著者
菊池 結花
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モダフィニルに効果の性差とCOMTの遺伝子多型による差異に関する報告(Dauvillriers2001,2002)の追試を日本人に行っている。加えて治療のアルゴリズム上では第二選択薬であるリタインについても、同様の検討を行っている。約50例の症例について、遺伝子多型に関しては、COMT(158 Va1/Met)に加えて、orexin2 receptor(1246G>A), clock gene(3111 T>C),BDNF (66 val/met)を検討した。またナルコレプシーは特異的なHLA型を持つことが報告されているために、HLA遺伝子型のDRB1*1501、DQB1*0602の有無についても検討した。orexin2 receptor 1246G>Aについては、32例のうちでG/G,28/32,G/A,4/32であった。Clock 3111 T>Cについては、T/C,10/32,T/T,22/32であった。COMT 158については、Val/Met, 22/32, Va1/Va1, 9/32, Met/Met, 1/32であった。BDNF va166metについては、Val/Met, 23/32, Va1/Va1, 5/32, Met/Met, 4/32であった。HLA typingに関しては、脱力発作のあるナルコレプシーでは、95%の症例でHLA-DRB1*1501、HLA-DQB1*0602が陽性であったが、少数ではそれ以外の症例もみられた。また治療薬の違いについて、HLA typingとモダフィニルvsメチルフェニデートで比較したところ、HLA-DRB1*0901:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0301:モダフィニル処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0303:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p<0.05)の結果が得られたので、今後は症例数を増やして検討を継続したい。今までのところ、COMT多型に関しては、診断名や処方薬に対する有意な影響は認められてない。
著者
倉井 庸維
出版者
東京都立大泉高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:生徒自ら問題設定と解決をし、それらをレポートとして作成し発表する(課題学習)授業を約1年間行うことによって、受講した生徒の数学に対する見方や数学に取り組む姿勢(数学観)の変容を調べる。○研究方法:4,9,1月に実施された自由記述のアンケート、提出された4回のレポートならびに発表の様子を全体の生徒の様子と1生徒Kを中心に着目して、時系列に分析していく。○実践の方法:授業は、高校3年の生徒を対象に問題演習形式で行う。生徒は、1学期2回、2学期2回、授業で扱った問題を源問題として問題設定し、その解法をレポートにし、教師に提出するとともに、そのレポートの内容を授業のクラスで他の生徒の前で発表する。○実践の結果(1)4月のアンケート結果から、受講理由を「受験科目であること」とする生徒が最も多くみられ、生徒Kの受講理由も同様であった。(2)6月の第1回目のレポートの発表では、ほとんどの生徒が自分の問題解法を黒板に書き写すのみであったため、指導をした。事前にプレゼンテーションの仕方を指導する必要があった。(3)9月のアンケート結果から、本授業を好意的に受け止めている生徒が最も多くみられた。授業に対する要望として、生徒Kから生徒同士で問題解決のための話し合いの時間の確保が出された。(4)1月のアンケート結果から、授業に対して最初はとまどったものの探究的活動あるいは創造的活動に従事し、良い経験をしたとする肯定的記述が見られた。○結論(1)生徒は、実際に問題設定を行うことにより深い理解や発展的な考察を行うことができた。(2)課題学習を行ったことによって創造的探究的な学習に従事し、数学に対する見方が変容した生徒がいた。○今後の課題生徒間の話し合いを活性化させるための方法の検討、授業者のスタンスの取り方、生徒によって設定された問題とその解法それぞれに対する評価の観点を作成することである。
著者
DETHELEFS H.J.
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

この研究のテーマはゲーテ時代におけるゴシック様式の再興である。かっては悪趣味と見なされたゴシック様式の再評価は、疾風怒濤時代の、とりわけ若きゲーテによるシュトラ-スブルク大聖堂賛美の功績である。時代の趣味のこのようにラジカルな変化と、ロマン派、特にフリードリッヒ・シュレ-ゲルに見られる芸術の宗教化に至る過程を辿りたい。研究は二部から成る。第一部では英国人の先駆者、リベラルでエクセントリックなウィッグ派貴族党員達について詳論する。彼らのゴシックへの関心は芸術の宗教化や中世賛美からはほど遠いものだった。英国におけるゴシック再興の源は絵画的な庭園芸術という新しい考えである。一見無秩序な風景庭園の中のゴシック建築は、公的な自己表現から私的領域への隠遁表明だった。ヨーロッパ大陸におけるこのような「自然的」ゴシックの最初の例は、リベラルなデッサウ君主、フランツ・フォン・デッサウによって、ワイマ-ル近郊の田舎町ヴェルリッツに建造された。ゲーテはこの場所を愛して度々訪れ、ワイマ-ル市のための造園研究を行った。もう一人のヴェルリッツ賛美者はゲオルク・フォルスターである。フォルスターは後に、未完成のケルン大聖堂を礼賛する演説を書くが、これがF・シュレ-ゲルに強い影響を与えることになる。第二部では、シュレ-ゲルが、多くの点で古典派建築理論から隔たっていないが、超越性に達しようとする建築としてのゴシックの特性を貶めることもない、彼独自の美学的カテゴリーをいかにして構築してゆくか、詳論する。
著者
木島 孝之
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

益富城塞群の遺構調査は外郭部を完了し、「縄張り図」(1/1000)を作製した。具体的成果として、外郭部の長城型防塁遺構の全容をほぼ掌握した。そして、幾つかピーク地形ごとに独立性の強い曲輪群が林立し、その間の尾根・谷地形に畝状竪堀群・土塁ラインを設けて曲輪群相互を連結させた「城郭群」の形態を成すことを確認した。この形態は、自律性の強い各部隊(複数の領主)が相対的に緩やかに大同団結した姿を窺わせる。確認した事項、すなわち、ごく短期間内に一挙に構築されたと考えられること、畝状竪堀群を横堀・土塁とセットで使用する点で北部九州の在地系城郭の中で最高の技術水準にあることを考え合わせると、研究当初の予見どおり、当遺構が天正14年の九州平定軍の来襲を前に、秋月氏を盟主とする北部九州国人一揆によって構築された可能性が極めて濃厚となった。ここに、城塞群の規模と仕様から、従来、文献史料の面からのみ構築されてきた結果論としての九州平定戦のイメージを大きく見直す必要が指摘できた。すなわち、豊臣軍の来襲を目前に控えた北部九州では秋月氏の下に、結束力などの質の問題は兎も角も、動員力の面では極めて巨大な国衆一揆が結成されており、初戦の戦況次第では九州平定戦は結果論にみるほど円滑に推移する状況になかったことが明らかとなった。加えて、この視点に立って改めて『九州御動座記』などの幾つかの文献史料を見直したところ、豊臣側でも秋月氏の存在を九州屈指の巨大勢力として強く意識していた様子が窺える記述も確認できた。以上の成果の概略は『益富城跡II』調査報告書(嘉穂町教育委員会、今年度末発行予定)に掲載予定である。次に、黒田氏時代に大改修された主郭部に関しては、発掘調査で出土した瓦の整理・分類を行い、鷹取城(益富城と同時期に織豊系縄張り技術で大改修され、黒田領の「境目の城」に取立てられた)の瓦との比較研究を行った。結果、両城は類似した性格を持つにも拘らず、益富城には当時の最新の瓦工集団が、鷹取城には相対的に古式な集団が動員された可能性がみえてきた。しかも縄張りの洗練度の面では、むしろ鷹取城の方が"垢抜け"した最新鋭のプランである。これらの要因について、前者は、支城普請における城持ち大身家臣の自律性の強さが投影されたものであり、後者は、慶長期の築城における縄張り(設計)と普請(施工)がまだ一体の行為として整理・統合されていない状況を示唆するものではないかと考えた。この成果は『城館資料学』3号に掲載した。
著者
脇谷 晶一
出版者
宮崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

マウスの妊娠確認後、EGFR阻害剤を持続投与し、妊娠5日目に着床数を計測したところ、EGFR阻害剤の有無により着床数に有意な変化は認められなかった。人工脱落膜化モデルマウスにEGFR阻害剤を投与したところ、ごま油投与2日後の子宮重量に変化は認められなかった。子宮内におけるEGFリガンド群の代償的発現上昇が認められたが、脱落膜マーカーであるBMP2の発現量は依然上昇した。これらの研究より子宮に存在するEGFRは必ずしも胚着床に必要ではない可能性が示唆される。人工脱落膜化モデルマウスの子宮管腔内にごま油を投与したところ、2時間後にはHB-EGFの発現上昇が認められた。HB-EGFと同じく着床部特異的局所発現性を有するEregの発現も上昇傾向を示したが、同じEGFファミリーに属するEGF、Aregの発現変動は認められなかった。このことから、ゴマ油投与による人工脱落膜化モデルは、正常子宮全体を用いた遺伝子発現解析では検出できなかった子宮上皮の局所反応を解析できるモデルである可能性が示唆された。このモデルマウスを用いて子宮組織における遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイ法を用いて検査したところ、ゴマ油投与子宮角特異的に発現変動する遺伝子が多数新たに見つかった。これらから29遺伝子を絞り込み、より精度の高いRT-PCR法により再検証したところ、12遺伝子がゴマ油投与子宮角特異的に発現変動する遺伝子として確定した。これら12遺伝子は着床部特異的局所発現性を有し、胚盤胞由来シグナルを子宮へ伝達する際に重要な役割を担う可能性がある。
著者
丸井 英二 JOHNSTON Wil 李 誠國 SOMーARCH Won YAP Sue Pin 田口 喜雄 田畑 佳則 関 道子 遠藤 誉 米山 道男 大東 祥孝 WILLIAM Johnston SUNGKUK Lee SOMARCH Wongkhonton 山中 玲子
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は留学生にかかわる問題のなかで、長期的な波及効果としての留学生の帰国後に焦点をあてて行われた。その背景として、「留学生10万人政策」に由来する近年の留学生数の著しい増加がある。もちろん、現在わが国に滞在する留学生についての各種支援が必要とされていることは言うまでもない。しかし、こうした現状の延長上にある今後の問題点を考慮すると、帰国後の留学生の生活について研究を行っておくことが必要な時期となっている。その場合、帰国してからの国内的、国際的役割を継続的に把握していくことが必要である。留学生の帰国後に描くことのできる明るい展望がなければ、国内における留学生指導も実効性をもつことがなく、留学生も日本への期待をもつことができなくなり、将来的にわが国への留学そのものを希望しなくなるであろう。今後の健全な留学生政策のためにも帰国後の留学生についての研究が必要とされてきている。本研究では国立大学の留学生センターの留学生指導担当教官が中心となり、留学生の帰国後の社会的活動の動向の量的、質的に把握するための調査を行った。わが国への留学の意義を現地の視点でとらえなおし、さらに今後のわが国との関係をいかに維持していくかについて現時点で研究した。対象国はタイ、マレーシア、インドネシア、韓国であったが、初年度のみ台湾を加えた。研究の実施過程は1)現地での調査研究、2)国内での修了留学生の名簿作成のためのデータベース構築、3)研究ワークショップの開催とに分けることができる。初年度は主として現地での調査研究に焦点を絞った。研究分担者6名が共同研究者のいる対象国における実状を把握するために、アジア地域を中心に担当国を複数ずつ訪問し予備的調査を行った。現地では研究協力者との個別会議を開催し、必要に応じて帰国留学生との面接を行い、現状把握を行った。こうした一連のプロセスにより日本側研究者の現地事情に関する認識を極めて高いものとなった。また、現在では過去に多くの留学生が卒業あるいは修了しているにもかかわらず、なお多くの卒業生の現状が大学で把握できていないことが判明してきた。そのために第2年度には、国内での作業として卒業・修了留学生のデータベース構築のための研究会を開催した。個々の大学の事情に応じて若干の差はあるものの、共通のデータ形式を統一し、入力作業を開始した。すでにいくつかの国では帰国留学生会が設立されているが、そのメンバーは帰国したのちに自らの日本留学を是認し評価している人々が中心となって形成されている。こうした組織に日本留学に批判的な人々が加わっている可能性は小さい。したがって、本来的な母集団としての日本の卒業・修了留学生から出発して追跡することが評価のためのもっとも公平な方法である。現在のところ、データベースの構築は留学生センターの設置されている国立大学の一部から開始されているに過ぎないが、今後はその範囲を拡大していくことにより、留学生が大学から離れた後の動向を把握することが可能となる。今回の3年間の研究では主として帰国後の留学生を対象としたが、われわれのこうしたデータベースを利用することによって、母国に帰国しない人々についても追跡していくことができるという大きな意義が生まれることになる。さらに、第3年度である平成7年9月には、タイのマヒドン大学においてタイ、マレーシア、韓国からかつての日本留学生で現在は本国で活躍している人々を招待し、日本側研究者と合同でのセミナーを開催した。ここでは過去の留学生が日本でどのような経験をしたか、現在何をしているか、現在の日本との関係、さらに現地から日本をどのように見ているかなどについて一日半にわたって討議を続けることができた。3年間の研究期間に参加した留学生センターの日本側研究者ならびに現地の分担研究者にとっては相互理解の基盤を確立し、その上で帰国留学生に関する研究を行うことができたという点で充実した期間であった。また、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国で研究協力者として多くの帰国留学生が参加することができた点も高く評価したい。本研究は単に限定された学術的研究にとどまらず、留学生を媒介とした共同研究の萌芽を各研究者レベルで作り出してきた。今後、この留学生問題に関する分野での多くの研究者によるさらなる研究に期待したい。
著者
皆川 純 SWINGLEY Wesley SWINGLEY Wesley Douglas
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

外国人特別研究員の帰国前倒しに伴い,実質研究機関は4-6月の3ヶ月となったため,主に前年度の成果のまとめが行われた.前年度プラシノ藻Ostreococcus tauriより初めて単離に成功した光化学系I超複合体のタンパク質組成は,光化学系I反応中心サブユニットに加え,緑色植物で光化学系I専用の集光アンテナとして機能するLHCIが確認された.さらに,高等植物で光化学系II専用の集光アンテナとして知られるモノマーLHCIIであるCP26/CP29も確認された.これらCP26/CP29は緑藻ではステート遷移機構により光条件により,光化学系I,光化学系IIの間を行き来することがわかっていたが,さらに祖先型のプラシノ藻では光化学系I専用のアンテナとして機能していることが明らかとなった.モノマーLHCIIはもともと光化学系I固有の集光アンテナであったが,植物の進化に伴い陸上での生育を支えるため,まずは光化学系IとIIの間を行き交い,やがて高等植物では,光化学系II固有に集光アンテナとなったと考えられる.また,プラシノ藻の光化学系の特徴として,陸上植物では普遍的に見られる赤外域での蛍光(レッドクロロフィル)が存在しないこともわかった.レッドクロロフィルの役割についてはまだ確立されていないが,植物が陸上で生存していくために励起エネルギーを保持しているものと考えられているが,プラシノ藻は,その必要がない光合成の型式を現在でも保存しているものと考えられる.
著者
稲場 進
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究を遂行するにあたり用いたベロトキシン受容体に対する抗体は、CD77に対するモノクローナル抗体であり、これは静岡県立大学生化学鈴木先生より供与された。1.ヒト腎組織におけるglobotriosylceramide(Gb3)の局在に関する検討対象は溶血性尿毒症性症候群3例、IgA腎症14例、紫斑病性腎炎14例、頻回再発ネフローゼ症候群5例とした。溶血性尿毒症性症候群では3例とも糸球体内並びに尿細管上皮細胞に強く染色された。IgA腎症では学校検尿などの無症候性に発見された症例は陰性であり、感冒時の肉眼的血尿発見例やネフローゼ症候群合併例では尿細管上皮細胞や糸球体内に陽性であった。紫斑病性腎炎は全例尿細管上皮細胞並びに糸球体内に陽性であった。頻回再発ネフローゼ症候群では感染合併例で陽性であった。染色部位は尿細管上皮細胞ではほとんどが細胞質であったが、一部核内に強く染色されていた。一方糸球体内では毛細管係蹄壁もしくはメサンギウム領域に染色された。2.培養尿細管上皮細胞におけるGb3の発現の検討ヒト尿細管上皮細胞Cell Line(HK2)を培養し各種サイトカインにて刺激し、Gb3の発現をフローサイトメーターにて観察した。刺激には、IL-1α,IL-6,IL-8,TNF-α,LPSの5種類のサイトカインを用いた。コントロールと比較すると、刺激48時間後にはいずれのサイトカインの刺激でもGb3の発現の増強がみられた。特にTNF-αの刺激で著しく増強した。以上の結果はヒト腎組織においてGb3は、血管内皮細胞のみならず尿細管上皮細胞においても発現しており、その多くは感染を契機として分泌される各種サイトカインが関与していることが強く示唆された。
著者
油井 大三郎 藤永 康政 梅崎 透 内田 綾子 藤本 博 小塩 和人 豊田 真穂 井関 正久 八十田 博人 土屋 和代 栗原 涼子 中村 督 ディビット ファーバー ベス ベイリー ケビン ゲインズ ヨアヒム シャルロート
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

1)1960年代の米国における社会運動に関する1次史料の系統的な収集がほぼ予定通り実現した。また、収集した史料の解題付き目録を作成し、史料自体も近く公開されるので、日本においても1960年代米国の社会運動に関する実証研究が大いに進展することが期待される。2)米国の社会運動グループ毎の比較を通じて諸グループ間の思想的・組織的連関の解明が進んだ。3)西欧や日本の1960年代社会運動研究と米国のそれとの国際的な比較研究によって、ニューレフトなど重要な概念における相違と相関が明らかになった。
著者
佐藤 可織
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は観測船「みらい」搭載雲レーダ・ライダデータより導出したレーダ反射因子と雲氷量の関係式を用いCloudSat衛星観測データを解析し、得た氷晶雲微物理特性の検証を以下の解析を行い推進した。CloudSat衛星と同期する航空機観測データによる光学的に厚い雲内部の微物理量抽出精度の検証に加え、パラメタリゼーションを用いずに雲微物理量を抽出する事のできるレーダとライダの信号強度を組み合わせた手法により光学的に薄い雲や雲上層部における抽出量の検証を行った。その結果、両手法で得られた氷晶雲粒径の高度-緯度断面には良く似た傾向が見られる事の他、パラメタリゼーションより得た雲氷量の統計値がレーダ/ライダ法で得られるものと比してより光学的に厚い雲の解析結果をより反映しているという特徴がある事がわかった。これらの成果はProceedings of the International Radiation Symposium(IRS2008)に"Sensitivity study for the interpretation of Doppler signal of space-borne 95-GHz cloud radar"という題名で報告した。衛星データに基づいた気象場分類法に従って氷晶雲-放射フィードバック効果をモデルで予測する際に重要であると思われる氷晶雲特性が大気大循環モデル(AGCM)で正しく再現されているかの評価を行った。その結果、観測ではlarge scaleの周囲の場の対流活発・不活発の分類と雲量に非常に良い対応関係があったが、モデルでは気象場と雲量の関係が良く再現されていない事がわかった。また、過去の研究からモデルでは上層雲の雲量が過大評価になっている事が指摘されていたが、常に過大評価であるわけではなく気象場による事がわかった。モデルの氷晶雲微物理特性の再現性に関してはグリッド平均の雲氷量特に11km以上の対流圏上層で対流活動活発時に1桁程度過小評価し、粒径を平均的に20μm程度過大評価する事がわかった。今後、より長期のデータを使用しこれらの成果を発展させ、モデルと観測の不一致のメカニズムを理解する事によりモデルでの雲再現性を改善する事が可能となると期待される。
著者
小嶌 正稔 河野 昭三 村山 貴俊 星野 広和 河野 昭三 村山 貴俊 星野 広和
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

フランチャイジングのシステム的発展を経営革新機能の側面から研究すると共に、システムとしての発展と創業機能変化についてまとめた。フランチャイジングの創業機能の変化については、独立型の起業家とフランチャイジング起業家の比較等から, フランチャイジングの創業機能と創業者が持つ特徴を明らかにすると共に, フランチャイジング起業を活発にするためには, 積極的な情報開示を通してフランチャイジングの透明化を促進することが必要であることを明らかにした。
著者
大場 正昭 倉渕 隆 飯野 秋成 後藤 伴延 飯野 由香利
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、ウインド・クオリティに基づいて適度な室内温熱環境を形成実現するために、平成18年度と19年度に風洞実験、実測及びマクロモデル解析を行い、以下の研究成果を得た。1.通風局所相似モデルと換気マクロモデルの連成プログラムの開発:換気回路網計算の換気マクロモデルにおいて、流入開口及び流出開口に通風局所相似モデルを適用した連成プログラムを開発した。流量係数を一定としたオリフィスモデルに比べて通風量の予測精度が向上した。2.自然通風の気流特性の解析:通風は不規則に変動し風速も比較的速く、0.1Hz以下の低周波成分や低波数の割合が多い気流であった。一方、空調風は通風と比較して規則的で低風速であり、0.1Hz以上の周波数領域におけるパワースペクトルの割合が多いことから比較的小さい渦が多い気流である。風向が変動すると、規則性が顕著になりエアコンのスイングの周期に相当する0.01〜0.1Hzの周波数領域のパワースペクトルの割合が卓越して多くなった。3.通風時の温熱環境評価の特性:風速0.5m/s未満の通風時における温冷感や快適感は、空調時よりやや暑い側や不快側に評価され、気流感も空調時より感じない側の評価になっており、空調時の乾湿感には多少乾燥側の評価が見られた。風速0.5m/s以上の通風時では空調時よりも快適側に評価された。4.熱赤外動画像処理による通風時の人体表面熱収支の可視化:通風環境下および空調環境下におけるサーマルマネキンと被験者の部位別の表面温度変動の特徴を熱赤外動画像解析により示した。特に赤外線放射カメラによる30Hz熱赤外動画像と超音波風速計による20Hzの気流変動との関係を解析する方法を提示した。
著者
高橋 日出男 三上 岳彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,関東地方南部を対象とした稠密な雨量計とレーダの資料による強雨頻度の統計的解析と,東京都心域に発生した雷雨に伴う短時間強雨の事例解析を行った.都心域では夕刻から夜半に強雨頻度が増加していること,都心風下側で空間スケールの小さい強雨域が多発していることがわかった.また,都心域の強雨発生事例について,高い都市キャノピーによって強雨域近傍で停滞したガストフロントが強雨の維持停滞に関与した可能性が指摘された.
著者
塩竃 秀夫
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地球温暖化が進むことで、極端な気象現象(以下極端現象)が大きく変化することが、大気海洋結合モデルを用いて予測されている。しかし、これまではモデルが現実の極端現象を精度良く再現しているかどうかは、十分に検証されてこなかった。本研究では、モデルの計算結果と観測データを比較することでモデルの検証を行う。また精度を検証されたモデルを用いて将来予測を行う。H18年度は、モデルで計算された20世紀中の極端現象の頻度分布変化が、観測を再現できているかどうかを、最新の統計分析手法を用いて全球規模で検証し、さらに過去の変動の要因推定を行った。この際、英国ハドレーセンターの協力を得た。これらの成果をふまえ、H19年度は、今後30年間の近未来予測を行った。まず極端な気温現象(夏期または冬期における極端に暑い昼・夜または寒い昼・夜)の発生頻度の変化について調べた。2011〜2030年平均の極端現象の発生頻度分布を1951〜1970年平均のそれと比較すると、陸上のほとんどの地域で、温暖化シグナルは内部変動を凌駕することがわかった。つまり数十年規模内部変動の位相にかかわらず、暑い昼・夜が増加し、寒い昼・夜が減少することが示された。さらに「年平均降水量」と「年間で4番目に多い日降水量(極端な降水)」がどのように変化するかを調べた。高緯度と熱帯では、数十年規模の内部変動の位相によらず、降水量の増加が予測された。一方、亜熱帯では、内部変動の位相によって降水量変化の符号が変わり得ることが示された。温暖化シグナルと内部変動の大きさの比が地域によって異なる原因も調べた。
著者
片岡 優華
出版者
埼玉県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1、目的 経産婦に出産前教育を行った場合、受講者と未受講者の差を明らかにし、プログラムの評価を行う。2、経産婦を対象とした出産前教育プログラム内容(毎第1月曜、2時間、参加者10名程度)(1)自己紹介(2)グループで過去の出産の様子等を自由に語り合う(3)経産婦の出産経過について(4)呼吸法の練習(5)入院の準備について(6)上の子への対応について(7)母乳について、乳房マッサージの練習3、研究方法 1)調査期間:平成18年11月〜平成20年2月2)方法:S病院に通っている妊娠35週程度の経産婦に産前用質問紙(自由記述と選択記述式)、S病院で出産した入院中の経産婦に産後用質問紙(自由記述と選択記述式)を配布。3)倫理的配慮:埼玉県立大学・首都大学東京・S病院の倫理委員会にて承認された。4、結果 質問紙回収数は産前271部(84%)、産後115部(43%)であった。うち、有効回答は産前が221名(受講者88名、未受講者133名であった。産後が94名(受講者37名、未受講者57名)であった。1)出産前の結果:質問紙の64項目について受講者と未受講者でU検定を行い、有意差が見られたのは15項目。この結果より、出産前教育を行った場合、経産婦の経過の知識、呼吸法の大切さ、お産による体の変化、経産婦の平均時間、病院につく前にお産になった場合の対処法に関する知識は未受講者と比較して理解度が高かった。また、出産に向けての準備として、呼吸法やリラックス法の練習を行い、前回の嫌だった経験を繰り返さない方法を考えることができていた。2)出産後の結果:質問紙の75項目について受講者と未受講者でU検定を行い、有意差が見られたのは8項目。この結果より、出産を終えた受講者は"妊娠中からの努力をしたい"と思っており、"お産の進行による体の変化"、"平均的な分娩所要時間"、"病院につく前に出産になってしまった場合の対処法"などの知識を持っていた。さらに、実際のお産に関しては"イメ-ジどおりの出産ができた"、"いつも誰かがそばにいてくれた"、"安心してお産に望むことができた"という項目で有意に高かった。また、92.7%の受講者はクラスの受講が役立った、92.9%の受講者がクラスを受講して良かったと解答した。5、結論 経産婦であっても出産前教育を行うことで、安心感を得る等の点でよりよい妊娠・出産につながることが示唆された。
著者
増田 豊文
出版者
東北文化学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

研究期間の最終年度となる平成21年度においては、仙台市内の小学校123校の中から、ビオトープを所有する小学校と所有しない小学校、学校周辺に自然環境のない仙台駅周辺の小学校と比較的自然の残る郊外の小学校という二つのカテゴリーから7校を選出して、アンケート調査を実施した。その目的は、異なる自然環境条件の小学校における各児童の自然体験の実態を把握し、その経験が児童の倫理観の育成にどの様な影響を及ぼすのかを検証することであった。その根拠となったものは、平成10年に実施された文部科学省の子供の体験活動等に関するアンケート調査報告の「自然体験が豊富な子供ほど、道徳観・正義感が充実」という結果によるものである。住環境の都市化が進む状況下、子供達の自然体験の機会を増やすには、学校生活の場となる教育施設の屋外環境のあり方を、自然化という形で見直す必要がある。今回実施したアンケートは、7校の1年生から6年生までの全学年を対象としたため、合計で4394人となった。また、アンケート調査には児童の倫理観を問う内容が含まれていたため、仙台市教育委員会に研究の意義と内容を理解してもらい、教育委員会を通して対象校の校長に調査協力依頼をするという方法をとった。アンケートの分析結果の主な内容を、以下に示す。小学校の立地条件における子供達の自然体験の差は大きくは見られなかったが、全体的に自然観察や里山遊びが好きな子供ほど、人に優しくしたり悪いことを注意したりする傾向が見られた。特に、ビオトープを有する小学校においては、ビオトープでよく遊びそこに棲息する生き物が好きな子供ほど、同様の傾向が見て取れた。また、低学年になるほどビオトープに興味をもって遊んでおり、平成20年度に実施したビオトープでの児童の行動調査と一致するものであった。これらのことから、教育施設の屋外環境を単なる緑化に留まらず生き物と触れ合う場として自然化することの重要性を、倫理教育の側面から検証できたと考えている。これらの研究成果は研究報告書としてまとめ、協力いただいた学校関係者や関係する学術団体に、今後報告する予定である。
著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.
著者
正木 宏長
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に続き、水道事業の民間化について研究を行った。日本では水道事業の民間化に際して、委託等の行政契約が用いられている。水道法に定めのない従来型業務委託のほかに、水道法による包括業務委託も存在する。こういった水道事業の委託手法について他の民間化の手法も取りあげつつ、その特徴と法律問題について研究した。研究の際には、委託契約を活用している自治体への実地取材を行い、自治体行政の現実を明らかにすることに努めた。研究の結果、水道事業において、広範な委託が行われていること、他に様々な手法で水道事業の民間化が行われていること、民間化に際して、自治体の規程や国の通達類が重要な機能を果たしているとの知見を得ることができた。現在水道の民営化の議論がなされているが、本研究は、このような議論に法学の面から貢献しうるものであると考える。また、委託契約の実態を明らかにすることで、行政契約の議論の充実にも寄与することができるだろう。成果は論文「水道事業の民間化の法律問題」として立命館法学に掲載が決定している。また、一昨年度の研究成果が、書籍『分権時代と自治体法学』のうちの「都市の成長管理と水道」として刊行された。これは、水道水給水拒否が都市の成長管理手法となっていることを比較法研究によりあきらかにするものである。
著者
桜井 智野風
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

遅発性筋痛発生時および治癒過程において、筋内に発生する物質の動態には不明な点が多い。本研究では,骨格筋損傷発生および治癒過程において筋内で発生する発痛関連物質を観察し,それらの物質動態と遅発性筋痛との関連性の解明を試みた。その結果、筋損傷および治癒に関連が深い一酸化窒素(NO)と発痛関連物質の動態に関連性が観察された。NOは損傷細胞の炎症と修復に関与することから、NO発生の遅延が筋痛の遅れを生み出しているものと考えられた。