著者
棟方 有宗 三浦 剛
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.105-112, 2008
被引用文献数
1

タイヘイヨウサケ属の一種であるサクラマス(Oncorhynchus masou)には、川で生まれてから終生を河川で過ごす残留型と、幼魚期に銀化変態を行い一度川から海へ降り、大型になって産卵のために母川に回帰してくる降河型といった、異なる回遊サイクルを持つ2相がある点で、他のサケ科魚類と異なる。このようなサクラマスのライフサイクルは、広く生物学への興味・関心を高める優れた教材となることが期待される。本研究では、サクラマスのライフサイクルを機軸とした生物教育を構成し得る、発眼卵、孵化仔魚、稚魚の摂餌行動、体色変化、野外観察を題材とした教育活動について紹介する。

3 0 0 0 OA 歴代詔勅全集

著者
三浦藤作 謹解
出版者
河出書房
巻号頁・発行日
vol.第7巻, 1943
著者
佐野 浩彬 三浦 伸也 前田 佐知子 池田 千春 千葉 洋平 臼田 裕一郎
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.203-207, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
20

災害発生時には様々な機関からインターネットを通じて数多くの災害・防災情報が発信されるとともに、時々刻々とその情報が変化し更新されていく。そのため、発信された災害・防災情報にはWebサイト上での記載がなくなり、情報そのもの自体が消失するなど、タイミングを逃すと取得できないものが出てくる。こうした災害・防災情報のデジタルアーカイブを行うことは、災害の動向を時系列で把握する上で重要である。本研究では2019年に発生した風水害を対象として、インターネット上の災害・防災情報の網羅的収集に関する実践事例を紹介し、そこで浮かび上がった課題を述べる。
著者
三浦 太郎
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.67-80, 2001-11-30

戦後, ドイツの西側地域では再教育理念と米民主主義の普及という考えを背景に, 各地に情報センターが設立される。これらは「アメリカ・ハウス」と呼ばれ, 1945年7月にフランクフルト郊外に読書室が開室されたことに始まり, 1947年までに17館, 1953年までに47館を数えた。占領期当初, 軍政府(OMGUS)内部における関心は低かったが, 冷戦の深化とともに1948年にスミス・ムント法が制定され, 翌年に西ドイツが建国されると, アメリカ・ハウスは米国文化を伝える窓口として米国務省の情報プログラムに確固とした位置づけを得るに至った。米国のコミュニティ図書館をモデルに, アメリカ・ハウスでは蔵書の貸出をはじめ講演会の開催や映画上映など, 多様な文化的サービスが展開された。占領下のドイツで米国は日本の場合ほど図書館政策に対する改革の意思を持っておらず, 米国文化の紹介が主眼に据えられた。
著者
宗藤 伸治 刑部 有紀 山外 啓太 岩永 純平 三浦 秀士 古君 修
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.471-474, 2017-08-15 (Released:2017-08-31)
参考文献数
9

Poly-crystalline Ba8AuxSi46−x clathrate with p-n junction was synthesized for electric power generation from heat under no temperature difference. The n-type Ba8Au4.5Si41.5 and the p-type Ba8Au5.5Si40.5 powder were stacked in the graphite die and sintered by a Spark Plasma Sintering (SPS) method at 1073 K for 5 min with pressure of 50 MPa. The Au composition of Ba8Au4.5Si41.5 and Ba8Au5.5Si40.5 side in the sintered sample were Ba7.8Au4.2Si41.8 and Ba7.8Au5.2Si40.8, respectively. It was found that the Au composition was gradually changed near the interface with thickness of around 500 micrometers. Electric power generation test under no temperature difference was performed by using the sample cut to contain the interface of two layers. The electric power increased by only heating and the maximum voltage can be observed around 2 mV at 773 K. These results suggested that electron excitation occurred near the n/p interface and generated electrons and holes diffuse to n-type and p-type semiconductor side, respectively.
著者
村山 綾 三浦 麻子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.51-59, 2012-08-31 (Released:2017-03-01)

This study focused on perceived relationship conflict and task conflict within groups and investigated the possible misperceptions and differences in preferences of conflict management behavior. Both types of conflict were manipulated in a crossed design with respect to their conflict level, resulting in four different scenarios (i.e., low conflict, relationship conflict, task conflict, and mixed conflict situations). Two hundred and thirty-one undergraduate students were asked to answer (1) perceived task and relationship conflict within each scenario and (2) preferred management behavior in that situation. Results showed that both types of conflict could be misperceived with regard to the other. Avoidant management behavior was preferred more in the relationship conflict situation than the task conflict situation. In addition, preferred management behavior in the mixed conflict situation, where both relationship and task conflict were strongly perceived, was the same as the management behavior in the relationship conflict situation. Differences in management behavior in each conflict situation were discussed based on the dual process theory.
著者
藤田 裕司 三浦 正子 細水 令子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. IV, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.89-104, 1988-08

本稿は,女子非行に関するわれわれの一連の研究のうち,父-娘関係の病理性を主題としたものである。まず,第I章では,導入をかねて女子非行とその研究の動向を概観したのち,そのなかにおけるわれわれ研究の意義及び特色について要点を述べた。続く第II章では,今回われわれの研究対象となった非行少女の家庭状況がどのようなものであるかを,彼女たちが綴った作文をもとにして紹介するとともに,彼女たちの父親像を大きく三つに類型化し,それぞれの特徴等について順次検討を加えた。これを踏まえて,第III章では,父-娘相姦の問題を取り上げ,自験例に即しつつその実態及び非行化とのかかわりを明らかにした。最後の第IV章では,以上の論点を総括し,本研究から見た女子矯正教育の望ましい在り方について若干の提言を行い,今後の課題提起とした。As a sequel to the previous study on"female criminality,"the present study,made up of four parts,aimed at revealing the psychopathological aspects in father-daughter relationships of delinquent girls.Firstly,the current topics of researches in this field were reviesed,and special emphasis was laid on the methodological uniqueness of our studies.Secondly,based on our 140 subjects' compositions concerning their families,a brief description of their domestic troubles was given,and focally their typical father images were clarified.Thirdly,nine cases of father-daughter incest were analyzed in detail in connection with her delinquent process or mechanism.This analysis formed a leading part of this paper.Lastly,in the light of the above-mentioned points,a proposal was made on the correctional education for girls as it shoud be.
著者
三浦 哲司 Satoshi Miura
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.63-76, 2011-09-10

本稿では東京都中野区の「地域センター及び住区協議会構想」に焦点を当て、主に「構想の概要の確認」「構想の実践の把握」「構想廃止過程・要因の整理」という3つの作業に取り組む。というのも、平成の大合併が終息した今日では、大都市で都市内分権や地域自治組織のしくみが要請されている状況にあり、先行事例である中野区について分析することで、他都市で何らかのしくみを導入し運営するうえでの留意点が導き出されると考えるからである。もっとも、本稿のねらいは、先の3つの作業によって今後の研究の足がかりを確立することにあり、独自の視座からの分析ができているわけではない。ともあれ、本稿が扱う中野区の「地域センター及び住区協議会構想」とは、区内に15住区を設定し、それぞれに「地域センター」と「住区協議会」を置いて、双方が連携して地域自治の活性化を進めるという内容であった。そして、この枠組みを通じ、なかには熱心に活動する住区協議会もみられた。しかし、その後に区行政当局の対応や協議会委員の固定化などで問題が生じ、構想自体が2006年1月に廃止されてしまったのである。こうした動向をふまえつつ、今後の研究においては特定の住区を対象として、時系列的な分析や最新の実態分析を行う必要がある。あるいは、住区協議会が廃止された住区と、廃止されずに継続している住区とを取り上げて、双方を比較するといった作業も欠くことができない。このように中野区の「地域センター及び住区協議会構想」についてさらなる研究を進めることにより、都市内分権や地域自治組織を導入し運営する他の大都市にとっての留意点が提示できよう。
著者
厚井 聡志 新井 康祐 野上 彩子 當間 勇人 山本 正英 三浦 修 長尾 俊景
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1487-1491, 2020 (Released:2020-11-06)
参考文献数
15

75歳男性。糖尿病性腎症による末期腎不全にて維持血液透析中,透析導入10年後に血清亜鉛55 µg/dlと低下し,亜鉛含有胃粘膜保護薬(polaprezinc)の処方が開始されると,徐々に汎血球減少が出現・持続した。投与開始4ヶ月後,血清亜鉛129 µg/dlと上昇し,亜鉛含有胃粘膜保護薬の投与は中止されたが汎血球減少は進行し,当科に紹介された。WBC 1,700/µl,Hb 8.9 g/dl,Plt 9.5×104/µlと汎血球減少を認め,WT1 mRNA 76 copy/µgRNAと若干高値だった。骨髄像で巨赤芽球様変化や環状鉄芽球があり,骨髄異形成症候群を鑑別に挙げたが,血清銅<2 µg/dl,血清セルロプラスミン3 mg/dlと低値であり,亜鉛過剰に起因する銅欠乏による造血障害と考えた。ココアの摂取による銅の補充で汎血球減少は改善し,補充開始4ヶ月後の骨髄像で当初の形態異常は消失した。慢性腎臓病患者や透析患者の亜鉛補充時には銅欠乏による造血障害に注意が必要と考えられた。
著者
三浦 久美子 堀部 奈都香 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.74-84, 2008-06-01
被引用文献数
4

本研究では、色彩の持つ印象及び気分の作用を整理し、色彩に対する調和香を検討することを目的とした。実験は、100名(男性42名/女性58名)の対象者に、18色のカラーカード(3トーン、5色相の有彩色及び3色の無彩色)の印象評定(SD法)及び気分評定を課すと同時に、各色彩に対する8種の香り(シナモン、ペパーミント、バニラ、ローズマリー、レモン、アニス、ペッパー、 ローズ)の調和度を評定させる(4件法)という手続きによって行われた。色彩の印象評定及び気分評定、各々の結果に対しクラスタ分析を施し、18色を分類した結果PALE系(ペールピンク、ペールイエローなど)、COOL系(ペールスカイ、ビビッドグリーンなど)、VIVID系(ビビッドレッド、ビビッドイエロー)、DARK系(ダークレッド、オリーブなど)、MONOTONOE系(ダークブルー、ブラックなど)の5クラスタに分類された。これらの各クラスタに対する調和香を検討した。その結果、概して、PALE系にはバニラ、COOL系にはペパーミントやローズマリー、VIVID系にはレモン、DARK系にはシナモンやローズ、MONOTONOE系にはペッパーやアニスが調和する傾向が得られた。
著者
三浦 雄太郎 大阪 健吾 鳥海 不二夫 菅原 俊治 Yutaro Miura Kengo Osaka Fujio Toriumi Toshiharu Sugawara
雑誌
SIG-SAI = SIG-SAI
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.1-8, 2017-03-02

We investigate the conditions in which cooperation is dominant in social media using the models of evolutionary games of public goods games with diminishing marginal utilities and attempt to clarify the mechanisms of prosperity of social media and effect of diminishing marginal utilities. Cooperation dominant situation corresponds to that in which social media thrives, i.e., posting articles and taking reactions by comment lead to more benefits result than do nothing as free-riders. A number of studies examined what mechanism contributes to maintain cooperation dominant situation by using evolutionary game, but their models don't include the effect of diminishing marginal utility. Thus, we developed an abstract model of social media using utility function with diminishing marginal utility and we experimentally investigated the effect of diminishing marginal utilities in the meta-rewards and SNS-norms games. The result showed that the games with diminishing marginal utility could model real SNS activities more suitably than those without it.
著者
三浦 一輝 石山 信雄 川尻 啓太 渥美 圭佑 長坂 有 折戸 聖 町田 善康 臼井 平 Gao Yiyang 能瀬 晴菜 根岸 淳二郎 中村 太士
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.39-48, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
38

北海道における希少淡水二枚貝カワシンジュガイ属2種(カワシンジュガイMargaritifera laevis、コガタカワシンジュガイM. togakushiensis)が同河川区間(<100 m区間内)に生息する潜在性の高い地域を広く示すために、北海道内の計31水系53河川から本属を採集し、mtDNAの16S rRNA領域におけるPCR増幅断片長を比較する手法を用いて種同定を行った。種同定結果を元に10 × 10 kmメッシュ地図に地図化した。結果、カワシンジュガイが23水系39河川、コガタカワシンジュガイが25水系40河川から確認された。全調査河川のうち、49%の17水系26河川から2種が同河川区間から確認され、各地域の全調査河川に対する確認調査河川の割合が道東地域で68%と最も高かった。また、全38調査メッシュのうち、50%の19メッシュから2種が同河川区間から確認された。地域別に見ると、各地域の全調査メッシュに対する確認調査メッシュの割合が道東地域で67%と最も高かった。本研究では、カワシンジュガイ属2種の遺伝分析を行い、本属2種が同河川区間に生息する河川およびその潜在性が高い地域を示すことができた。本結果は、今後、北海道に生息するカワシンジュガイ属の調査や保全策立案に重要な情報を提供できると考えられる。
著者
三浦 雄一郎
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.7-13, 2001 (Released:2005-06-07)
参考文献数
12
被引用文献数
5

To evaluate physical functions in patients with chronic low back pain, it is important to evaluate trunk muscle function. Anatomical and electromyographical studies of trunk muscles in healthy subjects and patients with chronic low back pain are introduced in this paper. Many articles is published have asserted that the action of trunk muscles of patients with chronic low back pain is different from that of healthy subjects. In my research, electromyography (EMG) of trunk muscles during hip extension in the prone position was used in patients with chronic low back pain and healthy subjects. EMG showed that the action of trunk muscles during this motion in patients with chronic low back pain was weaker than that in healthy subjects, but EMG of trunk muscles during this motion after therapeutic exercises indicated improvement in patients with chronic low back pain. It has been said that EMG evaluation of the trunk muscles is an important method to use in patients with chronic low back pain.
著者
豊下 祥史 佐々木 みづほ 菅 悠希 川西 克弥 原 修一 三浦 宏子 越野 寿
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.95-105, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
参考文献数
30

目的:固定性義歯による欠損補綴治療に比較して,可撤性義歯による治療は咀嚼機能の回復程度に個人差が大きいにもかかわらず,義歯装着者に関する認知機能と咀嚼機能に関する研究は少ない。本研究では,認知機能低下の危険性がある可撤性義歯装着高齢者の口腔機能を明らかにするため,認知機能の低下の有無,義歯装着の有無によってグループ化し口腔機能の比較を行った。 方法:299名の高齢者に対し,認知機能のスクリーニングテストと義歯装着の有無によって,義歯を装着しておらず認知機能の異常を認めない群,義歯を装着しておらず認知機能の低下が疑われる群,義歯を装着しており認知機能の異常を認めない群,義歯を装着しており認知機能の低下が疑われる群を設定し,残存歯数の計測,咀嚼機能検査,最大咬合力測定,25品目の摂取可能食品アンケートおよびオーラルディアドコキネシス計測を実施した。 結果:義歯を装着しており認知機能が低下している群において,残存歯数と咀嚼能力が有意に低下していた。さらに,義歯装着者を欠損の大きさによって群分けし,口腔機能を比較したところ,全部床義歯を装着しており認知機能の低下している群で有意な咀嚼機能の低下を認めた。 結論:認知機能の低下が疑われる全部床義歯装着者は,客観的評価である咀嚼機能検査と主観的評価である摂取可能食品アンケートの両方で有意な低下を認めた。
著者
早崎 史朗 三浦 実 有賀 友則
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.480-489, 2008-04-28
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

&nbsp; エホバの証人は命を大切にしており, 命を長らえるために, 道理にかなった取り組みを積極的に行う. そのため, 良質の医療を求め, ほとんどの医療処置を受け入れる. しかし, 聖書に基づく宗教上の理由から, 同種血輸血は受け入れず, 無輸血で行われる代替療法を求めている. その立場が医学的な面からも法律的な面からも道理にかなったものと言える理由を考察する. 未成年者に対する医療が問題となるが, 判断能力のある未成年患者であればその意思を尊重すべきであり, 判断能力がないのであれば基本的には親権者の意思が尊重されるべきである.
著者
安藤 雄一 青山 旬 尾崎 哲則 三浦 宏子 柳澤 智仁 石濱 信之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.319-324, 2016 (Released:2016-07-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1

目的 歯科疾患実態調査は1957年から 6 年間隔で行われ,わが国の歯科保健の状況を把握する貴重な資料として活用されてきたが,協力率が近年減少傾向にある。その原因として,本調査と同一会場で行われている国民健康・栄養調査の血液検査への協力有無が強く影響していることが現場関係者から指摘されている。そこで,歯科疾患実態調査への協力率を血液検査への協力の有無別に比較することを目的として,政府統計の利用申請を行い,利用許可を得た個票データを用いて分析を行った。方法 データソースは,①平成23年国民生活基礎調査(世帯票),②平成23年国民健康・栄養調査(身体状況調査票,生活習慣調査票),③平成23年歯科疾患実態調査で,共通 ID によりリンケージを行い,性・年齢に不一致が認められなかった13,311人のデータを用いた。分析として,まず国民生活基礎調査の協力者(13,311人)を分母とした国民健康・栄養調査における血液検査を含む各調査と歯科疾患実態調査の協力率を算出し,次いで国民健康・栄養調査における各調査への協力状況別に歯科疾患実態調査の協力率を比較した。結果 国民生活基礎調査の協力者を分母とした協力率は,国民健康・栄養調査全体では56.9%であった。国民健康・栄養調査を構成する生活習慣状況調査と身体状況調査について 1 項目でも該当するデータがあった場合を協力とみなして算出した協力率は,前者が56.8%,後者が45.4%であった。血液検査の協力率は29.9%で,歯科疾患実態調査では28.1%であった。性・年齢階級別にみた血液検査と歯科疾患実態調査の協力率は酷似していた。 歯科疾患実態調査の協力率を身体状況調査への協力状況別に比較したところ,同調査に協力しなかった人たちと同調査に協力したものの会場に来場しなかった人たちでは協力率がほぼ 0%,来場したが血液検査に協力しなかった人たちでは17.7%,来場して血液検査に協力した人たちでは95.8%と,身体状況調査の協力状況別に著しい違いが認められた。結論 「歯科疾患実態調査の協力者≒血液検査の協力者」という関係が成人において認められ,歯科疾患実態調査に協力する機会が国民健康・栄養調査における血液検査の協力者にほぼ限定されていたことが明らかとなった。