著者
林 まゆみ 李 樹華
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.403-408, 2000-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
17

中世後半にかけて活躍した善阿弥とその周辺の山水河原者に関する再検討を行い造園職能を論じた。従来の論では善阿弥が優れた庭者として重用されたのは彼の卓越した才能と, 卑賎視されたことがばねとなったという精神論に重点が置かれていたが, 本論では『蔭涼軒日録』などの詳細な検討から, 善阿弥の若年期における活躍や, 盆山と枯山水などの関連性を検証しつつ, 善阿弥がこの時代に将軍から重用されたのは, 彼の非凡な才能と共にその背後に控える技能集団の形成に負うところが大であることを様々な事例から考察した。その技能集団とは, 善阿弥を中心とする血縁集団やその配下と考えられる地縁'職能を共有するものであり, 善阿弥が不在の時も, 或いは2代目善阿弥を支えて, 技術的に相応の集団が形成されていた。これらの集団は各権門に固有に従属する形をとりながら, それぞれの技能と地歩を固めていったことが考証された。
著者
佐藤 まゆみ 佐藤 禮子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.36-48, 1997 (Released:2017-03-28)
参考文献数
20

要 旨癌治療等のために手術により片眼球を喪失した患者10名に対して面接調査を行い,片眼球喪失患者の適応課題と課題克服に影響を及ぼす要因に関して,以下の分析結果を得た.1.片眼球喪失患者が,片眼球喪失に適応するためには,以下の2つの適応課題を克服する必要がある.①顔や視機能の変化により生じる喪失感を克服する.②顔や視機能の変化を補う新しい行動を獲得する.2.視機能の変化により生じる喪失感の克服には,視機能の変化を補う新しい行動を獲得し,身体を再統合する必要がある.3.顔の変化により生じる喪失感の克服には,変化した顔をありのままに受け入れ,義眼装用の顔についての他者の反応を肯定的に感じとることが必須である.4.視機能の変化を補う行動や義眼のケア行動といった新しい行動の獲得には,練習を繰り返すことが重要である.5.適応課題の克服には,以下の6つの要因が影響を及ぼす.即ち,①片眼球との決別のしかた,②障害者に対する考え,③顔の変形の程度,④職業,⑤ソーシャルサポート,⑥問題解決に利用できる知識である.
著者
桜庭 真依子 角野 浩史 松崎 浩之 楠野 葉瑠香 川本 万里奈 徳山 裕憲 小豆川 勝見 堀 まゆみ 丸岡 照幸 藪崎 志穂
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.63, 2017 (Released:2017-11-09)

地下水資源の開発や利用にはその流動過程を把握するため、涵養地や滞留年代を知ることが重要である。福島県においては、福島第一原発の事故によって放出された放射性物質の環境中の挙動が調べられてきたが、地下水については報告例が少なく、地下水資源利用に際してその安全性を評価する必要がある。そこで本研究では、ヨウ素129及びトリチウム-ヘリウム年代測定法を用い、福島県の地下水の原発事故による汚染状況を明らかにすること、及び長期的な地下水資源の安全性を評価することを目的とした。地下水中のヨウ素129と安定同位体であるヨウ素127の比、及び希ガスMSで定量を行った3Heより求めた3H濃度からは現時点での汚染は確認できなかった。一方トリチウム-ヘリウム年代測定法より求めた滞留年代の最小値は14年となり、今後汚染された水が出る可能性は否定できないと考えられる。
著者
藤井 まゆみ 岡崎 健二 牧山 清 久松 建一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.51-62, 2012-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21

【背景・目的】静岡県伊東市におけるスギ・ヒノキ科花粉飛散数を10年間計測した.花粉症の予防・治療に役立てたい.【方法】ダーラム型花粉捕集器を伊東市内3階建ビル屋上に設置し,花粉飛散数を測定した.その結果と気象情報を表計算ソフトMicrosoft Excelを用いて統計処理・解析を行った.【結果】春季の初観測日,飛散開始日,飛散終了日の平均値はそれぞれ1月3日,2月6日,5月12日であった.総花粉飛散数は平均5683個/cm^2であった.前年初冬の花粉飛散数と翌年春季の花粉飛散数は相関がある.春季の花粉飛散数は日々の気象に左右される(大雨や季節外れの大雪で,花粉飛散数は減少する).【結語】地域におけるスギ・ヒノキ科花粉飛散数計測と気象観測から花粉症の予防と治療に役立つ情報を提供できる.
著者
濱川 みちる 高良 翔太 阿嘉 太志 濱崎 直人 宮里 好一 西野 仁雄 石田 和人 白木 基之 辺土名 まゆみ 安里 克己 仲程 真吾 山城 貴大 平山 陽介 秋月 亮二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに】中枢神経疾患由来の手指拘縮は,関節可動域拡大運動やストレッチなどを継続しても改善困難な症例が多く,進行すると手指の衛生不良や介護負担増などの負の連鎖を招く。今回,拘縮手改善のために開発された高反発クッショングリップ「ミラクルグリップ」(ホワイトサンズ社製)を回復期病棟入院患者・進行性疾患患者に試用し,良好な成績が得られたので報告する。【方法】脳血管疾患あるいは進行性神経疾患にて当院に入院または通院している者のうち,手指拘縮を認める4例を対象とした。グリップ着用前の状態として,症例Aは脳出血で入院(発症後6カ月),右上肢の拘縮と他動運動時痛,手指不衛生を認めた。症例Bは脳塞栓症で入院(発症後4カ月),左上肢の拘縮・他動運動時痛を認めた。症例Cは脳出血で入院(発症後4カ月),右上肢の痙性麻痺,手指炎症,他動運動時痛,白癬による悪臭・蒸れを認めた。症例Dは多系統萎縮症で通院(発症後16年),定期的なボトックス治療とPT・OTを継続していたが,両手指・手関節を中心に拘縮とかぶれを認めた。対象者には,通常の治療と併用して,ミラクルグリップのモニターとして拘縮手に1カ月間,24時間継続して着用していただいた。評価には,着用期間中の表情や手指衛生に加え,着用前・着用2週間後・1カ月後の拘縮側上肢の関節可動域(以下,ROM)を記録した。【結果】症例Aは着用前,痛みのため離床や理学療法も長期間拒否していたが,着用2日後より他動運動時の抵抗が軽減し理学療法も受け入れるようになった。6日後には爪切りや離床も可能となった。症例Bは着用2週間後に手・肘関節のROM拡大,1カ月後には肩関節のROM拡大が得られ,苦痛様表情も軽減した。症例Cは内服治療との併用にて,着用7日後には右上肢の筋緊張が全体的に軽減し,1カ月後には熱感や疼痛,悪臭の消失が得られた。症例Dは着用7日後より他動運動時の抵抗軽減,1カ月後にはかぶれ消失,ROM拡大が得られた。【結論】今回,手指拘縮患者に対しミラクルグリップを1カ月間使用し,拘縮の軽減,表情や手指衛生の改善が得られた。西野らはミラクルグリップの効果として,クッションの強い反発力と圧力のランダム性が,上肢全体・顔面の血流を増加させ,脳血流も増加することを示している。また筋電図では,上肢屈筋群だけでなく伸筋群の筋活動量も増加すると報告している。今回のROMや表情の改善も同様の作用によるものと考える。また手指衛生の改善は,グリップのもつ高い通気性・抗菌消臭作用が拘縮改善と相まってもたらした効果と考えられる。本研究により,回復期病棟入院患者や進行性疾患患者という,病期により症状が変化する患者においても良好な成績が得られることが分かった。しかしモニター試用という条件上,シングルケースデザインを導入できなかったため,効果の持続性についてはさらなる検証が必要である。今後,ミラクルグリップが治療手段の一つとして病期にかかわらず広く利用され,効果を発揮することが大きく期待される。
著者
石田 多恵子 猪野 真純 仲野 敦子 有本 友季子 黒谷 まゆみ 森 史子 工藤 典代 笠井 紀夫 福島 邦博
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-36, 2012-03-01
参考文献数
11

&nbsp;&nbsp;聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究&mdash;聴覚分野&mdash;」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・<u>A</u>ssessment of <u>L</u>anguage <u>D</u>evelopment for <u>J</u>apanese ch<u>I</u>ldre<u>N</u>)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。<br/>&nbsp;&nbsp;言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。
著者
古渡 礼恵 柿沼 志津子 甘崎 佳子 平野 しのぶ 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 島田 義也
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.186, 2008

【目的】放射線と化学発がん物質が複合曝露された時に発生するがんにおいて、がん関連遺伝子の変異の蓄積がどのように変化するかについての情報は未だ少ない。そこで、放射線とエチルニトロソウレア(ENU)の複合曝露により胸腺リンパ腫(TL)を誘発し、その<i>Kras</i>の点突然変異の頻度とスペクトラムが単独曝露とどのように異なるか、また、その変化が<i>Ikaros</i>の点突然変異とどのように異なるか比較した。<br>【材料と方法】B6C3F1マウスにX線0.8~1.0Gyを1週間間隔で4週間全身照射、もしくは、ENUを飲料水として100~200ppmを4週間投与した。処理は1)4週齢または8週齢からX線照射、2)4週齢または8週齢からENU投与、3)4週齢からX線照射した後8週齢からENU投与(X to ENU)、4)4週齢からENU投与した後8週齢からX線照射(ENU to X)、5)4週齢からX線照射とENU投与を同時曝露(X+ENU)の条件で行った。<i>Kras</i>ならびに<i>Ikaros</i>の変異は、cDNAのダイレクトシークエンスにより調べた。<br>【結果】TLの発生頻度はX線単独またはENU単独での発生頻度と比較して、(X to ENU)群でも(X+ENU)群でも相乗的に、(ENU to X)群では亜相加的に増加した。<i>Kras</i>の点突然変異はX線単独でもENU単独でも、4週齢から処理したものに比べ、8週齢から処理したもので減少していた。<i>Ikaros</i>では週齢による点突然変異の現れる割合に変化はほとんどなかった。次に(X to ENU)群では、<i>Kras</i>と<i>Ikaros</i>のそれぞれで、点突然変異が(超)相加的に増加した。しかし、(ENU to X)群では、<i>Kras</i>の点突然変異は相加的な増加が見られたが、<i>Ikaros</i>では見られなかった。また、(X+ENU)群では、(X to ENU)群と比較して、<i>Kras</i>の点突然変異は著しく減少したのに対し、<i>Ikaros</i>は増加することがわかった。<br>これらの結果から、発がんの複合曝露効果は、曝露の順番などの曝露様式に依存し、それは、がん関連遺伝子の点突然変異の誘発頻度によって一部説明できると考えられた。
著者
浅見 覚 高村 まゆみ 木村 由美子 鈴木 孝 麦島 秀雄 内倉 和雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.943-950, 1997-12-05
参考文献数
26

独自の流路系を持つカラムスイッチング高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により,レチノイン酸(RA)異性体である13-<I>cis</I>-RA,all-<I>trans</I>-RAと9-<I>cis</I>RAの相互分離を確立した.カラムスイッチングを用いることにより,カラム中に残る生体成分の洗浄が不要となり,カラム洗浄に要する時間が短縮された.又,流路中に独自の流路を加えたことにより,注入した試料を損なうことなく検出できるようになり,より良い感度と再現性が得られた.そのため,1サイクルが25分で生体成分中のRAの連続測定が可能となった.ピーク面積及び高さを用いた絶対検量線法では,共に200ngまでの間で直線の関係を示し,血中濃度を測定するのに十分な結果が得られた.又,メタノール標準試料で0.5~1.9%(<I>n</I>=10,0.26~0.37μg/ml),標準添加血清試料で0.8~2.2%(<I>n</I>=5,0.32及び0.37μg/ml)の再現性が得られた.これらのことにより,従来のRA血中濃度測定の方法よりも簡便性,操作性,再現性の向上が見られ,本法のRA血中濃度測定の有用性が示唆された.
著者
椿 まゆみ
出版者
文京学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

現在、今だ下準備の段階である。本研究は、前回の研究で行った実験機材を含む研究方法を修正し、よりよい改良された研究を行うための研究を行うことが目的であるが、修正の準備に戸惑っている。現在まで行ってきたことは、主に研究手法の理論と実践(手法)の研究であり、以下の5点である。第1としては、学習者は、話し合いにより協同学習をしながら語彙を学ぶのであるが、そのプロセスと成果を、学問分野としての協同学習の観点から、調査するための準備をしている。1つは、学習態度にかんする理論的背景が必要であるが、それが今で見つかっていない。第2としては、混合研究法の理論と実践(手法)の仕方の探求である。本研究の特徴の1つは、混合研究法での語彙学習の調査であり、量的・質的研究を両方行い、プロセス及び結果を分析する必要がある。混合研究法について、理論面および実践面の両方から調査している。第3としては、質的研究の手法の探求である。質的研究には、不慣れであるので、その研究について学んでいる。他分野を含めての質的研究の手法が含まれている研究について学び、自分の研究に取り入れようとしている。質的研究を行うための、ソフトウエアの使い方を学んでいる。第4点は、1から3の内容および本研究の課題である語彙研究の文献研究を行っている。語彙研究は、研究の歴史が浅い英語教育の中でも研究されている期間が短く、研究が進んでいるので、これに追いついていく必要がある。5点目は、語彙研究のための目標言語の語彙の検討を行っている。前回の研究では、検討する時間が短く、目標語彙の選択の仕方に問題があった。以上のように、ペースは遅いながらも、研究を進めている。しかしながら、このような理論面や方法面中心の着実な研究が今回は必要であると確信している。
著者
坂元 章 箕浦 康子 菅原 ますみ 鈴木 佳苗 内藤 まゆみ 小林 久美子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、テレビ番組の暴力描写、向社会的行為描写の内容分析、これらの描写の視聴が攻撃性、向社会性に及ぼす影響を検討する縦断調査を行い、テレビ番組の暴力描写に対する評価システムを提案することであった。平成15年度には、暴力の文脈的特徴を詳細に検討した米国テレビ暴力研究のコードブックを翻訳し、平成17年度までは身体的攻撃について、平成18年度には、言語的攻撃、間接的攻撃を加えて分析を行った。その結果、フィクション番組では、視聴者の暴力の学習、恐怖世界観、脱感作を高める要素は全般的に少なかったが、暴力行為後の被害・苦痛や罰の描写が少ない、多量の暴力が多い、現実性が高いなどの特徴が見られた。言語的攻撃、間接的攻撃の描写は多くはなかったが、身体的攻撃と共通する特徴が多く見られた。向社会的行為描写については、行為の成功描写は多かったが、報酬の描写は少なく、学習を促進する要素はあまり含まれていなかった。報道番組の暴力描写では、視聴者の恐怖世界観を高める要素である正当化されない暴力や被害結果の描写がある程度見られた。CMの暴力描写では、被害・苦痛描写が少ない、現実性が高いといった暴力の学習、恐怖世界観を促進する特徴が見られた。また、報道番組、CMの向社会的行為描写では、行為の成功や魅力的な行為者が多く描かれており、学習を促進する要素がある程度見られた。縦断調査では、平成16〜17年度の2回の調査への協力を得た首都圏、地方の小学校13校、中学校15校のデータを分析した。攻撃性への影響については、小学生では身体的手段による暴力や魅力的な行為者による暴力の描写が間接的攻撃性を高めること、中学生では間接的攻撃の描写が攻撃性全体を高めることなどが示された。最後に、以上の内容分析、縦断調査の結果に基づいて、暴力描写の出現頻度、影響の強さを組み合わせた暴力描写の評価システムを提案した。
著者
岩田 吉生 青柳 まゆみ
出版者
愛知教育大学障害児教育講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.47-56, 2016-03

本研究では,大学の全学共通科目における特別支援教育関連科目の開講状況を調査し,講義内容・形態,指導上の工夫,課題等について検討することを目的とする。尚,研究Ⅰは,日本教育大学協会・全国特別支援教育研究部門の会員が所属する大学71大学(国立大学52大学,私立大学19大学)を対象とし,「特別支援教育に関する講義」の開講状況に関して,「教職に関する教育科目」または「教職に関する教育科目以外」で必修化している国立大学は,40校中22校(55.0%)に上り,国立大学の半数以上で,特別支援教育に関する講義が必修化されていることがわかった。研究Ⅱは,国立大学の3大学の教育学部を対象に,国立総合大学の教育学部における特別支援教育関連科目の開講状況について調査した。その結果,3大学で,特別支援教育を専門とする専任教員によって必修または選択の特別支援教育の講義が開講されていた。特別支援教育が主専攻ではない学生たちも特別支援教育の基礎を学び,理念・教育制度,指導・支援の方法等の理解を深めていることが明らかにされた。
著者
青柳 まゆみ 岩田 吉生
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-31, 2017-03-31

本稿では、教員免許状更新講習を開設している全国の大学および短期大学407校を対象に質問紙調査を実施し、障害のある受講者の受け入れ実態や支援内容、課題等について分析した。障害のある受講者の受け入れ実績を持つ大学は、回答校245校中112校(45.7%)であった。障害のある受講者の総数と受け入れ校数は、平成21年度は54名(30校)であったが、平成26年度には191名(72校)となり、受講者数は3.5倍、受け入れ校数は2.4倍に増加した。障害別では、人数・校数ともに「その他の障害等」の増加が特に顕著であった。設置形態および規模別では、全体的に大規模および中規模の国立大学において受講者の増加が顕著であり、障害者の受け入れと受講上の支援に大きく貢献している様子が伺えた。配慮の内容は障害別で異なるが、講習内容の情報保障、移動介助、試験時の配慮等、基本的な事項を中心に行われていた。