著者
三浦周行 著
出版者
内外出版
巻号頁・発行日
1926
著者
三浦 徹
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.19, pp.45-74, 2003-09-30

日常的な約束のなかから、社会的な義務を伴った「契約」を切り出してくる基準線はどこにあるのだろうか?本稿は、ヨーロッパ、中国、東南アジアとの比較のなかで、中東・イスラム世界の契約のあり方を検討し、個人の結びつきの社会的位置づけを探る。オスマン朝時代には、イスラム法廷(カーディー法廷)の文書記録が膨大に残されているが、文書化され、証人を立てて、法廷に登記された契約のほとんどは、不動産と家族法に関係するものであった。両者は、当事者のみならず、親族や隣人を含む、永続的な権利関係に関わるため、文書化と登記を行うことによって、権利の侵害に対抗し、将来の紛争を防止しようという意図をもっていた。契約の登記には、第三者を証人としてたて、法廷の吏員やカーディーの署名も証人としての機能を果たした。また当事者(もしくは代理人)、各種の証人役が出廷し、公式の手数料のみならず、非公式の謝礼などの経費を必要とした。ここからしても、登記の目的は、単発の取引の保証ではなく、長期的な経済的および社会的な利害にあった。しかし、登記の効果は、紛争の抑止力の域をでるものではなかった。訴訟において、売買の証書は副次的な証拠にすぎず、決定打は証人の証言や当事者の宣誓、また有力者の調停であったからである。逆に、偽証や裁判官の買収によって不当な利益を得ることも可能であり、これを常套手段とするものもいた。形式的要件を重んじるイスラム法の原則が、一方では偽証を生み、他方では予想される結論を回避して当事者の合意できる裁決に導くための調停を促した。これに対して、動産の取引は、法廷台帳に登記されることはなく、当事者同士の口頭の約束ないしは覚え書きで行わたとみられる。コーランは、「当事者のその場での取引であれば文書を交わす必要はないが、売買の場合は証人をたてよ」(2:282)と述べているが、法学者は、市場などでの売買(物件と代金の同時交換)であれば文書契約の必要はないと解釈した。イスラム法が禁止する付帯条項付きの契約や利子付きの貸付を行うのであれば、むしろ契約を文書化しない方が得策であった。登記された契約(法廷文書)の外側には、口約束の取引、当事者の間での決済が拡がっていた。人々は、以上のような構造を弁えて、二種類の契約(現代法でいう約束と契約)を使い分けていた。この二つの世界に共通の仕掛けが、アッラー(神)であった。法廷での陳述、証言、宣誓はもちろん、日常的な約束の際にも「神かけて(ワッラーヒ)」というせりふが用いられ、神は、約束の保証人であった。法廷の世界と当事者の世界の違いは、証人の有無、すなわち第三者を介在させるか否かにある。当事者だけでなく、隣人や家族などをふくむ社会(共同社会)の利害に関わるときに、第三者を委嘱して、紛争を防止し、紛争の解決をはかった。それを担ったのが、法廷を舞台とした世界であった。国家は、カーディー法廷にせよ、マザーリム法廷にせよ、法廷の世界を維持することで、行政権力として、人々を取り込むことができた。換言すれば、不動産と家族の管理に関わることが、国家の存在理由のひとつだったのである。契約の難しさは、自由な意志をもった個人をいかに束ねるか、しかも、過去から未来という時間のなかでこれを結びつけることにある。この難題に対して、ヨーロッパでは普遍的な法、中東イスラム世界では「第三者」という存在、中国では「一心の合意」という仕掛けをつくりだした。マレー世界では、交易の場合でも親族関係や口頭の約束が結合の基盤となり、文書契約は発達しなかったが、19世紀以降イスラム法が家族法の領域に浸透し、イスラム法廷が家族の紛争調停の場となっている。
著者
三浦 まり
出版者
日本行政学会
雑誌
年報行政研究 (ISSN:05481570)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.42, pp.100-122, 2007-05-26 (Released:2012-09-24)
参考文献数
16
著者
宮原 英夫 池田 憲昭 堤 邦彦 高見堂 正彦 小口 徹 三浦 貞則
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.30-38, 1986-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2 1

Sinece1978, the candidates for the Kitasato University, Medical School have been requested to answer the translated edition of MMPI. For these5years, two kinds of Japanese editions were adopted for test alternately, and total of3894male and786female candidates took this test. Using this material, the authors have studied the influence of translation into Japanese on the response for each MMPI item and profile pattern. The results were as follows: (1)Excluding D and Si scales, the mean scores of the remaining 12scales of either Doshisha or Nihon-edition were located within a difference of one standard deviation from the mean values of the norm group. (2)By means of item by item comparison, considerably large difference between the two editions was observed in the percentage of cases giving?gtrue?hresponse. This fact suggested that difference between the editions had to be taken into consideration when individual items were used separately or scales were newly constructed by using items with high risk of different response pattern.
著者
三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.17末から19世紀前半までの英国の数学愛好者は総称してphilomathとよばれるが、その総数は2-3万人であり、イングランドはもちろん、スコットランドやアイルランドにまで及ぶ。これは同時期のフランス、ドイツ、イタリアには見られない現象である。2.普及した原因はいくつかあげられる。英国では18世紀になると印刷公刊が制度的に容易になり多くの数学書が公刊され、また行商人が各地でそれを販売し、巡回講義が頻繁に行われそこで販売されたこと。海外進出に伴い航海術が盛んになり、そのための実用数学が広く要請されたこと。北部への開墾が進み、軍事的にも正確な測量術が要求されたこと。産業、商業が展開し、さまざまな計測法の実用書の需要が増大したこと。それらの実用数学を教える学校が設立され、そのための教科書が数多く印刷され、それが相乗効果になって数学愛好者が増えたこと。女性に娯楽としての数学という発想が普及し、女性にも数学が普及したこと、など。3.彼らは独自の社会的ネットワークを構成し、ハバーマスのいう公共圏が数学界にも適用できる。その中心はThe Ladies Diaryという雑誌であった。The Ladies Diaryに関しては、その価格、普及の度合いなど詳細な研究成果を研究成果報告書に記載。そのほかの雑誌には、The Palladium, The Stockton Beeなどがある。4.数学愛好者の数学は、ニュートン流の数学ではなく、もっぱら実用数学であった。5.実用数学のための数学器具がさまざま考案された。このことはフランスでも同じであるが、フランスの器具が豪華、大型、真鍮製で銘が彫られているのに対して、英国のものは小型、木製や象牙製で無名のものが多い。英国では実用器具として大衆に普及したことがわかる。
著者
三浦 玲一 川端 有子 戸田山 みどり 渡辺 美樹
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

戸田山の日本における『ちびくろサンボ』の受容史研究から、児童文学の評価においては、「優れた」作品であることが、(児童文学として)「教えるに値する」という価値観/イデオロギーと密接に繋がっていることが示された。渡辺の考察は、このことと関連して、児童文学においては、先行する作品から断絶することで成立する独創性(オリジナリティ)の重視が比較的希薄なこと、同時に、ある種の作品においては、児童文学のコンヴェンション/規範に積極的に依拠しようとする姿勢が見られ、それが評価されていることを調査した。非政治的な「美学的価値」や作者の「オリジナリティ」の虚構性は、いわゆる文学研究においても(多くの論争を巻き起こしながら)既に指摘されている点である。本研究は、そのような性質が、より明示的、あからさまに承認されている場としての「児童文学」を対象とした。個々の作品がその固有性としてもつ、オリジナルな美学的価値とは、20世紀初頭のいわゆるハイ・モダニズムの時代に、芸術としての文学という体制が確立すると共に、自明視されることになる。エレイン・ショウォールターの著作に代表されるような、歴史的なジェンダー研究は、このハイ・モダニズム体制の成立を、文学が(性的な含意を伴った)「表現」として認知される過程と同時進行し、それゆえ、このような美学の成立は、世紀転換期のジェンダー配置の転換と、密接に結び付いていることを示唆している。三浦および川端の研究は、クィア理論以降の拡張されたセクシュアリティの理解から見るとき、児童文学のテクストとみなされるものも亦、セクシュアリティ、ジェンダーの力学から構成されており、そこでは、「児童文学」であることからむしろ積極的に、伝統、規範に依拠しようとしつつ、そのことでむしろ逆説的に、転覆的なジェンダーを描くこととなった諸作品のありようを考察した。
著者
米地 文夫 三浦 修 平塚 明
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.391-409, 2004-03-31

宮沢賢治の作品にしばしば登場する「標本」と「証拠」という語について、自然科学の立場から検討を加えた。自然愛好家であり教師でもある賢治は、「標本」を、展示用、教材用の見せる「もの」としての「標本」sampleと考えていた。彼は本質的に研究者ではなく、彼の「標本」には, 研究者がより重要と考える《研究の材料、研究の保証となる証拠としての「標本」specimen》は含まれていなかった。「標本」specimenを、研究者は「こと」を説明する科学的な「証拠」voucherとして用いる。しかし賢治はこれらは「標本」と呼ばず、「証拠」と書いている。賢治は一種の不可知論者でもあったので、学者が挙げる「証拠」が描く世界像は、時代とともに変わると考えていたのである。
著者
小畑 直之 長尾 秀行 三浦 智和
出版者
独立行政法人 日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
Journal of High Performance Sport (ISSN:24347299)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.74-84, 2022 (Released:2022-12-18)
参考文献数
23

This study aimed to identify the characteristics of snatch lift in top-class Japanese female weightlifters. The hypothesis was that lifters who are good at the snatch had lower barbell velocity in the 1st pull and longer heel contact time based on their weightlifting coaching points. Female lifters who competed in the 2021 All Japan Women's Weightlifting Championships were included in the study. Lifters who had a small difference in scores between the best attempts in snatch and clean & jerk lifts comprised Group A (good at snatch), while those who had a greater difference in scores comprised Group B (NOT good at snatch). The two-dimensional position coordinates of the barbell of each athlete's best snatch attempt during competition were calculated from video analysis to determine the kinematic variables of the barbell. Heel contact time was also determined from video images and compared between groups. The results supported the hypothesis: athletes in Group A had a significantly smaller mean vertical velocity of the barbell in the 1st pull phase than the athletes in Group B (0.45±0.05[m/s], 0.52±0.05[m/s], p<0.001, d=1.179). However, there were no significant differences in mean vertical velocity of the barbell in the 2nd pull phase or in vertical maximum velocity between groups. Heel contact time was also significantly larger in Group A (0.61±0.04[s], 0.53±0.06[s], p<0.001, d=1.347). Finally, there was a negative relationship between the mean vertical velocity of the barbell during the 1st pull phase of the snatch and the best snatch attempt that standardized body weight (r=-0.287, p<0.05). These results suggest that slow and careful execution of the 1st pull and keeping the feet flat in the snatch positively affect the performance.
著者
田中 洋 安藤 元博 髙宮 治 江森 正文 石田 実 三浦 ふみ
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.24-42, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
42

本論文はCMO(チーフマーケティングオフィサー)が日本企業において企業業績にどのような貢献をしているかを実証的に分析するとともに,CMOの地位が現在どのように変化しているかを文献調査で明らかにすることを目的としている。CMOが企業業績に正の影響を与えていることが近年米国で報告されているが,日本ではまだ研究がほとんどなされていない。実証分析の結果,日本企業において,CMOを設置している企業の割合は約8–11%であり,設置率は業種によってばらつきがあった。またCMO設置企業と非設置企業とでは,前者がより規模において大きいことがわかった。また,CMO設置あり・なしは,企業の2年間売上伸張率に正の影響があり,CMO設置は4.7%の売上増収効果をもっていた。また,企業規模が小さな企業ほど,CMO設置あり条件が売上変化率により大きな影響を与えている。文献調査では米国消費財企業においてCMOに代わりCGO(チーフグロースオフィサー)が設置される傾向が2010年代に目立つようになった。CMOへの詳細インタビューを通じて,これらの結果を仮説モデルとしてまとめ,CMO/CGOの設置がどのように企業業績に影響を与えるかを考察した。