IDUA, FGFR3,DMD,FCMD)についてPCR増幅法を確立した。簡便な検査を目指すため全エクソンに対し温度設定、使用ポリメラーゼなどについて、まったく同一条件としたPCR条件の確立をめざした。全てのアンプリコンを全く同一の条件に統一つることはできなかったが、1遺伝子あたり1〜3条件に集約できた。これにより、予めPCR反応に必要なプライマーのセットを準備し、患者DNA検体とPCR試薬の混合物を添加するだけで半自動的に遺伝子変異探索の検討ができるようになった。・スクリーニング法の評価これまでに遺伝子解析が行われた既知の遺伝子変異をもつDNA検体を用いて、DHPLC法およびリシークエンシング・アレイ法による変異検索の検出検討を行った。直接シーケンス法による遺伝子変異の検出率と比較した。研究申請段階では、未確立であったアレイ技術によるリシークエンシング・アレイ法による解析についても検討し、キャピラリー式の直接シークエンス法と同等の検出力をもつことが確認できた。・遺伝子検査システムの確立これら新規遺伝子解析法を併用した遺伝子検査システムを、遺伝子変異が未知の検体へ応用を開始した。全国の医療施設からのムコ多糖症、OTC欠損症など受け入れて検査を開始した。・遺伝子検査システムの応用本研究では、PCR条件を画一化することによって半自動化した検査体制の確立が期待できることを検証した。各疾患の病因遺伝子にある全エクソンのプライマーセットをあらかじめ準備したPCR用プレートを作製し、臨床的にある遺伝性疾患が疑われた際に、患者DNAサンプルとPCR試薬のミックスをこのプレートに投入することで、遺伝子の検討を迅速に行える。この方法は、アレイ技術による解析にも応用でき有用な方法と考えられた。今後もより迅速で確実な先天疾患の遺伝子診断システムの拡充にむけた検討が必要と思われる
著者
小島 治
出版者
京都府立医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.Zoladexの抗腫瘍効果の基礎的検討1)ヒト培養胃癌細胞(KATO-III細胞とMK01細胞)とヒト培養乳癌細胞(HBC-4細胞とHBC-5細胞を用いてZoladexの抗腫瘍効果を検討した。胃癌、乳癌ともFR陽性細胞(KATO-III細胞とHBC-4細胞)の増殖を抑制した。1×10^<-7>MのE_2を加えるとZoladexの効果がよく発揮された。2)ヌードマウスヒト移植胃癌、乳癌培養細胞をメスヌードマウスに移植して、それぞれの細胞によってつくられた同型腫瘍の増殖を検討した。Zoladexを投与すると、ヌードマウスの血清E_2濃度は著明に低下し、それに伴い腫瘍の増殖も抑制された。FR陽・陰性細胞間の増殖の差は認められた。2.ヒトスキルス胃癌患者へのZoladexの投与1)ヒトスキルス胃癌患者へのZoladex投与による血清E_2の変化は投与4〜5日目より著明に低下し、同閉経前女性患者におけるE_2の低下は最大であった。高齢女性では投与前のE_2が低いので、Zoladex投与の影響はあまりなかった。しかし、E_2の高い男性患者ではE_2の低下が認められた。Zoladexの投与量は乳癌の投与量と同じ量であった。2)Zoladex単独投与によるヒトスキルス胃癌の抗腫瘍効果は明瞭でない。現在、予後を検討しているところである。以上、Zoladexをヒトスキルス胃癌患者へ投与して、その安全性は認められている。その治療効果、予後に対する影響を今後検討せねばならない。
著者
小郷 直言
出版者
高岡短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究は人間の協働活動をコンピュータにより支援するために必要な実システムの実現と利用実験を行った。ならびに、内外のコラボレーションに関する理論的、工学的な展開について調査を行った。1.協働支援システム(もんじゅと呼ぶ)のLAN上への移植作業を行った。 協働支援システム(もんじゅ)はわれわれの考えるグループウェアの基礎となるシステムであり、サーバ/クライアント方式を採用した。2.リアルタイム・グループライティング&ドローイング 本格的なグループウェアとしてリアルタイム・グループライティング&ドローイングはネットワーク上で共有ウィンドウを使って共同執筆を試みるプログラムであり、これをわれわれの手でワークステーション上に開発した。このグループライティングの特徴は応答性能に優れ、WYSWISが満たされ、利用者はいつでも書込みが可能な点である。現在さらにシステムの機能を充実する作業を続けている。3.グループウェア利用実験 学生を対照にシステムを実際に利用し実験データを集め、分析を行い、システムの改良を続けている。協働を対象とする研究にあっては、実践を目指し、それに対して検討がなによりも重要である。4.内外の文献を調べた後、市販されているグループウェア商品を導入している企業を訪問し、その利用形態、状況を実態調査した。協働についての研究のサーベイの結果、協働は学際的な研究対象であり、経営組織論、相互作用的状況論、メディア論、分散協調システム、分散人工知能、ネットワーク論などを含む広範囲な研究領域と関係することがますます明確になった。