著者
高塚 直能 長瀬 清
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、乳がん手術の待機期間に影響する要因について検討した。病期分類3の場合、病期分類0、1 、2に比べて待機期間の最大値が短く、我が国では重症例に対し先延ばしにしないという傾向を示唆するものであった。ただし、多変量解析では病期について有意な係数は得られなかった。また待ち行列理論の適用しモデル化を試みたが、流入率が流出率を上回ることがあり、流入率が流出率を上回らないとする理論から逸脱するため、適用は断念した。
著者
内田 直
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

A.運動をするとよく眠れるようになる、B.運動をすると気分がスッキリする、という経験的によく知られている事実についての科学的根拠を明らかにすることが本研究の目的である。成果の一つは研究のポイントが非常に明確になったことである。即ち(運動の種類[有酸素,無酸素],運動の強度,運動する時間帯[朝,昼,夕方,就寝前])の全て組み合わせについて比較検討する必要がある。また運動強度が強すぎるとストレスによる効果で,睡眠に対して悪い効果がある可能性も考えられる。さらに、それらの効果は、脳は睡眠段階判定だけでは十分に明らかにできない可能性がある。これらを検証は非常に長い研究期間を要する課題であることが明らかになった。本研究で行ったことは1.5km自己ペース走後の睡眠の変化、2.睡眠直前の高強度無酸素運動による睡眠への影響、3.早朝の一過性有酸素運動の前頭葉機能に対する影響、の3つである。1.においては、若年成人を対象としたが,午後の昼寝を間に挟むことにより夜間睡眠の質を劣化させる工夫を行った。また、昼寝と夜間睡眠の間に5km走行を入れた条件により,その後の睡眠に対する影響を調べた。また、判定にコンピュータによる周波数分析を行った。その結果,視察判定では睡眠の変化を確認できなかったが,周波数分析により徐波周波数帯域の増加が確認された。2.では、高強度無酸素運動の睡眠への悪影響について予想したが,睡眠変数に変化はなかった。しかしながら、睡眠前半の有意な体温上昇、心拍数の上昇などがみとめられ、睡眠変数だけでなく身体的生理学指標を同時に用いることにより、有意な睡眠の変化が認められることが明らかになった。3.については、睡眠への影響でなく前頭葉機能に対する影響をみたが、一過性の前頭葉機能改善が認められるに留まった。
著者
渡部 泰明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

中世和歌の形成に多大の功績を果たした歌人藤原俊成に対し、その撰集『千載和歌集』の配列構成に新知見をもたらし、またその歌論上の主著『古来風躰抄』の注釈を、最新の成果を盛り込みつつ完成させ、また源実朝・頓阿・宗祇(古今伝授)など、中世和歌の重要歌人・課題について、新たな視点を提示した。いずれも、従来の研究史において不足していた、和歌史的な視座のもとに新たに位置付け直す点に特徴がある。
著者
笛木 賢治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

I.目的本研究では咀嚼機能の観点からみた片側性遊離端義歯の人工歯部歯列の近遠心径についての臨床的示唆を得ることを目的としている.初年度は実験的に下顎の片側性遊離端義歯を対象にして人工歯部歯列の近遠心径を変化させた時にこれが咀嚼の混合能力に及ぼす影響を検討し第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼の混合能力は低下しないことを明らかにした.そこで平成15年度は,上顎の片側遊離端欠損の症例で検討を行った.II.方法被験者は上顎第一、第二大臼歯の遊離端欠損を有しかつ対合には天然歯もしくは固定性の補綴装置が装着されている患者8名(男性2名,女性4名,平均年齢61.5歳)を選択した.実験義歯は片側性の設計で白金加金を用いてワンピースキャストで製作した.上顎第二小臼歯に近心レストとバックアクションクラスプ,上顎犬歯および第一小臼歯にエンブレジャーフックを設置した.人工歯部歯列の頬舌径は顎堤頂を中心軸として幅を7mmとし,光重合レジンを用いて口腔内で直接製作した.人工歯部歯列の近遠心径は以下の3種類に変化させた.Aは欠損部に隣接する上顎第二小臼歯の遠心面から対合の下顎第二大臼歯の遠心面(平均18.2mm)までとした.順次近遠心径を13,9mmとし,それぞれB, Cとした.咀嚼機能の評価は当教室で開発した混合能力試験で行い,被験試料を義歯装着側で10回咀嚼させ混合値(MAI)を算出した.3回試行しその平均値を各歯列の代表値とした.各歯列間の比較はTukey法により有意水準5%で行った.III.結果とまとめ歯列の近遠心径がAとBの間には,混合値に有意な差は認められなかったが,AとCおよびBとCの間には有意差が認められた.この結果から,人工歯部歯列の近遠心径を13mmより短くなると混合能力が減少すると考えられた.このことから,下顎と同様に上顎の片側性遊離端義歯においても第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼機能が低下しないことが示唆された.
著者
辻井 正人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では典型的なカオス的挙動を示す連続力学系(アノソフ流、特に負曲率空間における自由粒子の運動を記述する測地流)に対して、付随する転送作用素のスペクトルを分析することで軌道の統計的性質を精密に分析する方法を研究した.最大の研究成果は負曲率多様体上の測地流(またはより一般の接触アノソフ流)に対し、転送作用素の生成作用素が離散的なスペクトルを持ち、それらが複素平面上の幾つかの虚軸に平行な帯状領域に含まれるという事実を示したことである.加えて、力学系のゼータ関数についても対応する結果を得た.これは従来の関係分野の研究を大きく前進させるものである.
著者
服部 浩一
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、各種生殖細胞系列の分化成熟過程におけるマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)、血液線維素溶解系(線溶系)に代表されるセリンプロテアーゼ等の各種プロテアーゼ活性の意義及び重要性を理解し、生殖細胞動態制御機構の解明を主目的としている。代表者らは、各種MMP及び線溶系因子プラスミノーゲン(Plg)の遺伝子欠損マウスで、有意な妊娠、出産率の低下を認め、特に後者群について、精巣中の精子数に有意な減少、さらに精巣重量の低下を見出した。代表者らは、この原因として、今年度迄の研究を通じ、Plgの遺伝子欠損マウスでは、テストステロン及び下垂体ホルモン(LH)の分泌に障害があることを見出した。また、Plg遺伝子欠損雄性マウスでは、こうしたステロイドホルモンの分泌障害に基づくと考えられる貧血を呈していること、テストステロン分泌の主体と考えられる精巣中のライディッヒ細胞が有意に減少していることも明らかとなった。加えて各種MMP及びPlgの遺伝子欠損マウスでは、生理学的ストレス刺激時の雄性生殖細胞の分化増殖因子Kit-ligandの細胞外ドメイン分泌に有意な障害のあることが判明しており、これらの各種プロテアーゼ活性が、生体内の生殖細胞系列の分化調節に様々な角度から関与していることが確かめられた。また代表者らは今年度の研究で、各種プロテアーゼ遺伝子欠損マウスについて停留精巣モデルを作製し、精巣重量を経時的に測定したところ、これらの野生型と比較して有意な重量減少と、これに応じた精巣の組織傷害が進むことが判明した。またこの時、遺伝子欠損マウスでは、血中のKit-ligand濃度の上昇が抑制されていること、さらに野生型において、Plgアクチベータの投与が精巣重量の減少を有意に阻害したこと等から、各種プロテアーゼ活性は雄性生殖細胞の分化増殖に寄与し、その再生にも関与していることが示唆された。
著者
松川 節 三宅 伸一郎 小長谷 有紀 二木 博史 井上 治 二神 葉子 中村 和之 白石 典之 白石 典之 村岡 倫 小野田 俊蔵 バイ カル 山田 誠
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

モンゴル国に現存する世界文化遺産エルデニゾー僧院の保存・保護に向けて,基礎研究と現地における本調査を行った結果, (1)エルデニゾー僧院およびモンゴル帝国の首都カラコルムの歴史を解明する新たな文字資料2点を発見, (2)エルデニゾー立地点における8世紀~20世紀までの考古学的文化層について基礎データを収集, (3)モンゴル国政府に向けて,エルデニゾー寺院の研究と保存保護に関する6項目からなる「提言書」を提出などの成果を得た。
著者
魚住 泰広
出版者
分子科学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

平成23年度には、マイクロ流路内での膜状高分子錯体の調製(step1)、ナノパラジウム触媒膜の形成(step2)と、同膜触媒導入マイクロ流路デバイスを利用する反応実施(step3)の3段階について検討した。具体的にはstep1では高分子配位子として直鎖ポリビニルピリジンおよびテトラクロロパラデートをY字型マイクロ流路に導入しマイクロ流路層流界面上で良好な膜形成が進行した。流路内で調製した触媒膜を還元的あるいは熱的に分解することで高分子膜内でのパラジウムナノ粒子の発生を試みた(step2)。その結果、PVP-Pd膜を50℃、30分間、ギ酸ナトリウム水溶液で扱うことで比較的狭いサイズ分布を持ったナノPd粒子が発生することを見いだした。さらに流路内に調製したナノPd膜を備えたマイクロ流路反応装置を利用し、幾つかのPd触媒工程をフロー型反応として試みた(step3)。その結果、ハロアレーン類の還元的脱ハロ反応がギ酸を還元剤として有効に働くことを見いだした。すなわちハロアレーン水溶液とギ酸水溶液をマイクロデバイスY字同入口から各々加えたところ室温で反応は速やかに進行流路内の保持時間僅か2-5秒で定量的に脱ハロ生成物を与えた。芳香族ハライドの置換基として電子供与性、電子求引性、オルト位、メタ位、パラ位に関わらず反応は良好であり、また芳香環上に複数のクロロ基を有する基質も良い反応性を示した。さらに本反応はハロアレーン濃度が10ppm程度でも問題なく進行した。
著者
松本 明日香
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

まず、1976年米国大統領選挙に関して、昨年度収集した米国公文書館の外交文書などをもとに分析結果の一部を論文「フォード大統領東欧発言の形成過程-1975年ヘルシンキ協定と1976年米国大統領テレビ討論会から-」として纏めて『国際公共政策』に上梓した。次に、比較対象として、1960年米国大統領選挙の第4回キューバ侵攻計画を扱うために、アイゼンハワー大統領とニクソン大統領図書館にて調査に行った。二者における関係性を平成24年6月には『アメリカ学会』にて「公開討論会と外交機密-1960年第4回、1976年第2回米国大統領候補者テレビ討論会の対照比較-」と題して報告することが決定している。最後にこれまで研究してきた政治テレビ討論会をベースに米国の状況をより客観的に分析するために各国制度比較を行っている。NHKアーカイブスにおいて、日米の討論会を比較検討する『政治テレビ討論会と国家指導者像の変遷-日本党首討論会と米国大統領討論会』の研究を進めている。これまでの資料館調査を元に、平成24年4月24日に『日本アーカイブズ学会』で「テレビ政治討論会のアーカイブズ-日・英・米を比較して-」を報告することになっている。また政治スピーチの分析手法を精査するため、これまでの質的に分析に加えてコーパスによる量的分析も行った。自然言語処理を専門とする吉田光男との共同研究を行い、『日本政治学会』において「国家指導者のTwitterレトリック-バラク・オバマと鳩山由紀夫の対照比較-」のポスター報告を行った。これまでの質的分析をある程度裏付ける結果を出すことに成功した。さらにこれまで扱ってきたテレビと、近年のウェブにおける政治言説の差異と継続も吟味できた。
著者
若林 隆 仁木 一郎 吉田 松年 早川 哲夫 JERZY Krechn ZDZISLAW Wai MICHAL Wozni
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.培養細胞系によるミトコンドリア(ミト)巨大化実験モデルの確立:従来の動物(マウス、ラット)に代わって培養細胞系による実験モデルを確立し、ミト巨大化の機序解明を可能にした。2.ミト巨大化機序の解明:様々な病的条件下でのミト巨大化の普遍的機序に、フリーラジカルが直接関与することをin vivo,in vitroの実験系で証明した。3.ミト巨大化の細胞病理学的意義の解明:巨大ミト存在下の細胞がやがてアポトーシスに陥る事を培養細胞系で見いだした。フリーラジカルに晒された細胞内ミトは、巨大化により自らの酸素消費量を減少することによって酸素ラジカル産生を減少させ細胞内フリーラジカル量の増加を緩和しようとするのであり、ミト巨大化はオルガネラ・レベルでの適応と考えられる。4.フリーラジカルスカベンジャーによるミト巨大化阻止の成功:coenzyme Q_<10>,α-tocopherol,4-OH-TEMPOにより、in vivo,in vitroでの種々病的条件下でのミト巨大化の阻止に成功した。6.臨床応用を目的としたフリーラジカルスカベンジャーの開発:in vivoの実験系で4-OH-TEMPOの副作用がみられたので、新たに6種の誘導体を合成しスカベンジャー効果を培養細胞系で検討した結果、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPOに4-OH-TEMPOよりはるかに優れたスカベンジャー効果が見られ、in vivoの系で検討中。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、大学の授業にヨガを導入することの先駆的な試みとして、その精神生理学的な効果と被験者(学生)の主観的な反応を調べることを目的とした。被験者は本学心理学専攻学生53名(男子13名、女子40名)であり、全員が必修科目の中でヨガを体験した。手続きは、脈拍と血圧についてヨガ実施前に3回のベースラインを測定した後、ヨガ実行中および終了後に合計3回の測定を行った。また、ヨガ終了後はその時点での気分とリラックスの度合いを評定させた。ハタヨガの実施時間は約1時間15分であった。その結果、ヨガ実施前と実施後の脈拍の平均値をt検定で比較したところ、有意にヨガ実施後の低下が見とめられた。血圧や、各変数間の相関では有意な結果は得られなかった。このことより、授業という状況の中でヨガを実行することによる身体的な効果はある程度認められたと考えることができる。これは、ほとんどが初心者で、しかもヨガに対する動機づけが必ずしも高くないという状況であっても、ヨガによる変化を体験することができることを示している。但し、授業の中での実践はあくまでヨガの紹介やきっかけ作りという側面が強いため、本研究を踏まえて、今後はより継続的な実践のための長期的なプログラムを検討していく必要があると思われる。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、被験者によるヨガ介入の効力知覚、ならびにそれによるセルフ・エフィカシィ知覚に対して、生理学的な指標の即時フィードバックが影響を及ぼすか否かを明らかにするために計画された。仮説として提起したのは、ヨガ介入が効果的と把握されればされるほど、被験者が自発的にヨガをやる確率が高くなり、しかもヨガを継続的に実行するようになり、継続することによって望ましい効果が得られるというものである。ヨガの指導を受けてから、実際に何人の被験者がその後も継続したかをフォローアップで調査しなかったために、本研究では直接に応諾の問題には対処しなかった。むしろ本研究では、介入の効力知覚を高めることをねらったフィードバックの使用に焦点を当てた。換言すれば、本研究で直接扱うのは、ヨガ介入の効力知覚を高める手段としてのフィードバックである。ヨガ介入の効力を測定するために、今回はリラクセーション達成率を調べた。前記の仮説をより大きな準拠枠に当てはめてみると、実際に本人が遂行した介入に対する効力知覚が大きければ大きくなるほど、セルフ・エフィカシィは高まる。そして、セルフ・エフィカシィ知覚が高くなればなるほど、応諾率も上昇すると推測される。62人の学部生を被験者としてヨガによるリラクセーションのセッションを行い、リラクセーション達成率を測定した。被験者は、実験群とコントロール群の2つのグループに分けられた。実験群では、介入前後に血圧と脈拍数を測定し、その数値を提示した。コントロール群には、同数値のフィードバックを与えなかった。その結果、この2つのグループ間でリラクセーション達成率に有意差は示されなかった。しかし、両グループにおいて、男性に比べて女性の方が自分の達成率を有意に高く評価した。
著者
徐 強 SINGH Sanjay Kumar
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高い水素含有量を持ち、燃料電池用水素源として高い可能性を持つ水和ヒドラジンに注目し、水和ヒドラジンの触媒による選択的完全分解反応で、室温という温和な温度において、PtNi及びIrNi合金ナノ粒子触媒を用いて制御可能な条件下で水素ガスを発生させることができることを見出した。PtNi,IrNi二成分合金ナノ粒子触媒の組成を調節して、触媒活性・水素生成選択性評価を行ったところ、それぞれ100%水素選択率を示す組成領域を明らかにした。PtNi合金ナノ粒子触媒ては、Pt含有量が7-34%の幅広い領域において、100%水素選択率を示す。IrNi合金ナノ粒子触媒に関しては、Ir含有量が5-10%の領域において、100%水素選択率を示す。放出ガスの体積測定のみならず、質量分析におけるH_2/N_2比(2.0)及びアンモニアに起因する^<15>NNMR信号がないことから、これらの条件下ではヒドラジンの完全分解反応H_2NNH_2→N_2+2H_2が選択的に進行していることが確認された。TEM観察により、PtNi,IrNiナノ粒子の平均粒径は約5nmである。XPS測定により、それぞれPtNi,IrNiの二成分合金ナノ粒子となっていることがわかった。これら合金ナノ粒子が高活性・高選択性を有することは、触媒表面に両成分とも存在し、完全分解・水素生成に有利なヒドラジン結合活性化に寄与していることを示している。水和ヒドラジンは、液体であるため移動型燃料タンクへの充填が容易であり、既存の液体燃料用供給・貯蔵インフラ設備が利用可能という大きなメリットを有する。さらに完全分解によって水素と窒素に分解するため、生成物回収・再生が不要である。
著者
前迫 孝徳 片山 滋友 山内 裕平 菅井 勝雄 久保 和彦 横尾 能範 木原 俊行 水越 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、教育現場で利用可能なセンサーインタフェースを開発し、ハイパーメディア上で統合させることにあった。まず、国産のパーソナルコンピュータが現場で扱い易いセンサーインタフェースを有していないことから、パラレルポートを利用してデジタル入出力とアナログ入力を行う汎用のセンサーインタフェースを開発した。次に、センサーのアナログデータを電圧・周波数交換して、微弱電波や赤外線で伝送する無線方式のセンサーインタフェースを開発した。パソコンへはシリアルポートを通してデータを転送する。さらに、これらのセンサーインタフェースを利用する授業実践を行う中で改善を加えた。一方、環境や身体情報り測定が重要な意味を有するようになってきたことを考慮し、簡単な3次元地震センサー学習状況の把握に役立つ心拍呼吸性変動測定装置を開発した。さらに、インターネットの普及の中で重要性が増したHTMLを対象とすることで、センサー情報のハイパーメディアへの統合を実現する基礎研究を行った。すなわち現場校で気象等の授業を行う際、各種の情報や他地域との比較が望まれたことから、センサーの測定結果を扱う分散データベースと、Java及びJavaスクリプトを利用しインターネットを介して情報交換を行うハイパーメディアシステムの試験運用を行った。このように本研究では、ハードウェアとして、測定対象が卓上から屋内、そして屋外の測定へと拡大しつつある状況に対応可能なセンサーやインタフェースの開発と、ソフトウェアとして、インターネット上のWWWサーバを基本要素とする分散データベース上でリアルタイム測定データを扱う統合したハイパーメディアシステムを実現する基礎が確立できたと考える。今後もシステム運用を継続する中で改善等の活動を行う予定である。
著者
東 自由里 リム ボン 大津留 智恵子 出口 剛 ジェイ クラパーキ 堀田 秀吾 イアン ホザック 米山 裕
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究プロジェクトは、最終年度のため、研究代表者及び分担者はそれぞれ次の研究プロジェクトを視野にいれて研究活動を行った。研究代表の東は2005年5月にゲルニカ平和ミュージアム(スペイン)で開催された国際平和ミュージアム学会と国際博物館協会(ユネスコ本部、ICOM)の分科委員会である「公共に対する犯罪犠牲者追憶のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO)との共催で行われた国際会議で発表する。ゲルニカではICMEMO委員会の会合も行われ、関連テーマを共有する欧州の特に館長を中心とした歴史博物館関係者たちとの学術的交流をもつ機会を得ることができた。国際会議での発表は、ゲルニカ平和ミュージアムの編集によって著書になることが決定している。3月は在外研究でフランクフルト大学に客員研究院として滞在中の分担者である出口剛司との研究会及びドレスデンの戦後復興事業の視察と資料収集のために、リム、東は渡欧し、現地での研究協力者たちと研究会を行った。ドレスデンは冷戦終結がするまで旧東ドイツ側に属する。そのため、旧西ドイツとは対照的に、最近になってようやく歴史を見直す動きがでてきている。ドレスデン在住のザクゼン記念財団の代表者、創設者でもあるノーバート・ハッセ博士の案内で、ハッセ氏の財団が運営しているいくつかの主要な歴史博物館視察することができ有意義な議論と意見交換を行った。尚、当該研究の研究成果は著書『負の遺産とミュージアム』(文理閣)にまとめることが決定している。また、英文の著書を出版する予定でもある。今年度も、これまでと同様に文献資料では得がたい貴重な学術的交流をフィールド・ワーク及び人的交流を積極的に行ってきたといえよう。
著者
和田 雅人 小森 貞男 松本 省吾
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1)リンゴ単為結実品種は花器官変異を持っており、花器官形成遺伝子MdPIの発現が欠損していた。しかし本研究で、このMdPI遺伝子の発現組織、発現制御を解析した結果、花器官変異の説明は出来るが単為結実とは直接結びつかないことがわかった。MdPI遺伝子の機能は他の植物のPIホモログのものとよく似ており進化的な保存性が高いことも分かった。2)MdPI遺伝子が転写調節遺伝子のMADS遺伝子ファミリーに属しているためMdPIの発現抑制により発現に影響を受ける遺伝子を探索した。同じ花器官形成遺伝子のホモログMdTM6、MdMADS13のクローニングに成功した。またこのMdMADS13の発現が単為結実品種で減少し、かつ発現組織も結実と関与する子房や胚珠で観察され、単為結実と関与することを示唆した。3)正常品種のMdPI、MdMADS13など単為結実に関与する遺伝子の機能を調べるために、これらの遺伝子発現の抑制、または促進した組み換え体リンゴの作出を行った。これまでのリンゴの形質転換効率は非常に低いものであったが、本研究では形質転換法や転換体の培養法、形質転換に適した品種の選抜を行うことで、これまでより数十倍高い形質転換効率を持つ系を確立することに成功した。4)MdPIのアンチセンス、またはサイレンシングベクターを組込んだ組換えリンゴの作出に成功した。またMdMADS13のアンチセンスベクターを導入した組換え体リンゴ、さらにMdTM6のアンチセンスベクターを導入した組換えリンゴの作出に成功した。5)これら組換えリンゴが開花、結実して初めて導入遺伝子の機能が解析できるため、早期開花組換えリンゴを作出し、2ないし3年で開花することに成功した。
著者
末柄 豊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

室町時代の中後期に活躍した飛鳥井雅親・雅康という兄弟を中心に、和歌と蹴鞠を家業とした同家の活動について史料を収集するとともに、その史料に関する基礎的な研究をおこなった。とくに、室町時代の公家日記における飛鳥井家の者の所見5000件以上を索引形式でまとめて公表した。また、室町時代の和歌史の史料として注目すべきものでありながら、従来文学研究者によって注目されることの少なかった諸史料について、史料紹介を行った。
著者
栗林 香織
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、膜タンパク質の機能解析のためにマイクロ・ナノ加工技術を用いることによりこれまで実現の不可能であった直径の揃ったジャイアントリポソームを効率的に作製し、操作するマイクロ流体デバイスを実現することである。そこで、本年度は,主に下記の項目について研究を行ってきた。パリレンシートの穴あきシートに金を蒸着し電極基板を作製し、基板上に脂質膜のパターンニングを行いそれぞれのパターンからからジャイアントリポソームを作成する方法を検討した。これまで作成されてきたジャイアントリポソームでは、リポソームは閉じた系であるため作成後にリポソーム内の溶液を変えることはできなかった。本方法では、作成されたリポソーム内の溶液を小穴を通して変換することが可能である。脂質のパターンニングは、パリレンリフト法を用いて行い、エレクトフォローメーション法により作成された脂質パターンから均一径のリポソームを作ることが可能になった。さらに、作成されたリポソーム内に直径が200nm-1μmのビーズを注入することができた。ビーズをDNAや試薬等に変えることでドラックデリパリーシステムや生物系の観察などの分野での応用が可能である。一般的にエレクトロフォーメーション法で作製されたリポソームは基板上に固定されており、リポソームを単独で使用することはできなかったが、本デバイスでは、基板の小穴から溶液を流すことにより、リポソームを切り離すことができた。
著者
王 碧昭
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

腎臓の発生は他の臓器と異なり、二つ別×の始原から出発、其々尿管と糸球体を生成する。この二つの始原の相互作用は異なる基質段階を経て、最後にネフロンを構成する。本研究は、腎臓発生期に発現する複数のコラーゲンを中心とし、損傷細胞の再生環境を築くことを最終目標とする。そのため、細胞が再生する際、細胞と足場が緊密付着よりもダイナミックな付着することに着目し、発生期の外的環境を模倣し、基底材料をV型-IV型コラーゲンで重層する。腎糸球体細胞が時間的に基質から付着、脱着を可動化し、空間的に凝集して、糸球体を形成することを目的とする。本年度の研究は、以下の点を明らかにした。(1)マウス発生期(胚性E11,E13,E15,E17)の後腎組織を其々取得し、コラゲナーゼ処理後、腎組織をV型コラーゲン再構成繊維上で培養する。V型コラーゲン繊維が発生腎臓に及ぼす影響を、免疫染色、共焦点顕微鏡観察とタイムラプスで観察した。その結果、V型コラーゲンは培養した後腎において、帯状高次構造を形成し尿管芽先端に巻きついていることを明らかにした。また、培養後腎は、V型コラーゲン繊維の足場情報により、後腎間充織中で閉鎖血管構造を形成することも明らかにした。(2)胚性期各時期のマウスの後腎組織をコントロールとして、組織取得後、すぐに凍結、切片化、各発生期におけるV型コラーゲンの局在とIV型コラーゲン、フイブロネクチンなど、V型コラーゲンからバトンタッチされる次環境ECMの局在を調べた。その結果、V型コラーゲンは発生後腎成長面に近い未成熟糸球体に局在、逆にIV型コラーゲンは発生後腎内部の成熟糸球体に局在、ECMバトンタッチが行われている。(3)アダルトの腎疾病モデルマウスから腎臓を摘出、mesh seiving法により、糸球体を取得する。V型コラーゲン繊維内で糸球体を培養してから、発生期の胚性腎臓と共培養する。その結果、アダルトの糸球体が発生腎の尿管芽先端に付着、融合することが可能となった。共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果、発生期後腎尿管芽先端にアダルト進級態が近づくと、間充織細胞を巻き込んだシャープなV型コラーゲン繊維が尿管芽先端を糸球体間に形成されることを認めた。これらの結果より、V型コラーゲンが超高次構造ECMを介したcell-ECM-cell間相互作用を緩やかに誘導し、腎発生における基調ECMとして働き、毛細血管組織である腎糸球体と尿管芽との融合を助長するECMであることが明らかにした。
著者
北川 敏一 平井 克幸 岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三重項カルベンは、中性2配位の炭素原子に2個の不対電子をもつ有機分子種であり、安定化が困難な活性種の一つである。本研究では、三重項カルベンの長寿命化を目的として、その前駆体を我々が開発した剛直な「分子三脚」を用いてAu基板表面に自己組織化単分子膜として固定した。膜上への光照射により発生したカルベンは基板上への束縛をうけて2分子的分解反応を起こさないため、溶液中で発生させた場合と比べて安定化することが確認できた。